会社を売りたい経営者が知っておきたい知識。M&Aの方法と流れ

会社を売りたい経営者が知っておきたい知識。M&Aの方法と流れ

近年はM&Aによる会社売却が増えています。売却に当たり、売り手は磨き上げを実施し、企業価値を少しでも高める努力をしましょう。株式譲渡による会社売却の流れや注意点、売れない会社と売れる会社の特徴を解説します。

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会社を売りたいと思った場合の解決策

自分の会社を手放したい場合、M&Aによる会社売却という選択肢があります。従来は一部の大手企業のみが行うものでしたが、後継者不在を解決する手段や経営戦略の一環として、M&Aを選択する中小企業やベンチャー企業が増えています。

M&Aの実施

M&Aとは『Mergers and Acquisitions』の頭文字を取ったもので、『会社の合併・買収』のことです。M&Aのスキームは以下のように多岐にわたるため、自社の状況に適したものを選択する必要があります。

  • 株式取得(株式譲渡・第三者割当増資・株式交換など)
  • 事業譲渡
  • 合併(新設・吸収)
  • 分割(新設・吸収)

広義のM&Aでは、会社の合併・買収だけでなく、資本提携や業務提携などの『提携』も含めるケースがあります。

近年M&Aが増加している背景の一つに、中小企業の後継者不足が深刻化している点が挙げられます。M&Aで第三者に会社・事業を譲渡すれば、事業承継問題を解決できる上、廃業による従業員の失業を回避できるでしょう。

M&Aはポジティブな印象に変化

かつてはM&Aに対し、『身売り』『ハゲタカ』というイメージを抱く人がいましたが、現在は事業承継や経営戦略の一手段として受け入れられており、中小企業や個人のM&Aが右肩上がりに増えています。

売り手にとっては、どのようなメリットがあるのでしょうか?以下のような項目が想定できます。

  • 後継者不足による廃業の回避
  • 技術の承継
  • 売却による創業者利益の獲得
  • 事業の継続や拡大
  • 経営者保証の解除

経営者に個人保証があると、後継者がその保証の引き継ぎを嫌い、M&Aが成立しないケースも珍しくありません。国は、事業承継時の経営者保証解除に向けた支援対策を打ち出しており、条件を満たせば既存の経営者保証を解除できる可能性があります。

売却しやすい会社の特徴

買い手の視点に立つことで、売れる会社と売れない会社の特徴や違いが見えてきます。多くの買い手からオファーがある会社には、どのような共通点があるのでしょうか?

安定して利益が出ている

売却しやすい会社の特徴として、安定した利益があることが挙げられます。業績が堅調で、強固な顧客基盤が確立できている会社は、多くの買い手に注目されるでしょう。具体的には以下のような特徴が挙げられます。

  • 特定のエリアで顧客の囲い込みができている
  • 他社に代替される可能性が低い
  • 継続的な取引があり、毎月一定の売り上げがある
  • 取引先に大手企業や上場企業がある

こうした特徴のある会社は、買い手に『投資の損失リスクが小さい』と評価されます。加えて、投資金額を上回る利益が得られる可能性が高いため、『投資する価値のある会社』と判断されるのです。

法務・財務状況に問題がない

法務・財務面に問題がなく、健全な会社経営ができていることも重要なポイントです。業績が堅調なよい会社に見えても、内部にさまざまな問題を抱えている会社は少なくありません。

粉飾決算に手を染めていたり、放漫経営で管理体制がずさんだったりする会社は、必ずといってよいほど買い手から敬遠されるでしょう。

財務上のデータだけでなく、買い手は経営者の人格も見てM&Aの可否を決めます。とりわけオーナー企業は、経営者の人間性や考え方が経営に反映されやすい傾向があるものです。

簡単には手に入らない魅力がある

実際のM&Aでは、赤字経営の会社が売却に成功する事例も多々あります。多くの買い手がオファーを出す理由は、他社にはない経営資源を有しているためです。以下はその一例です。

  • 優良な取引先や顧客
  • 優秀な人材
  • 販売ネットワーク
  • 独自の技術やノウハウ
  • ブランド力
  • 独占販売権・商標権・特許権など
  • 店舗の立地

取得するのに時間やコストがかかったり、他社には到底まねできない何かを持っていたりする会社は、その価値が高く評価されるケースがあります。逆に、現時点では売り上げが堅調でも、他社の参入が容易であれば多額のお金を投資しようとは思わないでしょう。

