2026-09-15
1人会社の社長がEC事業を4件連続買収!総額8,250万円のM&Aで実践した「追加コストなく横に広げる」横展開モデル
買い手(法人):田中さん

もともと医療機関向けソフトの販売・保守をほぼ1人で手がけてきた田中さん。2023年に資金の余裕ができたことをきっかけにTRANBIで案件を探し始め、約2年半でEC事業を4件、総額8,250万円で買収してきました。
1件目は、楽天市場などの大手ECモールで女性用下着などを販売する福岡の会社(2024年2月・株式譲渡)。2件目は、広島の雑貨・文具のネットショップ(2024年11月)。3件目は、東京の競馬コレクターズアイテム販売業(2025年9月)。そして4件目が、直近2026年7月に事業譲渡で買収した広島の着物ECです。
1件目の福岡の会社を拠点に、発送などの共通業務を横展開するかたちで取扱商品を広げてきた一方、まだ売上にはあまり貢献できていないと振り返る案件もあります。安さ勝負の下着ECを品質重視に切り替えた立て直し、着物ECの希望価格3,500万円を在庫相当の2,200万円まで交渉したプロセス、そして「なぜ売るのか、聞きにくいこともしっかり聞く」という基準まで、ECのM&Aのリアルを伺いました。
| 直近の成約案件概要 | 案件名 | 【運営20年】年商5,500万の老舗EC通販3店舗を譲渡!簿価在庫2,000万付!早期希望!! |
|---|---|---|
| 売上高 ※案件掲載時点での直近期 |
5,000万円〜7,500万円(2025年度) | |
| 成約者様概要 | 属性 | 法人・買い手 (EC事業は2024年にM&Aで参入) |
| M&A経験 | TRANBI経由で4件目 | |
| 初オファー〜成約までの期間 | 約1ヶ月 |
- ➤ 1人で続けてきたソフト事業から「別の方向」へ。1件目・福岡の下着ECの決め手は「売上不振ではない売却理由」
- ➤ レビューを地道に直して1件目・福岡の下着ECを立て直す
- ➤ 2件目・広島の雑貨文具ECの学びを経て、3件目・東京の競馬グッズ会社はSNSとコラボで主力商品の売上を倍に
- ➤ 4件目・広島の着物EC。希望3,500万円を在庫相当の2,200万円に交渉し、閉店していた店を業務委託で早期再開
- ➤ 「ほったらかしで儲かるなら、なぜ売る?」EC事業のM&Aを検討する人へのアドバイス
【1人で続けてきたソフト事業から「別の方向」へ。1件目・福岡の下着ECの決め手は「売上不振ではない売却理由」】
ーーTRANBIで4件のご成約、本当におめでとうございます。まずは、M&Aを始められる前のご事業について教えていただけますか?
田中さん:
ありがとうございます。もともとは、医療機関向けの電子カルテなどのソフトの販売と保守を、ほぼ1人でやってきた会社です。介護事業も手がけていますが、これは同級生が続けられなくなったというので引き継いだものです。
ーー1件目の福岡のEC事業が初めてのM&Aだったのですね。事業を買おうと思われた背景は何だったのでしょうか?
田中さん:
2023年頃に資金的に余裕ができたので、何か拡大しようかと考えたのがきっかけです。ただ、もともとの事業はほぼ自分1人で回してきたもので、これ以上大きくするのは大変だなと。それなら別の方向に目を向けようと、TRANBIでいろいろ探し始めました。特にECに限ってはおらず、最初にお話を聞いたのは2023年の夏頃で、自動販売機を置いた無人店舗のような案件でした。そこから半年ほどかけて見ていって、福岡の案件で成約に至りました。
ーー1件目の福岡の会社は、楽天市場などの大手ECモールで女性用下着などを販売する会社でした。この案件が決め手となったポイントは何だったのでしょうか?
田中さん:
様々な案件の売り手様とお話をしていくと、やっぱり「売る」ということには、それなりの理由があって売られているんですよね。そのなかで一番多いのが「売上が出ないから売る」というケースです。
福岡の案件は、ご家族の事情で前の代表の方が仕事の第一線を退きたい、ということだったので、売上が下がっているから売る、という案件ではなかったんです。

(田中さんが初めて買収した下着・日用品ECサイト)
【レビューを地道に直して1件目・福岡の下着ECを立て直す】
ーー 福岡の下着ECを引き継いだ時点の状態と、その後の立て直しについて教えてください。
田中さん:
前の代表の方が縮小方向に舵を切っていたので、引き継いだ時点では下降傾向にありました。従業員は3名で、そこから1人増やして今に至ります。
もともと中国からの輸入をメインにしたECで、楽天市場のなかでも低価格帯路線だったんです。そこを見直して、原価が多少高くなっても、品質がある程度担保される商品に切り替えていきました。
ーー具体的には、どのような改良をされたのでしょうか?
