2020-08-11

コロナ禍で果敢に地域密着型の居酒屋を買収! 建設業が飲食業を異業種M&Aした理由とは?

買い手(法人):(株)ウィリング

(買収した地域密着型の居酒屋「西蒲田横丁」)

 

<中小企業の多角化事例>

 

コロナ禍において「西蒲田横丁」という地域密着型の居酒屋を買収し、二度目のM&Aを成約させた、建設業を営む株式会社ウィリングの櫻山社長。一度目は同業種の建設業でしたが、今回は飲食業という全くの異業種にもかかわらず、約1千万円での事業譲渡を1カ月で実現させました。そもそもなぜ異業種の飲食業に参入しようと思ったのか。そしてチャンスを掴み、見事スピード成約を実現できた要因とは。


(今回の買い手である、株式会社ウィリングの櫻山社長)

【初挑戦の飲食業界。買収の条件はオーナーが残ること】

- 今回のM&Aのきっかけは? なぜ異業種の飲食業を希望されていたのでしょうか。
今は建物や内装の工事、住まいの運営管理など“住”に関しては、やらせてもらっているので、次は“食”かなと。人に関わる“衣食住”を我々の会社の軸にしていきたいと考え、今回のM&Aにチャレンジしました。建設に携わる職人さんたちも私も食べたり飲んだりするのは好きですし、ゆくゆくはつながるところがあるのかなと思いながら飲食業を探していました。

飲食業は初めて挑戦するジャンルで慎重に案件を見ていましたが、、、金額的に資金繰りを圧迫しない範囲内でまずは興味のある案件から交渉してみることにしました。一度目のM&Aは業種がある程度近かったのでホームページや決算書のチェックで判断がつく部分もありましたが、今回は表面的な情報ではやはり判断できないので何人もの方と面談をしてみるなかで絞り込んでいきました。

- 買収にあたって譲れなかった点はどんなことでしょうか。
私はずっと建設畑でやってきて、飲食業の経験はゼロ。スタートの時点で、その事業のことをよくわかっている人がいないと運営自体がうまくいかないだろうと思っていました。ですから買収の大前提として、オーナーさん、できればスタッフの方にも残ってもらいたいというのがありました。

そんなふうに、いっしょにやっていくことを考えていたので、やはり相手の方の“人柄”というのも気にしました。商売というのは、いいことも悪いこともありますから、悪いときにいっしょに乗り越えてやっていけることが大切。夫婦みたいなものですよね。

また地域的なことでいうと、やはり本社のある東京がよかった。あまり遠いと時間もお金もかかるので、そのうち行かなくなってしまうだろうし、任せっぱなしにはしたくなかったので、やはり東京という地域にはこだわりましたね。

居酒屋という業種を選んだのは、職人さんたちにもある程度なじみのあるものにしたいなという考えがありました。彼らが帰りがけにちょっと寄っていけるようなお店をイメージしていましたね。



(店内の様子)

【売り手の狙いは安定した企業の傘下に入ること】

- 交渉はどんなふうに進んだのでしょうか。1カ月というスピードで成約に至りましたが?
最初の面談は4月末。コロナ禍で、売り手さんも休業中でしたので、比較的予定をすり合わせやすい時期でした。

その後は、週に3、4回のかなりのペースで会って(笑)、これまでの仕事のことや、これからどうやって仕事をしていきたいか、いろいろなことを話しました。こちらからは、オーナーである売り手さんにもスタッフの方にも残ってほしいという気持ちを率直に伝えたところ、売り手さんのほうも、いったん売却するものの、経営のことを勉強しながら、まだまだやっていきたいという意向でした。一店舗だけでなく、これから多店舗展開していきたいとの思いもお持ちでした。売り手さんとしてはコロナ禍での打撃を踏まえ、今後は財務的に安定している企業と組むことが最良の選択肢と考えてTRANBIに掲載したようです。

私も同じようなビジョンを描いていたので、じゃあ一緒にやりましょうと。私どもより高い買収金額を提示したところもあったようですが、互いに同じ方向を向いていたというところが、売り手さんに選んでいただいた一番の理由でしょうかね。

実は、他にも交渉していた案件がありましたが、そちらの売り手さんは事業譲渡をしたら抜けるので、あとはやってくださいというスタンス。一緒にやりませんか、と声をかけましたが、いいお返事がありませんでした。コロナ禍であまり事業がうまくいっておらず、もう辞めたいと思っている人に、一緒にやりましょうと言っても、じゃあやりましょうとはなかなかならないですよね。そういう点でも、こちらの売り手さんは、非常にポジティブ。この人となら、やっていけると何度かの面談で確信しました。