需要が高まっている事業

需要が高まっている事業を有している会社には、多くの買い手が現れます。売却のタイミングがよければ、高値で取引できる可能性が高いでしょう。自社が属する業界において、類似する上場会社の株価が高い時期が売却のチャンスです。

また、現時点で大きな売り上げがなくても『将来的な需要が見込める事業』は、買い手にとっての『金の卵』です。将来性のある事業をいち早く獲得できるのは、経営戦略上の大きな強みとなります。

売却しにくい会社の特徴

M&Aでは、『買い手が見つからない』『希望価格で売却できない』といった声も多く聞かれます。売却しにくい会社には、どのような共通項があるのでしょうか?自社に該当する特徴があれば、売却に向けて何らかの対策を講じる必要があります。

経営者への依存性が高い

経営者の人柄や能力、人脈で成り立っているような会社は、経営者の交代をきっかけに売り上げが大きく落ちる恐れがあります。いわゆる『ワンマン経営』は、社内にノウハウが蓄積されにくく、その経営者なしでは事業がスムーズに進まないのです。

経営者や特定のキーマンへの依存度が高い会社は、売却を検討する前に組織体制を見直す必要があります。業務プロセスを標準化したり、社員への権限委譲を進めたりして、経営者がいなくても回る会社を作っていきましょう。

売却希望価格が高すぎる

株式が市場に流通している上場企業と違い、中小企業の価値は分かりにくいものです。自社に思い入れがある売り手は売却希望価格を高く見積もるのに対し、買い手は投資のリスクや投資回収率を考慮して、買収希望価格を安く見積もる傾向があります。

両者の希望価格が大きくかけ離れると、交渉が成立しない可能性が高いでしょう。適切な方法で企業価値を算出した上で、落としどころを探っていく必要があります。売却希望価格を提示する際は、買い手が納得できるような合理的な根拠を用意しましょう。

赤字・債務超過の会社は?

赤字・債務超過の会社は、業績が堅調な会社に比べて売却しにくいのは事実ですが、どうせ売れないと諦めるのは早計です。

売り手の価値は、財務上の数字のみで決まるわけではありません。買い手に『資金を投下すれば黒字化できる可能性が高い』と判断された場合は、交渉が成立します。

赤字でも他社にはない技術・ノウハウを保有している会社や特別損失などで一時的に赤字になっているだけの会社は、売却を前向きに検討しましょう。

逆に、赤字である上に事業に将来性が見込めない会社や、強みとなる無形資産を保有していない会社は、買い手が見つからない可能性が高いといえます。

会社の売却価格の決まり方

M&Aでは、会社の価値を客観的に判断するための『企業価値評価(バリュエーション)』を行い、算定された結果をベースに売却価格を設定します。

純資産・営業利益から簡易的に評価できる

代表的なバリュエーションの手法は複数ありますが、中小企業では貸借対照表の純資産をベースに評価する『コスト・アプローチ』が多く用いられます。以下は、コスト・アプローチの一種である『年買法(年倍法)』の計算式です。

  • 年買法による企業価値=時価純資産法+のれん(営業権)

『時価純資産法』とは、純資産の時価総額から負債の時価総額を差し引いたものを企業価値とする手法です。

『のれん(営業権)』とは、企業のノウハウや技術、人材といった目に見えない無形資産を指します。年買法の計算式においては『営業利益の3〜5年分』として、時価純資産にプラスするのが一般的です。

買い手にとっての価値がプラスされる

M&Aでは買収する際に、買い手にとっての価値が市場価値(時価総額)に上乗せされる形で、買収価格として反映されることがあります。この差額を買収プレミアムといいます。

例えば、市場価格が30億円の会社が50億円で買収された場合、買収プレミアムは20億円です。買い手が買収プレミアムを支払う理由としては『支配権が得られる』『売り手の無形資産の価値が高い』『自社との高いシナジー効果が見込める』などが挙げられるでしょう。

買収プレミアムの平均割合は30~40%といわれていますが、株式公開買い付け(TOB)では、50%の買収プレミアムが上乗せされた例もあります。

会社を売る方法とは

会社ごと売却する場合、多くは『株式譲渡』のスキームが用いられます。中小企業は株式に譲渡制限がある場合が多く、売却の際は会社の承認を得る必要があります。スキームの詳細と売却時の注意点を見ていきましょう。

