2026-02-17
「パンもあったらいいな」お客様の声から実現したM&A。大企業が実施した明確な目的を持った小規模M&A
買い手(法人):A社代表佐藤さん(仮名)| 売り手(代理人):アルチザンターブル 大場さん

- ➤ お客様の声から生まれたM&Aニーズ。明確な目的で約2ヶ月のスピード成約
- ➤ お客様志向の社風が事業拡大を実現。M&A後は働きやすい環境づくりに注力
- ➤ M&Aは買った後が大変!だからこそ覚悟を持ってまずは挑戦を
- ➤ ベーカリー専門家が語る、業界特化型M&A支援の強みと今後の可能性
本業は不動産関連事業を運営するA社。今回は5回目となるM&Aを実施。従業員が1000人を超える大企業です。そんな大企業がまちの小さなベーカリーをM&Aし、1年が経ちました。
「M&Aはやはり大変です」と穏やかにお話くださったのはA社の2代目で現代表の佐藤さん(仮名)。カフェ事業を展開する中でお客様から寄せられた「パンも食べたい」という声に応えるため、製パンのノウハウを手に入れることを目的にM&Aを決断しました。
約2ヶ月というスピード成約の背景には、明確な目的設定と豊富なM&A経験がありました。しかし、M&A後は職人の退職や長時間労働の改善など、様々な課題に直面したといいます。
佐藤さんには今回のM&Aの背景や同社の事業と向き合う姿勢について、また売り手の代理人だった(株)アルチザンターブル代表大場さんにもベーカリー事業についてお話を伺いました。
【お客様の声から生まれたM&Aニーズ。明確な目的で約2ヶ月のスピード成約】
- 今回のベーカリーのM&Aの背景について教えてください。
当社の本業は、飲食ではなく、不動産関連の事業を営んでいます。一見多角化のように見えるかもしれませんが、実は弊社のお客様からのご要望でカフェ運営もしています。
カフェはオフィス街に数店舗ありまして、こだわりのコーヒーと焼き菓子などを提供してきました。その中でまた、カフェのお客様からパンなどの食事もあったらいいなというお声を頂戴したんです。
コスト面を考えてもパン製造を内製化したいと思い、今回ベーカリー事業をM&Aしようと案件を探し始めておりました。ただ、飲食事業には知見がありません。そのため、ノウハウも同時に入手していく必要があるので今回はM&Aを選びました。
- 最初の交渉から約2ヶ月程度で成約されていますが、どうしてそんなに早くご決断できたのでしょうか。
このM&Aの目的は明確で、「製パンのノウハウを手に入れること」「パン事業を内製化すること」でした。なので、財務状況等はそこまで重要ではなく、どちらかというと、ちょっと他と違う魅力があったり、エリアとしてカフェなどと近しいところであるということがポイントになりました。
実際、このベーカリーの立地は問題なく、地域で高い評価を得ていたこと、他店との差別化ポイントがはっきりしていたことなどがあり、決断するのに時間はかかりませんでした。
財務状況もシンプルだったことも、早期に決断できたポイントになりました。
何より、今回ベーカリーを運営していたオーナーさんのお考えや人柄もとても素敵だったので、ぜひ承継したいと考えるようになっていました。
- M&A経験が多数あられるんですね。
そうですね。過去5回ほど実施しています。案件によって専門家に依頼したりしますが、今回は、私の方で案件を探し、売り手さんや売り手さんの依頼している代理人の方と交渉を進めました。私の方で特段専門家に依頼することはありませんでした。というのも、過去の経験に加えて規模がそこまで大きくなかったので。
無論、社内のコンセンサスは重要ですので、ある程度話を進めた上で役員会にかけてM&Aの実行を決定しました。
【お客様志向の社風が事業拡大を実現。M&A後は働きやすい環境づくりに注力】
- 先ほど冒頭で、今回はお客様のご要望から始まったM&Aとお伺いしましたが、お客様のニーズに応えるというのは御社の社風というところでしょうか。
そうですね。私は父である先代から継いで現在代表をやっていますが、先代の頃から、お客様の声や要望に応える形で事業を立ち上げ会社を大きくしてきました。結果私の代で従業員は1000名を超えました。
自社で発案して新規事業を立ち上げることはほぼなく、お客様のお声から広げていく。これが弊社のモットーです。結果的に先代から承継して私の代になってからさらに事業を拡大できております。これからもこの方針で進めていくつもりです。
冒頭お話ししたように、本業のお客様の声でカフェをはじめ、今度はカフェのお客様の声からベーカリー事業に進出することを決め、案件探しをしておりました。
- M&A後1年が経ちましたが大変だったことや現状はどんな様子なのか教えてください。
今回、この案件が譲渡にでた背景として、売り手だったオーナーは飲食店とこのベーカリーを運営していました。しかし、ベーカリー事業のパン職人が退職するということで事業継続が難しくなり譲渡を決意されたとのことでした。
オーナーが代わったら、もしかしたら継続して働いてくれるかも、と期待もしましたが、実際はM&A後数ヶ月で退職されました。
他のM&Aでもそうですが、買収後がやはり大変で、これは案件の規模関係なく、大変ですね。今回は売り手様の代理人をしていたアルチザンターブル社が人材紹介もやっていたので、職人を紹介してもらって無事に事業を継続して運営しています。
労務管理面について、こちらのベーカリーはしっかり1から生地を作るこだわりを持っていましたので、どうしても長時間労働になりがちです。ただでさえ飲食店は拘束時間が長くなってしまいます。当社の仲間になっていただくからには今後はこうした長時間労働は、いろんな効率化や工夫をして解決していく必要があり、それに取り組んできました。
