2022-11-22

「今後20年が本当の人生」68歳の塾経営者が抱く野望とは?数々の出会いが紡ぐ事業成功へのストーリー

買い手(法人):株式会社プラチナソリューション

<中小企業の事業拡大を目指したM&A・買収事例>

 

大阪府守口市にある、小中高生対象の学習塾「re:Rise study cafe(リライズ スタディ カフェ)」。2022年4月にリニューアルオープンしたばかりで、カフェのようなおしゃれな雰囲気が特徴です。 コロナ禍を背景とした人材不足や、新年度募集機会を逃したことによる売上減などから、今回の事業譲渡を決定しました。

この塾を買収したのは、学習塾とプログラミング教室を運営する株式会社プラチナソリューション。同じく大阪に拠点を構え、今後の店舗数拡大のために積極的にM&Aを活用する方針だそうです。

代表の中西輝在さんは、会社員エンジニアとしてキャリアを歩んだ後、現在では4つの会社・団体を運営しています。現在68歳という年齢でありながら、今後も事業の全国拡大、さらには株式上場を狙っていくとのこと。 インタビューを通じて、バイタリティあふれる中西さんの人生物語に迫ります。

【塾講師が突然の失踪?!残された生徒のため奮闘した経験で起業の魅力を知る】

- はじめに、中西さんご自身のこれまでのキャリアについてお聞かせください。
私は大阪大学の基礎工学部を卒業後、日立でSEとして働いていました。それから松下電器(パナソニック)へ転職し、合わせて15年ほど会社員を続けたことになります。

そして、37歳の頃にパナソニックの仲間から誘われ、4〜5人で会社を立ち上げました。ただ、徐々に方向性が合わなくなったこともあり、45〜46歳の時に完全に独立した形です。

- 会社員を辞めて起業を志した背景には、どんなものがあったのでしょう?
実は会社勤めをしていた頃に、自宅で学習塾を営む妻の手伝いをしていました。

妻自身は書道を教えていたのですが、空き日である週2~3日は別の方に教室を貸していました。ところが、その方が突然“逃げて”しまうという事態に。保護者の方から「なんとかしてください」と言われ、最初は仕方なく生徒を引き取ったんです。その後新しく先生も雇って、授業をなんとか引き継ぎました。

書道の塾生も含めると、当時生徒数は70〜80人はいたんじゃないでしょうか。手伝いとはいえ大変でしたが、この時に個人事業としての魅力を実感したんだと思います。

保護者とのコミュニケーションも評判がよかったんですよ。私はパナソニック時代、家電量販店の営業研修でもトップセールスでしたから。当時は記録も作ったので、 量販店の専務が「どんな人間やねん」と見に来て報奨をもらったこともありましたね。

面白いことには何でも興味がありますし、新しいことには全力で挑戦する。そういった精神と経験が、その後のビジネスにもつながっていると感じています。

- 起業してからは、具体的にどのような事業を手掛けてきましたか?
仲間と一緒に立ち上げた最初の会社では、ソフトの開発や、海外ソフトの日本語化などを手掛けていました。

そこから完全に独立した後は、ホームページを作ったり、車のオークションシステムを作ったりと。義理の母が占いの先生をしていたので、その鑑定補助ソフトも作りました。今振り返ると、占い分野のDXのようなものですね。

義母が用いる四柱推命では統計データを扱うので、Visual Basicでデータベースを作り、オリジナル性を加えて商品にしました。これは1台15万円でお弟子さんたちに販売したんです。 そのソフトを使えば「時短」できるので、義母はいまだに使っていますよ。

- エンジニアのスキルを活かした事業に携わってきたのですね。そこからつながる、今の事業について教えてください。
現在は、4つの事業(会社・団体)を運営しています。そのうちメインとなるのが、教育事業を手掛ける株式会社プラチナソリューション。学習塾とプログラミング教室の運営を行っていて、現在は全部で4つの教室があります。

学習塾の業界は、少子化や教育のあり方の変化を背景に、行き詰まっているところが多いんです。だから新しいものを手掛ける必要があり、その一つがAIを使ったプログラミングだと考えています。



【畑違いのビジネスで大失敗、しかし顧客との関係が新たなビジネスを呼ぶ】

- 独立してから、苦労したことはありましたか?
完全独立した後の5〜6年は、やっぱり経営的な面が大変でしたね。当時車のオークションシステムを作っていたので、車分野に事業を展開しようとしましたが、これがなかなか難しい。 システムに関する部分は得意でも、車に関する知識が浅かったからです。

知り合いに誘われて「カーコンビニ倶楽部」の一店舗を運営することになりましたが、途中でその人が辞めてしまって。立地も非常によかったので結局私が引き継ぎましたが、これはある意味売上が伸びず大失敗でした。違う領域のものはやはり難しいと改めて実感しました。

