後継者不足はマッチングサービスが解決。利用時の注意点は?

後継者不足はマッチングサービスが解決。利用時の注意点は?

M&Aのマッチングとは、ニーズの合致する売り手と買い手を引き合わせることを意味します。深刻化する後継者不足の解決策としても、マッチングサービスが活用されているのをご存じでしょうか?サービスを選ぶ上でのポイントや留意点を解説します。

M&Aの「マッチング」とは?

M&Aでは、『マッチング』という言葉が頻繁に使われます。日常生活やビジネスシーンでも耳にする言葉ですが、M&Aにおけるマッチングとはどのような事柄を指すのでしょうか?

売り手と買い手を引き合わせること

M&Aのマッチングとは、会社や事業を売却したい『売り手(譲渡会社)』と、会社や事業を買収したい『買い手(譲受会社)』を引き合わせる行為を指します。

英単語の『マッチング(matching)』には、『組み合わせること』『調和すること』『(データを)突き合わせること』という意味があります。

M&Aのマッチングは、『売り手と買い手の希望をくみ取った上で、それぞれに適した相手を探すこと』と捉えてよいでしょう。M&Aの仲介業務やサービス、仕組み自体をマッチングと表現するケースもあります。

後継者不足を解決する手段にも

近年は、中小企業の後継者不足を解決する手段として『マッチングサービスの活用』が注目されています。

2025年までに70歳(平均引退年齢)を迎える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人と予想されていますが、そのうち約半数の127万人は後継者が未定です。企業の廃業を食い止められなければ、多くの雇用が喪失し、経済も悪化の一途をたどるでしょう。

中小企業庁では『事業引継ぎガイドライン』を策定し、M&Aによる第三者への事業承継を推奨しています。事業を譲りたい経営者と創業を目指す人をつなぐプラットフォームとして、マッチングサービスが活用され始めているのです。

廃業という選択肢では、設備・在庫の処分や建物の原状回復などに多額の費用がかかります。廃業に伴う支出が抑えられる点もM&Aのよいところでしょう。

参考:中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題|中小企業庁

代表的なマッチングサービス

『事業承継マッチング支援』『後継者人材バンク』『事業承継・M&Aのマッチングサイト』は、M&Aマッチングサービスの代表格です。各サービスの特徴を比較しましょう。

事業承継マッチング支援

『事業承継マッチング支援』は、日本政策金融公庫(以下、日本公庫)が提供するマッチングサービスです。日本公庫は、民間金融機関の補完を目的に設立された政策金融機関で、融資をはじめとする創業・事業支援を行っています。

事業承継マッチング支援は、『後継者不在で悩む経営者』と『創業や事業拡大を目指す経営者や投資家』を引き合わせるサービスです。譲渡希望・譲受希望のいずれの場合でも利用料はかかりません。利用の流れは以下の通りです。

  • 郵送やインターネットで相談・申し込み
  • 必要書類の送付
  • 相手探し
  • 面談に向けた検討
  • 面談・交渉
  • 譲渡契約の締結

日本公庫の融資先の約9割は、従業者数9人以下の小規模事業者です。従って、マッチングサービスの利用者も小規模事業者が中心となります。

登録する|事業承継マッチング支援|日本政策金融公庫

後継者人材バンク

『後継者人材バンク』は、中小企業庁が設置する『事業承継・引継ぎ支援センター』が取り組むマッチングサービスです。深刻化する後継者不足問題を受け、全国に相談窓口を設置しています。

サービスの利用はセンターでの相談・登録が前提となるため、まずは近くのセンターに詳細を問い合わせましょう。相談は完全予約制で、電話またはメールで予約ができます。

マッチングや事業承継に関する相談は無料です。アドバイザーの人件費は国費で賄われており、タイムチャージはありません。全国47都道府県にあるセンターと情報共有を図っているため、遠隔地間のマッチングも可能です。

参考:後継者人材バンク|事業承継・引継ぎポータルサイト

事業承継・M&Aのマッチングサイト

事業承継やM&Aの増加に伴い、民間の企業が運営するマッチングサイトが増えています。国の機関が運営する『事業承継マッチング支援』や『後継者人材バンク』は、無料で利用できるものの、案件数に限りがあります。

場合によっては、登録・相談のために窓口に足を運ばなければならないため、多忙な人にとっては不便さを感じるかもしれません。その点、マッチングサイトはいつでも好きなときに案件探しができるのがメリットです。

マッチングサイトの機能は以下の3タイプに分かれますが、最も一般的なのがマッチングする場を提供するだけの『プラットフォーム型』です。

  • プラットフォーム型のマッチングサイト
  • アドバイザー紹介型のマッチングサイト
  • 特定の仲介会社が提供するマッチングサイト

プラットフォーム型の場合、マッチング成立後は当事者間で直接交渉をするため、基本的にアドバイザー料はかかりません。利用時はそれぞれの利用規約に従い、会員情報の登録を済ませます。サービス料や利用方法の詳細は各サイトを確認しましょう。

TRANBI(トランビ)

TRANBIは、中小企業庁の事業承継・引継ぎ支援センターと連携する民間プラットフォーマーの一つです。『Gomez M&Aプラットフォームサイトランキング』では、2021年と2022年に1位を獲得しており、特に『情報の充実度』と『信頼感』において高評価を得ています。

