M&Aコンサルタントに依頼できる業務は?選び方のポイントも解説
M&AコンサルタントはM&Aの一連の流れの中で、どのような仕事を担うのでしょうか?依頼できる業務を手続きの流れに沿って紹介します。コンサルタントの選び方や主な費用のほか、コンサルタントが保有している場合の多い資格も見ていきましょう。
2022-10-12
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M&Aコンサルタントの仕事とは?
M&Aを行うには専門知識が必要です。知識や経験が不足しており、自社のみでは対応しきれない部分をサポートするのが、M&Aコンサルタントの仕事といえます。M&AアドバイザリーやM&A仲介会社とは、どのような点で異なるのでしょうか?
M&Aの一連の流れをサポートする
専門知識や人的コネクションを持つM&Aコンサルタントが担うのは、M&Aの手続きに必要な一連の業務のサポートです。M&Aを実施するときには、法務・財務・税務などの幅広い知識が欠かせません。
そのため、自社のみですべてを実施するのは難しいでしょう。不足している知識を補うには、M&Aコンサルタントにサポートを依頼するのがおすすめです。
また幅広いコネクションの中から、希望に合う取引先候補の紹介を受けられる可能性もあります。併せて、手続きを進める中で必要になる、弁護士や税理士など専門家の紹介も受けられるでしょう。
M&Aアドバイザリーや仲介会社との違い
基本的に、M&Aアドバイザリーとは、M&Aに関する助言や支援など業務そのものを指します。
M&Aアドバイザリー業務を行う担当者が、M&Aコンサルタント、M&Aアドバイザー、ファイナンシャル・アドバイザー(FA)です。いずれもM&Aの専門家であり、M&Aコンサル会社やM&A仲介会社、金融機関、会計事務所などに所属しています。
また、専門家に依頼する際に結ぶ契約の呼称や形式もいくつか存在します。
M&Aアドバイザリー契約やFA契約では、M&Aコンサル会社などが買い手・売り手のどちらかと契約とする片手契約が結ばれるのが一般的です。一方、M&A仲介会社と仲介契約を結ぶ場合は、両手契約となります。仲介会社もM&Aアドバイザリー業務は行いますが、買い手・売り手の双方から報酬を受け取り、中立の立場でサポートする形式です。
M&Aアドバイザリー業務の範囲については、必ず契約締結前に確認しなければなりません。コンサルタントやアドバイザーなどの厳格な定義がないため、専門家やサービスの呼称だけで判断すると、希望する支援が受けられない恐れがあります。
M&Aコンサルタントに資格は必要?
サポート役であるM&Aコンサルタントには、特別な資格や許認可は必要ありません。ただしM&Aに関する民間資格や、関連する国家資格を取得しているコンサルタントもいます。取得しているコンサルタントの多い資格をチェックしましょう。
M&Aの民間資格
M&Aに必要な知識を満たしていると客観的に示せるよう、コンサルタントが民間資格を取得しているケースもあります。代表的な民間資格は以下の通りです。
- M&Aエキスパート認定制度:事業承継・M&Aエキスパート試験、事業承継シニアエキスパート養成スクール・試験、M&Aシニアエキスパート養成スクール・試験からなる認定制度
- M&Aスペシャリスト:日本経営管理協会(JIMA)の試験に合格することで取得できる資格
- JMAA認定M&Aアドバイザー:日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)の養成講座を修了し試験に合格すると修了証書が発行され、正会員の入会も認められる
これらの資格を取得しているコンサルタントであれば、M&Aに関する全般的な知識を身に付けているといえるでしょう。
関連する国家資格
幅広い専門知識が必要なM&Aには関連する国家資格が複数あり、以下を取得しているコンサルタントもいます。
- 弁護士
- 公認会計士
- 税理士
- 司法書士
- 社会保険労務士
- 中小企業診断士
国家資格を取得しているコンサルタントは、その分野についての専門知識を持っているといえるでしょう。例えば弁護士の資格を持っているコンサルタントであれば、法律に関わる業務について、専門的知見に基づいた詳しいアドバイスを受けられるはずです。
M&Aコンサルタントに依頼できる業務
M&Aコンサルタントにはどのような業務を依頼できるのでしょうか?手続きの流れに沿って、依頼できる業務内容を紹介します。
戦略の立案や策定
M&Aを行い目的を達成するには、戦略をはっきりさせることが欠かせません。戦略の立案や策定は自社でもできますが、経験豊富なM&Aコンサルタントに依頼するとスムーズに進めやすいでしょう。
例えば「目的ははっきりしているけれど、具体的にどのような企業を買収すれば目的を達成できるか分からない」という場合に、コンサルタントへの依頼が役立ちます。
対象会社の選定
戦略が定まった後、対象会社の選定もコンサルタントに任せられる業務です。対象会社を明確にする際、コンサルタントはコネクションを生かして候補のリストを作成します。
まず作るのは『ロング・リスト』です。目的を達成しシナジー効果を期待できる対象会社を選びます。さらにその中から条件を定めて絞り込み、『ショート・リスト』を作成します。
スキームの決定
複数あるスキームから最適なものを選ぶには、専門知識と経験が必要です。同じM&Aでも、スキームが違えば必要な手続きが異なり、税金を含めた費用の総額も変わります。スキームの選び方を誤ると、当初の目的を達成できないケースもあるでしょう。
