アパレル業界でM&Aが進んでいる理由と事例をチェック

アパレル業界でM&Aが進んでいる理由と事例をチェック

アパレル業界でM&Aが増加しているのはなぜでしょうか?具体的なM&A事例と併せ、アパレル業界の現状をチェックしましょう。またM&Aを実施する際に役立つ案件の探し方や、買収する前に確認すべきポイントも紹介します。

目次

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事業承継・M&A売却案件一覧|トランビ 【M&Aプラットフォーム】

アパレル業界の動向

生産や販売など複数の業態に分かれるアパレル業界は、今どのような状況に置かれているのでしょうか?市場規模や限られた顧客の取り合いが発生している状況など、アパレル業界の現状を確認しましょう。

市場規模と大手SPA企業の独走

国内のアパレル業界の市場規模は、ピークだったバブル期の約15兆円から、約10兆円へと縮小しています。ただし供給量はほぼ倍増している状況です。全体的な傾向として、単価が以前より下がっているといえるでしょう。

また企画・製造・販売を自社ですべて行い、消費者のニーズを取り入れた製品を安価に提供するSPA(製造小売業)が、順調に業績を伸ばしています。国内で代表的なユニクロは、世界でもトップ3に入るSPAです。

参考: 繊維産業の課題と経済産業省の取組|経済産業省製造産業局生活製品課p.5

パイの取り合いが激化

日本のアパレル業界には2万数千社の企業があり、近年はパイの取り合いが激しさを増しています。市場規模が縮小している中、多くの企業が限られた顧客を奪い合っている状態です。

同時にM&Aの動きが加速し、他社の持つ顧客や販路を自社に取り込むための買収が頻繁に行われています。上場企業をはじめ規模の大きな企業が小規模な企業を買収することで、業界再編が進みつつあるのが現状といえるでしょう。

小規模で事業を展開している企業にとっては、M&Aによる売却が生き残り策や出口戦略となっています。

新型コロナの影響でカジュアル化が加速

オフィスの服装規範やファッションの価値観が変化したことにより、徐々に進行していたカジュアル化は、コロナ禍をきっかけに一気に加速しました。

在宅勤務の広がりや、入学式・冠婚葬祭などの行事や儀式にまつわる需要が減少したためです。対面機会の減少から、勤務中の服装規範が緩和されるなどの対応がとられていた企業もあります。

また、新型コロナの影響で、解雇や収入減に見舞われた人も少なくありません。家計の見直しから、衣類に対する支出の優先度が下がっています。

参考: アパレル業界で進むカジュアル化|三井住友信託銀行

アパレル業界に求められていること

激しく変化しているアパレル業界では、今、何が求められているのでしょうか?時代の変化に合わせた経営のために必要なことは、これまでの常識とは異なります。出店数が多いだけでは不十分で、役割を明確にしなければいけません。ECの活用も必須です。

モノ売りではなくコト売り

低価格のアイテムがよく売れている一方、小ロットで質の高いオリジナル商品を好む消費者も増えています。単に安い『モノ』ではなく、ライフスタイルやブランドイメージを含めた『コト』を求めている人が多いともいえるでしょう。

業界で生き残るために重視されるのは、他社と一線を画す独自性です。あわせて、他社では扱っていないオリジナル商品の仕入れルートを持っていれば、提案力や顧客満足度の向上につなげられます

M&Aを行うときには既存の顧客へ新たな魅力を提案し、購入を検討してもらえるような買収を意識するとよいでしょう。

SHEINの登場で価格での勝負は困難に

安価な商品を求める消費者もいますが、これから低価格を売りにして展開するのは難しいでしょう。ファストファッションの中でも、2008年に中国のECサイト『SHEIN(シーイン)』が設立されてからは、太刀打ちできない状況です。

実店舗を持たずECサイトのみで圧倒的に安いアイテムを大量に素早く消費者に提供しているSHEINでは、AIを駆使し売れる商品を特定しています。そして多種類を少しずつ安く早く作り、試し売りを繰り返して売れ筋を作り上げているそうです。

セール品以外でも数百円から購入できるため、価格による競争は今後も苦戦が強いられるでしょう。

リアル店舗の役割を見直す

買い物をオンラインで行う機会が増えたことで、リアル店舗は役割を見直す時期にきています。単に商品を販売するためだけにある店舗を増やしても意味がありません。どのような役割を持たせるために出店するのか、よく考える必要があります

