M&Aの種類7つを徹底比較|株式譲渡・事業譲渡・合併の違いを解説
M&Aの種類には、株式譲渡・事業譲渡・合併・会社分割・株式交換・株式移転・第三者割当増資の7つの主要スキームがあります。それぞれの違い、メリット・デメリット、向くケースを実務目線でわかりやすく徹底解説。中小企業の事業承継型M&Aから組織再編まで網羅的に紹介します。
M&A(合併・買収)を検討する際、最初にぶつかる壁が「どの種類(スキーム)を選べばよいのか」という疑問です。M&Aには株式譲渡・事業譲渡・合併・会社分割・株式交換・株式移転・第三者割当増資など多様な種類があり、それぞれに明確な特徴と適したシーンがあります。
本記事では、M&Aの種類と違いを徹底比較します。株式譲渡と事業譲渡の違い、合併と事業譲渡の違い、吸収合併と新設合併の違いなど、検索意図に直結する「違い」を実務目線でわかりやすく解説。さらに、7つの主要スキームの仕組み・メリット・デメリット・向くケース、よくある質問まで網羅的にお届けします。
経営者・事業承継検討者・M&A実務者の方が「自社に最適なM&Aの種類はどれか」を判断する基盤となる内容です。ぜひ最後まで読み進めてください。
M&Aとは?種類と分類の全体像
M&A(エム・アンド・エー)は企業の成長戦略のひとつとして注目される手法ですが、ひとくちにM&Aといってもその種類は多岐にわたります。まずは全体像を整理して、各スキームの位置づけを把握しましょう。
M&Aの意味|Mergers and Acquisitions
M&Aは「Mergers and Acquisitions」の頭文字を取った言葉で、日本語では「企業の合併・買収」と訳されます。Mergersが「合併」、Acquisitionsが「買収」を意味します。
それぞれの基本的な意味は以下のとおりです。
- 合併(Mergers): 複数の会社をひとつの法人にまとめる手法
- 買収(Acquisitions): 譲渡対価を支払い、会社の経営権または事業を取得する手法
近年は中小企業の後継者不足が深刻化しており、「事業承継」を目的としたM&Aが急増しています。事業を次世代に引き継ぐ手段として、M&Aは経営者にとって重要な選択肢となっています。
狭義のM&Aと広義のM&A
M&Aには「狭義のM&A」と「広義のM&A」があり、対象範囲が異なります。
- 狭義のM&A: 経営権の移転を伴う「合併」と「買収」のみを指す
- 広義のM&A: 合併・買収に加え、経営権の移転を伴わない「資本提携」「業務提携」「資本業務提携」も含む
本記事では主に狭義のM&Aに焦点を当て、株式譲渡・事業譲渡・合併・会社分割などの代表的なスキームを解説します。広義のM&Aに含まれる業務提携や資本業務提携については、それぞれ専門記事をご覧ください。
M&Aの種類の全体マップ(7つの主要スキーム)
狭義のM&Aには、代表的な7つのスキームがあります。それぞれの分類と位置づけを整理しましょう。
- 買収(株式取得): 株式譲渡・株式交換・株式移転・第三者割当増資
- 買収(事業取得): 事業譲渡
- 合併: 吸収合併・新設合併
- 会社分割: 新設分割・吸収分割
これらは大きく分けて「会社全体(株式)を取得するか」「事業のみを取得するか」「複数の会社を統合するか」「事業を切り離すか」という4つの基本パターンに分類できます。
目的や状況に応じて適切なスキームを選択することが、M&A成功の第一歩となります。詳しい選び方は、後述する「事業承継スキーム比較・選び方」の関連記事もご覧ください。
資本提携・業務提携・資本業務提携との違い
広義のM&Aに含まれる資本提携・業務提携・資本業務提携は、経営権の移転を伴わない点で、狭義のM&Aとは大きく異なります。
これらの提携形態では、持株比率は1/3を超えないのが通常で、経営権は譲渡側の元に残ります。「対等な協力関係」を目指すパートナーシップであり、買収・合併とは目的が異なります。
M&Aの種類の違い|株式譲渡・事業譲渡・合併の比較
M&Aを検討する際、最も悩むのが「株式譲渡・事業譲渡・合併」の3つの違いです。それぞれ似ているようで、譲渡対象・承継範囲・税負担などが大きく異なります。本章では、これらの違いを徹底比較します。
株式譲渡と事業譲渡の違い
株式譲渡と事業譲渡の最大の違いは、「譲渡対象」です。株式譲渡は会社全体(経営権)を譲渡するのに対し、事業譲渡は事業の一部または全部を個別に選択して譲渡します。
