2020-06-16

1,000万円をかけて作り上げた事業を数十万円で譲渡した理由 ~お金よりも相手の夢を応援したい~

売り手(法人):匿名

(※画像はイメージです)

<戦略的理由で事業譲渡した事例>

建設業界の人手不足を解消するために新卒採用サイトを立ち上げたD社(仮名)の内田社長(仮名)。本業が多忙のため運営に注力することができず、事業の担い手を探すことを決意。合計で30件以上の買い手様から申し込みがあったものの、1年以上の時間をかけての成約となりました。当初は事業譲渡で最も重要視することに“時期”と掲げていた内田社長がなぜ一年の時間をかけたのでしょう?制作に1,000万円弱かかったサイトを数十万円で事業譲渡した理由は?内田社長にその裏にある事業への思いを含めて語っていただきました。

 

【建設業界の不人気なイメージを変えたい】

- そもそもM&Aに興味をもったきっかけは?
当社は広告や広報を支援する会社ですが、メインクライアントのひとつに国土交通省があります。そちらの広報やPRのお手伝いを30年ほどしてきましたが、国土交通省が管轄する建設業界というのは、“3K”と言われる人気のない業界で、常に人手不足。大学生が土木や建設の勉強をしても建設業界を選ぶことは多くありません。そこで、この状況を何とか打破しなければいけない、と建設業界の企業と学生をつなぐ新卒採用サイトをつくることになりました。行政からの依頼というよりは、お世話になっている業界への恩返しという意味合いで立ちあげました。

サイトの制作をスタートしたのは2016年ごろです。建設業界の実情を社員から直接聞けるチャット機能が特徴で、学生や企業への周知活動もスタートしました。1年足らずで業界に興味関心ある学生の登録が6,000名を超えるほどでしたが、本業のほうもどんどん忙しくなってしまい、こちらに手がまわらない。とても片手間にできることではありませんから。どうしようかと1年ぐらい悩んでいたところに、TRANBIの高橋社長との出会いがあったんです。

高橋社長とは、もともと買い手の立場で参加したTRANBIのセミナーでお会いしました。セミナー後の面談で、実は悩んでいる事業がある、というお話をさせていただいたところ、それほどの価値ある事業はむしろ売る登録をして世間の反応を見ませんか、と高橋社長からお誘いいただき、帰ったその足で登録したわけです。

 

(※画像はイメージです)

【本気の思いがある方だけに譲る】

- 登録後はどのように候補者選びが進んでいきましたか?
登録してから、すぐにいろいろな業界の方からご連絡をいただきました。最終的には合計で30件以上でしょうか、大きく分けると建設、人材、ウエブ、この3つの業界ですね。TRANBIでの有料サービス「ピックアップ案件」を利用したのも非常に効果的でした。

しかし、なかにはこの事業そのもののスキームを知ることだけが目的で案件自体を引き継ごうという思いがない方もいらっしゃった。どうシステムをつくっているのか、あるいはどうやってこれほどの学生を集めているのか、そういったノウハウについて関心を持たれることが多かったんですね。

しかし私としては「不人気の業界を何とかしたい」という思いに共感していただける方にお譲りしたかった。実名交渉は約20件あり、そのうち最終的に4人の方が候補として残りました。

この方々に共通したのは、事業のことを本気で考えてくださっていたということ。熱意があるということですね。遠方に住んでいる方でも、わざわざこちらのタイミングを合わせて直接会いに来られる方もいらっしゃいました。

ただ、私もある程度立場のある身ですから、素性がわからない方と誰でも彼でも会うというわけにはいかないという事情もあります。会う前には必ず先方の状況を帝国データバンクなどでリサーチしてから臨むようにしています。

 

(内田社長が制作した建設業界の企業と学生をつなぐ新卒採用サイト)

【1,000万円が数十万円になってもいい】

- 最終的に買い手さんを選んだ決め手は何でしたか?
成約を決めた前田さん(仮名)は、最終候補のなかでも、特にエネルギッシュでした。現在も、ある企業の役員をされていて、60歳を過ぎておられますが、会社をつくって新しい事業を立ち上げたい、これからの時代のことを考えると、IT系でなにかをやりたいと。そしてゼロから立ち上げるよりも、これだけのプラットフォームがあれば、自分のしたいことが実現できるので、この事業でもって会社をつくると、はっきりとおっしゃったんですね。

交渉を始めたのが2019年の夏。交渉ルームでは正直、何を考えていらっしゃるのかよくわからなかったんです笑。しかし実際にお会いすると、この事業についても、非常に真剣に誠実に考えておられたので、これはこちらもきちっと対応しなければいけないと、サーバー関連の運用にある程度の固定費がかかる点や学生も自動的に集まるわけではない点など、個人でやっていくことの難しさや注意点について、ひと通り説明させていただきました。

当社にもよく足を運んでいただき、4、5回はお会いしましたね。事前に細かくやりとりを行ったこともあり、成約までに半年以上時間がかかりました。

個人でやっていくことのリスクも、すべて心得たうえで「やります」とおっしゃったので、私としては渡せるものはすべて渡して、その方のやることを応援してみようという感じでした。数十万円で事業譲渡しましたが、実際にサイト制作にあたって費用をすべて含めると1,000万円弱くらいかかっています笑。少しでもやりたい方に夢を実現してもらうように事業を渡す仕組み、これこそがTRANBIさんの存在意義なのではないかと私は思いますね。

引継ぎは終えたので、あとは先方でなにか困ったことが出てきた際に支援していくような形かなと思います。

- ありがとうございました!



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  • 池田純子)
  • ライター紹介池田純子

    大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーのライター・編集者に。暮らしやお金、子育てにまつわる雑誌記事の執筆や単行本の製作に携わる。さまざまな生き方を提案するインタビューサイト「いま&ひと」を主宰。

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