2025-10-09
啓蒙・普及活動
事業を承継する“継業”で主体的なキャリア形成を後押しする 「継キャリ 推進プロジェクト」発足
事業を承継する“継業”で主体的なキャリア形成を後押しする「継キャリ 推進プロジェクト」発足
国内初の M&A プラットフォーム TRANBI、早稲田大学ビジネススクール 入山章栄教授、法政大学キャリアデザイン学部 田中研之輔教授がタッグ!-現職への不満と理想のキャリア形成に関する ビジネスパーソン 1,000 人調査も実施-
弊社は、早稲田大学大学院経営管理研究科 早稲田大学ビジネススクール教授 入山 章栄氏、法政大学キャリアデザイン学部教授 一般社団法人プロティアン・キャリア協会 代表理事 田中研之輔氏とともに、事業承継を通じた主体的なキャリア形成を後押しする「継キャリ推進プロジェクト」を 10 月 9 日より立ち上げます。
■「継キャリ 推進プロジェクト」発足背景
昨今、大企業を中心に「成長機会の空洞化」が顕在化しています。終身雇用や縦割り、副業でも断片的なスキル活用にとどまり、管理職にとっては経営視点を持ちづらい環境が日本の競争力にも影を落としています。現代のビジネスパーソンは、企業に依存せず主体的にキャリアを選択することの重要性が高まっています。一方で、中小企業の後継者不足も深刻です。全国 27 万社を対象に調査したところ 52.1%が後継者不在(※1)、後継者難による倒産は 2 年連続 500 件超(※2)。さらに 2025 年の休廃業・解散は昨年を 9.3%上回る 7 万件超ペース(※3)で、黒字・資産超過のまま市場から消える例も少なくありません。
貴重な技術や雇用、地域ブランドが「継ぐ人がいない」という理由で失われているのです。また廃業はかつて 70 代経営者が中心でしたが、近年は 50〜60 代にも広がり、承継対象の企業はさらに増える見込みです。一方で、「廃業=ネガティブ」ではなく、経営者が円満に退出するケースも増えており、これは第三者承継や新たなキャリア形成のチャンス拡大につながるポジティブな側面もあります。
こうした二大課題――「後継者不在による事業断絶」と「経営経験を持たない管理職の増加」。一見別の問題に見えますが、双方に応える実践的な解決策が「継業キャリア(継キャリ)」です。
会社を買う・引き継ぐ“継業”を通じて、自らのキャリアに経営者視点を取り入れ、キャリアの幅を広げる新しい選択肢。
新規創業に比べ成功確率が高く、日本人が得意とする「既存事業を発展させる力」にも合致します。副業での経営体験から人生後半の成長戦略、連続継業によるポートフォリオキャリアの構築まで、多様な可能性を拓きます。AI での効率化が進む時代だからこそ、意思決定経験を持つビジネスパーソンが求められます。「継業キャリア」は、就職・転職・起業に次ぐ“第4のキャリア”として、個人・企業・地域をまたぐ越境的な成長モデルを提示します。
※1 帝国データバンク(2024 年)全国「後継者不在率」動向調査 ※2 帝国データバンク(2024 年)後継者難倒産の動向調査 ※3 帝国データバンク(2025 年)休廃業・解散動向調査
■「継キャリ 推進プロジェクト」の取り組みについて
プロジェクトサイト:https://www.tranbi.com/buy/inherit/本プロジェクトは、M&A や事業承継などの「継業」経験者と初心者ユーザーをつなぐオンラインコミュニティによるサポートで、初めての継業への挑戦を後押しする、日本初の M&A プラットフォーム「TRANBI」を展開する株式会社トランビと、早稲田大学大学院経営管理研究科/早稲田大学ビジネススクール教授 入山 章栄氏、法政大学キャリアデザイン学部教授/一般社団法人プロティアン・キャリア協会代表理事 田中研之輔氏が中心となり、以下の取り組みを通じて、新たなキャリア形成手段として「継キャリ」を推進します。
① イベント/コミュニティ運営を通じたビジネスパーソンへの啓発
Facebook グループを通じたコミュニティ形成、イベント開催を通じてビジネスパーソンへ継キャリの認知を拡大していきます。
② 継キャリ挑戦へのナレッジ提供
note 等を活用した継キャリに関するコラム発信、実際の成功・失敗事例に学ぶ tips などナレッジシェアを行い、継キャリへのチャレンジを支援します。
③ 副業として継業しやすくする制度開発
会社員や副業が制限されている場合でも無理なく「継キャリ」のキャリアに挑戦できるよう、「副業としての継業」を支援する制度設計などを開発する予定です。
■継業キャリアに対するコメント
【経営学の専門家】早稲田大学大学院経営管理研究科 早稲田大学ビジネススクール教授 入山 章栄"継キャリ"は、今後の日本人のキャリア形成と、産業発展に大きな可能性をもたらす概念だと私は思っています。異なる領域に踏み出し、新しい知と知を組み合わせてチャレンジをしていくことを「知の探索」と経営学で言いますが、これがイノベーションの源泉として日本中で求められています。その意味で、異業種の事業を引き継ぐ継キャリは、その最もユニークかつ実践的な形です。すでにある事業基盤を活かしつつ、「第 2 の創業」として外から新しい人が経営に挑戦するのは、まさに新しい知と知の組み合わせです。この点は、AI が仕事を代替するこれからの時代に特に重要です。
なぜなら、いわゆる事務的な作業、形式的なルーティン作業の多くを AI が代替するからこそ、人は“自分の世界観を表現できるキャリア”を、さらに必要とするからです。自分の世界観は、AI には代替されません。実際、都内のある繁華街では、コロナを経過した後で、多くの女性店主が自分の世界観を表現するようなワインバーを継いでいるともきいています。私自身も、どこか都内のビストロを事業承継して、近所の人が集えるようなサードプレイスをつくれたらいいなと、考えているところです。こうした身近な実践が、AI 時代における継キャリの可能性を体現しているのです。ゼロから始めるより、すでに基盤のある事業をサクッと継ぐ方が、現実的でリスクも小さい。
継キャリは、個人の自己実現、企業の競争力強化、社会全体の生産性向上を同時に促す、次世代のキャリアモデルなのです。

