2025-12-26

【成約事例】大企業を卒業し、48歳の挑戦。「MBAより現場」で選んだ、84歳創業社長との“事業共創”M&A

合同会社LeadTheSelf Japan(買い手)


「サラリーマンがM&Aに興味を持つ人が増えていることはとてもいい傾向だと思います。ゼロからイチを作る起業と、すでに走っているビジネスを引き継いで育てるM&Aは全く別物です。おそらくサラリーマンには、後者の方が向いていると思うんです。」

そう語るのは、松木健治さん(48歳)。

かつては大企業でプロジェクトマネジメントに従事し、MBA(経営学修士)の知識も持つ彼は、2024年4月、長野県にある「次亜塩素酸水(除菌水)」のディーラーをM&Aで事業承継しました。

その後、松木さんが代表に就任してからわずか1年足らずで、会社の売り上げは前年比150%という驚異的な成長を遂げました。

なぜ、彼はあえて馴染みのないニッチな事業を選んだのか。そして、84歳になる前オーナー(現・顧問)といかにして信頼関係を築き、事業を拡大させたのか。

「会社は有限責任。命までは取られない」と笑って話す松木さんに、小規模M&Aのリアルと、その醍醐味について伺いました。
 

【この先、会社にしがみつく自分の姿を想像したら怖くなった】

――まず、松木さんのキャリアについて教えてください。

私は大学を出て大手私鉄会社に入社しました。そこから20年以上勤めている中で、MBAを取得したり、自分のコミュニティを作ったり、会社員としては充実して過ごしていました。

ただ、2020年のコロナ禍で、ものすごい危機感を感じたんです。

コロナ禍のような大きな出来事って100年に1回は起こると言われたりしますが、よくよく考えると、10年に1回くらいのペースで起きているなと。このまま定年までいたら、あと2回も起きるじゃん!と思いまして。

そうだとしたら、そういった変化が起きた時にいかに前向きに受け入れるか、言い方を選ばなければ、おもしろがっていろんな変化を楽しみたいと思ったんです。

けど、もしこのまま会社員として50代を過ごしていたら、この大企業にしがみつく自分が思い浮かんでしまいました。その姿がとてつもなく、恐ろしく背筋が凍る感覚があり、それがモチベーションとなって退職し、合同会社LeadTheSelf Japanを立ち上げました。

この会社では、主に自分の経験を活かしてプロジェクトマネジメントやコンサルなどを受けてやっています。

 

【条件は「在庫を持たない」「場所に縛られない」。M&Aで"構造"を買うという戦略】

――まずは、今回M&Aで取得された事業について教えてください。

私が会社員を卒業して立ち上げた合同会社LeadTheSelf JapanでM&Aを行い、現在は『有限会社オーク販売』という会社の代表も務めています。

この会社は、次亜塩素酸水という、空気や機械等の消毒や消臭を行う水を作ったり、その生成機械をメーカーから仕入れて販売したり、販売先でのメンテナンス対応をしている会社です。

主には化粧品メーカーの工場から一般の家庭に至るまで幅広くお取引いただいております。

――松木さんは元々、大手インフラ企業のご出身とのことですが、全く畑違いの事業に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

正直に言うと、最初から『次亜塩素酸水』に強い情熱や愛情があったわけではないんです。

今回のM&A検討にあたって軸にしていたのは、「在庫をあまり持たないこと」「ロケーション(場所)に縛られないこと」でした。

元々は民泊やレンタルスペースなど、さまざまな事業を2021年頃から検討していました。いくつものプラットフォームを見ていく中で、TRANBIのコミュニティで会話していた時に、こんな案件もありますよ、と紹介されたのが、この会社だったんです。

――商品の魅力ではなく、ビジネスモデルや条件面から入ったということでしょうか?

そうですね。M&Aの最大のメリットは、すでに一定のお客様がいて、売り上げが見込める状態でスタートできることです。

今回は、営業して受注してから、仕入れ先に発注をかけることができるので在庫を持つ必要がありません。また、販売した後もメンテナンスや機器を利用する際にランニングで使う液剤の販売も可能です。さらに、BtoB(法人向け)で安定した顧客基盤があり、クロスセル(関連商品の販売)で事業を厚くしていける可能性もあります。そうした「事業の構造」自体に魅力を感じました。

もちろん、商品自体に愛情があるに越したことはないですが、必須ではないと私は思っています。それよりも、その商品が工場や医療施設などで使われ、確かに誰かの役に立っているという「手触り感」があること、社会に貢献している実感を持てることの方が、私にとっては重要でした。

殺菌水

(HPより抜粋:次亜塩素酸水の活用シーン)
 

【84歳の前オーナーとの"親子"のような喧嘩と、150%成長の裏側】

――実際に交渉はどのように進んだのですか?

