2021-07-13

売り手必見!初回の失敗を踏まえて、高級ブランド品のEC事業を売却!女性経営者がそのポイントを大公開

売り手(法人):株式会社T&C

<中小企業の事業売却・スモールM&A事例>

 

今回、高級ブランド品のオンライン販売事業を売却したのは、元アナウンサーで現在は経営者として不動産事業などを手掛ける株式会社T&C社長の櫻井知里さん。実は、3年前にも一度同じ事業の売却に挑戦したものの、準備不足を痛感して諦めた経緯がありました。

当時の教訓を生かして、今回は案件概要の書き方や譲渡金額の設定、資料の準備にかなりこだわり、無事売却を成功させた櫻井さんに、売り手として意識したことを伺いました。多くの買い申し込みがある中から、事業を託す相手を見極めるためのポイントとは?

 

【失敗を反省:初めての事業売却は準備不足で断念…】

- まずは櫻井さんのご経歴や、株式会社T&Cの事業について教えてください。
もともとはフリーアナウンサーとして10年以上活動していて、TV番組のリポーターやラジオのパーソナリティ、ナレーションの他、式典やイベントの司会などを行っていました。

アナウンサーと並行して、不動産投資や今回売却した高級ブランド品のオンライン販売事業を個人事業主として始めたことを機に、ビジネスの面白さを知って起業することにしたんです。

現在、株式会社T&Cでは不動産管理事業、セミナーの運営などを行っていますが、今後は新規事業として企業様のライブ配信や動画制作サービス、AIを用いた話し方トレーニングの事業も展開していく予定です。

- 今回、高級ブランド品のオンライン販売事業を売却したのはなぜですか。
これから新規事業に注力していくためです。高級ブランド品のオンライン販売事業はどうしても人手が必要になり、人がいないとうまく回らない部分の比重が他の事業に比べて大きくて

また、今後シェアオフィスへオフィスを移転する予定なのですが、登記を移すにあたって管轄の警察署が変わるため、高級ブランド品のオンライン販売事業に必要な古物商免許をその管轄の警察署に申請して取得し直す必要があるんです。

ただ、複数社が入居するシェアオフィス内にオフィスを置き、住所を同一にしていると登録審査の関係で古物商免許が取りづらくなるという話も聞きまして。こうした背景も重なり、今が事業売却のタイミングだと思いました。


(売り手である櫻井さん)

- 櫻井さんは2018年にも同じ事業の売却に挑戦されていたそうですね?当時はなぜ売却がうまくいかなかったのでしょうか?
当時は個人事業主から法人になるタイミングで、法人として新しく始める事業に専念するために売却を試みました。同時期に、法人設立を見据えて商工会議所主催の経営スクールに通っていたのですが、その中で事業承継などについても学んでいたため売却が手段として浮かんだのです。

M&Aプラットフォームに掲載したところ、大企業様から個人の方まで多くの応募をいただき、うれしい悲鳴をあげるほどでした。ただ、初めてのM&Aということもあり、私自身準備と想定が足りていなくて

面談もたくさんさせていただいたのですが、資料の作り込みが甘かったり、事業の魅力やビジョンを伝え切れなかったりして、相手を不安にさせてしまい、具体的に話が進まなかったのです。当時は法人の経営者ではなかったため、交渉スキルも未熟だったように思います。

ある大企業様からは想定の5倍以上の買収金額を提示されてもいましたが、「事業責任者として当社に入ってほしい」という条件があり、手放したいという私の思いとは違っていたため断念したケースもありました。 2018年の11月頃に掲載したのですが、「2019年1月に法人を設立するため、それまでに見通しが立たなければ売却を取りやめて、法人の事業としてもう少し自分の手で成長させよう」とリミットも決めていて。交渉が進まなかったため、売却を取りやめようと決断しました。



(今回売却した事業)

 

【案件登録:タイトルはキャッチーに、譲渡金額の根拠は明確に】

- そして今回、2021年3月に2度目の売却に挑戦されました。前回の反省を踏まえてどのような点に気を付けられましたか。
まずは案件の書き方です。今回は、副業のビジネスを探している会社員の方など個人の方にお譲りしたいという気持ちがあったため、彼らの目に留まるような書き方を意識しました。

特に重要なのはタイトルです。キャッチーなタイトルを付けないと、そもそも案件概要を見てもらえません。そこで、「副業も可能」「オンライン」「全国どこでも対応」など、事業の特性を表しており、かつ買い手様に響きそうなキーワードを詰め込みました

