2024-11-19
20万円で配食サービス事業をM&A!敬遠されがちな赤字事業も、本業の顧客基盤獲得が可能と決断
買い手(法人):株式会社TNK
<中小企業の新規事業を目的としたM&A・買収事例>
- ➤ 条件は、500万円以下で経験やネットワークを活用できる案件
- ➤ 顧客層が本業ともシナジー有り。たとえ赤字のままでも、本業でカバーできる
- ➤ 純粋な右肩上がりにはなりづらいビジネス。いかに赤字の幅を小さくするか
不動産関連事業と、家屋の解体や遺品整理の営業代行などを手掛けている株式会社TNK。今回初めてM&Aに挑戦し、20万円で高齢者向け配食サービス事業を買収しました。
赤字の出ていた案件の購入を決めたのは、高齢者向け配食サービス事業の営業先が、介護事業者であったから。
なぜなら、彼らは高齢者の遺産や家に関する相談を受けることも多く、配食サービスと合わせて家屋の解体や遺品整理などの本業のサービスも案内することで、将来の受注に繋がると考えたからです。
M&Aのプロセスや、購入後の取り組みも含めて、株式会社TNK代表の田中さんにお話を伺いました。
【条件は、500万円以下で経験やネットワークを活用できる案件】
まずは- まずは、田中さんのご経歴と株式会社TNKについて教えていただけますか。
会社員時代は、大手調味料メーカーや、介護ベッドなどを扱う福祉用具メーカーの営業職として働いていました。
独立したのは今から7年ほど前、27歳のときです。高校生の頃からせどりビジネスをしていたこともあり、ずっとサラリーマンを続けるよりも独立したいという願望がもともとありました。
業界へのこだわりはなかったのですが、不動産屋の知り合いがいたので、彼から仕事を振ってもらうところから始まりました。
私が代表を務めている株式会社TNKは、不動産の賃貸や売買を手掛ける不動産業をメインとしており、並行して空き家解体や遺品整理の営業代行などの業務も請け負っています。今回のM&Aを行う前の段階で、売上は年間1,500万円ほどでした。
- どうして、M&Aに挑戦してみようと思ったのですか。
一定の資金が貯まったので、マンションなどの不動産を購入するか、新しい事業を始めようかと悩んでいました。
最近は、個人や小規模の法人でもM&Aが流行っているので、ちょっと案件を見てみるかと思って検索したところ、TRANBIでいい案件に出会って買収したという形です。
- どんな条件で案件を探していましたか。
業界は特に絞ってはいませんでしたが、ある程度自分の経験やネットワークを生かせる案件を探していました。たとえば、今回購入した案件以外だと、後継者不足で売りに出されている不動産事業の案件などは見ていました。
また、ローンを組んでまでM&Aをする気はなかったので、手持ちの現金で支払える300~500万円の価格帯で探していました。
(TNK代表の田中さん)
【顧客層が本業ともシナジー有り。たとえ赤字のままでも、本業でカバーできる】
- あらためて、今回購入された事業の概要を教えてください。
兵庫県加西市にある、高齢者向け配食サービスのフランチャイズ加盟店舗を譲渡するという案件でした。
提供しているのは、特別ではないけど飽きがこない、毎日食べられる和洋中の日替わりのお弁当です。試食もさせていただきましたが、高齢者向けでありながら、私が食べてもおいしく食べられる味の良さでした。
フランチャイズ本部から調理済みの食材が届くため、店舗で行うことは、規定量を容器に盛り付ける簡易な調理だけ。
年始以外は毎日営業しているため、天候や情勢に左右されない安定したビジネスだということをウリとされていました。お客様は、介護事業者からの紹介がメインです。
売上は100万円超、譲渡希望金額は20万円の案件でした。
- どうしてこの案件を買いたいと思ったのですか。
介護ベッドの営業をしていたので近しい業界知識を持っていたことと、本業とのシナジーが見込めると思ったからです。
というのも、お客様を紹介していただくために介護事業者に営業をかけるのですが、彼らとネットワークを築けることは大きいなと。
なぜなら、彼らは高齢者から遺産や家に関する相談を受けることも多く、配食サービス以外に、当社の本業である空き家の売買や解体、遺品整理の件で相談を貰える可能性があるからです。
複数の事業での売上や利益の向上に繋がる、潜在顧客を獲得できる点はメリットが大きいと感じました。
- どのようなポイントに気を付けて、交渉を進めていきましたか。
数字については深掘りをして、しっかり確認をさせてもらいました。決算書と合わせて、お弁当の販売価格や仕入れ価格、原価や人件費などを教えていただいて。自分で計算し直し、出してもらった数字と照らし合わせて確認をしました。
ただ、売り手様は他に事業を持っていたこともあって、事業単体の決算書はなかったため、どうしてもわかりづらい部分や売り手様を信頼するしかない部分はありました。
- そうした中でも、購入を決断できたのはどうしてですか。
まずはリスクの想定です。「実際のところは、売上がもっと低くて赤字が大きいかもしれない」と想定して計算してみたところ、それでも事業を継続していける見込みはあったので、大丈夫だろうと。
もう一つは、やはり自社の本業と相乗効果があることです。
たとえ配食事業がずっと赤字続きのままだったとしても、この事業によって獲得した新しい営業先のネットワークから、遺品整理や解体や空き家の仲介などの相談が来て売上アップに繋がれば、十分カバーできるだろうと思えたのが大きかったです。
- 売り手様が貴社に決められた、決め手は何だと思いますか?
