2020-06-02

目指すのは効率的な副業。手間暇とリスクは最小限に。始めたのは整体院ビジネス。

買い手(個人):匿名

<個人事業主の副業事例>

現場が”自走する”黒字のビジネスモデルが決め手

 

人生を変えるようなM&Aもあれば、それまでの日常にプラスオンするようなM&Aもあります。今回取り上げるのは後者の例。個人事業主として働く田村さん(仮名)は、ボデイケアやエステをサービスとして提供する整体院を購入しました。「手間暇とリスクをかけない効率的な副業を探していた」という田村さんに、M&Aのねらいや今後の展望を伺いました。

 

【探したのは、時間や手間をかけ続けなくてもいい事業】

- どんなきっかけでM&Aに関心を持たれたのですか?
日経新聞に載っていた、トランビで整骨院をM&Aをされた方の紹介記事を読んだのがきっかけです。長く会計の会社で働いていたので、企業によるM&Aは割と身近だったのですが、個人でもM&Aってできるんだと目から鱗が落ちる思いでしたね。

- そこからすぐに「自分もやってみよう」と?
そうですね。記事を読んだ時点でやる気にはなっていました。

- M&Aを検討されるうえで、何かハードルのようなものはありましたか? お勤め先の規則や資金面、ご家族の反対などの理由で躊躇される方もいらっしゃいますが。
私の場合は特にありませんでしたね。当時すでに個人事業主でしたし、お金の面も自己資金のなかから無理のない範囲で出しましたから。仮に大失敗して赤字が出ても取り返しがつく金額のなかで収めると決め、家族にもそう説明して納得してもらいました

- 資金以外ではどんな点を重視して案件を探されましたか?
あくまで副業として考えていたので、自分は手を動かさずに経営だけに集中できる事業を探しました。とある企業に業務委託で週3日勤めているので、それ以外の日で回せることは絶対条件でしたね。

- 手を動かさずに済む事業を探すために、どんな点を考慮されましたか?
すでに黒字であることです。会社員時代からずっと経理畑だったので、営業のノウハウはないですし、そこに割くリソースもありません。ゼロから売上をつくるのは難しいと思ったので、その辺の数字は特に気にしました。

 

【ヘルスケア産業を選んだ決め手は“需要の強さ”】

- 具体的には、どんな案件をご覧になりましたか?
しっかり検討した案件としては、マッサージやエステ、ヨガスタジオなど、整体と似たような業態が多かったですね。

- ヘルスケアにご関心があったということですか?
いえ、私個人の興味はあまり関係ないんです。気にしたのは需要の強さですね。

- 需要の強さとは?
健康管理って、人間がいる限り絶対に必要なものじゃないですか。ネイルサロンや猫カフェなんかも予算内でいくつか見かけておもしろそうだなとは思ったのですが、これらは流行りすたりがありますよね。今は良くても10年後、20年後が読めないなと。

- そんなヘルスケア産業のなかで、今回の案件に目を留められたポイントは?
先程あげた黒字であることに加え、前のオーナーも店舗オペレーションには関わらず、現場のスタッフさんだけで回っているというのも、私の理想に近いと感じました。あとは、少し遠いですが家から通える範囲内だったのも大事な点です。

- オペレーションには関わらないということですので、現場には通わずにリモートでも対応できそうかなと思ったのですが、通うことを前提にされていたのですね。
はい、現場に足を運ぶのは絶対に必要ですね。実際、引き継いだばかりの今は2日に1回はお店に顔を出しています。現場に“自走”してもらうと言っても、ほったらかしにするのではなく、「オーナーは見ている」と伝えることが大切だと考えています。


【見られている意識が、従業員のモチベーションと緊張感を高める】

- 「見ている」と伝えることで何が変わるのでしょうか?
一言で言えば、信頼関係を築くためです。オーナーチェンジでスタッフさんにも不安があると思うので、それを少しでも払拭できればと。それだけじゃなく、モチベーションを高めることと、緊張感を保つことにもつながるとも思っています。