結果的に多くの方に閲覧されたため、ある程度刺さったものだったのではないかと思います。

- ちなみに、法人ではなく個人の方に事業譲渡したいと思ったのはどうしてですか。
買い手様が法人であり、大きな組織であればあるほど、担当者の方の次に決裁者の方に向けたプレゼンテーションが必要な場合があります。すると、どうしても超えるべきハードルが高くなり、決裁に時間がかかってしまうんですよね。個人の買い手様との方が、スピーディーに交渉が進むだろうと思ったことが大きな理由です。

- 譲渡希望価格は、どのように設定されましたか?
新規事業が忙しくなってきて、なるべく早く売りたいという思いが強かったため、個人の方に応募していただきやすい価格帯にしようと決めていました。その上で、前回の反省も踏まえて意識したのは「金額の内訳と理由を明確にすること」です。

一度目の売却の際に、譲渡希望金額をはっきりと設定していなかったため、「値下げしてほしい」とリクエストに対して主張する明確な根拠がなく、その都度説明に苦労することになりました。理由がないということは、相手の主張に反論できず、付け込まれることにもなりかねません。

こうした背景から、在庫分の金額200万円と売却後に3カ月間掛けて事業のノウハウを引き継ぐフォローアップの金額などを加味して算出すると、自然と売却金額が決まったんです。



(モデルさんたちを起用した商品PR)

 

【案件交渉:初回メッセージで買い手の人柄がわかる!?】

- 交渉過程では、どのようなことを意識しましたか。
まずは、買い手様が検討する際に必要な資料や情報の準備を万全にしました。取り扱っている商品や実際の販売サイトの内容、そして売上推移表などを共有させていただきました。

実は、コロナ禍でなかなか旅行に行けない富裕層の方の“巣ごもり消費”の需要増もあってか、このビジネスはコロナ禍による打撃を受けていません。むしろ、ECモールの売上データなどを見ても、オンラインで高額商材を購入される方が増えていて、市場としては今後さらに伸びていくことが期待できます。

ただ、直近の半年は私が新規事業の準備に忙しく、オンライン販売の事業に注力できていなかったため、売上が大きく減ってしまっていて。数字だけ見ると「大丈夫かな?」と不安に思われてしまう状態だったのです。

そのため、この売上に着地している理由や事業に注力して取り組んだ場合に期待できる売上などを事業の将来性も含めて、できるだけ具体的に説明して、買い手様にご安心いただけるよう心掛けました。

初めて売却にチャレンジした前回は、準備不足だったこともあり萎縮してしまって、結果的に買い手様に不安を与えてしまっていたと思うんです。しかし、今回は前回の反省をもとに万全な準備をした分、どんと構えて、買い手様からの質問に対しても余裕を持って回答できたため、買い手様にも安心感を与えられたのではないかと振り返ってみて思います。

- 多くの応募の中から、どのようにして買い手様を決定されたのですか。
まずはお申し込みをいただいた際のメッセージの文章を読んで、面談を設定させていただくか否かを決定しました。やはり、一言や二言だけしか記載されていない短文よりは、当案件に興味を持ってくださった理由や、買い手様のお人柄が伝わる長文を丁寧に記載してくださっている方に惹かれました

他には、根拠をもとに譲渡金額を決めているため、値下げを要求される方との取引は避けたく、譲渡金額にご納得いただけていることは重要でした。

また、個人の方をメインターゲットとしていたのですが、買収資金に関して借り入れをした上でM&Aをされる場合は時間を要する可能性があります。そのため、自己資金での買収を考えられており、事業を運営するのに十分な資金をお持ちの方に絞ろうと考え、資産状況に関してはメッセージなどで事前に詳しくヒアリングさせていただきました。

今回事業をお譲りするのは、実は一番最初に手を挙げてくださった方なんです。初回のオンライン面談の後、「この後、他の方との面談も控えているため、1週間後にお返事をいただけますか」と要望したところ、何と面談の翌日には「買いたいです」と連絡をくださって。そこから交渉に入り、掲載から3週間足らずで成約に至りました。

もちろん、早い者勝ちにしていたわけではありません。最初の買い手様の反応が今一つであった場合には、次の方との面談に移ろうと思っていました。ただ、買い手様とはすごく息が合い、かつこれまでビジネスを行ってきた私の思いも継承してくれる方だと感じられたため、即決できたのです。


(モデルさんを起用したPRを展開)

- 買い手様はどんな方ですか。
旦那様が日本人、奥様がベトナム人のご夫婦です。メインでビジネスをされるのは奥様ですが、TRANBI上で案件を探したり交渉したりといったことは旦那様が手伝われていました。

