2020-09-02

地方の包装資材会社が首都圏の印刷会社を買収!目的は法人営業力確保 ~“地産外消”で島根から全国へ、世界へ~

買(法人):タカハシ包装センター

<首都圏への展開強化を目的とした中小企業の買収事例>

   

島根県浜田市で食品トレーや段ボールといった包装資材全般の卸売業を営むタカハシ包装センターが、流通業界に大手クライアントを持つ東京の印刷会社である共和(現:キョウワ)をM&Aで子会社化して傘下へ。なぜ島根県の会社が東京の印刷会社を買収したのか。一方、なぜ印刷会社が包装資材の会社に事業を譲渡したのか。タカハシ包装センターの高橋将史社長と共和の髙橋央浩氏、双方に今回の経緯について尋ねました。

【首都圏への展開を強化することが狙い】

- まずは売り手の髙橋央浩さんに伺います。今回の事業譲渡の背景を教えてください。
売り手 髙橋氏)
当社は食品業界を中心とした大手流通業者に、デザインから印刷まで多様なニーズに応えている印刷会社です。もともと私の父が創業者から引き継ぎ、10年以上社長をやっていました。

昨年、私が事業を継承しましたが、私自身は経営者というよりプレイヤー気質。経営者として商売を広げること難しさを感じていたところに、公認会計士である弟から、より体力のある会社の力を借りて、いっしょにやっていくのがいいのではないかとアドバイスを受けて、TRANBIに登録しました。

- 買い手の高橋将史さんが、M&Aで買収に踏み切ったのはなぜでしょうか?
買い手 高橋氏)
当社は、ずっと地方で展開していて、地元の企業とも市場を大きくする努力もしてきましたが、市場の縮小スピードが早まり現状維持が精一杯。大手資本の会社が地方に進出してきて、地元の企業が疲弊し廃業及び倒産していく中、地元の中小企業が首都圏から外貨を獲得できるようにしたいと考えた結果、中国地方や九州地方だけでなく、東京にも営業所をつくりました。

しかしながら、弊社は地元にUターン志向で戻っている従業員が多いため、転居を伴う人事異動は難しい。そのため、M&Aによる人材確保の手段を考えるようになりました。その候補となりそうな会社をTRANBIで探し始めたわけです。

当社は食品業界向けに包装資材を提供する会社です。同業種で売りにでていた会社と面談したこともありました。ただ後継者難を理由に売却を考えられており、従業員も高齢者が多く、モチベーションの低い様子が伝わりました。ならば全く同じ業種でなくても、顧客が食品業界であればシナジー効果が高いだろうと考えて、今回のM&Aの実行に至りました。

TRANBIには以前から登録していましたが、(TRANBI社長の)セミナーに参加して「M&Aにより成長する時間を買う」という言葉を聞き、私も35歳で社長に就任して若手経営者のつもりでしたが、もう47歳になっており、ちょっとリスクを負ってでも挑戦してみよういう気持ちが強く湧いてきて、 まずは一歩足を踏み出してみようと思いました。


(※写真はイメージです)

【包装資材と印刷、同じ食品業界ならシナジーを出せる】

- 売り手 髙橋さんにお聞きします。申し込みから交渉、成約までどのように進みましたか?また成約の決め手は何でしたか?
売り手 髙橋氏)
最初に20件以上、申し込みをいただきまして、当初は同じ業界である印刷会社の方とお会いしていました。同じ印刷業なら、こちらのスキルをそのまま生かせますし、知っている業界なので安心感もある。しかしどんなに規模が大きく盤石な会社でも、時代の変化とお客様のニーズを考えると、なんとなく先の展望が描けません。

ならば、印刷業にこだわらず、当社のノウハウが活かせる業種に目を向けてもいいのではないかと弟と相談し、印刷会社以外にも目を向け始めました。

その中で我々が重視したのは、ある程度営業所を展開されていて、かつこれから伸びていくであろう会社、そして社長さんの人間性ですね。そして3、4社に絞らせていただいたところで出会ったのが、タカハシ包装センターさんでした。