中小企業は株式譲渡による売却が一般的

M&Aで会社を売却する方法としては、『株式譲渡』が一般的です。株式譲渡は、買い手が売り手の株主から株式を取得し、対価として金銭を支払う手法です。

株式の譲渡によって経営権は売り手から買い手に移りますが、会社そのものに変化はありません。売り手の資産はもちろん、債務や社員の雇用契約、取引先なども買い手にそのまま引き継がれます(包括承継)。

売り手に不良資産や簿外債務(※)がある場合、債務の引き継ぎや想定外のリスクを回避するために『事業譲渡』を選択する買い手もいます。事業の一部または全部を譲渡する手法で、承継対象や範囲を選択できるのが特徴です(特定承継)。

※簿外債務:貸借対照表上に記載されていない債務

株主名簿を確認しておく

株式譲渡に際し、経営者は『株主名簿』を確認し、株主とそれぞれの株式の保有割合を把握しておきましょう。株主名簿とは、各株主についての基本情報を記載した帳簿で、会社設立時に作成が義務付けられています。

中小企業の株式譲渡では、保有する全株式を譲渡するケースが大半です。株主が分散している場合、株式の買い取りや自己株式の取得(※)などによって、株式を集約させる必要性が出てきます。

※自己株式の取得:会社が発行済株式を株主から買い戻すこと。

株式に譲渡制限がある場合

株式に譲渡制限がある場合、取締役会や株主総会の承認がないと株式譲渡が行えません。譲渡制限がある会社は『非公開会社(株式譲渡制限会社)』と呼ばれます。

譲渡制限の有無は、会社の定款や全部事項証明書で確認が可能です。実際のところ、日本の中小企業の大半は非公開会社です。

株式を譲渡する者は、会社に対して『譲渡承認請求』を行います。株式譲渡の承認がなされ株式譲渡が行われた後は、会社に『名義書換請求』を行い、『株主名簿の書換』がなされることで株式譲渡が完了します。

買い手を探す方法

自社のみで買い手候補を探そうとすると、膨大な時間と労力が費やされます。企業の場合、買い手候補先の選定や交渉、契約書作成などのサポートをM&Aの専門業者に依頼するのが一般的です。

M&A専門業者に依頼する

M&Aを始める前に、M&A専門業者とアドバイザリー契約を締結するのが最初のステップです。

M&A専門業者は、売り手と買い手の両方と契約をする『仲介形式』と、売り手または買い手のいずれかと契約をする『アドバイザリー形式』に区別されます。

仲介形式は、当事者の間で利益が相反する『利益相反』が起こりやすいのがネックです。多くの場合、買い手優先になりやすく、買い手に売り手の交渉戦略が筒抜けになる事態も懸念されます。

他方、アドバイザリー形式は契約した側の利益の最大化に尽力してくれますが、双方が互いの利益を主張し、交渉が長引きやすい傾向があります。両者を比較して、自社に合った方を選択しましょう。

得意とする案件の規模や業界、料金体系(初期費用の有無など)もきちんと確認する必要があります。

買い手候補先の選定

M&A専門業者が保有するデータの中から、買い手候補を数十社ほどリストアップし、そこからさらに詳細条件により絞り込んでいきます。

M&Aの相手候補を一定の選定基準に基づいてリストアップしたものは『ロングリスト』、ロングリストから条件を絞り込んだものは『ショートリスト』と呼ばれる点も覚えておきましょう。

自社がいくら魅力的な経営資源を持っていたとしても、戦略がなければ納得のいく結果は得られません。上位数社に絞り込んだ後は、相手先の情報を整理し、買い手との交渉に向けた戦略を練っていきます。

オンラインで案件を登録する方法も

M&Aの普及に伴い、売り手が買い手を探す方法も多様化しています。『M&Aプラットフォーム』を活用すれば、日本全国の買い手に自社の存在を知らせることができるでしょう。オンラインに案件を登録するメリットや手数料の目安を解説します。

M&Aプラットフォームとは

M&Aプラットフォームとは、オンライン上で売り手と買い手が交渉できるサイトのことです。M&Aの仲介業者を介するよりもコストを安く抑えられるため、資金に限りのある中小企業や個人事業主などに適しています。

『TRANBI(トランビ)』の会員数は10万人以上で、未経験者によるM&A成約率は約75%です。ユーザー登録数が多いM&Aプラットフォームに案件を登録すれば、より多くの買い手に自社をアピールできるでしょう。

