2021-02-09

M&Aで医療と介護の事業シナジーを発揮!「人生の最後まで看取る医療と施設を提供したい」

買い手:医療法人社団はまかぜ会

<医療法人の事業拡大M&A・買収事例>

 

神奈川県横浜市内で訪問診療を展開する医療法人「はまかぜ会」が、車で10分の距離にあるサービス付き高齢者住宅を買収したのは2020年10月のこと。「他で探していたが全く見つからなかった。これだけ条件がいい案件にめぐり逢えたのは運がよかったとしか言いようがない」と、初めてのM&Aに充実感をにじませる代表の宮﨑真吾さん。訪問診療を志した思いから、M&Aで成し遂げたい今後のビジョンまで、医師としても第一線で働く宮﨑さんにお話をたっぷりと伺ってきました。

【患者様の第二の自宅&終の棲家の必要性を痛感】

- まず今回のM&Aのきっかけと経緯について教えてください。
我々は2012年に開業し、2014年から医療法人として訪問診療を中心に運営してまいりました。訪問診療は一般のご自宅に伺うパターンや施設に伺うパターンなど、さまざまなパターンがありますが、我々の場合は自宅に伺うことがほとんどです。

その中で、ここ数年感じてきたことは、介護者の不在や介護力不足によって、患者様が自宅で生活し続けることが難しい家庭が増えてきたということです。ならば、そういった方でも我々が診療し続けていける施設が必要なのではないかと。患者様にとって第二の自宅あるいは終の棲家となるものの必要性を感じ始めました

そこで数年前から高齢者向けの住宅ないしは有料老人ホームを自前でやる計画を立ててきました。実際に複数の不動産会社から土地情報を得たり、建設会社と建築プランを立てたりしていましたが、なかなかよい土地が見つからず手詰まり状態に。そのようなときに、たまたまTRANBIで出会ったのが、こちらの案件でした。

【エリアも業界も理想のもの。施設を新築するなら掛かる費用は3倍!?】

- この案件のどんなところに魅力を感じましたか?
そもそも我々が案件を選ぶ条件として考えていたのは、「エリア」と「業種」です。エリアは同じ横浜市内。人的資源がそれほど多くありませんので、遠方だと労力が分散してしまい、難しいと感じていました。業種については、同じ業種か、周辺事業となる介護関連に絞っていました。

そうやって条件と照らし合わせながら探していたところで出会ったのが、こちらの案件でした。エリアは当社からなんと車で10分の距離、業界もぴったり、金額的にもはじめの一歩としては、ちょうどいい規模感でした。実はこれまで仲介会社の紹介や他のM&Aプラットフォームでも案件を見ていましたが、我々が希望するエリアでの高齢者向け住宅事業は全くといっていいほどなかったので、一目見て迷うことなく踏み出せました。すべてが魅力的でした。

先程もお伝えしたように、一から作ることも検討しておりましたが、もし同じ場所で施設を新しく建てようとしたら、購入金額の3倍は確実に掛かっていたでしょう。また期間も1、2年は掛かっていたと思います。それがM&Aによって、低コストでスピード感をもって進めることができたのは、運がよかったとしか言いようがありません。



【在宅で治療し、再入院させない医療への思いが原点】

- そもそも訪問診療を始められたのは、なぜでしょうか。
私自身、最初は病院に勤務しており、救急医療の現場で働いておりました。何年かキャリアを積み、救急医療については、ある程度やり切った感覚があり、そこから慢性期医療や終末期医療について興味がわき始めたのです。そして病院を辞めて、在宅医療に転向しました。

もともと病院のドクターの大きな目標は、患者さんに退院していただくことです。しかし高齢者の方は退院しても、複数の疾患を持っていらっしゃる方も多く、またすぐに病院へ戻って入院してしまう。それが私自身、病院医師としての力不足を感じていました。退院後に自宅でも、しっかりと医療を提供し、再入院させないようにする、そういうドクターが必要なのではないか。当時はそういう先生が地域にいらっしゃらなかったので、ならば自分がやろうと思ったわけです。

在宅医療は徐々に増えてきているものの、まだまだ手をつける先生の少ない分野です。24時間365日対応する必要がありますので、そこが高いハードルになります。現在、他の先生方からこういう患者さんがいらっしゃるから対応をお願いしたいと、むしろ頼まれている状況です。