例えば店舗を顧客への情報提供の場と考えるなら、顧客に合わせた情報を伝えられるよう、リアル店舗とECサイトの顧客データを連携させるとよいでしょう。

また顧客のニーズをキャッチする場として、店舗を置くケースも考えられます。役割に応じて適切な場所に出店しなければいけません。

自社ECで顧客満足度を高める

EC化はアパレル業界でも進んでいます。経済産業省の調査によると、2021年の衣類・服装雑貨等のEC市場規模は2兆4,279億円に上りました。

特にコロナ禍をきっかけに生活様式が大きく変化したことで、買い物の仕方はもちろん、顧客との接点の持ち方も変わりつつあります。

便利で使いやすいECと明確な役割を持つリアル店舗の組み合わせにより、顧客と直接コミュニケーションを取れる仕組みづくりが重要です。特に自社ECの強化は顧客満足度に大きく関わるポイントです。

例えばAIを導入し的確なアイテム提案ができれば、顧客は満足のいく買い物ができます。返品リスクを下げることにもつながるでしょう。

参考: 電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI/経済産業省)

アプリも活用して顧客を囲い込む

顧客を囲い込むにはアプリも有効です。公式アプリでポイントやクーポン・興味のあるアイテムの情報・充実したレビューや口コミを提供することで、顧客はECサイトのサービスを活用しやすくなります。

アイテムを購入するときの体験の満足度を高める施策が重要です。EC化をM&Aによって進めたいと考えているなら、ECサイトとともにアプリも獲得できる案件を選ぶとよいでしょう。

同業種間のアパレルM&Aの目的・メリット

アパレル業界の企業同士でM&Aを行う場合には、経営の安定やコスト削減・ブランド力の強化などを目的にするケースが多いでしょう。それぞれの目的やメリットについてくわしく解説します。

大手の傘下に入り経営を安定させる

規模の拡大やブランド力の獲得を目的としたM&Aがアパレル業界で増加中です。激しい競争に自社だけでは対抗できず、大手の傘下に入り安定を目指す企業も少なくありません。

大手の傘下に入れば、小規模なまま事業を続けるよりも財務面が安定します。また、大手の持つネットワークやノウハウを生かした事業拡大の可能性も出てくるでしょう。

アパレル業界では流行も考慮しなければいけません。大手であれば幅広いアイテムを取りそろえているため、どのような流行にもある程度対応できます。小規模な会社では経営が危ぶまれるような事態でも、事業を継続できるでしょう。

規模を拡大しコスト削減を目指すため

規模の拡大によるコスト削減を目指すケースもあるでしょう。規模が大きくなれば、長期的に一定数を仕入れる契約を結ぶ方法などで、仕入れコストを下げられます。

また『垂直統合』によっても、コストダウンの実現が可能です。例えば衣類を作るのに必要な布や糸・ボタンなどの材料を調達する卸売業者を買収すれば、仕入れにかかるコストを下げられます。

企画から小売りまでの一連の流れを自社で完結できるよう、垂直統合を行えば、さらに大きなコスト削減を実現できるでしょう。これが、アパレル業界で大きなシェアを持っているSPA(製造小売業)という形態です。

効率的な事業の展開にM&Aが役立つことを解説した、以下の記事もぜひご覧ください。

 M&Aで事業を展開するメリット。新規立ち上げにかかる時間を買おう
手法
M&Aで事業を展開するメリット。新規立ち上げにかかる時間を買おう

M&Aのメリットとして代表的なのは、新規事業の立ち上げにかかる時間を節約できる点です。買収によって獲得できるものや、M&Aの特長を見ていきましょう。中小企業のM&Aで一般的な、株式譲渡と事業譲渡それぞれのメリットも紹介します。

ブランド力を強化するため

自社で展開しているブランドのみで、アパレル業界のすべての分野をカバーできるケースは珍しいでしょう。そこで、自社ブランドに不足している分野を補強するためにM&Aを実施するケースもあります。

例えば、カジュアル系のアパレル企業によるフォーマル系ブランドの買収や、若者向けのブランドを展開する企業によるシニア向けブランドの買収が、該当する事例です。M&Aによって不足している部分を補い、ブランド力の強化に有効に働きます。