一般的に、M&Aプラットフォームは売り手よりも買い手の方が多く、成約までの期間が比較的短いのが特徴です。中には、登録から1カ月前後でスピード成約した事例もあります。

手数料の目安

料金体系や手数料はM&Aプラットフォームによって異なります。売り手と買い手の両方に手数料が発生するケースもあれば、買い手のみが手数料を支払うケースもあるため、利用前に詳細を確認しましょう。

TRANBIの場合、買い手は有料の月額プランに加入する必要がありますが、売り手はM&A案件の掲載や買い手との交渉が無料で行えます。成約時の成約手数料もかかりません(成約報告の必要あり)。

ただし、M&Aの専門家にサポートをお願いする場合は、別途手数料がかかります。コストを抑えたい場合は、『事業承継・引継ぎ補助金』をはじめとする国の補助金を活用しましょう。条件を満たす場合、M&A専門家への費用を含む経費が補助金として交付されます。

参考:利用料金|トランビ 【M&Aプラットフォーム】

参考:事業承継・引き継ぎ等補助金(専門家活用) | 令和4年度 当初予算 事業承継・引継ぎ補助金

M&Aプラットフォーム活用の事例

事業承継・M&Aのプラットフォーム『TRANBI』には常時2,000件以上のM&A案件が掲載されています。会員は中小企業・個人事業主・会社員とさまざまで、M&Aの成功の形も一つではありません。

TRANBIを活用して、会社・事業の売却に成功した事例を紹介します。

自動車整備・パーツ販売会社の売却

自動車整備・パーツ販売をする会社が、自動車設計を手掛ける会社に株式譲渡を行った事例があります。売り手の売却理由は『後継者不在』です。黒字経営が続いていたものの、後継者候補が転職したことから、M&Aによる第三者承継に踏み切りました。

一方の買い手は、『売り手の経営者が会社に愛着を持っていること』や『キャリアの長い、特別なスキルを持つ技術者がいること』に大きな魅力を感じ、買収を決めたそうです。

売り手経営者には個人保証があり、一定の債務も抱えていましたが、個人保証を全部外して債務を引き継ぐ形で交渉がまとまりました。社長の人間性と技術者のスキルが高く評価されたM&A成功事例といえるでしょう。

愛知同士で生まれた自動車業界のM&A!欲しかったのは「社員の交流の場」と「エンドユーザーとの接点」
成功事例インタビュー記事
愛知同士で生まれた自動車業界のM&A!欲しかったのは「社員の交流の場」と「エンドユーザーとの接点」

自動車設計を手掛けており、大手自動車メーカーと取引実績も多数のT社。代表のIさんはM&Aに積極的で、2022年3月に自動車整備・パーツ販売を手掛ける会社を買収します。

英会話スクールの売却

生徒のニーズの変化やコロナ禍の影響により、16年間運営してきた英会話スクールの売却を決意、理想の買い手と巡り会った事例もあります。

TRANBIに売り手情報を掲載したその日から申し込みが殺到し、一時は受け付けを停止する事態になりましたが、最終的に2社へと絞り込みました。スクールの雰囲気やレッスン方法などをしっかりとアピールしたことが、多数のオファーにつながったようです。

譲渡形態は株式譲渡ですが、買い手の提案で株を約半分ずつ持ち合い、協力関係を保ってビジネスを続けることに決まります。

売り手にとって、売却は事業から身を引くとは限りません。買い手の考え方や方針によっては、売却後に新たな可能性が開けるケースもあるのです。

参考:TRANBIはただの「売り買いの場」じゃない!優秀な経営者との出会いで、16年大事に育ててきた英会話教室の未来が開けた

TRANBIはただの「売り買いの場」じゃない!優秀な経営者との出会いで、16年大事に育ててきた英会話教室の未来が開けた
成功事例インタビュー記事
TRANBIはただの「売り買いの場」じゃない!優秀な経営者との出会いで、16年大事に育ててきた英会話教室の未来が開けた

関東圏で2005年から英会話スクールを運営してきたA社。子どもから大人まで幅広い世代を対象に、外国人講師とのコミュニケーションの場や海外文化に触れることのできるこだわりの環境を提供してきた結果、地元で長年愛されるスクールに育っていました。

