会社売却の主な理由とは。売れる価格を知る方法や株式譲渡の流れなど

会社売却の主な理由とは。売れる価格を知る方法や株式譲渡の流れなど

後継者不在で事業の将来に不安があるなら、廃業ではなく会社売却を検討するのがおすすめです。現状や仕組みを理解すれば、さまざまな問題を解決できると分かるでしょう。価格の算定やM&A手法の種類など、会社売却について詳しく解説します。

会社売却の現状を知ろう

現在の日本では中小企業の会社売却が活発化しています。会社売却とM&Aの意味や現状を知り、売却先の探し方も押さえておきましょう。

会社売却やM&Aとは

会社売却とは、会社のオーナーが自分の会社を第三者に売ることです。経営権を移転させる株式譲渡や、一部の事業を売却する事業譲渡など、さまざまな売却方法があります。

一方、会社の合併や買収を意味するのがM&Aです。M&Aという言葉自体が、『Mergers(合併)』と『Acquisitions(買収)』の頭文字を組み合わせによりできあがっています。

会社売却が主に売り手視点の言葉であるのに対し、M&Aは主に買い手側の立場で使う言葉です。株式譲渡や事業譲渡などのスキームは、会社売却とM&Aの双方で共通して用いられます。

中小企業のM&A件数は増加している

中小企業庁が公表しているデータによると、日本における中小企業のM&A件数は近年増加傾向にあります。買収により子会社や関連会社が増加した企業数は、大企業より中小企業のほうが増えている点も特徴です。

中小企業の会社売却が活発化している大きな理由に、後継者不足の問題が挙げられます。買い手側としては、事業規模や事業領域を拡大し売上の向上を図ることが、M&Aに踏み切る理由の一つです。

なお、中小企業基本法では、第2条により中小企業の定義が業種ごとに規定されています。例えば製造業や建設業においては、資本金3億円以下または常勤従業員300人以下なら中小企業者です。

参考:2018年版 中小企業白書 第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命 | 中小企業庁

参考:中小企業基本法 第2条 | e-Gov法令検索

売却先の探し方は?

会社売却を検討する場合、売却先を探す必要があります。M&A仲介サイトを利用すれば、豊富な案件から目的に合った売却先を探すことが可能です。

数あるM&A仲介サイトの中でも、国内最大級の規模を誇る『TRANBI(トランビ)』なら、一度に平均15社の買い手が見つかります。比較対象となる会社が多いため、より好条件の会社を選べるでしょう。

売り手側は無料で利用できるのもTRANBIの魅力です。事業に関する情報を匿名で掲載できるため、サイト上で社名を明かすことなく安心して利用できます。

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会社売却の理由とは

経営者が自分の会社を売却する理由として、以下の三つが挙げられます。ネガティブな理由だけではない点をチェックしておきましょう。

後継者がいないため

経営者が自社を売却する大きな理由の一つに、少子化や地方の過疎化などによる後継者不足の深刻化が挙げられます。自分が育て上げた事業を承継したくても、後継者候補を見つけにくくなっているのが現状です。

前述の中小企業庁の資料からは、経営者が高齢になっても後継者がいない企業が一定数存在することが分かります。2017年11月時点において、経営者が60歳以上の後継者不在率は48.7%です。

軌道に乗っている会社が廃業すると、従業員やステークホルダーに甚大な影響を与える結果になりかねません。事業自体を守るためだけでなく、周囲の生活や利益を守るためにも、後継者不在の経営者が会社売却を選択するようになっているのです。

参考:2018年版 中小企業白書 第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命 | 中小企業庁

事業の成長のため

自社の事業をより成長させるための方法として、会社売却が選択されるケースもあります。他社の傘下に入れば、自社の事業における限界突破を図ることが可能です。

創業以来、事業が順調に成長している会社でも、さまざまな理由により売上が頭打ちになってしまう場合はあります。自社の努力のみではどうにもならない状況でも、買い手との間にシナジー効果が生じれば、事業のさらなる成長を期待できるでしょう。

会社売却により事業が成長すれば、従業員の給料も上がる可能性があります。事業の成長を見込んだ会社売却は、従業員やステークホルダーのためにもなるのです。

アーリーリタイアのため

会社を売却する経営者の中には、アーリーリタイアを目的としている人もいます。アーリーリタイアとは、早期に仕事を離れて自由な生活を送ることです。

自社が大きな成長を遂げた場合、会社売却により一生お金に困らない金額を得られる可能性もあります。高く売却できる時点で自社を売り抜いてしまえば、好きなことをしながら第二の人生を謳歌することが可能です。

近年は、30~40代の起業家がアーリーリタイアを志すケースも増えています。完全にリタイアするのではなく、売却益を資金として別の事業を始める選択肢もあるでしょう。

会社を売るとどうなるのか

会社売却により得られるメリットを確認しておきましょう。自社をうまく売却できれば、さまざまなメリットを受けられる可能性があります。

売却代金が入る

純資産があり、利益を生み出している会社なら、売却時に売却代金が入ります。売却金額の計算に明確な決まりはありません。売却金額の大まかな目安は、純資産+年間営業利益の3~5年分です。