- これまでとはまったく畑違いのビジネスだったと。
はい。ただ、そこで10年近く運営したことで、たくさんのお客様ができたんです。これがまた新たな展開につながりました。

一つは、保険を販売するビジネスに広がったこと。カーコンビニ倶楽部は車のメンテナンス・修理を行うので、もともと自動車保険(損害保険)を売る必要があります。 そこに、代理店の方から「生命保険も売ってもらえませんか」という話が来るんですよ。

収益的にはそちらの方がよく、私も営業には自信と経験がありましたから、店舗運営と同時に生命保険も売ることにしました。日本一のトップセールスマンと会う機会もあって、面白かったですね。 結果的に、保険販売の収益にはとても助けられました

もう一つは、学校関係の方とつながりができたこと。通信学校の校長先生と知り合いになったんです。そこから学校に保険を売るようになり、さらには「教育事業を手伝ってもらえませんか」と言われて。 そこで会社を作り、通信学校の中に“学内塾”を経営するようになったんです。

こんなふうに、お客様とのつながりや信頼関係ができてくると、可能性が広がり、道が開けていくものですね。

- 塾の経営に携わるようになってから、プログラミングに注目した理由は何でしょうか?
実は、学内塾は運営が難しくなったので、新たな方向性を見いだすために一つ塾を買ったんです。これが最初のM&Aですね。

しかし、やっぱり黒字化できずに苦労していました。塾は生徒たちが2月に卒業するので、売上もガクンと下がります。そして4月、5月になっても、生徒数が戻らなかったんです。

その後、ある知り合いから「プログラミングも一緒にやりませんか」と提案されたんです。そこでプログラミングを導入してみると、実際にうまく回るようになってきました

- ここでも、知り合いの方からのお声がけがきっかけになったのですね。
そうですね。さらに「場所があるから塾として使ってほしい」と言われたため、プログラミング専門の教室をそこで始めました。オープンから1年ぐらい経ちますが、費用も安く、今は20人ほどの生徒さんがいます。

集客については、最初はポスティングでしたが、今はほとんどネットです。ネットに詳しい人材が1人入ってきたので、彼に一任しています。ネット広告を出すこともあるし、地域の紹介サイトに無料登録することで、集客につながっています。



【プログラミングを武器にした学習塾で、今後10年で100店舗展開】

- 最初のM&Aは「新たな方向性で」挑戦されたとのことでした。今も積極的にM&Aを続けられている理由は何でしょう?
やはり塾業界は経営に苦労しているところが多く、そこに対してAIを含めたプログラミングが一つの解決策になると考えています。だからこそM&Aというアプローチで、困っている塾を安く探したいんですね。

今運営している塾は4店舗ありますが、これから10年で100店舗まで広げたいと思っています。そのうち10店舗ぐらいはM&Aによって展開できればと。

既存の塾なら生徒さんもついているので、我々のプログラミングのノウハウを活かせば、売上を倍にすることは可能です。店舗数が増えればそれだけノウハウも増えますし、できるだけコストを抑えつつ買収していきたいと考えています。

- TRANBIでも交渉を複数申し込まれていて、これまでに2件成約されていますね。
はい。1件目は最初から40人ほど生徒がいた学習塾で、今年8月からスタートしたところです。オーナーの方もすごく真面目な印象で、その場で即決したような形でした。 11月からはプログラミングを入れる予定で、売上も大きく伸びると見込んでいます。

2件目(今回の交渉)も7月に成約しましたが、前回からすぐに挑戦できたのは、自分の中で「いける」という確信があったからですね。これまで既存の塾も、新規に立ち上げた塾も運営してきたので、どちらの経験も活きています

M&Aに挑戦する登録者数11万人以上、常時M&A案件数は2,700件以上を掲載中
「事業承継・M&Aプラットフォーム TRANBI【トランビ】」

 

- 案件を見ていく中で、交渉を申し込む基準はどんなところにありますか?
まずは、譲渡希望金額が200万円以下であること。場所と物件を見てOKであれば、前向きに検討したいと思っています。今回の案件も、譲渡希望金額150万円、生徒数4名で、規模的にも条件にマッチしました。

できれば黒字が理想ですが、前提からいえば赤字でも構いません。どこの塾も経営や集客に困っていますし、プログラミングは集客手段としても有効なんです。

例えば、校門前でプログラミング教室のチラシを生徒に配ると、10人中1人か2人は体験会に来てくれます。プログラミングは2025年から大学入試の科目に含まれるようになりますし、親御さんもかなり気にされているようです。

- 今回のM&Aで、実際に現地へ行かれた際はどういう印象でしたか?
カフェのような雰囲気で新しい魅力があると感じました。みんなで集まって自習もできるし、部屋も3〜4つあるので色々使えそうだなと。個別指導塾でしたが、集団指導にも対応できる広さはありました。

