2021-01-26

介護分野で全国トップクラスの拡大スピードを誇る企業が仕掛けるM&A!「注力する障がい者事業のノウハウを吸収する」

買:日本アメニティライフ協会

<中小企業の事業拡大M&A・買収事例>

 

神奈川県と東京都で約250か所の介護事業所を運営する、株式会社日本アメニティライフ協会。「照一隅」=「陽の当たらないところに光を当てる」という考えのもと、利用者のニーズに沿った施設を次々と展開してきました。もともと年間で10件以上のM&Aを積極的に推進していた同社ですが、2020年から障がい者グループホームの運営にも注力し始めるに伴い、今回のM&Aを実施。毎期黒字を達成している東京・練馬のグループホームを買収しました。今回の買い手としてM&Aを進められた取締役事業本部長の江頭大さんに、今回のM&Aの意図や売り手様に売却先として選ばれた理由、M&Aにおけるアドバイスなどを伺いました。

【「困っている人を支援したい」神奈川・東京の地域限定で約250か所の介護事業所を集中展開】

- まずは、株式会社日本アメニティライフ協会の事業内容について教えてください。
当社は、神奈川県と東京都を中心に、グループホーム「花物語」、介護付有料老人ホーム「花珠の家」など、約250か所の介護事業所を運営する企業です。介護福祉士の養成を行う専門学校の立ち上げや経営に携わった経験のある創業者が、介護保険制度が開始する前の1996年に設立しました。

創業者は、専門学校を経営する中でスウェーデンのグループホームケアなど、さまざまな海外の先進的事例に出会いました。一方、日本では認知症患者の方が身体拘束される場合も多く見られるなど、適切なケアができる施設が無くて。そのため、認知症患者様のための施設の開設からスタートしました。世の中にないサービスを作ることになるので、苦労も絶えず、周りからの風当たりも強かったと聞いています。

認知症患者様向けの施設を展開する中で聞こえてきた悩みを解決するために、生活保護受給者の方も入居できる安価な有料老人ホームの福寿、24時間看護師が付いている療養センターなど、当時としては斬新なコンセプトを打ち出し、新たな施設を開設していきました。

当時は生活保護を受けている、もしくは低所得の高齢者の方は行き場がなく、行政に相談してもいろいろな課にたらいまわしにされ、困っている方が多い状態でした。

当社としては「照一隅」、つまり「陽の当たらないところに光を当てる」という考えを大切に、困っている人に寄り添った事業展開をしています。

- 2019年ごろから、新しい施設の開設が加速しているようですが、なぜでしょうか?
新規の施設開設を行いながら、組織をしっかり固めて施設数の増加を支えられるようにするなど社内の体制を強化していたんですね。積極的に拡大していく姿勢が周りに伝わるようになると、知り合いの方を通じてたびたびM&Aのお話が舞い込むようになりました。すると、2018年~2019年ごろから急激に介護施設のM&A案件が増加してきて、その頃にはしっかりとした体制を築くことができていたので時流に乗ることができたんです。

- 介護施設のM&A案件が増加したのは、どんな背景からなのでしょうか?
介護業界も、最近は競争が激化して大変な状況になってきています。その中で、「このまま運営を続けていていいのか」と考える方が増えているようですね。

新型コロナウイルスの感染拡大で、その傾向はより顕著になっています。余裕の無い状況でなんとか頑張りながら耐えてきた介護施設が多い。だからこそ、先行き不透明な時代に直面して「このタイミングで売却しよう」と考える企業様も多いようです。



(日本アメニティライフ協会本社)

【障がい者事業のノウハウを得るため、割高でも踏み切ったM&A】

- 今回、東京都練馬区にある精神・知的障がい者の方を対象としたグループホームのM&Aに至ったのはなぜですか?
2020年7月に、別件のM&Aで認知症高齢者グループホームとあわせて障がい者グループホームを譲り受けたんです。障がい者を対象としたグループホーム事業は、もちろん高齢者とはターゲットが異なりますが、提供するサービスは近しいものがあります。