買い手を見つけるためのポイント

M&Aのフェーズは『事前準備』『交渉』『最終契約』に大別されます。事前準備では、磨き上げの実施と企業概要書の作成が欠かせません。自社の強みを強化した上で、買い手にしっかりとアピールすることが成功のポイントといえます。

磨き上げの実施

本格的なM&Aのプロセスに入る前に欠かせないのが『磨き上げ』です。

磨き上げとは、自社をさまざまな面から調査した上で、組織や事業の不備・問題を是正し、自社の強みを明確化する取り組みを指します。会社を最高の状態に仕上げることで企業価値が大きく向上し、理想のM&Aが実現するのです。

以下は、磨き上げの具体例です。『内部統制の構築』と『強みの強化』を意識しましょう。

  • 事業や無形資産の強みを明確にし、強化する対策を考える
  • 職務に対する職責を明文化する
  • 就業規則や服務規程を見直す
  • 上層部に権限が集中している場合は権限の委譲を行う
  • 過剰在庫や事業に不要な資産は処分する

魅力的な企業概要書の作成・提示

M&Aの交渉前のプロセスでは、売り手が買い手に『企業概要書(IM)』を提出します。事業内容や財務状況などが記載された売り手のプロフィールのようなもので、買い手は企業概要書の内容を見て、交渉の可否を判断します。

売り手は自社の状況を正確に伝えると同時に、磨き上げで強化した強みを積極的にアピールしましょう。文字だけでなく、イメージ写真やグラフなどを盛り込むと、視覚的に分かりやすくなります。

企業概要書は売り手の依頼を受け、M&Aの専門業者が作成するのが一般的です。アピールポイントが漏れなく記載されているかや、虚偽の情報がないかをチェックしましょう。

買い手が見つかった後の流れ

買い手が見つかった後は、トップ面談を経て基本合意書を締結し、デュー・デリジェンス(以下、DD)を実施します。特に、買収調査であるDDは、M&Aの成否や取引価格を決定する重要なプロセスです。

トップ面談・意向表明書の提示

M&A先を選定した後は、売り手と買い手のトップ面談を行います。面談の主な目的は、経営者の人間性やビジョン、企業文化などを把握することです。お見合いと同じように、M&Aの成功にはお互いの相性が大きく関わってきます。

どんなに魅力的な金額を提示されたとしても、経営理念に共通点が見いだせなかったり、将来のビジョンが共有できなかったりすれば、満足のいく売却はかないません。『会社と従業員の未来を託せるかどうか』を見極めましょう。

トップ面談後、M&Aを進める意向があれば、買い手から売り手に『意向表明書』が提出されます。提出は義務ではないため、そのまま『基本合意書』の締結に進む場合もあります。

基本合意書の締結

基本合意書は、M&Aのスキームや取引価格、DDへの協力義務などを記載した書面です。合意内容の明確化や今後のスケジュールの確認などが主な目的で、内容のほとんどには法的拘束力がありません。

法的拘束力を付与するケースが多いのは『独占交渉権』に関する条項です。M&Aの独占交渉権とは、1社のみが売り手と独占的に交渉できる権利のことで、条項に違反した際は違約金などのペナルティーが課されます。

独占交渉権が買い手に与えられている期間中は、ほかの買い手が現れても交渉ができない点に注意しましょう。

デュー・デリジェンス

DDとは、買い手が売り手に対して行う買収調査です。DDは広範囲に及びますが、中小企業では、財務面・税務面・法務面のDDを重視する傾向があります。

具体的には、財務諸表に表れない簿外債務や偶発債務、訴訟トラブルなどのリスクがないかを調査すると同時に、算定された売り手の企業価値が適正かどうかを判断します。

売り手の経営者やキーマンに対するヒアリングや、現地調査が実施されるケースも多いため、事前準備は入念に行いましょう。資料の開示を求められた場合は、迅速に対応する必要があります。

以下のコラムでは、『財務デュー・デリジェンス』の詳細を解説しています。買い手が重視するポイントや、大まかなスケジュールを把握できるでしょう。

財務デュー・デリジェンスの調査内容や必要性とは。主な二つの役割 財務デュー・デリジェンスの調査内容や必要性とは。主な二つの役割
手法
財務デュー・デリジェンスの調査内容や必要性とは。主な二つの役割

財務デュー・デリジェンスとは、買い手が対象企業の財務状況や資金繰りを調査することです。最終契約の締結前に行われるのが一般的で、簿外債務などの財務リスクを洗い出します。財務デュー・デリジェンスの意義や調査内容について解説します。

