医薬品卸業界の市場動向
医薬品卸業界は、アルフレッサ、メディパル、スズケン、東邦薬品の4大グループによる寡占化が進行しています。薬価の毎年改定や流通改善ガイドラインの厳格化により、利益率が圧迫される厳しい経営環境が続いています。
一方で、高齢化の進展に伴う医療需要の増加を背景に、市場規模自体は底堅く推移しています。特に、厳格な品質管理が求められる高薬価のスペシャリティ医薬品の流通が増加しており、新たな収益機会も生まれています。
このような状況下で、大手との競争や収益性の低下に直面する中小の医薬品卸にとっては、事業の効率化が急務です。そのため、物流拠点の統廃合やDX推進による業務効率化を目的とした業界再編、すなわちM&Aの動きが今後も活発に続くとみられています。
医薬品卸業界のM&Aのポイント
ポイント① 主要な取引先と販売チャネルの評価
医薬品卸の企業価値は、医療機関や調剤薬局との取引基盤に大きく依存します。そのため、M&Aを検討する際は、対象企業がどのような販売チャネルを持ち、どの程度の安定性があるのかを精密に評価することが不可欠です。
デューデリジェンスでは、主要取引先の構成や取引継続の見通し、特定の医療機関への依存度を詳細に分析します。また、収益性を左右するリベート(割戻金)の実態や、納入価格の妥当性についても深く掘り下げて確認する必要があります。
強固な関係性を有する地域の中核病院や、広域をカバーする薬局チェーンとの取引実績は、買収後も安定した収益を見込める大きな強みとなります。これらの無形資産を正しく評価することが、M&A成功の第一歩と言えるでしょう。
ポイント② 物流・在庫管理体制とコンプライアンスの確認
医薬品卸は、医薬品という人の生命に関わる製品を扱うため、極めて高いレベルの品質管理体制が求められます。特に、近年流通量が増加しているバイオ医薬品などのスペシャリティ医薬品は、厳格な温度管理(コールドチェーン)が不可欠です。
買収対象企業の物流センターが、こうした医薬品の品質を保証できる設備や運営体制を備えているかどうかの確認は、最重要項目の一つです。同時に、在庫管理システムが効率的に運用され、不動在庫や過剰在庫を抱えていないかどうかもキャッシュフローの観点から精査します。
さらに、「薬機法」をはじめとする各種法令や、厚生労働省の「流通改善ガイドライン」を遵守するコンプライアンス体制が確立されているかの確認も欠かせません。潜在的な行政処分のリスクを回避するためにも、徹底した調査が求められます。
ポイント③ 人材と情報提供機能(MS)の質
医薬品卸の競争力は、単なる物流機能だけでなく、医療従事者への情報提供機能によっても大きく左右されます。その中核を担うのが、MS(Marketing Specialist)と呼ばれる営業担当者の存在です。
MSが日々の営業活動を通じて医療機関とどれだけ強固な信頼関係を築いているか、また、医薬品に関する専門的な情報を提供できるかが、企業の付加価値となります。そのため、買収検討時には、MSの専門性や定着率、キーパーソンとなる人材の在籍状況を評価することが重要です。
M&Aの実行後、キーパーソンであるMSが流出してしまうと、期待したシナジー効果が得られないリスクがあります。買収後の待遇や役割を明確にし、人材の引き継ぎを円滑に進めるための計画を、交渉段階から具体的に検討しておくべきでしょう。
地域別売却希望平均価格
- 0円
- 1円
- 10万円以下
- 100万円以下
- 300万円以下
- 500万円以下
- 1,000万円以下
- 1,000万円〜3,000万円
- 3,000万円〜5,000万円
- 5,000万円~1億円
- 1億円~2億5,000万円
- 2億5,000万円~5億円
- 5億円〜10億円
- 10億円〜15億円
- 15億円〜20億円
- 20億円〜50億円
- 50億円〜100億円
- 100億円以上