今は当社が運営するカフェを中心としてパンの卸業に舵を切っています。時々焼き菓子やパンを小売りするときもありますが、メインは飲食店等へのパン卸業となってきています。
【M&Aは買った後が大変!だからこそ覚悟を持ってまずは挑戦を】
- これからM&Aを検討する法人の方に向けてメッセージをお願いします。
M&Aは買って終わりではなく、買った後が一番大変です。正直、片手間でやるには厳しいものがあります。
もしM&Aをしてがっつり入り込み事業運営を考えているのであれば1日も早くM&Aをするべきだと思います。一方で、そこまでコミットできない状況でM&Aを考えているとしたら考えを改めた方がいいかもしれません。
今回も小規模なM&Aでしたが、M&A後は非常に苦労しました。M&Aはとても有効な手段ですがそれなりの覚悟も必要です。その上で、ぜひ挑戦されてみてはどうでしょうか。
【ベーカリー専門家が語る、業界特化型M&A支援の強みと今後の可能性】
ここからは、本案件を売り手様の代理として仲介された株式会社アルチザンターブル大場さんにお話を伺います。
- 貴社について教えてください。
当社は、ベーカリーのコンサルティングやプロデュース、開業支援をしています。その一環でベーカリーに特化したM&A支援をやっております。
また当社の特徴としてメンバーが全員元パン職人ということです。
オーナーさんと同じ目線でお話ができ信頼をいただいていることも多いです。
また、譲渡する際も、こんなポイントを改善したらもっとよくなるかもしれないというアドバイスができるのも強みですね。
- 今回、職人の方のご紹介もされたとのことですが。
はい、実はパン職人の人材紹介もやっています。弊社の強みはベーカリー業界に深い知見と人脈があることです。
各メンバーが持つネットワークから弊社のことが知られるようになり、さらに紹介で知られるようになりと、ベーカリー関連の人材に多数リーチできる状況になっています。
- M&Aをする場合に、人材問題は大きな課題になりがちですがそれは心強いですね。
そうですね、人材だけでなく、事業運営のアドバイスも可能です。
PMIというと少し違うのですが、事業を継続し伸ばしていくにあたって、弊社で持ち合わせたノウハウを提供できることは大きな強みになっています。
譲渡の相談をしてくださる方もいますが、事業の状況を見て、まだ伸ばせる余地があると言う場合などは、今は譲渡されない方がいいという助言をすることもあります。
正直、パン屋さんって大儲けできる事業ではありません。実直に事業運営をしたいと考える方が買い手さんとして手をあげてくださいます。なので良いマッチングができる傾向にあると考えています。
自分自身もパン屋をM&Aで譲り受け、その後譲渡しました。最初は月商数十万円のパン屋でしたが、頑張って売上を上げ、店舗数を増やし事業を大きくすることができました。
あるとき、譲渡すると決め、譲渡をしたのですが、結果的に店舗は縮小してしまっていました。その寂しさというか、経験からこうしたパン事業の支援をしたいと思うようになりまして。
- 今回の佐藤さんの事例をどのようにサポートされたのでしょうか?
今回のケースでは、単純に「事業を引き継ぐ」というだけでなく、どうすればこのお店が無理なく続いていくかを一緒に考えるところから入りました。
具体的には、まず製造体制の整理です。
佐藤様はカフェ事業をメインで考えられていたため、パン製造をすべて内製で行うのは負担が大きい状況でした。そこで、弊社のネットワークから経験のあるパン職人を手配し、製造を安定させる体制づくりをサポートしました。
また、カフェ事業との連携も重要なポイントでした。
「どんなパンならカフェと相性がいいのか」「オペレーションを複雑にしすぎない商品構成は何か」といった点を一緒に整理し、無理なく提供できる形に落とし込んでいきました。
M&A後に"理想はあるけど現場が回らない"という状態にならないよう、現実的な運営ラインを一緒につくることを意識してサポートしています。
- M&Aをサポートされる中で今回実現したM&Aの可能性をどう見ていらっしゃいますか?
今回のM&Aは、今後のベーカリー業界を考えるうえで、とても象徴的な事例だと感じています。
これまでのベーカリーM&Aは、「完全に事業として拡大したい人」が中心でしたが、最近は
・カフェやレストランと組み合わせたい
・地域に根ざしたお店を続けたい
・規模は大きくしなくても、無理なく運営したい
といった価値観の買い手様が増えています。
先ほどもお話しした通り、パン屋は派手に利益が出る事業ではありませんが、想いを持った人が引き継ぐことで、形を変えながら生き続けることができる事業だと思っています。
今回のように、「パン屋 × カフェ」「製造 × 運営を分ける」といった柔軟な発想があれば、M&Aの選択肢はまだまだ広がっていくと感じています。
- 最後にベーカリー事業のM&Aを考えている方に一言お願いします!
ベーカリーのM&Aは、「やめるための手段」ではなく、想いを次につなぐための選択肢だと思っています。
「体力的にきつくなってきた」
「後継者がいない」
「このまま続けていいのか迷っている」
そんな段階でも、早すぎる相談ということはありません。
むしろ、少し余力があるうちに相談していただいた方が、できる選択肢は多くなります。私たちは、必ずしも"譲渡ありき"で話を進めることはありません。
まだ続けた方がいい、改善すればよくなる、そう判断した場合は正直にお伝えします。
パン屋をやってきたからこそわかることがあります。一人で悩まず、ぜひ一度ご相談いただけたら嬉しいですね。
アルチザンターブル社様ご紹介
https://bakerybiz-ma.artisantbl.com/
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(写真は全てイメージです)