最終的な条件交渉により成立した場合

DDの結果によっては、スキームや価格が変更されたり、M&A自体が不成立に終わったりするケースも珍しくありません。最終交渉が合意に至った場合は、最終契約の締結へと進みます。クロージングまでの流れと各プロセスのポイントを見ていきましょう。

最終契約書の締結

基本合意書と異なり、最終契約書は法的拘束力を有します。いずれかが契約を破棄する場合は、相手に損害賠償を請求される可能性がある点に留意しましょう。いったん契約書を締結すると内容の変更もできないため、検討は慎重に行う必要があります。

最終契約書には、取引金額やスキームなどの合意内容のほかに、表明保証・誓約事項・補償条項・クロージングの前提条件・解除条件・競業避止義務・ロックアップなどが盛り込まれます。

表明保証の役割

『表明保証』は、主に売り手が買い手に対し、契約目的物に記された一定の事項が真実かつ正確であることを保証する条項です。内容に相違があった場合、買い手は損害賠償を請求できます。

表明保証にはDDを補完する役割があります。DDで全てのリスクを洗い出すのは限界があるため、万が一の場合に責任を追及できるように、一定の事項に関しては売り手の表明保証が必要なのです。その一例として以下が挙げられます。

  • 税務申告が適正であること
  • 訴訟や紛争がないこと
  • 知的財産権を侵害していないこと
  • DDの内容に間違いがないこと

競業避止義務やロックアップの役割

『競業避止義務』とは、M&A成立後に売り手に課せられるもので、『買い手の競合となる事業を一定期間・範囲は行わない』という義務を定めたものです。

売り手がM&A後すぐに同様の事業を開始すると、買い手の売り上げが減少したり、事業拡大が妨げられたりして、大きな損失を被るでしょう。

特に事業譲渡の場合は、会社法に競業避止義務が明記されています。ほかのスキームでも買い手が不利益を被るのを避けるために盛り込まれるのが一般的です。

『ロックアップ』とは、売り手の経営陣やキーマンを会社に一定期間、残留させる条項で『キーマン条項』とも呼ばれます。キーマンが残留することで、時間をかけて引き継ぎが行える上、新体制でのサポートを得られます。ただし、売り手自身は直接の契約者のため残留を契約で締結することは可能ですが、売り手以外の方を強制的に残留させることは対象者の職業選択の自由を縛るリスクを伴うため、基本行わないことが一般的です。

クロージング

クロージングの内容はM&Aのスキームによって異なります。株式譲渡では売り手が買い手に株式を譲渡し、買い手がその対価を支払うことで完了します。

最終契約書には、クロージングを実行する前提条件が記載され、条件を満たさない限りクロージングは行われません。以下は条件の一例です。

  • 表明保証の事項が正しいこと
  • 誓約事項が履行されていること
  • 主要な取引先から取引継続の同意を得ていること
  • 株式譲渡の承認がなされていること(非公開会社の場合)

売り手としては、軽微な違反でM&Aが頓挫することだけは避けたいものです。結果的に条件を充足できない場合は再交渉へと進み、クロージングの延期や取引価格の減額などを話し合います。

まとめ

M&Aのスキームには複数ありますが、中小企業が会社を売却する際は『株式譲渡』を選択するのが一般的です。企業価値を高めるための磨き上げを実施し、売却のための戦略を策定しましょう。

近年は買い手探しの方法が多様化しており、M&Aの仲介会社を利用するほかに、TRANBIのようなM&Aプラットフォームを利用する手もあります。

案件の譲渡・売却などM&Aの進め方で困ったことがあれば、M&Aの専門家が無料で相談に乗ることも可能です。以下の入力フォームより『個別相談希望』と記載してお問い合わせください。

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株式譲渡による会社売却について詳しく知りたい人は、以下のコラムもご覧ください。

会社売却の主な理由とは。売れる価格を知る方法や株式譲渡の流れなど
手法
会社売却の主な理由とは。売れる価格を知る方法や株式譲渡の流れなど

後継者不在で事業の将来に不安があるなら、廃業ではなく会社売却を検討するのがおすすめです。現状や仕組みを理解すれば、さまざまな問題を解決できると分かるでしょう。価格の算定やM&A手法の種類など、会社売却について詳しく解説します。

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