M&Aの案件掲載数は2,500件以上で、1,000万円規模のスモールM&A案件が1,000件以上を占めています。初心者向けのコンテンツやコミュニティーも充実しており、個人事業主や会社員でも参入しやすいのが強みです。

2022年4月からは、地方新聞社との共同プロジェクト『地域版メディアプロジェクト』を始動しました。『地域版TRANBI』では、事業承継関連ニュースや地域と縁のあるM&A成約事例を取り上げ、事業承継の促進を狙っています。

事業承継・M&Aプラットフォーム TRANBI【トランビ】

サービスを選ぶ上でのポイント

M&Aのマッチングサービスが急速に増えつつある昨今、自分に合ったサービスの見分け方を知っておくと、案件探しの効率がアップします。押さえておきたい三つのポイントを把握しましょう。

案件数の多さ

マッチングサービスを選ぶ際には、『案件数』『会員数』『成約実績』を確認しましょう。案件数が多ければ、それだけマッチングする確率は高まります。売り手の場合は、会員数や買い手ニーズの登録数ができるだけ多いサイトを選びましょう。

また、成約実績は最終的なマッチング数を示すため、『成約実績が多い=マッチングしやすい』と判断できます。

参考までに、TRANBIの会員数は10万人以上、M&A案件数は2,500件以上、未経験者によるM&A成約率は約75%です(2022年6月時点)。

中小企業庁は、2016年に『事業引継ぎ支援センターの認知度』を調査しています。『知らない』と答えた小規模事業者は77%にも上っており、認知度の低さが浮き彫りとなりました。

公的機関ならではの安心感はあるものの、マッチングサイトに比べると案件数や登録数は少ないと考えてよいでしょう。

参考:5 事業引継ぎ支援センターについて|中小企業庁

得意とする業界や規模

マッチングサービスによって、『得意とする業界』や『M&Aの規模』が異なります。1,000万円以下のスモールM&Aを希望する人が、数十億円規模の案件ばかりのマッチングサイトを利用しても、適した案件は見つかりません。

海外の企業を買収したい場合は、『クロスボーダーM&A』に強いサイトを探した方がよいですし、同業種間のM&Aを求めているのであれば、同業種に特化したサイトを利用するのが望ましいでしょう。

近年は、『飲食店向け』『IT事業向け』『東南アジア特化型』といったように、マッチングサイトの種類が細分化されつつあります。業界の事情に精通していればいるほど、取引先の選定をスムーズに行えます。

料金体系の分かりやすさ

マッチングサービスの料金体系は、サービスによって異なります。『コストがかさみすぎて先に進めない』という事態を避けるためにも、料金体系が分かりやすく表示されているサービスを選択しましょう。

『成功報酬型』と記載されている場合は、何を基準価格として金額を算出するのか確認する必要があります。最低報酬額が設定されていたり、成功報酬のほかに手数料が徴収されたりと、料金に関するトラブルは後を絶ちません。

公的機関のマッチングサービスは、『どこからどこまでが無料なのか』を事前に確認しておく必要があります。

サービス利用に伴う留意点

マッチングサービスを活用したからといって、必ずしもよい案件が見つかるとは限りません。マッチングサービスではなく、アドバイザーに依頼した方がよい場合もあります。サービスの利用に当たり、知っておくべき点を解説します。

マッチングが成立しない可能性がある

マッチングサービスは、マッチングを約束するものではありません。サービス利用料を支払ったにもかかわらず、マッチング不成立で終わるケースもあります。

後継者不足に悩む売り手の場合、業績が悪かったり、ビジネス構造に問題があったりすると買い手が現れない可能性は高いでしょう。

また、プラットフォーム型のマッチングサイトは、誰かが最適な案件を探してくれるわけではないため、M&Aの仲介業者を利用する場合に比べて、マッチングまでにやや時間を要する場合があります。

サポートが不十分なケースも

マッチングサービスのメリットは、M&A仲介業者やアドバイザーを利用するよりも費用を安く抑えられる点ですが、全てのプロセスにおいて専門的なサポートが不足しがちです。

事業承継マッチング支援や後継者人材バンクの場合、事業承継やM&Aに詳しいアドバイザーに無料で相談できます。ただし、企業価値評価や価格交渉、デューデリジェンスといった実務サポートは行っておらず、別途料金が必要です。

プラットフォーム型のマッチングサイトも、専門家によるサポートは別枠で、一定の費用がかかります。

M&Aの経験がなく、かつトラブルを未然に回避したいという人は、アドバイザーがセットになったマッチングサービスを選択するか、必要に応じて各専門家(弁護士・税理士・公認会計士など)にサポートを依頼しましょう。

まとめ

マッチングサービスは、公的機関が提供するものと、民間企業が提供するものに大別されます。それぞれのメリットや注意点を理解した上で、ニーズに合ったものを選択することが大切です。

サービスの良しあしは使ってみなければ分かりません。会員登録をすれば検索機能が無料で使えるマッチングサイトもあるため、気軽に試してみることをおすすめします。一つだけと決めず、サービスの併用も検討しましょう。

『TRANBI』の場合、案件の閲覧のみであれば料金はかかりません。まずは、会員登録(無料)をして、使いやすさや機能をチェックしてみてはいかがでしょうか?

ユーザー登録|トランビ 【M&Aプラットフォーム】
登録フォーム
ユーザー登録|トランビ 【M&Aプラットフォーム】

M&Aに挑戦する登録者数10万人以上、常時M&A案件数は2,500件以上を掲載中