田中さん:
例えば、この会社で一番売れていたのは女性用の下着でした。上下のセット商品で、上はいろんなサイズがあるのに下はワンサイズしかなく、体型の大きな方だと下は捨てるだけになってしまう。そこを下も2サイズ展開にして、上下そろえて買えるように変えました。コストはかかりましたが、一定の品質は保てるように変えていった形です。
ーー初めてのECで路線をここまで変えていけたのは、何かコツがあったのでしょうか?
田中さん:
やっぱりお客様のレビューなんですよね。レビューに書かれることはある程度決まっているので、そこを地道に改善していく。不具合の多い商品は、あえて取り扱いをやめてみたりもしました。以前はかなり問い合わせや交換対応もあったようですが、従業員とも相談しながら改善できたおかげで今はかなり減っています。
【2件目・広島の雑貨文具EC(110万円)の学びを経て、3件目・東京の競馬グッズ会社(950万円)はSNSとコラボで主力商品の売上を倍に】
(画像はイメージです)
ーー2件目に、広島の雑貨・文具のネットショップを買われています。こちらはどのような狙いだったのでしょうか?
田中さん:
1件目の福岡の会社に余力があったんです。3人いて発送などもまだできるなというのがあって、アイテム数を増やしたいと考えていました。そこに雑貨や文房具を扱うネットショップが売却希望価格110万円ほどで掲載されていて、安いなと思って「ちょっと加えてみるか」と買いました。
ただ、この2件目に関しては正直、売上にはあまり貢献できていません。新たに人を雇ったわけではないので大きなことではないのですが、教訓ということでいえば、4件買ったなかでこの2件目がまさにそうですね。売りに出ているものには、それなりの理由があるということです。
ーーその学びを経て、3件目は、東京の「競馬コレクターズアイテム販売業」ですね。
田中さん:
もともと競馬が好きで、面白そうだなと思って交渉を申し込みました。前の代表の方が何年も前から引退を考えられていて、従業員2名と東京の事務所をそのまま引き継ぎ、2025年9月に決まりました。ちょうど1年経って、なんとかうまくやれているかなと思っています。
ーー引き継いだ時点の事業は、どのような状態だったのですか?
田中さん:
もともと歴史のある商品を作っている会社なのですが、だんだん縮小して「知る人ぞ知る」状態になっていました。前の代表の方は引き継ぎ先を探されていたので、新しく知ってもらう努力はされてこなかった。販売ルートも自社の直販サイトだけで、振り込みでしか買えないような状態でした。
ーーそこから、どのように売上を伸ばしていかれたのでしょうか?
田中さん:
まずは認知度をもう一度上げていくことから始めました。SNSで情報を発信したり、競馬関係の方とのコラボ企画で新しい商品を作ったりして知ってもらう。あわせて、カード決済ができる別のサイトを用意して、主力商品以外の商品も一緒に買ってもらえるようにしました。その結果、主力商品だけで言うと、前半期は売上が倍くらいになりました。
30年続いてきた固定概念のうち、今の時代に合わないところは変えていきましたし、お客さんが良く思っていないところは積極的に改善していく。そこで多少コストが上がって収益率が下がることは、僕は気にしないんです。
ーー認知を広げることに力を入れているのは、何か危機感があるからですか?
田中さん:
何十年というコアなファンに支えられてきた商品なのですが、10年先を見たときに、その方たちがお元気かどうかは分からない。高齢化しているんです。だから新しく若い方に支持を広げていかないと、先がなくなってくる。今はSNSで思うままに情報発信をしていて、年4回ほどの販売会でファンの方と直接お会いして、そこでの声も反映するようにしています。
半年ほど前の代表が残って引き継ぎをしてくださったのですが、これは相当大変でした(笑)。私自身が東京の事務所に行って、久しぶりに新入社員のような気分を半年ほど味わいましたね。
【4件目・広島の着物EC。希望3,500万円を在庫相当の2,200万円に交渉し、閉店していた店を業務委託で早期再開】
ーーそして直近の4件目として、2026年7月に広島の着物EC事業を2,200万円で買収されました。
田中さん:
正直、他の事業で手いっぱいだったのですが、興味を持ってしまってお話を聞くことにしました(笑)。
売り手の会社は社長さんが70歳を過ぎていて、着物のECはずっと1人の担当者の方が見てこられた。その方が事情があって辞めなければならなくなり、EC部門を続けられないということで一旦閉店されていたんです。閉店から1ヶ月ほど経ったタイミングで、私がお話を聞きました。これまでの経験から、辞める理由が「後継者がいない」という案件は堅いというのが僕のなかの基準になっていたので、そこに合っているなと思いました。

(田中さんが4件目に買収した着物ECサイト)
ーー希望価格は3,500万円でしたが、2,200万円で合意されています。どのように交渉されたのでしょうか?
