漁業・水産養殖業業界の市場動向
日本の漁業・水産養殖業は、国内の魚介類消費量の緩やかな減少や燃油価格の高騰、そして深刻な後継者不足と就業者の高齢化という構造的な課題に直面しています。これに加えて、世界的な水産資源の減少や漁業規制の強化も、事業環境を厳しくする要因となっています。
一方で、持続可能な漁業(サステナビリティ)への関心の高まりを背景に、MSC認証などの国際認証を取得した水産物への需要が増加しています。また、ICTを活用したスマート漁業や環境負荷の少ない陸上養殖といった新たな技術が、生産性向上と事業革新の可能性を切り拓いています。
こうした状況から、後継者問題を抱える事業者が第三者への承継を選択するケースが増えています。同時に、異業種から参入して新たな付加価値を創出したり、同業他社が規模の経済を追求したりするために、M&Aが有効な戦略として注目されています。
漁業・水産養殖業業界のM&Aのポイント
ポイント① 漁業権・養殖権益の確認と承継の確実性
漁業・水産養殖業のM&Aにおいて、最も重要なのが漁業権や養殖権益の取り扱いです。これらの権利は事業の根幹を成す無形資産であり、その価値と承継の可否がディールの成否を左右します。
デューデリジェンスの際には、対象企業が保有する権利の種類(定置漁業権、区画漁業権など)や有効期間、対象水域を正確に把握しなければなりません。その上で、M&Aによる権利の承継が可能か否かを、所管の漁業協同組合や行政機関に確認することが不可欠です。
特に、地域の漁協との関係性は事業運営に深く関わるため、組合への加入資格や地域の慣行、代表者との関係性なども見極める必要があります。これらの許認可の承継手続きは時間を要する場合があるため、早期に着手し、円滑に進めることが成功の鍵となります。
ポイント② 設備資産の実態評価と技術・ノウハウの承継
漁業・水産養殖業は、漁船や養殖いけす、加工・冷凍施設といった特殊な設備資産を多く保有します。これらの資産は簿価と時価が大きく乖離していることが多いため、専門家による実査を通じて、老朽化の度合いや修繕履歴、法定検査の状況などを詳細に評価することが重要です。
また、有形資産以上に価値を持つのが、特定の漁場に関する知見や独自の養殖技術、伝統的な加工方法といった、目に見えない技術やノウハウです。これらの無形資産は、経営者や現場のベテラン従業員といった特定の個人に属人化しているケースが少なくありません。
そのため、M&Aの実行にあたっては、これらのキーパーソンに一定期間事業に残留してもらうなど、円滑な技術承継を確実にするためのスキームを契約に盛り込むことが求められます。事業価値の源泉である技術を失わないための手立てを講じることが、買収後の安定経営に繋がります。
ポイント③ 販路の安定性とサプライチェーンの持続可能性
高品質な水産物を生産する能力があっても、安定した販路がなければ事業は継続できません。対象企業の販路構成と、その関係性の強さを精査することが重要なチェックポイントになります。
主要な販売先が卸売市場なのか、特定の加工会社や飲食店なのかを把握し、取引の継続性を確認する必要があります。特に、特定の取引先への依存度が高い場合は、代表者の交代後も関係が維持されるか、キーマンへのヒアリングなどを通じて慎重に見極めるべきです。
加えて、飼料の仕入れ先や加工委託先、物流網といったサプライチェーン全体の安定性も評価対象となります。近年では、気候変動による漁獲量の変動リスクや、環境配慮への要請も高まっているため、事業の持続可能性という観点からも評価することが不可欠です。
地域別売却希望平均価格
- 0円
- 1円
- 10万円以下
- 100万円以下
- 300万円以下
- 500万円以下
- 1,000万円以下
- 1,000万円〜3,000万円
- 3,000万円〜5,000万円
- 5,000万円~1億円
- 1億円~2億5,000万円
- 2億5,000万円~5億円
- 5億円〜10億円
- 10億円〜15億円
- 15億円〜20億円
- 20億円〜50億円
- 50億円〜100億円
- 100億円以上