【入山 章栄氏 プロフィール】
慶應義塾大学卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所でコンサルティング業務に従事後、2008 年米ピッツバーグ大学経営大学院より Ph.D.(博士号)取得。同年より
米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。2013 年より早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール准教授。2019 年より教授。専門は経営学。国際的な主要経営学術誌に論文を多数発表。メディアでも活発な情報発信を行っている。
【キャリア論の専門家】法政大学キャリアデザイン学部教授/一般社団法人 プロティアン・キャリア協会 代表理事 田中研之輔
プロティアンキャリアとは、変幻自在に環境へ適応し、自らの価値観に基づいてキャリアを選ぶ考え方です。その実践手段として注目すべきが「継キャリ」、すなわち事業承継を通じたキャリア形成です。人生 100 年時代には、一つの職業にとどまらず 3 つ以上の経験を重ねることが標準となり、継キャリはプロティアンキャリアを体現する有効な方法といえます。従来の選択肢である転職、副業、起業に加え、第 4 のキャリアとして位置づけられる継キャリは、既存の事業基盤を活かして経営を担うことで、自己決定に基づく挑戦を実現します。さらに人的資本を高め、「キャリア資本」(ビジネス資本・社会関係資本・経済資本)の三つを同時に伸ばせる点も特徴です。特に 40〜50 代にとっては、新たな挑戦を通じてキャリア資本を拡張し、自己実現と安定を両立できる強力な手段となります。今後は、中間管理職層においても継キャリ経験が当たり前に求められる社会が広がり、経営経験を持つ人材が新たなスタンダードになるでしょう。

【田中研之輔氏 プロフィール】
一橋大学大学院社会学研究科博士課程を経て、UC. Berkeley 元客員研究員 Universityof Melbourne 元客員研究員 日本学術振興会特別研究員 SPD 東京大学/博士:社会学。大学と企業をつなぐ連携プロジェクトを数多く手がける。 専門はキャリア論、組織論。社外取締役・社外顧問を 36 社歴任。個人投資家。著書 36 冊。主な著書に『プロティアン―70 歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本論』『キャリアの悩みを解決する 13 のシンプルな方法Career Workout』『実践するキャリアオーナーシップ』『進化するキャリアオーナーシップ』
※プロティアン・キャリア:個人が主体的に自分の価値観に基づき、柔軟にキャリアをデザイン・変化させていくキャリア形成の考え方
【M&A プラットフォーム事業者】株式会社トランビ 代表取締役 CEO 高橋 聡
私たち TRANBI は、継キャリという新しいキャリアモデルを通じて、より多くの人に事業承継や M&A などを通じて「継業」に挑戦していただきたいと考えています。「継業」は、既存の事業基盤を活かしながら、自分のキャリアを大きく変え、人生を新たなステージへと導く挑戦の機会です。これまで限られた経営者や投資家のものと思われていた M&Aを、ビジネスパーソンが自らのキャリア形成に活用できる時代が来ています。そして M&A が身近になることで、会社を譲り渡す側の経営者も「事業を未来につなぐ」選択を誇れるようになり、人が継ぎたくなるほど魅力ある会社を築き上げた、経営者としての成功の証として評価される新しい文化が広がるはずです。継業キャリアは、挑戦する個人と未来を託す経営者の双方をつなぐ架け橋となり、日本の産業全体に新しい循環を生み出していくと確信しています。

【髙橋 聡 プロフィール】
アスクホールディングス株式会社代表取締役社長、中小企業庁中小 M&A ガイドライン作成委員。アクセンチュアを経てアスクホールディングス株式会社を先代から事業承継。中小企業における M&A 活性化の必要性を痛感しトランビを創業。著書に『「起業するより会社は買いなさい」サラリーマン・中小企業のためのミニ M&A のススメ』、『「会社は、廃業せずに売りなさい」後継者不在の問題は、ネットで解決!』
■タイプ別 継キャリスタイル
本プロジェクトでは継業キャリアを検討する人々の動機や目的を分析し、4 つのタイプに分類しました。「自分はどのタイプ?」を知ることで、最適な継業スタイルを見つけられます。
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000261.000027440.html
2025年8月に実施した、「現職への不満と理想のキャリア形成に関するビジネスパーソン1,000人調査」の結果をご覧いただけます。