2026-01-05
脱サラリーマンの実業家が実践した「共同出資×近距離」の非連続成長を目指したM&Aとは?
オーク販売株式会社 松木健治さん(買い手)|ワイン酒場ハレノヒ 石田恒平さん(売り手)
【成約事例】脱サラリーマンの実業家が実践した「共同出資×近距離」の非連続成長を目指したM&Aとは?
(左)松木さん (右)石田さん
前職は大手鉄道会社。コロナ禍をきっかけに退職し独立。その後、高齢オーナーの事業をM&Aした合同会社Lead The Self Japan(リード・ザ・セルフジャパン)及びオーク販売株式会社 代表の松木健治さん。
今回、松木さんが2回目のM&Aとして選んだのは、全く未経験の「飲食店事業」でした。仲間2人と共同出資を行い、神奈川県郊外のBarを引き継ぐという新たな挑戦。
なぜ異業種へ進出したのか? 共同出資のメリットとは? 買い手の松木さんと、売り手の石田さん双方にお話を伺い、成約に至った背景とこれからの展望に迫ります。
- ➤ 条件は絞りすぎず、「投資回収」の可能性で判断
- ➤ 買い手の決め手は「信頼できる」という確信。ともに成長を目指す関係に
- ➤ M&A経験と「共同出資スキーム」で成功確率を上げる
- ➤ 未経験領域から学び、趣味と実利を兼ねる
【条件は絞りすぎず、「投資回収」の可能性で判断】
――今回はどのような背景でM&Aを考えていたのでしょうか?
松木さん:
私の会社(リードザセルフジャパン)では、主にプロジェクトマネジメントやコンサルティングといった、いわゆるクライアントワークをメインに行っています。
これらは楽しい仕事なのですが、プロジェクトが終われば、そこで仕事が終わり、手元には何も残りません。そのような仕事を続けている中で、ビジネスとしての構造がある事業をやりたいと考えるようになりました。
本業がそれなりに忙しいため、ゼロイチの起業をするようなワークロードがさけず、だとしたら、M&Aが有効な手段だと考えました。
今回は、特定の業種にはこだわらず、「キャッシュが回っているか」「投資回収の可能性があるか」を判断基準として案件探しをしていました。
――御社の本業とも、前回買収された事業とも異なる飲食業のこの案件に決めた理由を教えてください。
松木さん:
本当にたまたまなのですが、自宅から近かったことが大きな理由です(笑)。
店舗ビジネスをするなら、通える・駆けつけられる距離感が重要だと思っていました。TRANBIを見ていたらエリア的に関心を持ち、交渉を開始しました。
交渉をはじめてすぐ、お店に行きました。百聞は一見に如かずではないですが、まずは現地を見ないと本気で検討ができないと私は考えています。
その後、収益面も教えてもらい、課題はありつつも新しい挑戦により改善の可能性を感じましたので前向きに検討することにしました。
【買い手の決め手は「信頼できる」という確信。ともに成長を目指す関係に】

(店舗外観)
――ここからは売り手の石田様にもご質問させていただきます。この事業を始めた経緯や、譲渡に至った背景を教えてください。
石田さん:
私はこのビルの2階でイタリアンのお店を9年以上やっていまして、今回譲渡したBarはその下の階(1階)で2年前にオープンした店舗です。
こういった飲食店を始めたのは、かつて学生時代にアルバイトをしていたお店のオーナーさんにとても良くしていただき、「いつか自分も自分の店を出して、お客さんと話せたらいいな」と考えていたのが原点です。数年間の修行を経て独立し、地元であるこの地に店を構えました。
その後、お客様のニーズもあるだろうと思い1階にBarをオープンしたのですが、同じビルとはいえ、一人で2店舗を運営するのに限界が来てしまって……。
そこで今回はBarの方を譲渡しようと思い、TRANBIなどプラットフォームに掲載しました。内装もこだわって作ったお店なので、そのままスケルトン(解体)にしてしまうのはもったいない、という思いが強かったですね。
――複数の買い手候補がいらっしゃる中で、松木さんに譲渡を決めた理由は何でしたか?
石田さん:
いくつかのプラットフォームで相手探しをしたところ、予想以上に反応が良く、数人の方とお会いしました。
その中で、松木さんは色々なことを相談に乗ってくれました。まだ、松木さんに譲渡することを決めてない中で、譲渡を進める上での気をつけるべきところなどを教えてくれました。こうしたやりとりの中で「すごく信頼できる人だな」と安心でき、この人になら任せられると思って決めました。
今後も同じビルの1階と2階で営業する仲になるので、一緒に集客をするなどして、このビル全体を盛り上げていけると感じています。
――今後はどんな連携を想定しているのでしょうか?
松木さん:
今回、Barのリニューアルに合わせてチラシを作って配っているのですが、片面だけで十分だったので、もう片面は石田さんに相談して、石田さんのお店の案内を入れました。
他にも、Barなのでフードメニューがどうしても少なくなってしまいがちです。冷菜はある程度対応できても、温かい料理の提供が難しい。そこで、Barのお客様が2階のお店のパスタを注文できるようにするといった連携も試しているところです。
【M&A経験と「共同出資スキーム」で成功確率を上げる】