1年間で200万円程度の利益を出している会社なら、会社売却により最大約1000万円の売却代金を期待できることになります。実際のM&Aでは売り手と買い手が交渉し、双方が納得する金額に落ち着くのが一般的です。

ただし、経営者個人が保有する株式を売却するケースでは、株式の売却益が『譲渡所得』として扱われます。譲渡所得は課税所得であり、経営者に所得税や住民税が課される点に注意が必要です。

個人保証からの解放

経営者の個人保証で会社が借入を行っている場合、会社売却により個人保証から解放されます。個人保証とは、会社が借入や賃貸などの契約を行う際、会社の信用力を高めるために個人が保証する仕組みです。

経営者の個人保証で融資を受けている会社が事業に失敗した場合、最終的には経営者個人が返済の義務を負います。後継者が見つからない大きな理由の一つです。

しかし、M&Aで会社を売却できれば、適切な手続きを実施することで買い手が保証が引き継がれます。会社売却により、個人保証の精神的な負担から一気に解放されるでしょう。

廃業の費用や手間がかからない

後継者不在により会社の存続が厳しくなった場合は、経営者が自主的に会社をたたむ『廃業』が選択される場合もあります。会社自体が消滅することになるため、売却より楽に手続きを済ませられると考えている人も多いでしょう。

しかし実際に廃業する際は、取引先への説明、従業員の解雇や法令に従ってさまざまな手続きなども行う必要があります。手続きの中には費用が発生するものも数多くあります。

一方、会社売却をM&A仲介会社に依頼すれば、所定の費用はかかるものの手続きの手間を大幅に軽減できます。廃業にかかる費用も発生しません。売却益を得られる場合は、仲介手数料の差し引き後に利益を残せるケースもあるでしょう。

会社売却の代表的なM&A手法「株式譲渡」

会社売却のM&A手法には、主に株式譲渡が選択されます。株式譲渡の特徴・メリットを知り、同じM&A手法である事業譲渡についても理解を深めておきましょう。

株式を売却して経営権も移転させる

株式譲渡とは、株式の売却により売り手の経営権を買い手に移転させ、買い手が会社ごと買収するM&A手法です。株式の過半数を買い手が保有すれば、売り手の経営権を得られます。

経営権とは、株主総会の普通決議において、会社経営に関する重要な意思決定を行える権利です。取締役・監査役の選任や余剰金の配当といった決議を通せます。

議決権のある株式の2/3以上を保有していれば、株主総会の特別決議を通すことも可能です。普通決議に比べ、さらに重要な意思決定を行えるため、経営権に対して『支配権』とも呼ばれます。

従業員は変わらず働き続けられる

会社売却で経営権が移転しても、売却元の従業員の雇用は守られます。従業員が雇用契約を結んでいる会社は、そのまま変わらず存続するためです。

従業員の雇用条件も変更がない状態で継続します。給与や労働時間などに変化がないため、売却後も基本的には特別な意識を持つことなく働き続けることが可能です。

ただし、経営者は売却後に引退する可能性があるため、経営者への思い入れが強い従業員は職場を去る場合もあるでしょう。場合によっては、売却後に買い手が雇用契約を変更し、労働条件が変わることもあり得ます。

一部の事業を売却するのは「事業譲渡」

会社を売却する際のM&A手法として、株式譲渡ではなく事業譲渡が選択されることもあります。事業譲渡とは、一部の事業や資産などを買い手に譲渡する手法です。

経営権を移転することで買い手に何らかのリスクが発生し得る場合に、買い手が事業や資産のみの売却を希望するケースがあります。売り手の都合で事業譲渡による売却を望む場合もあるでしょう。

事業譲渡なら、買い手に簿外債務や不要な事業が引き継がれるリスクを軽減することが可能です。ただし、取得する資産や権利などを細かく特定しなければならないため、手続きに手間がかかります。

株式譲渡でどのように会社を売却するのか

株式譲渡はどのような手続きで進められるのか、大まかな流れを確認しておきましょう。売却に要する期間や譲渡前の確認事項についても解説します。

会社売却にかかる期間

一般的に、会社の売却に要する期間は約半年~1年です。売却先の条件に強いこだわりを持っている場合や、会社の規模が大きい場合は、期間が長期化する傾向があります。

会社売却の検討が長引くと、会社側の動きが従業員や取引先に知られてしまい、不信感を抱かれたり退職者が出たりしかねません。慎重に進めるべき部分は時間をかけつつ、全体的には短期間でのM&A成立を目指すのが得策です。

会社売却の準備段階で一定の知識を得ておけば、期間の短縮に役立つでしょう。手続きに必要な書類や資料などを早めに用意しておくことも重要です。

株式譲渡の前に確認すること

株式譲渡で会社を売却する際は、株券発行の有無を確認しましょう。株券不発行会社なら当事者間が合意するだけで株式譲渡を成立させられますが、株券発行会社の場合は株券を交付しなければ株式の権利を移転できません。

株式の譲渡制限の確認も必要です。譲渡制限付株式を株主が譲渡する場合、発行会社の承認を得る必要があります。中小企業では株式に譲渡制限を付けているケースがほとんどです。

