2020-11-17

海外ゲームアプリの買収で、月収100万円が自動的に?!開発人脈や新たな課金モデルの発展性も見込む海外事業のM&A

買い手(法人):(株)WINGIT

<中小企業の事業拡大M&A・買収事例>

 

スマホ向けゲームアプリはヒットすれば大きな収入が見込める反面、流行りすたりが大きい分野。今回インドの会社で開発された、バイクレースゲームのアプリを買収した、株式会社WINGIT代表取締役社長の三島裕さん。「P/L(損益計算書)を見てすぐ買いたいと思いました(笑)M&Aというよりは事業投資に近いマッチングだと思います」と4日間で買収を即決されました。今回のM&Aの概要について詳しく内容を伺いました。

【0からの起業よりM&Aで事業黒字化までを早く】

- まずは、株式会社WINGITの事業内容について教えてください。
インターネット広告とマーケティングがメインの事業になります。クライアントは化粧品、健康食品、不動産など。ネット広告でプロモーション代行したり、ほかには、自社でゲームを作ったり、ウェブメディアを作ったり、コワーキングスペースの経営もしたりしています。

自分が面白いと思ったことはやったことがなくてもすぐ行動する、もしダメだったらすぐ軌道修正するというのが私の方針です。いわゆるベンチャー企業ですね。

- かなり多角的にビジネスを展開していらっしゃいます。全て三島さんが0から立ち上げた事業でしょうか?
すべて自ら起業しました。ただ0からのスタートは楽しい半面、経営が大変です。ウェブメディアもゼロから立ち上げましたが、あまり儲からなかったので売却しました。

RPGをテーマにしたコワーキングスペースも作りましたが、ファンタジーな世界観を構築するためにガラスのフロアとか隠し扉とかインテリアに凝りすぎて、内装だけに3千万円もかけてしまいました。そこで、赤字の期間が長い事業は厳しいと実感しました。

そのため、「ある程度形ができている事業をM&Aで買収するほうが0から事業を立ち上げて黒字化するまでより早い」そう思って、去年からTRANBIをはじめ、様々なM&Aのプラットフォームに会員登録し、本業に近い掘り出し物をリサーチしていたのです。

- バイクレースゲームアプリを購入した経緯は?
本当は株式譲渡で、会社を丸ごと購入したかったのですが、莫大な買収金額になります。今回が初めてのM&Aになるため、①比較的に譲渡金額が少額で、②投資資金の回収スパンが2年ぐらいと短いものがいいと思っていました。

今回買収したバイクレースを楽しめるゲームアプリの権利自体は株式会社WINGITが持つことになりますが、運営自体はを売り手さんがそのまま継続して行うことになるので、こちらが運営に携わる必要はありません。広告を中心とした収益をチェックし、改善点があれば依頼するだけでいいのです。

また、今回のM&Aは、今後このゲームで採用を想定している課金モデルが興味深く、そのモデルの将来性を見込んで購入を決めるに至りました。



(今回購入されたバイクレーシングゲーム)

【観客がBETする斬新な課金モデルが決め手】

- どのような課金モデルですか?
このゲームアプリはグーグルプレイのみで展開されています。主にインドやパキスタンのユーザーによって、2018年のリリース以来累計5000万以上もダウンロードされて、楽しまれています。主な収益は、グーグルのアドモブ広告の収入とゲームに登場するバイクのカスタマイズに伴うユーザーの課金になります。

ただ、これらに加えて、今回のゲームの開発責任者が「キャッシュマッチ」という課金システムを考案し、今後の展開を見込んでいるのがポイントです。

ユーザー同士がレースで競い合う際に、観客であるユーザーがどのバイクが勝つかを予想して金額をBETできるようになり、その利用料が収入として入ってくることが見込まれています。

日本では未承認で、海外ゲームのみに適用されるサービスですが、このモデルは新しく面白い、イケる!とすぐに思いました。

また、インドは人件費が安いのに、優秀なエンジニアやプログラマーが多く、弊社が開発を企画してインドのプログラマーに新しいゲームを安く作ってもらうことがお願いできるようになるため、人的シナジーも計算できます

- なるほど。今回はアプリを開発したインドの会社と三島さんが直接交渉したのでしょうか?
いえ、インドの会社の日本法人の責任者がいて、その方が担当者となり、全て日本語で交渉しました。彼らはグーグルストア内の検索で上位にあがる「ASO(アプリストア最適化)対策」の知見、ゲーム会社だけに出回るようなクローズドな情報も持っていて、マーケティング面や独自のネットワークにも今後協業が見込めると考えています。

- 掲載からわずか4日で成約されています。交渉期間が非常に短いのに驚きました。初めてのM&Aにも関わらず、即決できましたね?
ものすごく人気があった案件なので、私が売り手さんと面談した日も他の方との面談が多く入っていたようです。P/Lを見て、もうこれは買おうと思い立ちました(笑)。最終的にはアプリの譲渡金額は約1,300万円でした。

