2022-04-05

約300万円で和物工芸品を海外販売するネットショップを買収!利益率60%のノウハウを取得するM&A

買い手(法人):一般社団法人タチバナ

<中小企業の多角化を目指したM&A・買収事例>

 

交渉期間1か月足らずで、和物工芸品を海外販売するネットショップのM&Aに成功した一般社団法人タチバナ。昨年までは障害を持つ子どものための放課後デイサービスを運営していましたが、新たに障害者就労支援事業を始めるにあたり、シナジーの高さを感じて本案件のM&Aに至りました。

発見したシナジー、そして原価率10%で利益率60%という優良なネットショップの秘訣について、事業責任者を務める田村佑司さんにお話を伺いました。

【開業する障害者就労支援事業とのシナジーを見込んで案件選定】

- まずは、一般社団法人タチバナの概要とM&Aを行った経緯から教えてください
拠点は大阪で、これまでは障害のあるお子様を支援する放課後デイサービスの事業を運営していました。その事業を2021年12月に他社に譲渡することになって、新しい事業として2022年4月から就労継続支援B型事業所の立ち上げを予定しています。就労継続支援B型事業所とは、一般企業への就職が不安だったり困難だったりする障害者の方と雇用契約を結ばずに就労の場を提供する職場のことです。

ネットショップに興味を持ったのは、障害者の方にも働いていただける場を探していたことがきっかけです。

たとえばPC操作を覚えてもらってネットショップの商品登録作業を任せたり、梱包などの発送作業を任せたりといった比較的軽微な業務をお願いしたいと思っていました。実は1年ほど前から楽天市場にショップを開設して、財布やキーケースなどの革製品を販売するなど、EC事業への挑戦は少しずつ行っていました。

- 今回M&Aという手法を選んだのはなぜですか
自社に知見がないため、ネットショップ運用のノウハウを得られるところにメリットを感じたからです。すでに顧客基盤があるネットショップを買うことで、集客コストも抑えられると思いました。

- TRANBIはどんなきっかけで利用しましたか
経営者の集まりで、「TRANBI経由でM&Aを行った」と話を聞いたんです。早速サイトを覗いてみると、金額もジャンルも幅広い案件が掲載されていました。数百万円単位の案件もあったので、これならやれそうだと思いました。

メルマガも登録し、定期的にサイトを見て、興味関心のある案件を見つけたら積極的に売り手様にコンタクトを取りました。買い申し込みをしたものの、途中で他社への譲渡が決まってしまったケースもあったので、条件を広げながら探していました。

- 今回購入した案件の、どのようなところに惹かれましたか
まずは予算感をクリアしていたことです。売上規模や利益によって多少変動はするものの、予算は400万円以下で考えていまして、今回の案件は330万円と範囲内でした。

あとは、自分自身が興味を持てる内容であったことも、惹かれた大きな理由です。実は、今の仕事に就く前は流通業に勤めていて、伝統工芸品の販路開拓の支援を行っていたんです。

仕事をする中で、伝統工芸品を海外に販売できないだろうかと考えていたものの、実現には至らなくて。そうした経験があるからこそ、どんな方法で和物を海外へ販売してビジネスを成功させられているのだろうと興味を持ちました。



(※写真はイメージです)

【ネットショップのノウハウが魅力、大きな伸びしろもあり!】

- あらためて、今回購入した案件について教えていただけますか
2013年に開業した、中古の着物や和人形を欧米の個人の方向けに販売しているネットショップです。売り手様は副業としてこのビジネスをされていたのですが、稼働時間が週10~20時間で、これまでに約2200点の商品を売り上げ、利益率は60%以上、原価率は10%以下とかなり合理的に運用されていました

仕入れは一部公開できない部分はありますが、オークションで地道に集めてもいたそうです。なるべく複数点まとめて出品されている物を中心に仕入れているようです。オークションサイトの選び方や検索ワードにコツがあるはずなので、そういったノウハウを教えていただけるならありがたいと思いました。

集客のために、広告にもある程度お金を掛けてきてはいたようですが、顧客基盤を築けている一番の理由は商品数の充実だそうです。私たちが取り組む上でも、そこは意識して行いたいと思っています。