そのためメッセージは旦那様とやりとりしていたのですが、毎回素早くレスポンスをいただけましたし、文面もさわやかで物腰が柔らかくて。お会いする前から気持ちよくコミュニケーションを行うことができたんです。

「ビジネスを行う者同士、そして同性同士だからこそ弾む話もあるでしょうから」と面談にはご夫婦揃って出席してくださったのですが、「日本に住んでいるベトナム人をターゲットにブランド品を販売したい」という明確な計画をお持ちで。面談の時点でお互いに「こういった形で販売していくのがいいのでは」といったビジョンの話も弾んだんです。

こちらが共有した資料についても、「わかりやすく、事業のイメージが湧いた」とおっしゃってくださいました。交渉に関しては、2回ほどオンラインで行った後、本契約のみ直接お会いして締結させていただきました。

- 現在は3カ月間のフォローアップ期間の真っ只中のようですが、買い手様とどのようにコミュニケーションを取っていますか。
8年ほど前から、さまざまな会場に足を運んで商品を仕入れることを繰り返して今のビジネスモデルを構築してきたのですが、培ったノウハウや情報はすべてお伝えしています。

ビジネスや事業を行う上で必要な手続きに関するノウハウを、引き継ぎ資料にまとめるのはもちろん、真贋の見極め方などをマニュアル化してお渡ししたり、仕入れ先に同行して実践を交えながらレクチャーしたりしています。

- 一方で、交渉の中で当初の想定から変わった点などはありますか。
譲渡金額をお振込みいただくタイミングです。契約締結時は買い手様がまだ古物商免許の取得していない状況でしたし、3カ月間のフォローアップ期間が始まる前のタイミングなので、振り込んでいただいていいものか悩みました

すると、買い手様側から「契約を結ぶ日までに譲渡金額の70%をお支払いして、フォローアップ期間が終了する3カ月後に残り30%をお支払いするという前提で、フォローアップを始めていただけませんか?」とご提案いただいて。そちらの案に賛同して進めています。



(実際の商品販売画面)

 

【魅せ方:現状が悪くても、売上回復の根拠と追い風になる将来トレンドを訴求】

- 今回TRANBIをご活用いただきましたが、使い勝手はいかがでしたか。
まずHPがすごく見やすいため、初めてM&Aに挑戦される方や個人でM&Aを行う方にとっても、ハードルが高くなく使いやすいプラットフォームだと感じました。不動産売買を行っていて契約書に関する知識はある程度持っていたのですが、TRANBI上に契約書のひな形が用意されているのは助かりました

また、M&Aの段取りを把握する上で役立ったのが、TRANBI上にある「売り手様向けM&Aガイド」です。熟読して不明点があれば問い合わせたところ、サポートセンターの方が丁寧に教えてくださったので、買い手様にご迷惑を掛けずに進めることができました。

- 事業売却を振り返って、ぜひ、売り手様へのアドバイスをお願いします。
やはり、譲渡金額に理由と整合性を持たせることでしょうか。ご自身の中でその譲渡金額に設定した理由が明確であれば、値下げの要求などに振り回されずに交渉できるのかなと。

もう一つは、買い手様にビジネスの将来性を伝えることです。売却を考える場合は、どうしても経営状態が下向きになっている場合が多いと思いますが、数字だけを見せたのでは買い手様が不安に思われますよね。

たとえ自社の現状の数字は悪かったとしても、まずは売上が回復する根拠を伝えることです。私の場合はもし注力していた場合はこれだけ変わるといった試算を出しました。そして市場の状況などを加味して、「伸びしろがあるビジネスである」「将来性に魅力がある」を伝えることが大事だと思います。私はYahoo!ショッピングや楽天市場の年々上昇する売上推移データなども活用して説明しました。

- 最後に、ぜひ「買い手様に対するアドバイス」もいただけますか。
やはり、最初に送っていただくメッセージの内容はとても大事ですし、人柄が出ると思います。文章を見ただけで適切で交渉したい相手かどうかはけっこうわかるものです。短文やテンプレートそのままの文章よりは、長文で丁寧に思いを書いてくださった方がこちらもうれしいものです。売り手側は、たくさんの文章に目を通すため、目に留まりやすい言葉の選び方や文章力は必要だと思います。

また、もし案件概要などを読んで不明点があれば、最初のメッセージで質問を添えていただくのも、売り手側としてはありがたいと思いました。



(制作したバナーの数々)


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  • 倉本祐美加
  • ライター紹介倉本祐美加

    関西学院大学卒業後、クラウド製品を扱うIT企業のインサイドセールス職を経て2016年にライターとして独立。企業取材を中心としたインタビュー原稿の制作に従事していますが、エンタメ・スポーツ・文化等幅広く好みます。

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