またスキームによっては、リスクを抱える可能性もあります。例えば『株式譲渡』の際に対象会社を丸ごと買収すると、帳簿に記載されない債務(簿外債務)も同時に引き継がなければいけません。
コンサルタントのサポートがあれば、簿外債務のリスクが高いときには『事業譲渡』を検討するというように、状況に合わせて適切なスキームを選べます。
デュー・デリジェンスのサポート
コンサルタントがいれば、デュー・デリジェンスに関するサポートの依頼も可能です。買い手が対象会社に対して実施する調査を指し、範囲は法務・税務・労務など多岐にわたります。
調査によって思わぬリスクが見つかるケースもあるため実施が必要ですが、自社のみでは、どの範囲を調査すれば十分なのか判断できないかもしれません。コンサルタントへ依頼することで、調査すべき分野が明確になります。
調査を行う専門家の手配も含めてコンサルタントへの依頼が可能です。
交渉や契約書作成のサポート
交渉や契約書作成も、コンサルタントのサポートを受けられるとスムーズに進みやすいでしょう。交渉の席ではM&A特有の言葉が頻出するため、知識がなければ理解できず思うように交渉できない可能性もあります。
また契約書の作成自体は弁護士が行いますが、成約に向けた適切な落とし所を見つけるのはコンサルタントの役割です。自社のみで対応する場合と比べ、効率的な上、リスクも抑えやすいでしょう。
クロージングやPMIのサポート
契約が成立したらスケジュールに合わせ、対価の支払いや株券の受け取りなど、クロージングの手続きに進みます。クロージングがスムーズに進行するよう、スケジュール管理や手続きの確認などを行うのもコンサルタントの業務です。
また買収した対象会社や事業との統合(PMI)は、その後のスムーズな事業運営に欠かせません。PMI実施時にもコンサルタントのサポートがあると、シナジー効果の発揮に結びつきやすいでしょう。
M&Aの基本的な流れについて解説している以下もぜひご覧ください。
M&Aコンサルタント選びのポイント
幅広い分野の専門知識が求められるM&Aの手続きは、M&Aコンサルタントに依頼するとスムーズです。ただし、どのコンサルタントでもよいわけではありません。『実績』や『コネクション』を見て、自社の状況に合うコンサルタントを選びます。
これまでの実績
コンサルタント選びにおいては、実績が重要です。多くの案件を手掛けているコンサルタントであれば、豊富な経験とノウハウの蓄積があります。
実績を確認するときには、これまでに携わったM&Aの規模も確認しましょう。大企業同士のM&Aを中心に扱うコンサルタントは、大企業の案件には精通していますが、中小企業のM&Aが得意とは限りません。
これから実施を検討しているM&Aの規模感に合わせ、コンサルタントを選びましょう。
専門家とのコネクション
幅広い範囲の専門知識が必要なM&Aでは、各分野の専門家へ依頼する業務もあります。そのためM&Aを得意としている専門家とのコネクションがあるコンサルタントに依頼するとよいでしょう。
M&Aプラットフォームを利用する際も、専門家の紹介を受けられるサービスだと安心です。TRANBIでは必要に応じて、紹介料無料で専門家の紹介を受けられます。
M&Aコンサルティングに対する報酬
M&Aコンサルティングを依頼すると、報酬を支払わなければいけません。報酬体系は依頼先によって異なり、成功報酬のみの場合もあれば、成功報酬に加え着手金や中間報酬が必要なケースもあります。代表的な費用や成功報酬の計算方法を確認しましょう。
M&Aコンサルティングにかかる主な費用
コンサルティングにかかる代表的な費用は、以下の通りです。
- 相談料:契約前の相談時にかかる費用
- 着手金:業務委託契約締結時に支払う費用
- 月額報酬(リテイナー・フィー):契約期間中に毎月かかる費用
- 中間報酬:基本合意書の締結時に支払う報酬
- 成功報酬:最終契約書の締結時に支払う報酬
ただし、必ずしもすべての費用がかかるわけではありません。依頼先によって必要な費用が異なるため、契約前に確認しておくと安心です。
成功報酬の計算はレーマン方式が一般的
成功報酬を計算するときには、報酬基準額が上がるほど料率の下がる『レーマン方式』を用いるケースが多いでしょう。M&Aによって移動した資産の価額に定められた料率を掛けて計算する方法です。
例えば以下のように料率が定められているケースで、13億円の資産が移動した場合の成功報酬を計算します。
- 5億円以下の部分:5%
- 5億円超10億円以下の部分:4%
- 10億円超50億円以下の部分:3%
- 50億円超100億円以下の部分:2%
- 100億円超の部分:1%
5億円以下の部分が『5億円×5%=2,500万円』、5億円超10億円以下の部分が『5億円×4%=2,000万円』、10億円超50億円以下の部分が『3億円×3%=900万円』となり三つを足した『5,400万円』が報酬額です。
M&Aにかかる費用については以下もご覧ください。
まとめ
M&Aコンサルタントには、M&Aに関する一連の業務のサポートを依頼できます。M&Aを実施するには幅広い知識が必要で、自社のみで対応するのは難しいでしょう。
専門知識と豊富な経験・多岐にわたるコネクションを持つコンサルタントに依頼すれば、手続きをスムーズに進めやすくなります。これまでの実績も確認し、これから行おうとしているM&Aに合うコンサルタントを選ぶとよいでしょう。