ですので以前から施設の開設について話題に上っていたので、「譲り受けるこのタイミングから注力していこう」と決めて。積極的に自分たちでも探そうとTRANBIに登録し案件を探す中で、この案件を見つけたんです。

当社の展開エリア内であったこと、経営者の方が障がい者向け事業に対して幅広い知見を有しており定期的に情報交換ができてアドバイスをしていただけること、会社そのものではなく事業単独での譲渡をしていただけることなどの条件に当てはまる案件でした。

障がい者グループホームに関しては当社として2施設目であり、社内にまだノウハウが少なかったので、「アドバイスをしていただけること」は譲れない条件でした。

事業譲渡を求めていたのは、スピード感を持って対応できるためです。株式譲渡ですと、見えないリスクが付帯される可能性が拭えないのと、交渉の際に小規模の会社様の場合確認が必要な資料が出てこないケースがあるのです。リスク回避のために、当社のM&Aでは出来る限り事業譲渡に切り替えていただいています。

- ノウハウ獲得という一面も今回のM&Aは大きな要素だったわけですね。案件を知ってからは交渉をどのように進めていきましたか?
今回窓口としてやりとりさせていただいたのが仲介会社であり、資料提供を受けながら、譲渡希望価格が交渉範囲内であることを確認して、トップ面談と現地視察を依頼しました。その後、条件調整を行いながら譲渡契約書の調整を行いました。

- 介護事業所を多数運営されてきた御社ですが、やはり高齢者のケアと障がい者のケアでは気を付けるべき部分も違うのでしょうか。
はい。認知症高齢者グループホームでは日常生活全般のケアが必要な一方で、障がい者グループホームは障がい者の方の自立を支援する施設なので、見守りや相談体制をつくることが大きな役割になります。

また、身体的な労働としては高齢者介護の方がきついかもしれませんが、精神的労働に関しては「見守り、自立を促す」という視点が必要な障がい者介護は気を遣い、大変な面もあって。そのあたりの違いがあるので、売り手様からノウハウを教えていただきたいと思っていました。

- 価格交渉での苦労などはありませんでしたか?
特にはありませんでした。というのも、仲介者の方がこちらに寄り添って、非常に柔軟に調整してくださったんです。こちらから売り手様に直接申し上げにくいことも、間に入って伝えてくださいました。

最終的に、当初の売却希望額の3分の2の金額で話をまとめることができました。実は、それでも少し高額という印象でしたが、「今後5年間、障がい者グループホーム運営や展開にあたっての相談に乗っていただく」という条件を譲渡契約書に盛り込み、今後のコネクションも含めて考えると投資効果に見合うと感じて決めました。

- その他、契約締結にあたっての苦労はありませんでしたか?
苦労ではないのですが、契約書の調整を行うタイミングで、売り手様がアドバイザーを務めてられている法人様が、一部当社と同じエリアで事業を展開されているとわかったんです。そのため、競業避止義務に基づいてアドバイザー契約の解除をお願いしました。



(※あくまでイメージです)

【M&A実績と事業規模が売り手から評価】

- 売り手側の企業様は、複数社と交渉されたと聞いております。御社のどんな点が評価されて、売却先として選ばれたとお考えですか?
当社は神奈川・東京に特化して介護事業を行っているにもかかわらず、介護業界では全国トップクラスの施設の拡大スピードを誇っています。現在約250か所の介護事業所を運営しているという実績や規模感を見て、「安心して任せられる企業だ」と思っていただけたようです。

規模感が大きいので、本部側から各施設をフォローできるなど体制がしっかりしている点や、成長スピードが早いからこそ社員にとってステップアップの機会が多いこともご評価いただいたのではないかと思います。

売り手様は介護人材を安定的に確保し、毎期黒字を達成するなど順調に事業成長していながらも、「これ以上の事業成長・規模拡大については、自分たちの手で進めていくのは難しい」というご判断もあり、売却をお考えになったようです。

そのため、すでに規模が大きく安定している当社に託してくださったのだと思います。

- 交渉自体がうまく進まないケースはどういう理由が多いのでしょうか?
不動産の賃貸契約を結んでいる場合、売り手様とは別に不動産オーナーとの交渉もあわせて必要となります。案件自体の交渉は進めつつ、不動産オーナーにも先んじて打診させていただき、感触次第で難しそうなお相手の場合、すべての交渉を途中で断念することはあります。

