2020-04-17

起業のために副業から始めるミニM&A 英会話教室の生徒数4倍をきっかけに独立へ

合同会社4U International様

飲食店のマネージャーとして静岡で働いていた中田聡喜さんが、広島で英会話教室や留学あっせん事業を手掛ける会社を購入したのが2018年10月のこと。もともと15名だった生徒が、いまや60名に急増。すでに二店舗目を考えているほど成長している。購入後、何を変えて、ここまで伸びたのか? そもそも購入に踏み切ったきっかけや経緯は? 代表の中田さん、そして中田さんを支える共同代表の丸子 ニール 秀人さんに聞いてみた。

Q. そもそも中田さんがこの事業を購入しようと思った理由をお聞かせいただけますか。

私は、もともと大学のときに教職を専攻していて、教師になりたかったんです。教科は理科です。ただ生徒に教えるにしても、一度社会で働いた経験を元にして教えたいという気持ちがあったので、大学卒業後は東京で就職しました。そこから静岡に配属されて、入社して5、6年経ったころでしょうか。やはり何か一人一人に直接的に働きかけることがしたい、勉強は楽しいんだよと伝えたい、そういうことを自分の手でやってみようかなという気持ちがふつふつとわいてきました。とはいえゼロから起業するのは、ものすごく体力が必要。資金も時間も工面するのは大変で、なかなかその一歩を踏み出せなかったんですね。

そんな時に書籍で“会社を買う”という選択肢があることを知り、これなら自分にもできるんじゃないか、とトランビに登録したわけです。

「交渉時は相手の気持ちをくみ取ることを大切にしていた」という中田さん。

Q. 英会話教室を選んだのはなぜでしょうか。

探していたのは、やはり教育関係。そして自己資金でやりくりしたかったので、価格は300万円以下という条件で検索していました。地域は特に絞っていませんでしたが、自分自身が島根県の出身なので、できれば西日本がいいなとは思っていました。

なぜ英語にしたかというと、実は僕はあまり英語がしゃべれないからです。ずっと英語を話せるようになりたかったけれど、サラリーマン時代はその必要もなかったので、本やアプリ、ネット教材など試しましたが続きませんでした。

ですから逆に英語環境に身を置き、外国の先生たちに囲まれたら、英語でコミュニケーションをとるしかない。強制的に英語を勉強するために、M&Aという方法で自分を追い込もうとしたわけです(笑)。自分ができない分、習いたい人の気持ちもわかりますしね。そんなふうに英語関係も意識しながら、探していたところに見つかったのが、この教室でした。

Q. どのように交渉は進みましたか? スムーズにいきましたか?

前の経営者の方とコンタクトをとったのは、おそらく僕が一番早かったと思います。見つけた瞬間にこれだ、と思ったんですね。英語関連で広島、そして金額的にも無理がない。それでも前の経営者の方は、3人ぐらいの方とお話しされたと聞いています。

交渉では、資金面は他の方に絶対に負けるので、前の経営者の方の気持ちをくみ取ることを大切にしました。前の経営者の方は、この会社を大切に育ててきた、それをしっかりと引き継いでもらいたい、そういった気持ちをお持ちのようでしたので、それをこちらが継続する意思があるというアプローチを心がけました。

とにかく相手の意図することを想像し、それに沿えるような答えをこちらから指し示す。当時、飲食業で行っていた交渉ごとと全く同じでした。面談は一度だけでしたが、こちらの思いを電話でお話しするなどして、交渉を終えました。2018年9月初旬から話を始めて、10月初旬に着地したので、比較的スムーズだったのではないかと思います。

Q. 事業を引き継いでからは、中田さんなりにどのように変えましたか?

購入したものの損益計算書を読むと、すぐに会社を辞めるのは厳しいかなと感じたので、しばらくは副業として携わることにしました。

引き継いだ時点で、英会話教室の生徒さんは15名、先生は3名。先生3名のうち、一人は辞めて、代わりにニールが入ってきました。引き継ぎについては、生徒さんには話せる人には直接話し、話せない人にはLINEで伝えました。先生とのコミュニケーションは英語が話せないせいで予想通り、苦労しましたね。

