2020-07-07

社員の雇用と事業を守るM&Aに成功!  ~製造業を営む売り手がこだわった事業承継の条件とは?

売り手(法人):匿名

(※写真はイメージです)

<後継者不足による第三者承継事例>

10人程度の従業員を抱え、切削・研磨加工業を営むM社の村上社長(仮名)が、第三者への事業譲渡のために動き出したのは70歳のとき。自らの体力の限界を悟り、無念の思いを抱えながら譲渡先探しをスタートさせたが、数年たってもなかなか進まない。ところがTRANBIへ登録後、トントン拍子に交渉が進み、半年足らずで成約に成功。村上社長が譲渡にあたり、大切にしていたこと、そしてスムーズに交渉が進んだ要因を伺いました。

 

【数年かけても相手が見つからない……事業承継の難しさに直面】

- まずは売却に至った経緯を教えてください。
事業承継自体は15年ぐらい前から考えていました。当初は親族に継いでほしいという思いがありましたが、私には息子がいませんし、他の親族はみな自信がないといいます。自信がないというのに無理にさせて、問題が発生しても責任がとれませんので、やむなく第三者に譲ることを考え始めました。

本格的に動き始めたのは70歳のとき。正直、自分の限界をさとったときは、大変むなしい思いがありましたが、私自身の判断力があるうちにしておかなければと、事業承継の説明会に参加したり、事業引継ぎ支援センターなどの専門機関に相談したり、と行動をおこしました。ただ、数年たってもなかなか前進しません。困り果てていたなか、たまたまお話をした信用金庫に紹介を受けたのがTRANBI。すぐに登録しました。

インターネットを介した作業に多少の難易度を感じていましたが、全国を対象に買い手を募ることには不安はありませんでした。それよりも、この事業を社員、取引先のために残したいという気持ちのほうが強かったですね。登録後、すぐに多くの方からお申し込みをいただき、半年足らずという非常に短期間で成約に至ることができました

【立ち上げの苦労がわかる“創業者”に譲りたい】

- 事業譲渡にあたり、大事にしていた条件はどんなことでしょうか。
大前提としていたのは、大きく次の3点です。

① 事業を継続、発展していただけること
② 社員の雇用を守っていただけること
③ 相手の会社の信用度が高いこと

当社は自社開発している製品がありますので、その製品はどうしても守ってほしいという思いがありました。また社員もそのまま雇用していただきたい。そのためには、相手の会社さんの財力や安定性といった信頼度は重要になってきます。

それ以外も、相手の会社の規模も重要視していました。こちらは10人程度なので、あまり大きすぎると切り捨てられる可能性がありますこちらの社風などもある程度、汲んでもらえて急激な変化を求められないことも大事だと考えていました。

また実際に、さまざまな方とやり取りさせていただくうちに、買い手さんは創業者で事業経験をお持ちの方がいいだろうと感覚的に思うようになりました。私も創業者ですから、やはりその苦労を理解し合える方が望ましい。そういったなかで、最終的な絞り込みをおこないました。

【買い手の財務状況は決算書で必ずチェック】

- 最終的に決め手となったのは?
やはり事業も社員も安定して任せられる会社で、規模もちょうどよかったということ。そして買い手さんが創業者で事業経験があることですね。買い手さんの会社については、信用調査をとりましたし、過去にM&Aなさった先を含む、買い手さんのグループ会社合計3社分の決算報告書を見せていただき、大変堅調に経営されていることも確認しておりましたので、安心して成約に臨めました。

先方の会社は異なるエリアにありますが、こちらはもともと全国各地に取引先がいますので、距離的なことは問題になりませんでした。

- 交渉はどのように進みましたか?
最初はメールで何回かやりとりし、実際にお会いしたのは2回。1回目の面談では先方のM&Aの経験や、こちらの業績の問題や社員の性格など、いろいろなお話をしました。先方が自社の製品、開発体制に魅力を感じてくださり、こちらの要望にも誠実に対応してくださったので、こちらも求められる情報はすべて提供いたしました。

1回目の面談で、ほとんどこの方と決めていましたので、2回目にお会いしたときは契約を交わす話をしました。譲渡金額については、当初よりも減額し、まず社員の雇用を優先していただけるよう依頼いたしました。直近の決算状況があまりよくなかったこともひとつの理由です。たまたま最初にアプローチしてくださった会社が結果的に成約相手となりましたが、交渉は非常にスムーズに運びましたね。

- スムーズな交渉の秘訣はどんなところにあるのでしょうか?
一言でいうと、相手のお人柄ですね。メールから伝わる姿勢も非常に丁重でしたし、こちらからメールをお送りすれば、すぐに返信がくるといったように、対応も常にすみやかでした。その日中に連絡がもらえるというのはとても安心感があります。こちらの質問にも端的に回答されましたので、いったいどうなんだろうと不信に思うことも一切ありませんでしたね。

実際にお会いしたときも、メールの印象そのままの非常に信頼できるお人柄のように察しました。創業者ということもあって、大変苦労されている印象も受けました。

私どもの会社は田舎者の集まりですから、経営者にあまりパワーがありすぎて、ああしたい、こうしたいという理想を掲げられてしまうと、振り回されてパンクしてしまうので、穏やかにやってくださる方がよかった。そういう意味でも、この方はぴったりでした。

- 引き継ぎはどのようにされましたか?
財務は先方の経理の方、実務は当社の常務に引き継ぎました。当面は私どもが内容を見ながら、そのつど相談を受けるといった体制をとることになっています。

社員に対しては成約後すぐに、会社を売却し、私が退くことを伝えました。社員の中からは、若干不安の声も上がりましたが、今も全員残っていますので、この譲渡を受け入れてもらったのだろうと思っています。


(※写真はイメージです)

【海外展開の夢がいつか叶うなら…】

- 今後、買い手さんには、どのような展開を望んでいますか?
自社で開発している製品に自信をもっておりますので、もっと海外に展開してほしいという思いはあります。

すでに相当台数、海外に出ていますが、これまでは日本の取引先を通じて、海外に売り出す形でしたので、現地で自ら営業すればもっと売れるだろうなと思っていました。今まで日本でやっていた仕事がどんどん海外に場を移している状況もありましたので。ただ私には財力がなくてできませんでしたが、それができればぜひやってほしいですね。

ともかく何よりも心配だった社員の雇用が守られたのは、ひと安心です。このM&Aは満足の一言ですね。

- ありがとうございました!

 

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  • 池田純子)
  • ライター紹介池田純子

    大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーのライター・編集者に。暮らしやお金、子育てにまつわる雑誌記事の執筆や単行本の製作に携わる。さまざまな生き方を提案するインタビューサイト「いま&ひと」を主宰。

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