経営資源の獲得

M&Aは買い手にとって、経営資源をスピーディーに獲得できるチャンスです。例えば経営資源の一つである人材は、育成に時間とコストがかかります。また、時間とコストをかけて教育しても、退職してしまうかもしれません。

一方M&Aであれば、既にノウハウを持っている人材を獲得できます。優秀な人材の多い企業を買収できれば、自社の人員体制を強固なものにできるでしょう。

店舗を増やしたりECの規模を拡大したりするときに必要な人材の獲得にも役立ちます。

異業種間のアパレルM&Aの目的・メリット

アパレルM&Aは異業種間でも行われます。アパレルとそのほかの商品を組み合わせることで、新しいサービスを生み出す取り組みです。EC化を促進するためにM&Aが行われるケースもあります。

新たなサービスを生み出す

消費者に対し幅広く価値提供できるよう、アパレルメーカーが異業種とM&Aを行うケースもあります。アパレル業界ならではの流行への感度の高さを生かし、カフェやホテルを買収し展開するケースです。

例えば『GLOBAL WORK』などを手掛ける『アダストリア』の傘下となった『ゼットン』は、アパレル企業ではなくダイニング事業・ブライダル事業・公園施設の再開発などを行っています。

今後は、アウトドアグッズと再開発を行った公園施設とのコラボや、1,300万人以上が利用するブランド直営モール『.st(ドットエスティ)』でゼットンの飲食メニューを販売するなど、お互いの持つ強みを生かした展開を検討しているそうです。

IT企業の買収でWebによる販路を拡大

ECは、アパレル業界にとって欠かせないものとなってきています。そこでM&AによってECサイト事業やスマホアプリ開発事業などを買収し、開発・運営・SEOなどのノウハウを獲得するケースが増加中です。

アパレル大手の『オンワード』も、ECサイトの販路を活用し事業拡大を目指すために、ベンチャー企業の買収を行っています。

個人による買収・新規参入の事例も

アパレル業界は、ブランドやショップの立ち上げに対するハードルが比較的低いため、個人が参入するケースも少なくありません。ただし一から事業を立ち上げる場合、継続するのは難しいでしょう。

そこで成功の可能性が高い方法として、既に顧客のいるショップを買収し事業を始める人もいます。顧客を獲得するまでの時間を購入することで、早いタイミングで収益化できる方法ともいえるでしょう。

TRANBIでは、実際に個人がECショップを買収した事例もあります。既に顧客基盤のあるショップを買収したため、基本的な手直しを加えただけで、初月から売上につながったそうです。

会社員と子育てを両立し、さらに副業でオンラインビジネスを買収したやり手女性のM&A
成功事例インタビュー
会社員と子育てを両立し、さらに副業でオンラインビジネスを買収したやり手女性のM&A

営業職として働く会社員の宇髙風美さんは、育休復帰から1年が経ち、仕事と子育てを両立するリズムが掴めてきたタイミングでさらに副業まで考えるように。2021年5月にM&AでレディースアパレルのECサイトを買収しました。

アパレル業界のM&A事例

アパレル業界の売上はバブル期をピークに減少し、昨今は横ばいの状態が続いています。ただし、すべての企業が減収や横ばいとなっているわけではありません。

収益が伸びている企業では、IT化や規模の拡大を実現しており、そのために有効なのがM&Aです。アパレル業界で実際に行われたM&Aの事例をチェックしましょう。

ZホールディングスがZOZOを連結子会社化

『Zホールディングス(旧ヤフー)』によるファッション通販大手『ZOZO』の連結子会社化は、シナジー効果を期待したものでした。

EC事業の拡大を目指すZホールディングスは、ZOZOの連結子会社化によって、市場規模の大きなファッションカテゴリーの取り込みに成功しています。

一方ZOZOは、Zホールディングスが高いシェアを持つ中高年層への顧客層の拡大や、販路拡大・ユーザーの利便性向上を求めていました。お互いに事業を補完し合える関係と分かったことで、M&Aが実現したケースです。

ワールドがナルミヤ・インターナショナルを連結子会社化

衣料品の販売事業やブランド事業・デジタル事業・プラットフォーム事業を営む『ワールド』は、ベビー・子供服の企画販売を行う『ナルミヤ・インターナショナル』を、TOB(株式公開買い付け)により連結子会社化しました。

M&Aにより、それまでカバーしきれていなかった、ベビー・子供服の分野を強化するためです。手薄になっていた分野を充実させることで、規模の拡大につながるM&Aといえます。

