旅行・観光業界の市場動向
新型コロナウイルスの5類移行や円安を背景に、旅行・観光業界は急速な回復を遂げています。特にインバウンド需要は力強く回復し、訪日外国人観光客数はコロナ禍以前を上回る水準で推移しており、市場の活性化を牽引しています。
国内旅行においても、抑制されていた需要が顕在化し、観光地は賑わいを取り戻しつつあります。しかしその一方で、宿泊施設や交通機関における深刻な人手不足、燃料費や食材費の高騰が経営を圧迫する大きな課題となっています。
また、旅行者のニーズは団体旅行から個人旅行へ、モノ消費から体験を重視するコト消費へと変化しており、事業者はこれに対応したサービス開発やデジタル化の推進が求められています。このような環境下で、事業基盤の強化や新たな成長機会の創出を目指す手段として、M&Aへの関心が高まっています。
旅行・観光業界のM&Aのポイント
ポイント① 事業モデルの安定性と将来性を見極める
旅行・観光業界は、景気動向や国際情勢、感染症の流行といった外部環境の影響を受けやすい特性があります。そのため、買収対象企業の収益構造が特定の要因に過度に依存していないか、多角的な視点で確認することが重要です。
例えば、インバウンドと国内旅行の顧客比率や、団体客と個人客のバランスは適切か、という点を確認します。また、オンライン旅行会社(OTA)経由の集客に依存しすぎず、自社サイトやリピーターからの直接予約が一定の割合を占めているかは、収益の安定性を測る上で重要な指標となります。
さらに、宿泊や交通といった単一のサービスだけでなく、体験プログラムや物販など、複数の収益源を確保しているかも評価のポイントです。事業ポートフォリオを精査し、リスク耐性と将来の成長性を冷静に分析することが求められます。
ポイント② 「人材」と「許認可」という事業の根幹を精査する
旅行・観光業は、質の高いサービスを提供する「人」が競争力の源泉となる労働集約型の産業です。買収を検討する際には、支配人や料理長、特定のスキルを持つガイドなど、事業運営に不可欠なキーパーソンがM&A後も定着するかを慎重に見極める必要があります。
従業員の年齢構成や定着率、労務環境をデューデリジェンスで詳細に確認し、人材流出のリスクを事前に把握することが不可欠です。また、旅行業法や旅館業法に基づく許認可が、適切に取得・維持されているかの確認も絶対に欠かせません。
許認可の承継手続きに不備があった場合、事業の継続自体が困難になるリスクを伴います。M&Aの実行段階で、キーパーソンの処遇や許認可の円滑な引き継ぎについて、売り手と明確な合意を形成しておくことが成功の鍵となります。
ポイント③ デジタル対応力とブランド価値を評価する
現代の旅行・観光業界において、デジタル化への対応力は事業の将来性を左右する重要な要素です。予約管理や顧客管理システムの導入状況、ウェブサイトやSNSを通じたマーケティングが効果的に行われているかを確認しましょう。
デジタル化が遅れている場合でも、裏を返せば買収後にDXを推進することで、業務効率化や収益向上を実現できるポテンシャルがあると捉えることもできます。同時に、予約サイトの口コミやレビュー評価、地域社会での評判といった、目に見えないブランド価値も正しく評価する必要があります。
長年にわたって築き上げられてきた顧客からの信頼や、その施設ならではの独自の魅力は、価格競争に陥らないための強力な武器となります。こうした無形資産と自社の事業を掛け合わせることで、どのようなシナジーを生み出せるかを具体的に描くことが、M&Aを成功に導きます。
地域別売却希望平均価格
- 0円
- 1円
- 10万円以下
- 100万円以下
- 300万円以下
- 500万円以下
- 1,000万円以下
- 1,000万円〜3,000万円
- 3,000万円〜5,000万円
- 5,000万円~1億円
- 1億円~2億5,000万円
- 2億5,000万円~5億円
- 5億円〜10億円
- 10億円〜15億円
- 15億円〜20億円
- 20億円〜50億円
- 50億円〜100億円
- 100億円以上