今回は3ユニットを譲り受けるというものでしたが、それぞれの施設ごとに不動産のオーナーが別にいてそれぞれと賃貸契約を結び直さなければならないという点ではけっこう骨が折れるものでした。

- 事業譲渡後の、障がい者グループホーム運営に関しては、順調に進みましたか?
はい。障がい者グループホームを管轄する部門は、1施設目を買収したときから稼働していたので、スムーズに引き継ぎを進めることができました。

障がい者グループホームで働いていた職員の方は、事業譲渡後もそのまま残って働いてくださっています。マネジメントに関してだけ、もともと当社にいた人間が行っていて。週に1回ほど訪問したり、定期的に電話で相談に乗ったり指示を出したりしながら、コミュニケーションを取っているんです。

本部からフォローできるようになった今の体制は、職員の方にも喜んでいただいています。こうしたケアができるのも、組織が大きく本部体制がしっかりしている当社の強みですね。

- 事業譲渡にあたっては、あらゆる契約のまき直しなどが発生するかと思います。施設の利用者様に対する条件は、売り手様側のものを引き継ぐのか、御社規定に変わるのかどちらなのでしょうか?
今回の案件では、基本的には売り手様側のものの多くを引き継いでいます。一方で、すべて当社規定に変える場合もあります。ただ、変える場合も利用者様にとって特に重要な利用料などは上げることなく、むしろ下げているので、トラブルは起こらずスムーズに進んでいますね。

- また、事業譲渡後も売り手側の経営者様にご相談に乗っていただくという契約内容だったそうですが、コミュニケーションは順調に取っておられますか。
はい、障がい者グループホームの担当者が直接相談に乗っていただいています。当社では来年度、新規で障がい者グループホームをいくつか開設する計画を持っているのですが、新規開設は初めてなので、進めるにあたっていろんな疑問や不安があって。

それらを電話やメールで気軽に相談させていただけるので、戦略を考える際の参考になりますし、社内にノウハウが蓄積されていっています



(他に運営されている介護施設の様子)

【何より重視すべきは事業デューデリジェンス】

- 御社は積極的にM&Aを進めてこられていますが、どんなところがM&Aの魅力だと感じますか?
当社は新規施設の立ち上げも多くやっていますが、新規事業の0→1を作ることはかなり難しいと実感しています。その土地での信用をつくるところからですし、地域のマーケティングをし、売上見込みを立てるまでにも時間を要します。

一方、M&Aならば、すでに売上が立っている施設を譲り受けることができますし、土地を仕入れるまでの時間を短縮することができます。今回のように、まだそれほど知見の無い領域に進出する際には、ノウハウを授けていただけるという点でもメリットがありますからね。

- 今後、M&Aを考えている人へアドバイスをお願いします。
財務デューデリジェンスや法務デューデリジェンスの調査も重要ですが、何より重要なのは事業デューデリジェンス。引き継ぎ後に安定した営業利益をきちんと挙げていくことができるのかを見極めることです。

もちろん、売り手様の現在の業績が良いに越したことはありません。しかし、すでに自社で同様の事業を行っている場合は特に、今の業績にとらわれるだけではなく、「その事業を、自社で手掛けたらどれほどの収益が上がるのか」をイメージできることが重要になります。

当たり前のことですが、「何年間我慢することで、利益を確保できるようになるのか」によって適正な譲渡金額も変わるので、その確認が一番大事だと思います。収支のイメージを先に作ることができて条件が合えばM&Aを実行、具体的にイメージできなければ「今のタイミングではない」、と判断すべきではないでしょうか。



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  • 倉本祐美加
  • ライター紹介倉本祐美加

    関西学院大学卒業後、クラウド製品を扱うIT企業のインサイドセールス職を経て2016年にライターとして独立。企業取材を中心としたインタビュー原稿の制作に従事していますが、エンタメ・スポーツ・文化等幅広く好みます。