株券発行の有無と株式の譲渡制限は、定款や登記事項証明書で確認できます。「当会社の株式については、株券を発行する」「当会社の株式を譲渡により取得するには、○○の承認を要する」などとあれば、記載の通りに手続きを進めなければなりません。

株式譲渡の流れ

株式譲渡の手続きでは、最初に当事者間で譲渡価額や譲渡条件などの話し合いが行われ、合意内容に基づいて株式譲渡契約が締結されます。

株式に譲渡制限が付いている場合は、契約前に売り手が株主総会で株式譲渡の承認を受けなければなりません。取締役会が設置されているなら、特定の条件を満たしていれば取締役会でも承認請求を行えます。

株式譲渡契約の締結後、株式の引き渡しや譲渡対価の支払いが行われれば、株式譲渡の手続きは完了です。株主名簿に新株主が記載され、買い手は正式な株主となります。

企業価値の算定方法

会社売却における企業価値の算定方法は、大きく3種類に分けられます。各手法の内容や、中小企業のM&Aでよく使われる方法を押さえておきましょう。

主に三つの方法がある

企業価値の主な算定方法には、コストアプローチ・マーケットアプローチ・インカムアプローチの3種類があります。

コストアプローチとは、会社の純資産に着目して企業価値を評価する方法です。客観性に優れている上、素早く簡単に計算できます。

類似の上場企業の株価やM&A取引例を参考とする価値算定方法が、マーケットアプローチです。計算の手間を簡略化できる反面、類似する企業の選定が難しかったり、取引事例がなければ使えません。

インカムアプローチは、将来的なキャッシュフローや利益の予測値をベースに価値を算定する方法です。代表的な手法である『DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法』は最も合理的な評価方法とされ、上場企業が買い手となるケースでよく用いられています。

中小企業のM&Aで使われる方法は?

中小企業のM&Aでよく用いられる評価方法が、『年買法』です。貸借対照表で示される時価の純資産額に、のれん代を加算して評価額を求めます。

のれん代とは、直近3~5年における利益額の平均を3~5倍した金額です。売り手の将来性を高く評価された場合は、利益額に掛ける倍率も高くなる傾向があります。

貸借対照表があれば純資産額が分かるため、企業価値の計算が比較的簡単です。純資産が過去の利益の蓄積であることから、年買法は社歴の長い会社の評価に向いています。

譲渡価格の決まり方

会社売却における譲渡価格は、売り手と買い手の交渉により決定します。交渉時には、最初から売り手が希望譲渡価格を提示しているのが一般的です。

買い手側で算出した評価額と売り手の提示額をすり合わせ、双方が納得する着地点を探していきます。買い手の評価額のほうが低ければ、歩み寄りが必要になるでしょう。

買い手側の投資上限額は、売り手企業単体の評価額に、買収で得られるシナジー効果の分を加味した金額になるのが基本です。売り手側にマイナス要素があれば、減額される分も発生するでしょう。

会社の価値を上げる要素

売却時に会社の価値をできるだけ高めておけば、より好条件で売れるでしょう。会社の価値を上げる主な要素を紹介します。

売上などの数字

会社の価値が高まる要素の一つに、売上や利益などの数字が挙げられます。業績が良い会社は高く評価されやすいため、好条件で売却できるでしょう。

買い手が異業種なら、数字の高さをストレートにアピールできます。同業他社が買い手である場合も、売上高や顧客数の継続的な増加を示せれば好印象を与えることが可能です。

会社の業績が良い状態でも、経営者が会社売却を検討している状況なら、業績はいずれ下がっていくでしょう。数字が高いときこそ売却に最適な時期だといえます。

従業員に高いスキルがある

会社に優秀な人材が多いほど、価値を高く評価される傾向があります。会社の価値を上げるためには、人材の育成や確保を重視することも大切です。

人材の評価にあたっては、人手の充実度や従業員の流動性・スキルを見られます。特に、専門性が高いスキルを持つ人材を抱えている会社なら、売却時の評価はより高まるでしょう。

会社売却を検討している状況では、環境の変化を嫌う従業員が流出してしまいやすくなります。従業員の能力を高めることだけでなく、人材の引き止めにも尽力することが重要です。

魅力ある取引先、商圏の大きさ

会社の取引状況も、企業価値を上げる要素の一つです。魅力的な取引先を抱えている会社なら、単に利益を期待できるだけでなく、シナジー効果も高めやすくなります。

商圏が大きい会社も高い評価を受けやすいでしょう。対応地域が広い会社や、取引先が分散している会社なら、好条件で売却しやすくなります。

ただし、大手企業1社のみとしか取引がないようなケースでは、直近の業績が良くても将来的なリスクを懸念されるでしょう。取引先の状況の変化にともない、一気に経営が悪化しかねないためです。

まとめ

後継者の不在で悩んでいる場合は、廃業ではなく会社売却がおすすめです。会社を売れば売却益を得られる上、廃業の費用や手間もかかりません。

会社売却でよく使われるM&A手法は、会社ごと売却する株式譲渡です。評価額の出し方や高く売る方法も理解し、相手探しから始めてみましょう。