包装資材なら印刷につながるところもあるだろうし、会社の業績も申し分ありません。なにより大きな目標を掲げて、高橋社長自らがエネルギッシュに動かれているのを目の当たりにして、ぜひ自分も仲間として加わってより広い視野で仕事をどんどんとっていきたい、買い手さんと会ってお話しするたびにそんな思いが募りました。

M&A交渉の実務的なことは弟に任せていましたが、特に大きな問題はなかったようです。

- 買い手 高橋さんにお聞きします。この交渉を振り返ってみて、いかがでしょうか。
買い手 高橋氏)
年間売上4千万円で、従業員4名ということだったので、案件の規模としては私の思い描く範囲内のものでした。失礼ながら企業規模としては小さいですが、初めて挑戦するには適正かと思いました。

実際に申し込んでから、直接お会いしたのが4、5回、あとはオンラインや電話でした。主に商談相手となった弟さんが公認会計士の資格を保有しており、私も中小企業診断士の資格を持っていますので、お互いに言わなくても理解している部分が多く、スムーズに話は運びました。

面談では、当社は島根県の会社で、東京に営業拠点がほしいこと、売り手さんとは同業界で包装資材と印刷ということで相乗効果もあるのではないかと率直にお伝えしました。実際に当社の商材をからめて、共和さんの営業先に売れば利益が出るだろうと思っていましたから。

ただし私自身、M&Aが初めての経験でしたので“見えないリスク”が気になりました。簿外債務があるとか、訴訟を抱えているだとか、そのあたりは注意して確認するようにしていました。あとは会社の風土があうかも重視していました。「従業員がやめたがっている」「会社の雰囲気が悪い」といったことがないか。ですから、実はお客の体を装って、一度、共和さんを訪ねてみたんですよ。この話をしているとは知らないふりをして。そうしたら、みんな若くて真面目に働いていて、雰囲気もよかった。これなら大丈夫だなと思いました。

最終的に弁護士さんにアドバイスをあおぎ、契約のことなど注意すべき点を教えてもらい、無事成約に至りました。


(※写真はイメージです)

【地産外消で島根県浜田市発、全国へ、世界へ】

- 買い手 高橋さんに伺います。今後の展望をお聞かせください。
買い手 高橋氏)
私の会社が島根県浜田市にあるということもあり、「浜田発全国へ、世界へ」ということを目標にしています。地元を元気にする仕事と、地元から全国、世界へと両輪でやっていきたいと考えています。

他の地元の仲間に、「東京に拠点をかまえ、ぜひうちの商品も一緒に売ってくれ」と言われます(笑)。地産地消ならぬ“地産外消”で地元の商品を外で広めることに貢献しながら、将来的にはひとつの持ち株会社をつくり、世界に向けていろいろな事業を展開していければと思っています。

- 今回の成約を踏まえて、これからM&Aを考えている人に、お二方から最後に一言お願いします。
売り手 髙橋氏)
M&Aはタイミングだと思います。今回の案件については、高橋社長が「年内までに」と期限を決めて売り手を探されていた、そのタイミングで出会えたというのは、本当にラッキーでした。これが半年ずれてもコロナの影響が出ていたりなどでダメだったでしょうね。

買い手 高橋氏)
我々はずっと東京に拠点がほしいと願っていました。ただM&A自体は初めてなので、慌てないように心掛けていました。そのためには、いろいろな情報を集めて、それを比較検討すること。私自身、TRANBIから毎日届く案件情報を見比べて、自分が購入したらこううまくできるなと思い描いていました。またこれが楽しいんですね。そして、相手のペースにあわせて交渉する。恋愛も同じで自分ばかりガツガツ求めすぎるとかえって相手が離れていってしまいますのでね。

- ありがとうございました!


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  • 池田純子)
  • ライター紹介池田純子

    大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーのライター・編集者に。暮らしやお金、子育てにまつわる雑誌記事の執筆や単行本の製作に携わる。さまざまな生き方を提案するインタビューサイト「いま&ひと」を主宰。