歯科業界の市場動向
日本の歯科医院数はコンビニエンスストアを上回ると言われ、供給過剰による競争激化が指摘されています。しかし、高齢化の進展に伴う口腔ケアの重要性の高まりや、健康意識の向上から予防歯科へのニーズは増加しており、市場全体としては底堅い需要が見込まれます。
このような環境下で、多くの歯科医院は保険診療に加えて、審美歯科やインプラント、矯正といった自由診療を強化することで収益性の向上を図っています。また、高齢者施設や在宅患者を対象とする訪問歯科診療も、新たな成長領域として注目されています。
一方で、歯科医師の高齢化と後継者不足は深刻な課題となっており、事業承継を目的としたM& Aが活発化しています。買い手にとっては、最新設備や専門性の高いサービスを持つ医院を取得することで、事業基盤の強化や新規エリアへの進出を効率的に実現できる機会となっています。
歯科業界のM&Aのポイント
ポイント① 院長への依存度と引継ぎの実現性
歯科医院の事業価値は、院長の技術力や人柄、そして患者との信頼関係に大きく依存している場合が少なくありません。そのため、M&A後に院長が即時退職してしまうと、多くの患者が離れてしまい、想定した収益を確保できなくなるリスクがあります。
この属人性のリスクを評価するため、デューデリジェンスでは院長以外の勤務医や歯科衛生士がどの程度診療を担っているか、診療マニュアルが整備されているかなどを確認することが重要です。
また、M&Aを成功させるためには、最終契約の段階で、売主である院長に一定期間の引継ぎ勤務を依頼することが極めて重要になります。円滑な引継ぎ期間を設けることで、患者だけでなく、従業員との関係性もスムーズに承継することが可能になります。
ポイント② 収益構造とコンプライアンスの確認
歯科医院のM&Aを検討する際は、収益構造を詳細に分析することが不可欠です。保険診療と自由診療の比率や、それぞれの利益率を把握し、事業の安定性と成長性を評価します。
特に注意すべきは、レセプト(診療報酬明細書)の精査です。過去の保険請求に誤りや不適切な点がないか、専門家を交えてデューデリジェンスで徹底的に確認する必要があります。
万が一、買収後に不適切な請求が発覚した場合、過去の診療報酬の返還や行政処分といった重大なリスクを負うことになります。財務面の調査と並行して、こうしたコンプライアンス上のリスクを正確に把握することが、失敗しないM&Aの鍵となります。
ポイント③ スタッフの引継ぎと労務リスクの検証
歯科医院の円滑な運営は、院長一人の力だけでは成り立ちません。長年にわたり医院を支え、患者との関係を築いてきた歯科衛生士や歯科助手、受付スタッフといった従業員の存在が、事業の価値を大きく左右します。
M&Aの交渉を進める際は、これらの優秀なスタッフを確実に引き継げるかが重要なポイントです。デューデリジェンスでは、スタッフの雇用契約や労働条件を詳細に確認し、未払い残業代などの潜在的な労務リスクがないかを検証することが求められます。
買収後は、スタッフの雇用を維持し、待遇や労働環境について丁寧にコミュニケーションをとることで、彼らの不安を払拭し、組織の一体感を醸成することが重要です。スタッフの定着こそが、M&A後の安定した医院経営を実現する基盤となります。
地域別売却希望平均価格
- 0円
- 1円
- 10万円以下
- 100万円以下
- 300万円以下
- 500万円以下
- 1,000万円以下
- 1,000万円〜3,000万円
- 3,000万円〜5,000万円
- 5,000万円~1億円
- 1億円~2億5,000万円
- 2億5,000万円~5億円
- 5億円〜10億円
- 10億円〜15億円
- 15億円〜20億円
- 20億円〜50億円
- 50億円〜100億円
- 100億円以上