| 項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 譲渡対象 | 会社全体 | 事業のみ |
| 承継範囲 | 包括承継(全て引き継ぐ) | 個別承継(選択可能) |
| 経営権の移転 | 移転する | 移転しない(法人格は売り手に残る) |
| 簿外債務リスク | 承継する | 回避可能 |
| 許認可 | 原則承継可能 | 原則再取得が必要 |
| 手続き | 比較的シンプル | 個別の同意取得が必要 |
株式譲渡は「会社を丸ごと引き継ぎたい」場合、事業譲渡は「特定事業だけを切り出したい」「簿外債務を回避したい」場合に向いています。
株式譲渡と合併の違い
株式譲渡と合併の違いは、「会社の法人格がどうなるか」にあります。株式譲渡では売り手の法人格は残りますが、合併では消滅会社の法人格が消滅します。
| 項目 | 株式譲渡 | 合併 |
|---|---|---|
| 法人格 | 売り手は法人格存続 | 消滅会社は法人格消滅 |
| 承継方法 | 株主の変更 | 権利義務の包括承継 |
| 関係性 | 親子関係(子会社化) | ひとつの会社に統合 |
| 対価 | 金銭が一般的 | 株式が一般的 |
| 手続きの煩雑さ | シンプル | 複雑(株主総会・債権者保護手続き) |
株式譲渡は「相手企業の独立性を維持しつつ傘下に入れたい」場合、合併は「完全に一体化してシナジーを最大化したい」場合に選ばれます。
事業譲渡と合併の違い
事業譲渡と合併の違いは、「会社全体を統合するか」「事業のみを切り離すか」にあります。事業譲渡は事業のみを売買するのに対し、合併は会社全体が統合されます。
| 項目 | 事業譲渡 | 合併 |
|---|---|---|
| 対象範囲 | 事業のみ | 会社全体 |
| 売り手の存続 | 法人格存続 | 消滅会社の法人格消滅 |
| 承継方法 | 個別承継(資産・契約を選択) | 包括承継(全て引き継ぐ) |
| 会社法上の分類 | 取引行為 | 組織再編行為 |
| 従業員 | 個別同意が必要 | 自動的に承継 |
事業譲渡は「不採算事業を切り離してコア事業に集中したい」場合、合併は「複数の会社をひとつに統合して規模を拡大したい」場合に選ばれる傾向があります。
吸収合併と事業譲渡の違い
吸収合併と事業譲渡は混同されやすい手法ですが、明確な違いがあります。最大のポイントは「法人格の消滅と承継範囲」です。
| 項目 | 吸収合併 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 譲渡対象 | 会社全体 | 事業のみ |
| 法人格 | 消滅会社が消滅 | 売り手存続 |
| 承継範囲 | 包括承継(債務も全て引き継ぐ) | 個別選択可能 |
| 簿外債務リスク | 承継する | 回避可能 |
| 会社法上の分類 | 組織再編 | 取引行為 |
| 消費税 | 対象外 | 課税対象 |
吸収合併は「完全な経営統合でスケールメリットを得たい」場合に、事業譲渡は「特定事業のみの取得+不要な負債を回避したい」場合に選ばれます。
M&Aの種類の違い|3者の比較表
株式譲渡・事業譲渡・合併の違いを表で整理すると、以下のようになります。
| 項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 | 合併 |
|---|---|---|---|
| 譲渡対象 | 会社全体(株式) | 事業のみ | 会社全体 |
| 経営権の移転 | あり | なし(法人格存続) | あり(消滅会社は消滅) |
| 承継範囲 | 包括承継 | 個別承継(選択可) | 包括承継 |
| 簿外債務リスク | 承継する | 回避可能 | 承継する |
| 許認可 | 原則承継可能 | 原則再取得 | 原則承継可能 |
| 対価 | 金銭が一般的 | 金銭 | 株式が一般的 |
| 手続きの煩雑さ | 比較的シンプル | 個別同意が必要 | 複雑 |
3つの手法はそれぞれに異なる特性があり、「目的・リスク・税負担」の観点から総合的に選択する必要があります。
株式譲渡とは
株式譲渡は、売り手株主が保有する株式を買い手に売却することで、会社の経営権を移転させる手法です。中小企業のM&Aで最もよく用いられる手法であり、手続きの簡便さが特徴です。