スピード成約の要因は、たまたま休業期間で会う回数が多くて、どんどん話が進んでいったからでしょうね。資金繰りも苦労されており、スタッフの給料も止まっていると聞いていたので、ならば早く成約して、運営を少しでも早く安定させてあげたいと思ったのも事実です。



(経営について議論する、櫻山社長(右)と今回の売り手である店長(左))

【コロナ禍だからこそ逆にチャンス】

- コロナ禍でのM&A、不安はありませんでしたか?
私は自分のアイデアを誰にでもしゃべるので、いろいろな人がアドバイスをくれました。なかにはやめたほうがいいという人もけっこういましたが、こういう時期に挑戦するからこそ、通常時と比べて金額的に有利に交渉できるし、案件も多く出されているため選択肢が広がるというメリットもある。売り手さんとスタッフの方を見て、不思議と自信のほうが不安よりも大きかったですね。

もちろん営業の数字は気になりましたので、ここ1年の決算書を見せてもらいました。すぐにそこまで戻せるわけではないですが、将来を考えたときに事業として十分に成り立つことを計算できる内容でした。それに売り手さんだけでなく、スタッフの方もみんな真面目で前向きでした。

決算書の数字と彼らの仕事に対する姿勢を見て、私は飲食業をやったことがないけれど、いけるんじゃないかという自信が出てきたんです。大変な時期ですが、だからこそチャンスともいえます。何もしないのも正解だし、いろいろチャレンジするのも正解。人それぞれに経営判断はあると思いますが、私は時期的にチャレンジすることがすごくチャンスだととらえたのです。

- 引き継ぎはどんな形で行われましたか?
売り手さんは個人事業主でしたので、事業譲渡という形で、営業権や店舗内の資産を引き継がせていただきました。賃貸契約や電気・ガス・水道の契約をすべて変更し、スタッフの雇用体系を見直し、取引先にオーナーが変わる旨も伝えました。スタッフの方もやめることなくすんなり受け入れてくれたし、取引先の方も承知しました、と何の問題もありませんでしたね。

店舗のメニューは私がどうこういう前に、スタッフの方が自分たちで新しくしようと休業中に新メニューを開発していました。

- 既存の事業とのシナジー効果はいかがでしょうか。
建設業と飲食業、正直言うと直接的なシナジー効果があるわけではありません。それよりも、これから建設業の職員と新しい飲食業のスタッフが、同じ社内の人間として深く付き合うことで、何か新しい創発が生まれるのではないかと期待しています。

すでに社員もお店へ飲みに行っていますし、それをすごく楽しんでくれています。私も何度も飲みに行っていて、いろいろなメニューを注文しています。これは最高にいいとか、これはもうちょっとこうしようとか。あまり口出ししてほしくないかもしれませんが(笑)、一消費者として率直な意見は言わせてもらっています。お客様って、おいしければまた来るけど、おいしくなかったら何も言わずにいなくなっちゃうものですから。



(お勧めの一品「チキン南蛮」)

【飲食業は多店舗展開、本体は他業種展開を目指す】

- 今後の事業展開についてお聞かせください。
この居酒屋については、独立心旺盛な気持ちのいいスタッフもいっぱいいるので、彼らの能力を活かせるように売り手さんといっしょに多店舗展開をしていきたいですね。

そして会社本体としても、飲食に限らず、いろいろな事業にM&Aでチャレンジしていきたいですね。まず数字、それから人となりを見させていただいて、この人とならうまくいくんじゃないかなという人といっしょにやっていきたい。

- 最後に、これからM&Aする人へアドバイスを!
M&Aは成約してからも重要です。買収から今後の運営に至るまで、かなりのマンパワーが要求されます。社長自身が関わることができればベストですが、なかなか時間的に難しい場合もあります。それであれば、最初から社内の信頼できるスタッフにM&Aの大部分において関わってもらうことが必要かと思います。

もともと別々の組織が一緒になるというのはそう簡単なことではありません。少しの違和感であっても事前に気づいておくことができれば、この先に起こる失敗を防ぐことができるかもしれません。経営者と同じ感性を持つスタッフに、現場の空気感を把握してもらい、経営陣に原寸大の報告を気兼ねなくしてもらうという体制づくりは大事です。ぜひ足元の体制づくりもやってみていただきたいなと思います。

- ありがとうございました!

【「西蒲田横丁」に関する情報はコチラ】




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  • 池田純子)
  • ライター紹介池田純子

    大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーのライター・編集者に。暮らしやお金、子育てにまつわる雑誌記事の執筆や単行本の製作に携わる。さまざまな生き方を提案するインタビューサイト「いま&ひと」を主宰。