宝島ジャパンがECサイト運営企業を事業譲渡で買収

アパレルの貿易コンサルを行う『宝島ジャパン』は、複数の実店舗を運営していましたが、コロナ禍をきっかけに業績が悪化していたそうです。そこでオンラインでの販路拡大を目指し、EC・通販サイトのM&Aを実施しました。

買収したEC・通販サイトは多数の在庫を抱えていましたが、宝島ジャパンの扱う商品との親和性が高かったこともあり、順調に売上を伸ばしているようです。IT化に活路を見いだし成功した事例といえます。

TSIホールディングスが3ミニッツのECブランド事業を譲受

『TSIホールディングス』は、ミレニアル世代の顧客やデジタルマーケティング手法を獲得するため、3ミニッツが展開する『エトレトウキョウ(ETRE TOKYO)』の事業を譲り受けました。

Instagramのライブ配信で商品の品評会を行うといった独自の手法で、20~30代の女性に支持されているブランドです。

グループの持つ商品の企画・開発力や海外インフラなどとのシナジー効果により、成長のスピードアップが期待されています。

ベルーナがセレクトを子会社化

通販事業をメインに展開している『ベルーナ』は、レディースアパレルのECサイトを展開する『セレクト』の株式を100%取得し、子会社化しました。顧客から高評価を得ているショップを獲得することで、事業拡大を目指した買収です。

併せてノウハウの共有や商品供給のほか、集客の連携も実施します。これによりグループ全体の価値向上を期待できると判断し、子会社化へ踏み切った事例です。

夢展望が住商ブランドマネジメントを連結子会社化

衣料品ネット販売事業を手掛けている『夢展望』は、女性向けアパレル事業を展開する『住商ブランドマネジメント』を連結子会社化しました。住商ブランドマネジメントは、顧客層と価格帯の異なるブランド『ナラカミーチェ(NARACAMICIE)』と『フェイラー(FEILER)』を展開しています。

子会社化により、夢展望は二つのブランドから商品の提供を受けることとなりました。ラインナップの充実により、販売機会の拡大を目的としています。

yutoriがフラグスタフを事業譲受

ZOZO傘下の『yutori』は2023年の新規上場を実現するため、ブランドポートフォリオを拡充させる目的で『フラグスタフ』の事業を譲り受けました。

フラグスタフのストイックなものづくりの姿勢と、yutoriのマーケティングやプロモーションの力が、シナジー効果を発揮すると考えたそうです。

ブランドの世界観を変更することなく、yutoriが効果的なアピールや商品開発への協力を行うことで、顧客に直接販売するチャネルも強化していく計画です。

シーズメンがチチカカを子会社化

『シーズメン(CSMEN )』は不採算店舗を閉鎖して企業体質の強化を図りつつ、買収や新規事業の立ち上げなどを行い、事業内容や規模の拡充に取り組んでいます。その一環として行われたのが『チチカカ』の子会社化です。

エスニックな衣類や雑貨を扱うチチカカの子会社化により、商品力や販売力の強化と併せ、ノウハウの共有やコスト削減などのシナジー効果を見込んでいます

またチチカカを運営していた『ネクスグループ』は、コロナ禍の影響からの回復は難しいと判断し、チチカカの売却によりブランドリテールプラットフォーム事業から撤退したそうです。

C.R.E.A.Mがジャパンイマジネーションのブランド事業を譲受

レディースドレスやスーツを中心に企画から販売までを行っている『C.R.E.A.M』は、コロナ禍により入学式・卒業式・冠婚葬祭などが中止や延期になった影響を大きく受けました。

そこで今後の成長を目指し、ジャパンイマジネーションの2ブランド(BE RADIANCE・Fabulous Angela)を譲り受けたそうです。2ブランドの顧客への商品提供を通し、C.R.E.A.Mの成長を目指すこととなりました。

オンワードHDの選択と集中

オンワードは不採算事業を売却し主力事業へ集中する、選択と集中を実施しました。連結子会社の『オンワードイタリア S.p.A.』傘下の『ジルサンダー』の売却に加え、オンワードラグジュアリーグループ S.p.A.の株式をすべて、イタリアの投資会社『NEMO srl』に譲渡しています。