株式譲渡の基本|相対取引・市場買付・公開買付(TOB)
株式譲渡には、3つの取引方法があります。
- 相対取引: 株主と1対1で取引する方法(非上場企業のM&Aで一般的)
- 市場買付: 証券取引所で買い入れる方法(上場企業向け)
- 公開買付(TOB): 不特定多数の株主から市場外で買い付ける方法
中小企業のM&Aでは、相対取引が最も多く採用されています。売り手と買い手が株式譲渡契約書(SPA)を締結し、株主名簿の書き換えで手続きが完了します。
上場企業の場合、買付後の株式所有割合が5%以上になる場合(5%ルール)や、特定条件で1/3を超える場合は、TOBによる方法が必要です。
株式譲渡のメリット・デメリット
株式譲渡の主なメリット・デメリットは以下のとおりです。
【株式譲渡のメリット】
- 手続きが比較的シンプル(株主名簿の書き換えで完了)
- 会社の法人格・許認可・契約関係がそのまま維持される
- 従業員の雇用契約も自動的に承継される
- 債権者保護手続きが原則不要
【株式譲渡のデメリット】
- 簿外債務や偶発債務も承継するリスク
- 買い手は多額の現金が必要
- 株主が複数いる場合、全員の同意取得が困難なケースも
これらの特性から、事業承継を目的とする中小企業のM&Aで最も活用されている手法です。
株式譲渡が向くケース
株式譲渡が特に向いているのは、以下のケースです。
- 後継者不在の中小企業(事業承継型M&A)
- 会社全体を引き継ぎたい買い手
- 許認可をそのまま継続したい(医療法人・建設業など)
- 従業員の雇用を継続したい
- 取引先との契約を再締結する手間を避けたい
一方、簿外債務のリスクが高い企業や、事業の一部だけを取得したい場合は、事業譲渡を選択する方が適しています。
事業譲渡とは
事業譲渡は、会社の事業を第三者に譲渡するM&A手法です。株式が移動しないため、売り手の法人格は存続します。「選択と集中」を目的として、不採算事業やノンコア事業を切り離す際に活用されます。
事業譲渡の基本|一部譲渡と全部譲渡
事業譲渡には「一部譲渡」と「全部譲渡」の2パターンがあります。
- 一部譲渡: 会社の事業部門の一部のみを譲渡(コア事業への集中・不採算部門の切り離し)
- 全部譲渡: 会社が保有する事業の全てを譲渡(法人格は存続)
事業譲渡の特徴は、承継する資産・負債・契約を個別に選択できることです。これにより、買い手は不要な負債を引き継がず、必要な資産だけを取得できます。
ただし、個別の移転手続きが必要であり、取引先との契約再締結・従業員の同意取得・許認可の再取得など、株式譲渡に比べて手続きが煩雑になる点には注意が必要です。
事業譲渡のメリット・デメリット
事業譲渡の主なメリット・デメリットは以下のとおりです。
【事業譲渡のメリット】
- 譲渡対象を個別に選択できる(リスクの限定)
- 簿外債務や偶発債務を回避できる
- 売り手は法人格を維持したまま事業整理が可能
- 買い手は必要な事業のみを取得できる
【事業譲渡のデメリット】
- 手続きが煩雑(個別の移転・同意取得が必要)
- 許認可は原則再取得が必要
- 消費税が課税される(株式譲渡は非課税)
- 従業員の個別同意が必要
- 競業避止義務(原則20年間)が発生
事業譲渡は「事業のみを切り出したい場合」「簿外債務リスクを回避したい場合」に強力な選択肢となります。
事業譲渡が向くケース
事業譲渡が特に向いているのは、以下のケースです。
- 不採算事業を切り離してコア事業に集中したい
- 簿外債務リスクを回避したい買い手
- 個人事業主が事業を売却したい(株式譲渡不可)
- 事業の一部だけを取得したい
- 売り手の法人格を残したまま売却したい
個人事業主は株式を発行できないため、個人事業のM&Aは事業譲渡で行う必要があります。スモールM&Aや個人M&Aでもよく活用される手法です。
合併とは|吸収合併と新設合併
合併は、複数の会社をひとつの会社に統合する手法です。会社法上の組織再編行為に該当し、新しく会社を設立するかどうかで「吸収合併」と「新設合併」に分かれます。
吸収合併の特徴
吸収合併は、ひとつの会社(存続会社)がその他の会社(消滅会社)を吸収する合併方法です。吸収された会社の法人格は消滅し、その権利義務は存続会社に包括的に引き継がれます。
吸収合併の主な特徴は以下のとおりです。