「2023年の10月頃から交渉を始めて、実際に買収したのは2024年の4月です。

TRANBIを通じてメッセージのやり取りをし、実際に会ってからは2週間に1回くらいの頻度で面談を重ねました。

相手は84歳になる創業オーナーなんですが、返信のレスポンスが早かったり、話し合いをするのにわざわざ渋谷まできてくださいました。結果的に、話が具体的に進んだりと、非常に波長が合いました。彼も4年ほど後継者を探していて、「そろそろ決めたい」というタイミングだったのも良かったのかもしれません。」

――M&A後、前オーナーとの関係はどうなりましたか? 一般的には引き継ぎ期間が終われば関係が切れることも多いですが。

「うちは全く逆で、今もめちゃくちゃ一緒に働いています(笑)。関係性は「すごく良い」と私は勝手に思っていますが、しょっちゅう喧嘩もしますよ。

「言った・言わない」の話や、仕事の進め方の違いでぶつかることもあります。でも、一度喧嘩をして腹を割って話すと、その分だけ仲良くなる。そんなことを繰り返しているので、感覚としてはもう「おじいちゃん」あるいは「お父さん」と一緒に仕事をしているような感じです。

実は交渉時から父のような存在として感じてはいたのですが、まだ息子のようには思ってもらえてませんね(笑)。

――84歳のベテラン経営者と、48歳の元大手企業の事業責任者。価値観の衝突はありませんでしたか?

ありますよ。やっぱり30年一人でやってきた自負がある方なので。「現金が何より重要」という感覚や、どんな状況でも泥臭い営業をかける姿勢など、今の僕たちの価値観からすると「時代錯誤だな」と思うことも正直あります。

でも、その「覚悟」が違うんですよね。

スマートな言葉で人を動かそうとするサラリーマン的な社長よりも、泥臭くても必死に商売をする彼の方が、よほど経営者として尊敬できるし、学ぶことが多いです。

――その前オーナーとの連携が、業績アップにつながったのでしょうか?

まさにそうです。昨年の決算は前年比150%くらいの売り上げで終えることができました。

これは僕の手柄というより、前オーナーの「ラッキーパンチ」みたいなものです。

事業承継のタイミングって、前オーナーは孤独を抱えていたり、会社自体のやる気が削がれてスピード感が落ちていたりすることが多いんです。そこに、僕のような(彼からすれば)若造が入ってきて、新しいチームができる。すると、おじいちゃん(前オーナー)も「もう一回やってやるか!」とやる気になるんですよ。

彼が働きやすいように僕が頑張り、彼がどんどん外で営業する。そうすることで商売が回り出し、結果として売り上げが跳ね上がりました。

今は、彼が元気なうちはできる限り働いていただく前提で、名誉顧問のような形で自由に動いてもらいつつ、僕たちが組織として会社を回せるように体制を整えている最中です。
HP
(刷新したホームページ)
 

【「MBA」より「M&A」。サラリーマンこそ、崖から飛んでみるべき理由】

――松木さんはMBAも取得されていますが、MBAで得た知識や経験が生きているのでしょうか?

MBAでファイナンスやアカウンティングの基礎は学びましたが、実際に会社を買って回す経験の方が、成長度は段違いですね。

サラリーマン時代は、自分の得意なことや好きなことだけをやっていてもなんとかなりました。でも、事業承継をしてビジネスの仕組みをごっそり引き受けた後は、人の面倒も見なきゃいけないし、知らない世界のことも勉強しなきゃいけない。

「自分の都合」ではなく、「相手(取引先や従業員)の都合」や「商売の継続性」を考えて誠実な判断をする。48歳にして、ようやく少し「いい人」になれた気がします(笑)。

――M&Aに興味はあるけれど、怖くて一歩踏み出せない人にアドバイスはありますか?

難しく考えずに、『とりあえず飛んでみて』とお伝えしたいですね。

会社は法人ですから「有限責任」です。失敗したとしても、資本金の範囲で責任を取ればいいだけで、別に命まで取られるわけじゃありません。

崖から飛び降りてみて、初めて「あ、意外と低かったな」とか「高かったな」とわかる。飛んでやってみないと何もわかりません。

とくにサラリーマンの方は、ゼロから新しいビジネスモデルを作る「0→1」よりも、すでにあるビジネスを「1→10」にする方が向いていると思うんです。会社員って基本的に業務内容は今あるビジネスの拡大なので、形あるビジネスの方が伸ばし方も見つけやすいんじゃないかと。

TRANBIのようなプラットフォームを使えば、数百万〜1000万円以下の案件もたくさんあります。まずは小さくてもいいから、自分でリスクを取って「商売の構造」を買ってみる。その経験は、会社員として働き続けるとしても、独立するとしても、何者にも代えがたい資産になるはずです。

CEOとCIO
(CEO松木さんとCIO佐々木さん)

 

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「拠点エリア不問!営業力が活かせる【衛生関連機器の販売・メンテナンス会社】の譲渡」

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「オーク販売株式会社」

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