選択と集中の結果、2022年3~5月は営業利益が前年同月比で74.8%増加しています。行動制限が緩和されたことによる客足の回復も相まった業績の回復です。

国内の市場縮小と今後の戦略

今後、国内のアパレル市場は縮小傾向にあるといわれています。そのためアパレル業界では、成長が見込まれる海外市場への進出をスムーズに行うためのM&Aも増加中です。具体的な事例も見ていきましょう。

M&Aで海外進出をスピーディー・スムーズに

海外進出をスピーディーかつスムーズに行うために、M&Aを実施するケースもあります。アパレル市場は日本国内では縮小傾向ですが、人口が増加している新興国では成長産業です。そのため売上増加を目指す企業にとって、海外進出は有効な戦略といえます。

また海外進出を成功させるには、現地の消費者の声を知らなければいけません。そのためにも、現地にくわしい人の協力が必要です。進出先に合わせたブランド醸成を行うためにも、M&Aによって現地法人の協力を得られるとよいでしょう。

TSIホールディングスがHUF Holdings, LLCを子会社化

ファッションを中心に積極的にM&Aを実施し、幅広い顧客層のニーズに応えられるようブランドの拡充をめざす『TSIホールディングス』は、欧米を中心にストリートウエアブランド『HUF』を展開している『HUF Holdings, LLC』を子会社化しました。

2年間の協業期間に、事業ノウハウを投入することでアジアを中心とした海外事業を成長させられる見込みがあると判断したのが、子会社化の決め手だったそうです。これをきっかけに、海外の売上比率を3~4%から10%へ引き上げる計画を立てています。

ベル・インターナショナルがバロックジャパンリミテッドの筆頭株主に

中国の大手靴専門店『ベル・インターナショナル』は女性向けアパレルブランドを複数展開する『バロックジャパンリミテッド』の株式のうち31.96%を取得し、筆頭株主となりました。両社は中国で合弁会社を設立し運営しています。

合弁会社が展開する中国事業は順調で、売上高は前期より13.6%増え74億円です。店舗数も33増え332店舗となり、国内の店舗数を上回る予定となっています。

また北米事業も売上を伸ばしています。ECと百貨店やセレクトショップへの卸売が好調で、前期比の1.8倍である15億円の売上です。

ワールドが米国Original Inc.の株式を取得

ワールドは、カスタムシャツブランドである『Original Stitch』を展開している『Original Inc.』の株式を取得し、連結子会社としました。

Original Inc.の持つ高精度身体採寸テクノロジーBodygramの精度を、ワールドの販売網を通して向上させ、プラットフォームを強化する計画です。ゆくゆくは他社へもサービスを提供し、顧客の利便性向上へつなげていく方針を掲げています。

また将来的には米マーケットへの参入を目指しており、Original Inc.をそのための重要拠点と位置づけています。

アダストリアがVelvet, LLCをグループ会社化

アダストリアが米国の『Velvet, LLC』をグループ会社化したのは、成長を加速させていくためです。さらなる拡大を目指すために成長市場にチャレンジする必要があると考えたアダストリアは、米アパレル市場への足がかりとしてVelvet, LLCをグループ会社化しました。

アダストリアからVelvet, LLCへは、小売やバリューチェーンのノウハウを提供し成長を促進させ、グローバルなブランドポートフォリオの強化を目指す計画です。またVelvet, LLCからは、米市場でのノウハウやナレッジを獲得する狙いがあります。

アパレル業界のM&A案件の探し方

M&Aを実施するには、案件を探さなければいけません。自社の目的に合う案件を探すには、どのような方法があるのでしょうか?専門家への相談とプラットフォームの利用について解説します。

金融機関や専門家に相談する

IT化やブランド力強化などを目的にM&Aを計画しているなら、まずは金融機関や専門家に相談するとよいでしょう。M&Aの仲介を実施している可能性もあります。

仲介を実施していない場合でも、相談できる専門家の紹介を受けられるケースがあります。普段から利用しているメインバンクや顧問税理士なら、気軽に相談しやすいはずです。

仲介会社やプラットフォームを使う

M&Aの仲介会社やプラットフォームを利用するのもよいでしょう。仲介会社であれば、さまざまなサポートを受けながらM&Aの手続きを進められます。

プラットフォームと仲介会社はサポート体制や価格面でそれぞれメリット・デメリットがあります。あらかじめどのようなサービスを利用できるか確認しておくとよいでしょう。

仲介会社ではアドバイザーが案件を紹介してくれますが、プラットフォームであれば自社で案件を検索できるのも特徴です。比較的安価に利用できるのもメリットといえます。

2,500件以上の案件が掲載されている『TRANBI(トランビ)』にも、アパレル企業の案件があります。M&Aを検討しているなら、まずは検索し案件を探してみましょう。