それから、小学校のすぐ目の前という立地も大きな強みだと思いました。引き継ぐ時点では生徒数が少なくても、アピールすれば十分展開できると判断したわけです。 塾長を任せる予定の担当者も一緒に行きましたが、「これはぜひ」という反応でしたね。

- 前オーナーの方からは、売却に至った経緯などは聞きましたか?
運営期間は1年半ほどだったと聞いています。コロナ禍によるスタッフの休業や退職、新年度募集の機会を逃してしまったことが大きかったようです。

前オーナーの方は現場未経験のためご苦労もあったようですが、我々ならノウハウを活かして、もっとできることがありそうだと感じました。それこそプログラミングを武器に、本気で集客をすれば改善できるはずだと。

- 他の買い手様からも申し込みが入っていたようですが、交渉の際に工夫されたことはありましたか?
いえ、もう自然に話をするだけです。先方のプレゼンを聞き、私はプログラミングのノウハウと実績を伝えるのみですね。あとは価格面での交渉になりました。

他の候補の方がいたことは知りませんでしたが、おそらく私が一番早くアプローチしたんじゃないかと。最終的には30万円で成約しましたが、譲渡金額については妥当だと思っています。

譲渡金額についてはいいのですが、仲介会社を基本的に交渉者同士の間にいれる他のM&Aサイトの場合、TRANBIと違って成功報酬の手数料が別にかかってきますよね。 それだけは避けたかったので、自分で直接売り手と交渉できるサイトとしてTRANBIを選びましたね。

- これまでのM&A交渉において、苦労されたことやトラブルはありましたか?
1件目のM&Aでは、オーナーの方と無事に交渉が成立した後に、フランチャイズ元からクレームが入ったことはありました。 もともと小規模のフランチャイズに加盟していた塾でしたが、譲渡と同時に契約を解除したものの、引き継ぎ後も駐輪場にフランチャイズ名が入った看板が残っていたんです。

結局名前を消すという形で落ち着きましたが、もし規模が大きいM&Aの場合には、売り手様にフランチャイズ契約の確認、事後対応などについて契約書で細かい設定をすることも必要かもしれません。

あとは、途中で辞退した案件も一つありました。お金に対するこだわりが強く、値段をかなり上げられてしまったんです。 オンライン面談も10人が同席したり、どなたかが車の中から参加していたりと、交渉に臨む姿勢に違和感があったのでそれ以上進めないことにしました。色々な方がいらっしゃいますから、これもまたご縁ですね。

【大事なのは全てを糧に本気の姿勢を見せ続けること】

- これまでの事業を振り返って、今思うことはどんなことでしょうか?
失敗もありましたが、色々な経験を糧にしてきたからこそ今があると思います。何事も勉強ととらえ、次にうまく活かしていくだけですね。一つひとつの学びが今につながり、新たな挑戦を生んでいくんだと思います。

私はあらゆる場面で、人との出会いがきっかけになってきました。そうしたネットワークを築いていくには、自分自身が本気で何かに取り組むこと。その姿勢を見せることで信用が生まれます。 そこから「一緒にやりたい」と手を挙げてくれたり、誰かを紹介してくれたりと、いい流れにつながるのではないでしょうか。

- 今後の目標や夢について教えてください。
教育事業については、単なる塾ではなく「これからの未来を生きる手段」を提供していきたいと考えています。 例えば、英語とプログラミングを組み合わせてみたり。我々はAI関連の会社もありますから、色々な形を模索しつつ挑戦し続けたいと思います。

そして塾を「ミライテラス」というブランドに。全国に拡大し、ゆくゆくはFC展開もいいかもしれません。今はまだ小さくても、少しずつノウハウを蓄積していきたいです。

また、プラチナソリューションは今、上場を目指しています。黒字経営を基本としていますので拡大は事業を一つずつ安定させてからです。利益はどんどん投資に回して拡大していくつもりです。

私は今68歳ですが、義母の占いによると「これから20年があなたの本当の人生」なんだとか。これまでも自分なりに頑張って、そこそこ実績を上げてきたつもりでしたが、まだまだ先があるらしいです(笑) 趣味のテニスも週3回やっていて、孫も5人いて、プライベートも充実しています。人生すべて楽しむことが大事ですね。

- 最後に、メッセージがあればお願いします。
挑戦に足踏みする人は多いと思いますが、トライすることによって新しい道は開けます。自分の力だけじゃなく、色々な人に助けてもらいながらやっていけばいいんです。 「やりきる気持ち」がいい流れを生み、新しいビジネスになってきますから。

誰でもみんな、成功するかどうかが怖いものです。その気持ちにいかに打ち勝つか。結局はそういうメンタルの部分が一番大事なのかもしれませんね。

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■プラチナソリューションさんが買収した案件はこちら

「カフェのようなお洒落な学習塾」

■プラチナソリューションさんが運営している事業はこちら

「re:Rise study cafe」

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