2020-10-06

20代サラリーマンが副業M&Aにより、3ヶ月で100万円稼ぐ ~FXツール事業の買収から売却まで

買い手(個人):田中康雅さん

<個人の副業M&A事例>

   

社会人2年目の会社員、田中康雅さんがTRANBIでFXツールの販売事業を約72万円で買収したのは、今年3月のこと。その後、約44万円の営業利益を生み出し、6月には約131万円で売却。約3ヶ月で「営業利益+売却益=約100万円」を稼いだ。「やり方はいたってシンプル」と語る田中さんに、買収から売却までの経緯とそれぞれのノウハウについて、たっぷりと語ってもらった。



 

【100万円の使い道を探していた】

- まず事業を買収したきっかけを教えてください。
本業では、働くひとの健康管理をクラウドサービスで提供するIT企業でカスタマーサクセス部のマネージャーをしています。また、副業として、ウェブメディアの運営や、コンテンツ制作などを個人でおこなっています。

新卒1年目のときに、お金があれば好きなことに挑戦できると、とりあえず100万円を貯めました。それをどう使おうか迷っていた2年目に出会った本に、サラリーマンは後継者を探している中小企業を買うべきであるとの主張を見つけました。M&Aのプラットフォームも台頭してきて、誰でもスマホひとつで事業が買える時代になってきたとあって、これは確かにすごいなと思いました。

方法として紹介されていたM&Aプラットフォームを調べて、実際にTRANBIのサイトを見ると、100万円でも売られている事業がたくさんある。そこで貯めた100万円で「事業を買う」ことを考え始めたのです。

現在、僕は会社員ですが、将来は健康管理の分野で事業をつくろうとするスタートアップに出資できる人になりたい。そうなったときに自社だけの経験では圧倒的に足りません。自分でもM&A経験が必要だろうと思ったことも事業購入の大きな目的のひとつでした。



(IT企業で仲間たちとともに働く田中さん)

 

【重視したのは「労働集約性の低さ」と「固定費の安さ」】

- 事業を購入することに不安はありませんでしたか? またこの事業の購入の決め手は?
僕の中では、事業を購入することは大きく3つのリスクがあると考えていました。1つ目はお金を失うリスク、2つ目は周りからの評価が下がるリスク、3つ目は購入した事業が訴訟を受けるリスク

1つ目については、たとえ70万円で買収した事業に営業利益が全く出なくても、やり方次第では30~40万円で売却できます。30~40万円は失っても、事業を買ったという経験は、セミナーや勉強会に参加するよりもよっぽど希少価値は高いし、学びも大きい。一定額のお金を失ってもそんなに自分にとって大きな損失ではないと思いました。

2つ目は自分にとって年代的にもそこまで気にする必要はないと思いました。むしろ挑戦することで得られる評価もあります。

3つ目については、万が一過去の債権に対して事前説明のないもので問題が起こった場合は、売主が責任を負うという契約を結ぶことで回避しました。

デューデリジェンスの際は、規模的にもそこまで大きくはなくシンプルなものなので、周りの知り合いに話は聞きましたが、弁護士や会計士などの専門家には依頼しませんでしたね。

案件を探すときにチェックしたのは「労働集約性の低さ」と「固定費の安さ」。本業がありますので、べったりと張りついてできるわけではない。ですから労働集約性の低さは重視しました。

また固定費を安くして、売上が立たなかったときに大きな赤字を背負うリスクを抑えることも大事だろうと思っていました。この二つを重視して探している中で、目にとまったのがこの案件だったのです。

- 交渉の際は、どんなふうに「選ばれる努力」をしましたか?
24歳かつ個人なので、信用を得るための努力をしました。具体的には提案書を作ったことでしょうか。①なぜこの事業を買いたいのか、②この事業の課題は何か、➂その課題に対してどうすれば経営改善できるか、この3点と希望金額を盛り込み、こちらから提案させていただきました。

また売り手さんからすると、私がどれぐらい現金を持っているのか、会社は副業OKなのかという点も気にされると思ったので、家計管理に使っているマネーフォワードの情報を共有したり、会社が副業可であることをしっかり説明したりといったこともしましたね。

売り手さんは「ここまで相手のことを考えて提案していただいたことはめったにないですね」とのことで、M&Aの交渉は初めてでしたがうまく相手に印象を残すことができたのではないかと思います。

売り手さんとしても譲渡金額よりも、ちゃんと事業について真剣に考えてくれる人に譲りたいと思っておられたようで、そういう意味ではうまくマッチしたのでしょうか。



【「100万円の利益」まで売却を待つ】

- 実際に事業を購入した後は、いかがでしたか?
僕自身、ウェブサイトを立ち上げて運営した経験はあったので、引き継ぎは比較的スムーズでした。売り上げをつくるためにまずしたことは、地道にメルマガを送って潜在ユーザーを増やしたことですね。そのあとは試行錯誤の連続で、もっともうまくいった施策は、コアユーザー様にも自らFXツールを改良できるような商品ラインナップを作ったことですね。改善を重ねた結果、少しずつ売り上げが出てきました。