 事業承継・M&Aプラットフォーム TRANBI【トランビ】
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事業承継・M&Aプラットフォーム TRANBI【トランビ】

国内最大級の11万人以上のユーザーが参加、常時2,700件以上のM&A案件を掲載

またM&Aの流れを解説する以下の記事も、ぜひご覧ください。

 M&Aはどのような流れで進むのか。期間、費用、必要となる書類
具体的事例
M&Aはどのような流れで進むのか。期間、費用、必要となる書類

M&Aは一定のプロセスに基づいて実行されます。初めて会社を買収する人は、M&Aのフローやかかる期間、取り交わされる契約書の種類を把握しておきましょう。マッチングサイトで売り手を効率よく見つけるコツや、デュー・デリジェンスの重要性も解説します。

買収時のチェックポイント

希望に合う案件が見つかったとしても、すぐに買収すると「こんなはずではなかった」と感じる項目が出てくるかもしれません。アパレル企業のM&Aでチェックすべきポイントを確認しましょう。

ブランドや店舗ごとの損益

まず確認すべきなのが、損益の現状把握ができているかという点です。複数の店舗やブランドがある企業なら、店舗やブランドごとの損益を把握し管理できているかチェックしましょう。

個別の損益が分からない状態では、次にどのような施策を講じれば効果的なのか判断できません。買収したとしても、運営の適切な方向性を定めにくくなってしまいます。M&Aを実施し収益アップにつなげるには、損益管理の状況をよく確認しましょう。

在庫状況や商品の利益率

アパレル企業の在庫状況は、売上に大きな影響を与えます。衣類には流行があり鮮度が重要です。1シーズン売れ残った在庫は定価では売れないため、セール価格で販売するケースが多いでしょう。価値が一気に低下し、利益率も下がります。

また在庫の会計処理をどのように実施しているかも確認しましょう。値引き販売や在庫処分の会計処理は、企業ごとに異なります。会計上の数字だけでなく、実態を把握しなければいけません。

アパレルM&Aの案件の例と注意点

アパレルM&Aの案件は、ECサイトとリアル店舗に分けられます。それぞれどのような特徴があるのでしょうか?確認すべき点を押さえることで、案件探しに役立てられます。

ECサイトの案件

ECサイトを展開している企業では、スマートフォンを利用している消費者を想定し、プッシュ通知機能を利用したコミュニケーションが増えています。またSNSを活用した自社商品のアピールや商品の評価分析なども行われています。

案件を比較するときには、ECサイトのほかに何が譲渡対象になっているか確認するとよいでしょう。SNSでの宣伝ノウハウを保有している企業を選ぶと、買収直後からSNSでの効果的なアピールが可能です。

リアル店舗の案件

リアル店舗を買収する際には、賃貸借契約・取引先・運営ノウハウなどが譲渡対象です。賃貸借契約を引き継げれば、出店のハードルが高いショッピングセンターに店舗を構えられる可能性があります。

ただし賃貸借契約の引き継ぎについては、必ずオーナーへの確認が必要です。事業譲渡で店舗の運営者が変わる場合はもちろん、株式譲渡で会社ごと引き継ぐ場合にも、M&A後の賃貸借契約の扱いをはっきりさせておきましょう。

契約書に『実態の変更も名義変更とみなす』という旨の表記があると、株式譲渡であっても、トラブルに発展する可能性があるためです。

まとめ

アパレル業界ではM&Aが活発化しています。収益アップにつながるIT化や規模の拡大などを実施する際、M&Aだとスピーディーに成果を出しやすいためです。

また縮小傾向にある国内のアパレル市場のみでは成長が見込めないため、海外市場にチャレンジするために、海外企業とのM&Aを実施するケースも増えています。

買収する企業を探すときには仲介会社で紹介を受けたり、プラットフォームで検索したりするのに加え、損益の状況把握や在庫状況も確認しましょう。対象企業の状況を詳しく把握することで、希望に合うM&Aを実現しやすいはずです。