他に2社ほど買い手候補がいたようですが、資金的な余裕があったことと、私が一定の業界知識を持っているために安心して任せられるという点が大きかったのだと思います。
(配達する田中さん)
【純粋な右肩上がりにはなりづらいビジネス。いかに赤字の幅を小さくするか】
- M&A後、新しく取り組んでいることや以前と変えたことはありますか。
売上や利益を上げるために、人件費は削減し、弁当の値上げも検討しているところです。
想定している値上げを実行したとしても、私たちの店舗がある市内の配食サービスではまだ最安値なので、売上が大きく落ちるといった影響は出ないだろうと考えています。
また、介護事業者への営業活動にも力を入れています。営業先の開拓については、売り手様があまり注力できていなかったようで、まだまだポテンシャルはあるかなと。
遺品整理などのサービスと一緒にチラシを配っているところですが、すでに反響もかなりいただいています。
- フランチャイズに加盟していますが、営業先については自分で探すというスタイルなのですね。
そうですね。調理済みの食材を提供してくれる点と店舗運営に必要なシステム利用料などはフランチャイズ加盟料に含まれていますが、営業先は自分たちで探す必要があります。
- 営業先を新規に開拓したことで、売上は上がってきていますか。
いえ、まだまだですね。10~30万の赤字が続いています。この赤字の金額は、売り手様から教えていただいた金額よりは若干大きかったものの、想定の範囲ではありました。
なぜ営業先を開拓しても売り上げがトントンかというと、高齢者向けであるゆえ、施設に入ったり、入院したりすることになって、お弁当が必要なくなったために解約になるお客様もいらっしゃるからです。
また、体調によって「この日、この週は注文しない」といったこともお客様には選んでいただけるので、夏場は「食欲がなくて食べ切れない」といった理由で休止されるお客様もいました。
こうした解約や休止がある以上、売り上げを右肩上がりでぐんぐんと伸ばし続けることはなかなか難しいと思うので、値上げや人件費の削減によって、赤字の幅を小さくしていけたらと思っています。
- 初めてのM&Aを終えられての感想を教えてください。
M&Aのプロセス自体には難しさを感じませんでした。その理由の一つは、「弁当を仕入れて売る」という単純なビジネスモデルだったからかなと。
原価と人件費と価格と販売個数を加味すれば自分で計算できるので、売上や赤字の想定がしやすく、専門家の手を借りずに購入の判断をすることができました。
あとは、資金に余裕があって、かつ近しい業界経験があることは、その案件を買う上でのアドバンテージになるなと思います。
売り手様から選ばれやすくなることはもちろんですが、特に買い取った後には赤字を黒字に転換しないといけないので、その期間を我慢できる資金力は必要ですよね。
それに、もし近しい業界での経験やネットワークがあれば、黒字に転換するための施策も打ちやすいでしょうから。
今回のM&Aには満足しているので、今の店舗が自分の手を離れても黒字で回るくらい余裕が出てきたら、また次のM&Aに挑戦しようと考えています。
(作業に取り組む田中さん②)
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