今回が初めてのM&Aでしたので、とりあえずやってみることに重きを置きましたが、実際にやってみた結果、熱意を注げる事業でないと長期的に経営していくことは難しいと感じました。僕は、FXに関しては1、2回しかやったことのない素人。ユーザー様の深い心情まで把握できていないし、商品のこともまだまだ理解不足。

事業を購入して3ヶ月ほどで、売却を考え始めました。TRANBIを含めていくつかのM&Aプラットフォームに案件を掲載開始しました。

停滞していた事業に、ちょっとは売り上げが立つようになってきたので、この事業に関わりたいという人がいるんじゃないかなと思っていたところに、たまたま知り合いの経営者の方をご紹介いただき、そこからすんなりと売却の話が進んでいきました。

- 売却の際に譲れなかった部分は?
「営業利益」と「売却益」を足して100万円を超すラインなら売ろうと思っていました。「個人M&Aで100万円稼いだ」というのは、他の方から見ても自分の実績としてやはりインパクトのあることですから。ですから売却の交渉を進めながら、業績を伸ばす努力もして伸びているうちに売ろうと。今回順当に伸びていたので、これならば早めに売ったほうがいいだろうという判断でした。

売る際も、買うときに同様に提案書を作り、事業の基本的な構造や売上金額、サイト分析などの説明書きを入れました。



(※写真はイメージです)

 

【買い手と売り手の立場を経験してみてわかる「資産のとらえ方の違い」】

- 買い手と売り手、両方経験してみて、一番の違いは?
一番の違いは「資産」のとらえ方でしょうか。売る側は、資産を「つくるときにいくらかかったか」ととらえますが、買う側はその資産が「将来いくらの営業利益をもたらすか」でとらえる。言ってみれば、買う側にとっては、それがいくらかかったのか、あまり関係ないんですよね。興味があるのは、資産がいくらで、事業がどれぐらいのお金を生み出すかということだけですよね。

だからこそ、相手の立場や意見も理解した上で、うまく自分の主張が通るように誘導していかなくてはならないんですよね。

たとえば、ウェブメディアを売る側なら、ストック本数の量やかかったコストに加え、1本でもPV数が高い記事があれば、その分の価値を主張して高く売る。反対に買う立場なら、かかったコストと生み出す収益は別であることを説明し、価値が低い部分については値引いてもらうよう交渉するということです。

もし売る側がアフィリエイトなど他の収益方法を確立できていないものの自分なら改善できると思った場合は、価値を低く見積もって安く買うこともできますし、あえて確実に買うためにちょっと高い金額を提示して攻める場合もあると思います。情報の非対称性を使えばさらに賢く売買することができます。

金額を決める際の基本の計算式は「営業利益×3年分+純資産」ですが、私の場合、買うときは更新頻度が少ない状態であることやツールが古いものであることを材料に値引きを交渉しました。売るときはシンプルに売り上げ自体が伸びていることを主張して、その分を上乗せ

結果的に約72万円で購入して、3カ月で約44万円の売り上げを立て、約131万円で譲渡したので、約103万円稼ぐことができました。

- それぞれの交渉時に苦労したことやトラブルは?
会社経営や契約の知識がなかったことでいくつか苦労した点があります。たとえば収入印紙。昔、居酒屋でアルバイトをしていたときに、領収書に貼ったなという程度の知識しかない。それで買収時に、「収入印紙はどっちが用意しますか」と言われて、なんだそれはと思って、あわてて調べました

また、これは売るときの話ですが、譲渡対価として振り込まれた金額に消費税が入っていなかったんです。契約書にも譲渡対価+消費税と記載していたので、こうなっていますよね、と話をしたら、すぐに振り込まれましたが、若いからちょっと甘く見られたのかなと感じました。

【大事なのはリスクを正しく見積もり、早く行動すること】

- 今回のM&A経験を通して、どんなことを学びましたか?
「リスクとの向き合い方」が身に付いたと思います。あらかじめリスクを見積もり、できるリスクヘッジをしていけば、限りなく成功確率を高めることができます。最悪のシナリオを想定して、予防策をうったり、最悪のケースでも、まあいいかと思える心の準備をしたり、それでもやりたいことだから挑戦してみる。そういったリスクのとり方を学べたことがいちばん大きいことでしたね。

また、この経験を通して何よりもよかったのが、本業によい影響を与えたことです。事業を経営する視点を得られたので、今の会社の事業をどう成長させ、IPOを成し遂げて、さらにその先にどうやってよい組織をつくっていくかと考えられるようになりました

とにかくリスクを正しく見積もって、早く行動すること。リスクをとらないことは、衰退でしかないと思うんです。小さな成功と小さな失敗を積み重ねたほうが、これから先の世の中で、生き残っていけるし、そっちのほうが絶対に楽しい。リスクを全くとらず、行動もしないで留まっているのは、本当にもったいないと思います。まずは気になる事業を見つけたら、交渉のメッセージを送ってみる。送るだけなら何も損することはありませんから!

- ありがとうございました!

 

田中康雅さんのTwitterはこちら


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  • 池田純子)
  • ライター紹介池田純子

    大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーのライター・編集者に。暮らしやお金、子育てにまつわる雑誌記事の執筆や単行本の製作に携わる。さまざまな生き方を提案するインタビューサイト「いま&ひと」を主宰。