- どんなところに、ビジネスが広がる可能性を感じましたか
まずは売り手様がこれまで取り組んできたビジネスを模倣することが前提ですが、アレンジも加えられると思いました。具体的には、より安い仕入れルートを模索したり、良質で高価格な商品を販売したりすることもできそうだなと。地域の伝統工芸品を作る企業と契約を結ぶことで、その商品を海外に販売できるのではないかと思いました。

また、売り手様は副業として運営されてきたので、「計画性を持って運営をしてきたわけではない」とおっしゃっていて。それが逆に、今後のわれわれとしての伸びしろになるかなと。在庫も6畳一間のスペースで管理されていたようで、「在庫保管スペースを増やせば、売上250%増は確実に可能だろう」という話にもなったんです。

- ネットショップは英語で作られていますが、言語の壁はネックになりませんでしたか
売り手様は英語が使える方だったため、当初は英語が一番のネックになると思っていました。ただ、英訳や和訳をしてくれる補助機能がネットショップのツールに備わっていると聞き、安心しました。一応、社内には英語ができる人間もいるので、困った時にはそのメンバーに対応してもらおうと考えています。



(※写真はイメージです)

【一番に手を挙げ、契約成立…在庫とノウハウを含めた譲渡金額に納得】

- 案件がTRANBIに掲載されたのが11月1日で、成約が11月25日と1か月足らずで成約まで進んだようですね。
偶然、掲載されたのとほぼ同タイミングで、この案件を見つけたんです。やりたいことに合致していたので交渉を申し込むと、どうやら私が1番だったようで。

売り手様は東京にお住まいだったものの、海外へのお引越しを予定されていて。海外移住してしまうと成り立たないビジネスモデルだったため、今回手放す決断をされたのですが、譲渡を急いでいたんです。

そうした背景もあって、複数件買い申し込みはあったようですが、「一番に連絡をくださったあなたに譲渡したい」とおっしゃっていただいて。こちらも社内調整を行って、早めに決断しました。

- 譲渡金額はどのように決定されましたか
売り手様の譲渡希望金額に沿う形で、150万円分ほどになる在庫と、半年間に渡る引き継ぎやノウハウ提供支援を含めての金額感だったので、十分納得しました。

- 具体的には、どんな準備を進めることが必要ですか
商品数次第で売上も大きく変わるため、まずは在庫を保管するためのスペースを新たに確保しなければなりません。今まさに、在庫保管スペースや商品撮影スペースを準備している最中です。さらにネットショップを活用した国内における古着販売の事業も同時に始めようとしているので、環境を共用できればと思っています。

【陽の当たらない優れた伝統工芸品を海外に広めたい】

- 今後のビジョンについて教えてください。
2022年の4月に就労継続支援B型事業所を立ち上げる予定です。来ていただく方の得意なことやできることを考慮しつつも、まずはネットショップ関連の作業をお願いできればと考えています。中期的には、就労継続支援A型事業所の立ち上げも検討しているので、作業を依頼するフローを確立していきたいです。

ネットショップに関しては、引き継ぎを完了させて今まで通りの安定的な収益を出すことが第一です。それができた上で、独自色を出していきたいと思っています。

日本の伝統工芸品には、優れた技術を用いて作られていても、なかなか販路が開拓できておらず、陽の目を見ていないケースがまだまだ多いと以前から課題を感じています。当社が販路の1つを開拓して、商品流通をサポートできたらと思っています。

- 将来的に、他のネットショップのM&Aを行う構想はありますか
もちろん考えています。実際、今もTRANBIで交渉をしていて、最終合意に至っている案件もあります。たとえばオリジナルブランドの商品をネットショップで販売しているケースなら、ネットショップを運営する以外に、私たちが卸の役割を担ってお店などに卸していくような動き方もできるのかなと。

我々の資産とシナジーが生み出せる事業のM&Aを、引き続き検討していきたいです。

***今回一般社団法人タチバナさまが買収した案件はこちら*****

「和物海外販売ECサイトアカウント譲渡」

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  • 倉本祐美加
  • ライター紹介倉本祐美加

    関西学院大学卒業後、クラウド製品を扱うIT企業のインサイドセールス職を経て2016年にライターとして独立。企業取材を中心としたインタビュー原稿の制作に従事していますが、エンタメ・スポーツ・文化等幅広く好みます。

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