田中さん:
在庫の状況などを聞くと、3,500万円はどうしてもこちらとしては高いなという部分がありました。それでお話ししてみると、2,200万円という金額は、実はちょうど在庫分の金額なんです。「在庫分の金額でなら」とお伝えしたら、社長さんも「それでいいです」ということで話がまとまりました。
担当者の方がすでにいらっしゃらなかったので、ほぼ引き継ぎができない状態でした。それもあって安くしていただけた部分もあると思います。
ーー引き継ぎがほぼできない状態で、着物ECの再開はどのように進められたのですか?
田中さん:
着物のECは販売の間が空くと売れなくなってしまうので、交渉の段階から「できるだけ早く再開したい」とお願いしていました。契約上は楽天の審査に時間がかかるので、移行が終わるまでは業務委託という形でうちが運営を受けることにして、早期に再開しました。着物の在庫の大半は1件目の福岡の会社に移動させていて、今は会社の中がパンパンです(笑)。
ーー1件目の福岡の会社を拠点に、EC事業を横展開されてきたわけですね。下着、雑貨、競馬グッズ、着物と分野が違っても回しやすいものなのでしょうか?
田中さん:
発送などの一連の流れはほぼ一緒なので、最初に買ったのがECで、追加のコストなく横に広げていけるというのは大きかったと思います。福岡の会社の中国からの輸入ルートを使って、3件目の競馬グッズを中国で作ってもらう、といった連携もしています。
それと、今回の着物でやって良かったなと思うのは、単価が全然違うということですね。高いものを販売するノウハウがうちにはなかったので、「高くても売れるものもあるんだな」というのは、やってみて良かったと思っています。
従業員については、労働環境を良くしなければいけないという思いがあって、正直1人多いくらいの人員にしています。パートさんが休みやすいように、有給休暇も取りやすいように、余力がある状態にしているんです。
【「ほったらかしで儲かるなら、なぜ売る?」EC事業M&Aを検討する人へのアドバイス】
ーー4件の買収を重ねてこられましたが、意思決定はどのように行われているのですか?
田中さん:
3件目の競馬の案件は売り手側にもう1社候補がいて相手が決める状況だったので別ですが、それ以外はあまり長く悩まず、直感で決断してきています。妻には、相談というより「確認」だけですね。やると決めたら聞かないと思われていると思うので(笑)。これまでのM&Aはすべて自己資金で、大きい買い物は会社しかない、という感じです。
ただ、もうこれ以上やったら多分怒られるので(笑)、一旦ストップですね。まずは今の事業を落ち着かせないことには、と思っています。
ーー4件のM&Aを振り返って、やりがいや成長を感じる部分はありますか?
田中さん:
ずっと1人でやってきたので、人を使って事業を進めていくという部分では、いい経験になったと思います。妻にも今回本業を手伝ってもらっていますが、傍から見ていても成長しているなと感じる部分があって、やっぱりポジションがあれば人は育つなと感じますね。
ーー最後に、これからECのM&Aを検討している方へ、アドバイスをお願いします。
田中さん:
正直に言うと、すぐに決められる案件ばかりではありません。4件成約していますが、お話を聞いた案件数はその10倍くらいはあると思うので。
だから、聞きにくいこともどんどん聞いた方がいい。特に「なぜ辞めるのか」という部分は、しっかり聞いた方がいいと思います。よくあるのが、「楽だ」「手もかからない」「お金が入ってきますよ」という謳い文句です。でも、ほったらかしで儲かるんだったら、別に続ければいいじゃないですか。それでも売るということは理由があるはずなので、そこをクリアにしてもらうことが大事です。
ーー売却理由を見極めたうえで、下着から雑貨、競馬グッズ、着物まで、まったく違う商品を扱うECでも横展開で事業を広げていける。ECのM&Aには夢がありますね。これからECのM&Aに挑戦する方にとって、大きな希望になるお話でした!
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■田中さんが運営されているサイトはこちら(一部)
・下着・日用品EC「ARQS 楽天市場店」
https://www.rakuten.co.jp/arqs01/
・着物EC「きものひろば悠」
https://www.rakuten.co.jp/kimonohiroba/
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