引き継いで、まず行ったことは雰囲気づくりですね。外国に行く一歩のハードルは一歩と言えどまだまだ大きい一歩です。その半歩ぐらいを目指し、アメリカの国旗を吊るしたり、世界地図を貼ったり、世界観にこだわりました。これらは全部、先生方が考えてくれました。

同時にインターネットで検索されやすいようにSEO対策もしました。世界観を作るためにホームページのリニューアルは必須でした。ただウェブデザイナーと言ったカッコイイ方を私は存じ上げなかったので、Twitterで"ウェブデザイナー″と検索し、上位にきた職業ウェブデザイナーの方から順にDMで依頼しました(笑)。快く引き受けて下さる方が見つかりその方にHPのリニューアルを担当頂きました。

それから価格です。海外への半歩をイメージした、入口として入りやすい価格にしました。また、価格体系がバラバラでわかりにくかったのを整理し、1回5,000円に。ホームページにも、わかりやすく記載しました。 

この教室のコンセプトは、とにかく“楽しい”ということ。こちらから教材を配って、教えるのではなく、生徒さんが求めているものを出す。たとえば、これから海外旅行をするなら、ここに行くといいよとか、こういう準備をしておくといいよといったことも、英語で提案します。つまり会話から広げていくということです。あとは“否定しない”ということも、楽しく学んでもらうために大切なことだと思っています。

とはいえ、引き継いでからも、しばらくは静岡で働いていたので、現場はニール任せ。彼がすごく頑張ってくれていたので、すぐに共同代表になってもらいました。もうそろそろ大丈夫かなと思ったのが、2019年11月のこと。約1年の副業経て、晴れて会社を退職し、こちらに完全に移りました。

主役はあくまでも生徒。生徒のリクエストに答えながら、授業を進めていく。

Q. ニールさんは、どういうきっかけで参画されたのでしょうか。

私は前の経営者の方に声をかけてもらって入りましたが、そのタイミングがちょうど事業継承の時期でした。私がしたかったのは、スポーツ留学のあっせん。私は父がアメリカ人で母が日本人で広島出身なんですね。13歳まで広島で育ち、中学校1年生の終わりからアメリカ。中学、高校、大学、とアメリカの学校に通い、29歳までアメリカで働いていました。商社やメーカーなど、さまざまな会社に勤めていましたが、私自身はアメリカに渡ってから大学卒業するまで野球をしていたので、いつかスポーツ留学をサポートする仕事をしたいという思いがあったんです。それで思い切って2018年に日本に戻ってきたところに、声がかかった。この会社なら私のしたいことができると思って入ったんです。

そして今は、経営陣として会社を回しながら、英語も教えて、留学サポートもして、ということをしています。留学サポートの実績としては、1カ月のトレーナー留学があります。これからまた野球留学をしたいという生徒さんがいるので、その準備をお手伝いしています。

ニールさんの夢は「スポーツ留学で日本とアメリカをつなぐ架け橋になる」こと。

Q. 中田さんは、どのようなところで前職とのシナジー効果を感じますか?

先ほどもお話ししたように、私は50店舗の飲食店を統括するエリアマネージャーとして働いていました。飲食店と英会話教室というのは、内容に違いはあっても、どちらも店舗なので、売上構造やPL構造など会計的な考え方は同じなんです。

ですから、この事業を購入したときも「新しいことを始める」というよりは「もう一店舗増えた」という感じでした。そういう意味で、サラリーマンとしての経験そのものがシナジー効果になっていたと言えますね。

Q. これからM&Aを目指す人に、お二人からメッセージをお願いします。

中田さん:まずは今、目の前の仕事を一生懸命されたほうがいいと思います。目の前のことを本気でやらないと、やっぱり次にいっても中途半端になってしまう。一生懸命やって何かを達成できたからこそ、次の世界でその経験が活きてきますから。

ニールさん:頼まれたことには、とりあえず“YES”。そこから次の扉が開けますよ。

経理は中田さん、オペレーションはニールさん、役割分担が明確だからこそ共同代表が成り立つ。

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  • 池田純子)
  • ライター紹介池田純子

    大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーのライター・編集者に。暮らしやお金、子育てにまつわる雑誌記事の執筆や単行本の製作に携わる。さまざまな生き方を提案するインタビューサイト「いま&ひと」を主宰。