(イメージ画像)
――松木さんとしては2回目のM&Aとなりましたが、1回目での経験が活きたのでしょうか?
松木さん:
業種もオーナーのタイプも全く違うので、前回の知見が全て役に立ったとは言えませんが、やはり「流れ」や「やるべきこと」が見えているので、1回目とは全く違いましたね。
前回から特に活きたのは、「仲間との共同出資」という経験です。
今回も同様のスタイルを取りました。何人かで少額ずつ出し合って挑戦することで、リスクを低減できるのはもちろんですが、仲間と事業についてディスカッションすることで、一人では見えない視点が得られたり、より良いアイデアが生まれたりするメリットを強く感じています。
――仲間の方と一緒にM&Aをすることについてさらに詳しく教えてください。
松木さん:
スモールM&Aの最大のハードルは「資金」と「恐怖心」だと感じています。
今回の譲渡金額や保証金、一部の改修費などの初期費用は数百万円規模になりました。
これを私一人で背負うとなると、もし失敗した時には結構な痛手ですし、二の足を踏んでしまうのは仕方がないかなと感じます。
ただ、今回は信頼できる仲間と等分に出資しました。これなら、仮に事業がうまくいかなくて事業を失ったとしても、「高い勉強代だったね」と笑って酒を飲める範囲です。
仲間と一緒に「致命傷にならない範囲でリスクをとる」ということが一般的になれば、同世代のM&A実践予備軍のみなさんも、もっと思い切りよく進めるんじゃないかと考えています。
――共同出資というと「揉めるのではないか」という懸念もありますが、その点はどう対策されていますか?
松木さん:
想定できるトラブルは、できる限り回避策を打っています。僕たちのやり方としては「事業オーナー(CEO)」を決めます。今回で言えば僕です。
遠慮なく意見し合うことはいいこと。でも、何ごもと決められないと進まないので「最終判断は誰がするか」ということを決めるイメージです。
「誰が決めるか」というルールも決めておくことで、安心して議論をして・任せ合うことができています。実際、前回・今回の共同出資メンバーともこれまで問題は起きていません。
あと、共同出資をすると出資者間で役割分担ができます。
例えば、許認可上、深夜12時以降に営業する場合は別途申請が必要なのですが、それは他のメンバーに申請を進めてもらっています。こうした実務も、普通の会社員ではなかなか経験できないことなので、とっても良い経験になりますよね。
僕も他のメンバーも本業を持っていますから、一人では絶対に現場は回りません。ですが、3人で分担し、強みを掛け合わせることで、専業のオーナーにも負けない運営体制を作れると考えています。
【未経験領域から学び、趣味と実利を兼ねる】

(BARで提供している季節のフルーツカクテル)
――2回目のM&Aを実施し、改めてこれからM&Aを検討している方にメッセージをお願いします。
松木さん:
僕は今回、未経験の飲食店に飛び込みました。正直、驚くことも少なくありません。
お店にはしっかり常連さんがいて、内装も綺麗で、スタッフさんにも恵まれています。
一方で、お金周りの管理については、大企業のようなきっちりした管理会計とは程遠いのがスモールビジネスの現状です。それは「適当にやっている」わけではなく、単にやり方を知らなかったり、運営が忙しくて対応できていなかったりするだけなんですよね。
飲食の経験がなくても、会計周りのことが分かっていれば、数字から改善点を見つけて提案することができます。
こうした「経験を活かす領域」は誰にでもあるし、しっかり活かして価値を出していければ、自分にとっての挑戦と事業改善を実践する「趣味と実利を兼ねた」取り組みにできる気がしています。
「自分にできることがあるのだろうか」と不安に思う方もいるかもしれませんが、真面目に働いてきた方には絶対にスモールビジネスに生かせる知見があります。
ただ、その内容と価値に気づくには、未経験の領域にトライし、失敗を重ねながら手触り感を高めていくしかありません。だからこそ、失敗しても致命傷にならない範囲を見定め、一歩踏み出してみることをおすすめします。
僕は、今後5年を目処に20個くらい事業を買えたら楽しいなと思っています(笑)。もしいい案件があったら教えてください。そして、一緒に挑戦しましょう!
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松木さんが運営する「Whiskey &Fruit Cocktail Bar Lamp. 」
石田さんが運営する「ワイン酒場 ハレノヒ」
今回対象となった案件:
【内装綺麗】県央地区/オープン2年のバー/最寄駅徒歩5分/屋号、SNS譲渡可/ワンオペ営業可
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