キャッシュマッチの仕組みが面白いし、直近の半年間で月平均86万人にもダウンロードされているので、譲渡金額が全く高いとは思わなかったです。

売り手さんも、新しいシステムを開発するための資金を早く集める必要があったらしく「今決めていただいたら、他からの問い合わせをキャンセルします」と。予算は5,000万円と上限まで余裕があったので即決しました。

- どのような感じで交渉を進めましたか?
オンラインで面談して、売り手さんが信用できるかを見定めました。今回売り手さん以外にも、3〜4社と交渉したのですが、一番柔軟に対応してくださったのも決め手になりました。

他のプラットフォームの案件では、「これ以外の金額では売却しない」という強気な印象の方もいましたが、そういった方は対象から外すようにしていました。

- 予算まで余裕があるとはいえ、なかなか即決は難しいと思うのですが、迷った点はなかったのですか?
キャッシュマッチの方式が日本では未承認なため、案件の事業を顧問弁護士に精査してもらう必要があり、そのやり取りに時間がかかりました

なにか問題があるというわけではないのですが、前例がないものはリスクの判定も難しいので。



(今回購入されたバイクレーシングゲーム)

【もはや投資に近い感覚!月収100万円の売り上げが立つM&A】

- アプリの権利を購入し、運営の業務委託にする形は、この先も変わらないのですか? 利益の配分はどのようになるのでしょう?
業務委託の形態はこの先も変わりません。引き継ぎは、グーグルアカウントを株式会社WINGITに移行すること、管理画面を共有する程度で簡単でした。

今年の9月から収益が入っていますが、譲渡後の売り上げは譲渡前よりむしろ増えていて、月100万円ほどに。このペースであれば、一年と少しで回収できると見込んでいます。キャッシュマッチはまだ開発中で、来年から導入予定です。

- とにかく海外のゲームアプリ、そしてキャッシュマッチにかなりの可能性を感じていたわけですね?
はい。現在の日本のスマホゲーム業界は、大手家庭用ゲームメーカーが参入していて、ユーザーが一つのゲームタイトルに課金することが多く、株式会社WINGITのような小さな会社にとっては競争が激しくレッドオーシャンの状況です。

だけどインドやパキスタンのゲーム人口はとてつもなく膨大で、新しいゲームを次々プレイする傾向もあり、無名のゲームタイトルでも“跳ねる”可能性があります。

インドは対戦ゲームが盛んで、かつ今回のレーシングゲームの綺麗なグラフィックということもあって、今のところ人気が高いようです。ただ、いずれは飽きがきてしまうと思うので、キャッシュマッチの期待は大きい。来年導入されれば、月150万ほどに売り上げは跳ねると見込んでいます。

買収後半年は売り手さんが無料でアプリの改善をおこなってくれる契約になっていますので、株式会社WINGITがバイクレースアプリのリソースを使って別のゲームを開発してもいいと考えています。総合的に見ても、ネガティブなポイントはないと判断しました。

- 買収したゲームアプリで安定的な収益をあげ、その収益で株式会社WINGITの他の事業を強化していく感じでしょうか?
その通りです。上がった収益で違うゲームを買ったり、自分たちで面白いゲームを作っていけたりすればいいですよね。お金を預けて一定のリターンをもらうという意味では、M&Aというより投資に近いかもしれません。

【社長は選ばれた職種、夢のあることをしたい!】

- 今後、M&Aに挑戦したいと思っている方にアドバイスをお願いします。
買収の経験が浅ければ、莫大な金額を投下してリスクをとるというよりも、早期に回収できるミニマムな案件をオススメします。

今回は運営をそのまま代行してもらっていますが、自分たちで運営を回していく場合は、全く畑違いの分野の事業は選ばない方が得策だと思います。自分が得意な分野、知見がある事業を選んだほうがいいでしょう。その後は……やってみないとわかりません。自分の直感を信じて、進んでみてもいいかなと思います。そのくらいの思い切りも新たな事業には必要です。

- 三島さんは32歳ですから、まだまだいろんなことにトライできますね。
自社のゲーム部門、コワーキングスペース部門は現在赤字ですし、失敗もたくさんありました。それでも、自分がやりたいと思ったことにスピード感を持って挑み、ダメならダメで売却・撤退してまた違う道を考えることが会社の成長に繋がります。

私は24歳で社長になり、外からの資金のバックアップなどなく、自力でここまでやってきました。同世代を見たときに社長をやっている人ってそんなにいない、ある意味選ばれたのだという気持ちでやっています。苦労もたくさんありますが、好きなことをできるのが社長の特権でもあります。だから夢のあることを今後もやっていきたいですね。

- ありがとうございました!


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  • 東野りか
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    ライター紹介東野りか


    ファッション誌、生活誌の編集者を経て独立。インタビューと旅の取材・執筆がもっとも得意な分野。酒と旅と音楽と映画をこよなく愛する。