2018-05-16

中小企業の新しい採用戦略としてのM&A

株式会社木全商店

(本成功事例はBiglife21様の許諾を得て、一部加筆修正の上掲載しております)

採用市場が強烈な売り手市場となっている昨今、優秀な人材の獲得に西へ東へ奔走しているのは大企業だけではなく中小企業も同じ。特に、ITエンジニアの採用は至難の業となっており、多くの企業が頭を抱えている。ところが、愛知県名古屋市に一風変わった採用戦略によってこの点に成功している会社のがあるという。

「人材を集められない今だからこそ、こんなに使いやすい広告媒体はない!」と話す株式会社木全商店は中京地域で急成長を遂げているコングロマリット企業だ。

ビルオーナー業を手始めに、飲食業や同業界に特化した居抜き物件検索サイト(ぶけなび東海)、レンタルオフィス業、ソフトウェア開発業などを展開しており、代表取締役の木全雅仁さんはカリスマビルオーナーとしても名高い。そんな同社が事業拡大と人材採用に使っているのは、なんと人材サービスではなく、事業承継・M&AマッチングサイトのTRANBI(トランビ)だという。

いったい、どういったことなのか?

ゲームエンジンの会社を採用目的で買収

そのM&A案件情報が、TRANBI(トランビ)に掲載されたのは、2017年8月だった。

「シミュレーションゲームエンジン×海外×VR 事業譲渡」と題されたM&A案件は、多くの耳目を集めたという。日ごろからトランビをチェックしていた木全さんの目にも止まった。

「これだ!と思いましたよ。当時『app-me!』というITと不動産の管理アプリを開発していて、そのスタッフが欲しい、と思っていた時期でした。ただ、求人サイトに求人を出しても思うような人材を採用できなかったのです。トランビでM&A案件情報を目にしたときに、想うところがあり、そのままの勢いで売り手企業にアプローチしました。連絡を入れて、すぐに会いたいと。」

「トランビはM&A仲介会社を間に入れなくても、当事者同士で直接メッセージをやりとりすることができるので、お互いの空気感を計り合えるからいい。今回の場合も相手とは六本木のカフェで待ち合わせたのですが当日、彼はプレゼン資料をしっかり準備してきてくれて事業計画や希望売却額を30分ほど、熱心に語ってくれました。その熱量たるや凄まじいものがあって、そこまでしてくれると、もうゲームが売れるか売れまいか関係ない。彼のプレゼンを聞いている時にはもう事業を買おうと決めていました(笑)」

そこからの木全さんの行動は早かった。

売り手企業の社長と意気投合するや、自社の従業員として入社してもらい、一緒に海外展開を目指すことになったという。結果的に木全さんの目論見通りにことは運んだ。

「あんなに採用で苦労したのにあまりに一瞬で決まったので、正直トランビ様様ですよ」。

ところで、木全さんだけではなく、買い手の多くの企業がトランビの利点としてあげる「直接連絡を取り合えるダイナミックさ」とはどういったものなのか。トランビの代表を務める高橋聡社長はこう語る。

「例えばの話ですが、ペット可のマンションにテナントとしてペットサロンが入っていたら、愛好家の入居者の方に喜んでいただけるのではないかと閃いたとして、即座に事業譲渡を希望しているペットサロンを探すことができる。こういったちょっとした思いつきを即行動に移すことができるのが、事業承継・M&Aマッチングサイトならではの特長です。通常のM&A仲介会社に依頼すると、事業規模が大きくないと対応してくれなかったり、専門家の手数料が高かったり、専門家が間に入ることによって様々なコミュニケーションコストや時間的ロスが発生します。結果としてM&Aに挑むための精神的なハードルが高くなり、行動になかなか移すことができません。中小企業がもっと気軽にM&Aに挑める環境を作るためには、トランビのようなダイナミックな仕組みが必要だと考えています。」

「この圧倒的なスピード感と手軽さがイイんだ」と木全さんも語る。

しかし、話を進めていく中で不安はなかったのか?