- もう少し深く聞かせてください。まずモチベーションについてですが、なぜ「見ている」と伝えることがモチベーションにつながるのでしょうか?
私が店舗オペレーションには無知なので、お店に顔を出すと自然と、知らないことを尋ねたり、意見を求める機会が増えます。そのコミュニケーションで、スタッフさんを自分よりも店舗運営に詳しい人としてリスペクトしていることが伝わります。会社員時代を含めるとそれなりの人数をマネジメントしてきましたが、モチベーションを上げるには信頼して任せるのが1番です。顔を合わせずただ任せるだけでは、信頼の部分が伝えきれないので、実際に会って会話することを大事にしています。

- 緊張感についても聞かせてください。
信頼するといっても、働きぶりを実際に見ず、盲目的に信じてしまうのは危険です。なあなあになり、よりよくしようとか、ミスを防ごうとかといった意識も薄れます。それを防ぐために、スタッフが良い働きや悪い働きをしたとき、意図や原因に想像がついたとしても、あえて本人の口から説明してもらうようにしています。

 

【意外な落とし穴に注意! 決済サービスの名義変更に苦戦】

- 実際に事業を引き継いでみて、想定と違ったことはありますか?
事業そのものの話ではないのですが、名義変更の手間が想像以上に時間が掛かり、それには少し困っていますね。役所関連の手続きももちろんなんですが、盲点だったのが決済サービスです。特に、あるキャッシュレス決済のコード払いサービスでは個人間の事業承継を想定してないとのことで、何度相談をしても取り付く島がありません

- 取り付く島がないというと、どういう状況なのでしょうか?
個人事業主における名義変更という概念がなく、かつ1つの店舗に2つ以上のアカウントを紐付けられないので、既存の名義のアカウントを取り消したうえで新しい名義のアカウントを所得する必要があると説明されました。

旧アカウントを削除してから、新アカウントの審査が通るまでのラグ期間は、当然そのコード払いサービスは使えません。お客様にもご不便をおかけしています。いったん前オーナーさんには引継ぎ後もお客様から振り込まれた代金を、私の口座へ送金いただくなどご協力をいただいてなんとか対応をしています。

- それはお困りですね……。
幸い、それ以外の部分では大きな想定外はありません。前オーナーさんには交渉時からレスポンスよく資料や情報を提供していただきましたし、引き継ぎ中はもちろん、引き継ぎ後の今もこちらの質問に丁寧に対処してくださっています。いろいろな状況が購入後も発生しうるので、前オーナーさんとの良好な関係を継続することは非常に重要です。スタッフさんも1人も欠けることなく残ってくれました。 一番の想定外はコロナウイルスの流行*ですが、それも数万円程度の赤字で済みそうです。この状況でこの数字なら、収束後には期待が持てるなと思っています。
*取材は2020年4月末にオンラインで行いました。

- 最後に、今後の目標をお聞かせください。
事業が順調に回れば、2店舗目、3店舗目の展開もできるといいですね。でも、拡大したいという意欲は薄いので、リスクを取らずに、細く長く続けていく方向性で考えています。今は自分で経営をするということをシンプルに楽しめています。

私は50代ですが、70歳なのか80歳なのか、どこかでもう仕事しなくていいかとなって、イグジットを考えるくらいの年齢まで続けられるといいですね。


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  • 田中 ヤスヒロ(typo)
  • ライター紹介田中 ヤスヒロ(typo)

    コピーライター/京都大学理学部卒業後、広告制作会社にてコピーライターとして勤務。WebサイトやSNSなど、デジタル媒体を中心に広告コンテンツの企画・制作を担当する。ビジネス、科学など固いものを柔らかく伝えることが得意。2018年より屋号「typo(誤字脱字)」として独立。その名の通り、ケアレスミスが多いタイプ。