SES業界の市場動向
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の流れを受け、企業のIT投資は活発化しており、SES(システムエンジニアリングサービス)業界の市場は堅調に推移しています。特にクラウド、AI、サイバーセキュリティといった先端技術分野での開発ニーズが高く、専門スキルを持つITエンジニアの需要は供給を上回る状況が続いています。
しかし、業界全体では深刻なIT人材不足という構造的な課題に直面しています。この人材獲得競争の激化は、企業の成長を左右する重要な要因となっており、多くの企業がエンジニアの確保と育成に注力しています。
こうした背景から、優秀なエンジニア組織を抱える企業をM&Aによって獲得し、開発体制の強化や事業領域の拡大を迅速に実現する動きが活発化しています。M&Aは、SES業界における競争優位性を確立するための有効な経営戦略として認識されています。
SES業界のM&Aのポイント
ポイント①:エンジニアの質と定着率
SES事業の企業価値は、所属するエンジニアの質と数に直結します。そのため、買収対象企業のエンジニアのスキルセット、保有資格、経験年数などを詳細に評価し、自社の事業戦略とのシナジーを見極めることが不可欠です。
特に、どの技術領域に強みを持ち、将来的な成長市場に対応できる人材がどれだけいるかが重要な判断材料となります。
加えて、エンジニアの定着率は事業の安定性を測る上で極めて重要な指標です。過去の離職率の推移やその背景を分析し、労働環境や企業文化に潜在的な問題がないかを確認することが求められます。
M&A後に主要なエンジニアが流出してしまっては意味がありません。デューデリジェンスの段階でキーパーソンを特定し、彼らのモチベーションを維持するためのリテンションプランを事前に検討しておくことが成功の鍵を握ります。
ポイント②:顧客基盤と契約内容の精査
事業の安定性を評価するためには、顧客ポートフォリオの分析が欠かせません。エンドユーザーとの直接契約の割合や、特定の顧客への売上依存度などを確認し、収益基盤のリスクを把握する必要があります。
依存度が高い場合、その一社との取引が終了するだけで業績が大きく悪化する可能性があるため、注意が必要です。
デューデリジェンスの過程では、主要顧客との基本契約書を精査し、自社が買収することで契約が解除される条項(チェンジオブコントロール条項)の有無を必ず確認しましょう。
また、SES業界特有のリスクとして、実態が偽装請負にあたらないかの確認も重要です。指揮命令系統などを契約書と実態の両面から検証し、法務上のリスクを事前に洗い出しておくことが求められます。
ポイント③:収益構造と管理体制
企業の収益性を正しく評価するため、商流における立ち位置を把握することが重要です。エンドユーザーや元請けに近いポジションで取引しているほど、利益率は高くなる傾向にあります。
エンジニア一人あたりの売上や粗利を算出し、業界水準と比較することで、その企業の収益力や価格交渉力を客観的に評価できます。
また、営業体制やエンジニアの稼働管理、勤怠管理といった管理部門の仕組みも確認すべきポイントです。これらの管理体制が非効率な場合、M&A後のPMI(統合プロセス)で改善することにより、収益性を向上させられる可能性があります。
労務デューデリジェンスにおいては、サービス残業の常態化などによる未払い賃金といった簿外債務の有無を徹底的に調査することが不可欠です。これを怠ると、買収後に想定外のコストが発生するリスクがあるため注意が必要です。
地域別売却希望平均価格
- 0円
- 1円
- 10万円以下
- 100万円以下
- 300万円以下
- 500万円以下
- 1,000万円以下
- 1,000万円〜3,000万円
- 3,000万円〜5,000万円
- 5,000万円~1億円
- 1億円~2億5,000万円
- 2億5,000万円~5億円
- 5億円〜10億円
- 10億円〜15億円
- 15億円〜20億円
- 20億円〜50億円
- 50億円〜100億円
- 100億円以上