- M&Aの交渉はどのように進みましたか? ご自身のどのような点をアピールされましたか?
交渉は、特に問題なく非常にスムーズでした。売り手様は、地域の介護や高齢者のケアに非常に熱心に取り組まれている方。最初にお会いしたときから、我々の考えと、とてもマッチしていると感じました。とはいえ、交渉の場ではほかの買い手希望の方と比べられますので、我々としては、売り手様の事業をそのまま継続し、入居者のかたの健康を守る、それだけでなく入居者の方には、より医療面を充実させたお住まいとして過ごしていただけると、医療法人としての強みをアピールさせていただきました。

その点については売り手様からも評価していただいたようで、我々のような医療法人であれば安心して託せるということをおっしゃっていただきました。

条件面に関しても、我々としてはもともと予算を5、6億円以内と考えていたため、今回一切金額交渉をせず、すべて売り手様の条件で進めました。一回目にお会いしたあとは、もう基本合意という形で、それからは先方の仲介会社の方にお任せし、こちらは事務方が主導していく形で問題なく進んでいきました。

金額については、こちらも事前に金融機関に相談しておりました。土地建物の評価も問題ない、融資も問題ない、むしろ非常にいい条件でのM&Aなのではないかと、私自身も感じていたことを言われました。

ですから金額面について苦労することはありませんでした。私の勝手な印象ですが、売り手様もあまり金額にこだわっていらっしゃらなかった気がします。高く売りたいといったことではなく、事業を続けてもらいたい、地域への貢献を続けてもらいたいという熱意を強く感じました。



【医療法人は賃貸事業がNG?交渉時に立ちはだかった壁】

- 交渉の中で想定外の出来事はありませんでしたか?
特に大きなことはありませんでしたが、細かい点についてはありました。それは売り手様が建物の1階をデイサービスの運営会社さんに賃貸されていたことです。そこを含めて買い取らせていただく交渉を進めておりましたが、実は医療法人では不動産を賃貸することが認められていない……、もしかしたら買えないのではないかという懸念に直面しました。

そこで行政と相談し、私個人が不動産事業を買うという形で、事業を切り分けることで解決しました。しかし、そうした行政とのやりとりが増えてしまったため、最終合意の時期が当初の予定より1、2カ月遅れてしまいました。その点に関しても売り手様にはご理解いただき、しっかりと交渉を続けさせていただけたのはありがたく思いました。

あとは高齢者の方々に我々の住宅事業を紹介する会社と契約しているのですが、意外と紹介数が少ないという感触です。現状は独占契約なのでお任せしている状況ですが、多くの方に使ってほしいという思いは持ち続けているので、契約形態を変えるか、別の会社にも委託するかなどを検討中です。

【コロナで増える訪問医療、資金繰りに困る医療機関もM&Aで助けたい】

- 引き継ぎはどのようにされましたか?
施設運営にしても営業にしても、すべて外注されていたので、直接の引き継ぎはほとんどありませんでした。経営者が変わっても、何らサービスは変わることはないので、引き継ぎも非常にスムーズでした。入居されている方には事前に売り手様がご挨拶まわりをしてくださっていました。すべて外注で従業員の引き継ぎもなかったということは、初めてM&Aに挑戦する上で負担が少なく助かりました

現状、利用率は8割から9割ほどで、かなり部屋数は埋まってきています。経営的にも住宅事業自体に加え、ここから我々の強みである訪問診療がサービスとして追加されるので、売り上げとしても伸ばしていける見込みです。

- 今回のM&Aを振り返って、どこに成功の要因があったとお考えですか? また今後の事業展開は?
やはり売り手様のお人柄ですね。金額ではなく事業の継続性を重視されていましたので、そこが我々とぴったり合いました。オーナー同士の相性が、決定的にうまくいった要因だろうと思います。金額にこだわらなかったこともよかったのでしょうね。

今後は、がんの終末期の方や難病の方のお看取りまでをお受けする、そこに絞った施設にしていくことを考えています。M&Aについても今回は、はじめの一歩として小規模な施設でしたが、今後は、より大きな居室を持った施設、中小規模の病院やクリニックなども検討しています。

今はコロナ禍で多くの医療機関が減収減益の中にあって、訪問医療は需要が増えています。住宅事業以外にも例えば、我々が資金繰りに苦しんでいる医療機関をM&Aで助けることができれば、互いにウィンウィンになるのではないかと思っています。横浜市内の別のエリアで案件があれば、ぜひ積極的に進めていきたいですね。

- お話いただき、ありがとうございました。



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  • 池田純子)
  • ライター紹介池田純子

    大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーのライター・編集者に。暮らしやお金、子育てにまつわる雑誌記事の執筆や単行本の製作に携わる。さまざまな生き方を提案するインタビューサイト「いま&ひと」を主宰。