「これが数億円規模のM&A案件ならさすがに逡巡したと思います。しかしトランビの案件の多くは1000万円〜1億円ほど。これならばリスクとしても受け入れられる範囲だと思いますし、それに売り手買い手双方が直接ネットで話しているので、会話のログ(記録)が残っている。だからお互いに段階を確認しながら話を進めることができます。」

木全社長の案件も、売り手を見つけてからアプローチ、プレゼン、支払いそして契約書類の記入などまでの全ての手続きを終えるまでに2ヶ月ほどしかかからなかったというスピード感で成約したという。

「売り手も買い手もM&Aの専門家ではないので、当初は探り合い。何度もやりとりしているうちに段々疎遠になってしまうこともあり、すべてのM&A案件で成功できるわけではない。けれども、経営者としてそういうやりとりの過程自体を楽しむぐらいの気構えを持つと楽しい。売り手も多数の買い手と交渉しているのだから、数撃てば当たるくらいの感覚でまずは使ってみるのが良い。」と木全さんは言います。

トランビを使って、人材を集める

木全社長に、トランビの存在を教えたのは、M&Aアドバイザーで株式会社経営情報センター執行役員の鷹野将和さんだという。

「私は税理士・会計士を中心としたM&Aアドバイザーが情報交換などをしている勉強会の繋がりで数年前にトランビの存在を知り、インターネットを活用した事業承継・M&Aマッチングサイトだから実現できた売り手が直接M&A案件情報を掲載できる利点に注目しました。同時に木全さんにトランビとの提携ができないかを持ちかけました。というのも、同社が運営している飲食特化型の居抜き専門サイト『ぶけなび東海』では、物件や看板だけでなく、人までをまとめて売りたいと思っている人も多いハズで、こういった選択肢があれば必ずニーズはあるはずだと思ったからです。」

木全さんはすぐにトランビの可能性に気づいたという。もともと木全商店にとって、M&Aは戦略の要だった。『ぶけなび東海』も元は1ユーザーだった。

その頃、時を同じくして、多店舗展開したいというイタリアンカフェのオーナーや弁当屋のオーナーなどにも出資するようになっていたのだという。だが、木全商店が事業ドメインを増やすにつれ、ある課題感がもたげるようになった。

「人材採用なんです。求人サイトに求人を出しても、思うような人材が集まらない。でもトランビには、もともと事業を運営するような情熱をもった人たちが何かしらの事情によって、資金を必要とし利用しているサイトです。もしかしたら、事業をM&Aすることによって、求人サイトで獲得できる人材よりも、”もう一段レベルの高い人材”と出会えるのではないか」そう思ったという。

ここから木全商店の人材確保作戦が展開されることになる。

「もちろん、既存の大手人材紹介会社を利用して人を集めるという方法もあると思うのですが、中小企業だと優秀な人材にアプローチすることは、正直、難しいです。その点M&Aであれば、チームごと引き込めるというのは大きなメリットです。また技術を持っている町工場とその技術を欲しいと思っている会社が出会う場としても丁度いいと思います。町工場の社長は大手のM&A仲介会社などには行かないので、出会うチャンスがなかなかありませんから。そういう点で、トランビは人材を確保できる絶好のサービスでもあります。廃業問題と人材不足が社会問題として取り上げられていますが、トランビを使って事業承継先を探せば、買い手としては事業も人もついてきて一挙両得なのではないでしょうか。」

「それこそ全国の企業の10%でもこのトランビを知り、活用してくれれば、事業承継に悩んだり業務拡大したいのにできない企業が少なくなり、日本の経済をもっとよくすることができると思います。事業の引き継ぎ先を探すのにトランビは有効なツールですので、今後利用者が大きく増えていくのではないでしょうか。」

【編集後記】
M&Aを駆使しながら、急成長を遂げている木全商店を見ていると、売り手市場下で人材難に喘ぐ企業各社にとって光明にも近いものを感じる。M&Aと聞くと、まだまだ企業規模の大きな会社の取り組みと、はなから選択肢に取り入れない中小経営者が多いのではないだろうか。ただ、トランビに出ている案件の価格は、求人サイトに広告出稿費を出したり、人材紹介各社に支払う一人当たりの人材獲得単価と見比べても、そうそう金額感が変わるものではない。要は百万円単位で企業や事業が気軽に買えるものもあるのである。しかも人材市場ではトンとお目にかかれない優秀な人材までくっついてくる。いやはや、木全さんのように知恵を絞り、鮮やかに課題を解決していく手腕を多くの中小経営者も学ぶべきである。