2020-10-13

コロナ禍に“逆張り”で複数 M&A! あえて民泊案件を買い続ける理由

買い手(法人):Reivalue株式会社

<中小企業の事業拡大M&A・買収事例>

 

電力の小売りやコンサルティングなどのエネルギー事業をはじめ、大阪府泉佐野市と組んだゲストハウス事業やキャンピングカーのレンタル事業など、幅広く事業を手掛けるReivalue株式会社の代表 堀口公希さん。新型コロナ問題真っただ中の5月に京都の民泊事業、6月には大阪と京都の民泊2事業をそれぞれ数百万円で購入。しかも同じ売り手から立て続けに2件目の成約となりました。特に客足が止まりがちな民泊事業を、なぜ今続けて購入したのか。その理由と買収交渉の過程についてお話しいただきました。

【コロナ禍だからこそ逆張りする】

- まず、このたび民泊事業を購入したきっかけを教えてください。
もともと私自身、新卒で再生可能エネルギー関連の会社に入社し、その後、東京電力、楽天の電気事業など、ずっとエネルギー関係の仕事をしてきました。しかし楽天を辞めて創業するときに、エネルギー以外の事業にも携わってみたいなという思いがあったので、民泊事業やキャンピングカーのレンタル事業にも挑戦することにしました。

(堀口さんが運営するキャンピングカーレンタル事業)

 
民泊事業の許可を得たのは2018年4月。創業してすぐのことでした。なぜ民泊事業かというと、当時はインバウンドの伸びがありましたし、東京や大阪での世界的な大型イベントが開催されれば、また盛り上げるだろうと思っていましたから。コロナ問題はありますが、この事業を拡大したいと思っていたので、TRANBIで2件続けて、民泊事業を購入したのです。

 

- コロナ災禍で客足が止まる時期に、購入されたのはなぜでしょうか。
「逆張り」といいましょうか。コロナ災禍だからこそ、売りに出される案件も多いし、安く買える。それが一番の理由です。

TRANBIのサイトを初めて見たのが、4月の初旬。日を追うごとに掲載案件が増えていましたから、物件の立地や金額などをつぶさに見ていました。特にチェックしていたのが、奈良、京都、大阪、兵庫といった関西の物件。関東も魅力的ですが、関西には歴史がありますし、外国人の方にとっても魅力的な土地。関西のほうが長い目で見たら面白いだろうな、と思っていました。

今回購入した大阪と京都の物件は、どちらも立地がいい。大阪は駅から徒歩1分ですし、京都は歴史のある観光地の中にありますから。また大阪の物件はリノベーションしたばかりで、箱としても大きくて、一目見てこれはいいなと思いましたね。



(風情ある京都の町屋民泊施設)

【数字の漏れを見抜いて交渉を有利に】

- 交渉は、どのように進みましたか?
苦労という苦労はありませんでしたが、これまでの事業の収益構造やマンスリーデータといった数字を引き出すのに、少し骨が折れました。項目として数字が漏れていないか、保険料の支払いなど隠れた数字がないか、そういった細かい点をかなり丁寧に確認しておかないと、引き継ぎ後の体制に問題が出てしまいますから。

意図的に数字を隠してくる方もいますので、これについてはどれぐらい場数を踏んでいるかの経験値が交渉を大きく左右する気がします。

ただ、そういった点も伺ったら、すぐにスピーディに正確に対応してくださる売り手さんでしたので、それは信頼感につながりました。京都では管理者が物件から近くに駐在しなければならないという条例もあり、売り手さんには引き続き、現地で代行運営していただくので、そういったことからも安心してお任せできましたね。

価格面の交渉については、売り手さんはイニシャルコストを投下されている資本があって、それに対して、こちらはインバウンドが戻るまでどれぐらい耐えうるか、このせめぎ合いですね。出していただいた収支表や試算表で漏れている数字や抜けている数字を指摘して、それを積み上げて、こちらが有利になるものについては都度値引き交渉をしていきました。

最終的にお互いが希望金額を出して、あとはそれができるかできないかといった調整をしながら落としどころを見つけていったという形です。



(今回の買い手である堀口さん)

【案件が豊富な時期にもっと交渉を申し込むべきだった】

- 同じ売り手さんから2回購入されています。1回目と2回目、どんな点が違いましたか?
実は実名交渉するまで、同じ売り主さんだと知らなかったので、蓋を開けてみてびっくりという感じでした。ただ法人格として、しっかりと運営されていることは1回目でわかっていたので、2回目も安心して交渉に臨めましたね。

交渉自体は、1回目の経験で、運営上の受付やチェックイン体制など、ヒアリングに漏れがちな必要事項をかなり整理できていたので、2回目は非常にスムーズにお聞きすることができましたね。

また価格交渉については、1回目は価格の感覚値がよくわからなかったので、正直こちらの思うような交渉はできませんでしたが、2回目はより踏み込んで交渉ができたと思います。

振り返ってみると、1回目のタイミングのほうがTRANBIの掲載案件が多かったので、もっと数多く交渉を仕掛けておけばよかったなと思います。



(スタイリッシュな大阪西成の民泊施設)

【本当のリスクは自然災害。M&Aのリスクは許容範囲】

- このコロナ災禍で積極的にM&Aをする、その後押しとなったものは?
先程もお伝えしたとおり、こういうタイミングだからこそ、安価な案件と出会うことができます。その代わり我慢もしなくてはいけない。この感覚につきますね。

今後、インバウンド需要が回復したとしても、今回買ったものと同じ値段で買えるかと言うと、とてもそうは思えません。やりたいなら今しかないかなと思いました。リスクを積極的にとっていくタイプと言われると、そうかもしれません。

そもそも大きなリスクというのは、震災のような自然災害であって、人の考えるリスクなんてそれほどのリスクではないと思っています。人間が起こすリスクは限界があって数値化ができるものです。ですから、私にとってはM&Aのリスクは許容できるもの。そこまで大きなリスクを負うという感覚はありません。

2回目のM&A以降もTRANBIを興味深く拝見していますし、いい案件があれば積極的に買いたい。このままコロナ災禍が続けば、今度は売却するという考えももちろんあります。他の事業を売るという選択肢も面白い。そのあたりは今後も柔軟に考えていきたいと思っています。

- ありがとうございました!


   


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  • 池田純子)
  • ライター紹介池田純子

    大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーのライター・編集者に。暮らしやお金、子育てにまつわる雑誌記事の執筆や単行本の製作に携わる。さまざまな生き方を提案するインタビューサイト「いま&ひと」を主宰。

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