2020-06-09

申し込みから2カ月で成約!10社以上のM&A経験で培った交渉術

買い手(法人):匿名

(※画像はイメージです)

<中小企業の多角化事例>

“生まれ故郷への恩返し”と“注力したい健康事業”、2つの希望条件がぴったりとマッチして、申し込みから2カ月で鹿児島県のスポーツジムを買収したS社(仮名)。今回担当者としてM&Aに携わった山川(仮名)さんにスピード成約を実現させた背景について語ってもらいました。なぜトントン拍子に話を進めることができたのでしょうか?どこをポイントに購入を決めたのでしょうか?

 

【次世代のために多くの事業を残したい】

- そもそもM&Aに興味をもったきっかけは?
弊社は関東地区で福祉や医療関連の事業を展開しています。現在、代表は60歳を超えており、次世代のために少しでも多くの事業を残したい、とM&Aを積極的に進めています。これまでも事業を売ったり買ったり、10回以上のM&Aを行ってきました。

今回、代表の生まれ故郷である鹿児島県に寄与できる案件であること、そしてこれから会社として注力したい健康事業であること、この2つの条件を満たすものを探していました。

【スピードが命。互いの熱が高いうちに話をまとめる】

- 2カ月という短期間で成約に至ったのはなぜでしょうか?
もともと弊社の代表は、何事もスピードの速い人ですが、売り手さんのスピードも速かった。双方のスピードの波が非常に合っていたのが、短期間で成約できた一番の要因だと思います。

たとえば、まずTRANBIの交渉ルームでやりとりし、その後、実名交渉に移ったわけですが、すぐに売り手さんから二期分の決算書が送られてきました。過去に実名交渉の経験はありましたが、こんなに早くさらけ出してくださったのは初めて。その時点で代表も、非常に好感を持っていました。

またメールのレスポンスも非常に速く、テンポが合っていました。代表は午前中に出社し、会社でいろいろなやりとりをしたあと、いったん外出して午後に、また戻ってくるというスタイル。ですから午前中にこちらからメールをお送りしておくと、代表が午後に帰ってきた頃に返事が来ているという状態で、不思議なくらいいつもタイミングが合っていましたね。こちらの問い合わせに対してすぐ決断して返事できる人は交渉がうまい人だと、代表の中ではこの段階でほぼ決めていたようです。

- 実際に何回ぐらい面談をしたのでしょうか?
実際にお会いしたのは2回です。1回目は、まだコロナ問題の影響がないころに、私ともう一人の担当者とで現地に足を運びました。施設や売り手さんの人となりなど、決算書では見えない部分を見るためです。

そのときの印象として残っているのが、売り手さんとスタッフの方とのやりとり。売り手さんがスタッフの方にかける言葉や態度にとても愛情がありましたし、スタッフの方もまた売り手さんを慕っておられた。相思相愛ということが見てわかったのです。そこで「売り手さんがいなくなったら、スタッフの方も辞めてしまうんじゃないですか」と率直にお尋ねしたら、「スタッフに残ってもらうように説得するのは、私の最後の仕事だと思っているので、そういった心配はありません」と力強くおっしゃられて。そういったところにも売り手さんの仕事に対する姿勢が垣間見られました。お相手の人柄や仕事観などは購入を決める上で大きな決め手になりました。

2回目は、売り手さんが弊社にいらっしゃいました。そのときは基本合意書の締結でしたので、実質的には契約でしたね。

【“いくさ”のような交渉。相手へ寄り添いながらリスペクトも忘れない】

- 案件に有利子負債があること、利益があまり出ていなかったことで迷いはありませんでしたか?
1,000万円の負債は大きいですが、買収金額とあわせて考えると会社的には躊躇する規模ではないと判断したことに加え、これは売り手さんに対する一種の“投資”でもあると考えました。

弊社はM&Aを積極的に進めており、売り手・買い手どちらの立場も経験しています。M&Aの局面では、どうしても買う側の立場が強くなります。これは代表の考えをそのままお伝えする方になるのですが、売る側にしてみたら、身を削られるような思いで自分が築き上げていたものを相手に譲り渡す行為であり、買い手としてはその思いをきちんと受け止めなければなりません。ですので、ディスカウントありきの交渉ではなく、相手の立場に寄り添った交渉をするのが筋だと思っています。

ただビジネスであり、同じ経営者として対等でもあるので、金額面で言いたいことがあればもちろん伝えるようにはしています。先方からは代表との交渉について「“いくさ”をしているようでした」と言われましたが笑。

- “いくさ”ですか!それはどういったやりとりだったのでしょうか?
代表は交渉が巧みで、売り手さんに対して最初は軽く「もう少し金額、何とかならない?」とジャブを入れて、相手が言葉に詰まると、別の柔らかい話題を振るんですよね。たとえば「本とかって何を読むの?」とか。一通りその話をしたあとに「そういえば金額はどう?」といったやりとりを3回ぐらい繰り返したそうです。最終的には、お互いが尊重しあった形に行き着きました。売り手さんは「厳しい時間でした(苦笑)」とおっしゃっていましたが、代表としては若い方であっても経営者としてのリスペクトを忘れない姿勢がそうさせたのだと思います。

一見相反するようにも見えますが、相手を重んじつつも経営者として対等に厳しく接する、この微妙なバランスこそがM&Aを成功させる経営者に求められるのかなと思います。

- 現在、引き継ぎはどのような状況でしょうか?
現在は売り手さんの仕事をスタッフの方に引き継いでいただいているところです。今後は現地に住んでいる代表の親族が顧問として入り、現場を任せることになっています。

今後の事業展開としては、現在、3店舗あるうちの1号店は設備と立地面から、移転・設備入れ替えを考えています。



(※画像はイメージです)

【決めるまでは念入りに、決めたら素早く】

- M&Aで購入する際に大切にしていることは?
代表は、常々「M&Aはスピードが命」と言っています。これだと決めたら、すぐにやるというスタンス。以前、買収した7,000万円ぐらいの案件も一日で決めたそうですから、今回の案件が非常に早く成約したのも例外ではありません。

その代わり案件を探すときは、しっかりと吟味しています。たとえばTRANBIのサイトで掲載案件をチェックするときも、私はどんどんスクロールしてしまうのですが、代表からは「早いよ、一瞬で見て決めるのではなくて、見た中で想像を膨らませるんだよ。たとえコロナが影響して休業している案件を見ても、目先の価値ではなくこれをきっかけにどう展開していくかという長期的な視点で見なさい」と常々言われていますね。

- 今回のスポーツジム以外に他に検討している案件はありますか?今後のM&Aの展望をあわせてお聞かせください。
私どもが健康事業に注力しているのは、事業の将来性が大きいからです。これから伸びていく業界だと予想しているからです。その他、アグリビジネスにも将来性を感じていますので、これからこの事業の案件も探していくつもりです。

- 今回のM&Aを振り返って率直な感想をお聞かせください。
今回、初めてM&Aに携わった私としては、M&Aというのは、まさに結婚。お見合いのようなものと感じました。過去にうまくいかなかったM&Aは、返事のタイミングが合わなかったことで、間隔がだんだん空いて自然消滅しているパターンが多いです。そう考えると、お相手との熱が高いタイミングでうまく話がまとまるというのは、すごく大事な要素。今回の成約で、つくづくそう実感しました。

- ありがとうございました!


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  • 池田純子)
  • ライター紹介池田純子

    大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーのライター・編集者に。暮らしやお金、子育てにまつわる雑誌記事の執筆や単行本の製作に携わる。さまざまな生き方を提案するインタビューサイト「いま&ひと」を主宰。