- 存続会社: 規模の大きな会社が一般的(逆さ合併の例外あり)
- 消滅会社: 法人格が消滅・解散登記が必要
- 承継方法: 権利義務を包括承継
- 対価: 株式が一般的(金銭・社債・新株予約権も可)
- 株主構成: 消滅会社の株主は存続会社の株主になる
吸収合併を行うと会社の規模が拡大するため、販売・生産・物流などのスケールメリットや、技術・人材共有によるシナジー効果が期待できます。
新設合併の特徴
新設合併は、合併する全ての会社が解散し、新たに設立する会社にすべての権利義務を承継させる手法です。新設会社が存続会社となります。
新設合併の主な特徴は以下のとおりです。
- 全会社が解散: 既存会社は全て法人格消滅
- 新会社を設立: 設立登記+解散登記が必要
- 対等性のアピール: どの会社も平等に解散するため、社内外への対等イメージ◎
- 許認可の再取得: 新会社で全ての許認可を取り直す必要
- 上場会社は再上場が必要
新設合併は対等な統合をアピールできる反面、手続きが煩雑でコストも大きいため、実務的には吸収合併が選ばれるケースが圧倒的に多くなっています。
合併のメリット・デメリット
合併の主なメリット・デメリットは以下のとおりです。
【合併のメリット】
- 完全な経営統合でシナジー効果を最大化
- スケールメリットによる競争力強化
- 株式を対価にできるため現金が不要な場合も
- 許認可がそのまま承継される(吸収合併の存続会社の場合)
【合併のデメリット】
- 手続きが複雑(株主総会の特別決議・債権者保護手続きなど)
- 包括承継のため簿外債務も承継
- 組織文化の融合が難しい(PMIの負担大)
- 新設合併は許認可の再取得・上場の再申請が必要
会社分割とは|新設分割と吸収分割
会社分割は、事業に関する権利義務の全部または一部を切り離し、他の会社に包括的に承継させる組織再編手法です。事業譲渡と似ていますが、包括承継である点が大きく異なります。
新設分割の特徴
新設分割は、新たに設立する会社へ事業を承継させる手法です。会社の主要事業以外を分社化することで、経営のスリム化やリスク分散が可能になります。
新設分割の主な特徴は以下のとおりです。
- 承継会社: 新たに設立する会社
- 対価: 株式が原則(現金等も可能)
- 承継方法: 包括承継(事業に関する権利義務をまとめて引き継ぐ)
- 子会社化: 全株式取得で完全子会社化が可能
- 持株会社化: すべての事業を切り離せばホールディングス化が可能
新設分割は選択と集中・組織再編・子会社化の3つの目的で幅広く活用されています。
吸収分割の特徴
吸収分割は、既存の会社へ事業を承継させる手法です。子会社や他社に事業を移すことで、事業の子会社化や合弁企業の設立に活用されます。
吸収分割の主な特徴は以下のとおりです。
- 承継会社: 既存の会社(子会社・他社など)
- 対価: 株式・金銭が可能
- 承継方法: 包括承継
- 事業の子会社化: 既存子会社への事業移転が一般的
- 合弁企業の設立: 他社との共同事業立ち上げにも活用
吸収分割は事業の効率化・グループ内再編・合弁設立など、多様な目的で活用される柔軟な手法です。
会社分割と事業譲渡の違い
会社分割と事業譲渡は混同されやすい手法ですが、「包括承継か個別承継か」という大きな違いがあります。
| 項目 | 会社分割 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 承継方法 | 包括承継 (個別同意不要・労働契約承継法の通知のみ) |
個別承継 (契約ごとに同意取得・移転手続きが必要) |
| 対価 | 株式が可能 | 金銭 |
| 消費税 | 対象外 | 課税対象 |
| 会社法上の分類 | 組織再編 | 取引行為 |
包括承継できる点から、会社分割は事業譲渡よりも手続きが簡素になる一方、不要な負債も引き継ぐリスクがあります。
株式交換・株式移転とは
会社法上の組織再編行為には、合併・会社分割のほか、株式交換・株式移転があります。どちらも完全親子会社関係を構築する手法で、グループ再編やホールディングス化で多用されます。
株式交換の特徴
株式交換とは、株式会社の発行済株式の全てを既存の他の会社に取得させる手法です。買い手企業の株式を売り手株主に交付することで、完全親子会社関係を構築します。
株式交換の主な特徴は以下のとおりです。
- 親会社: 既存の会社(対象会社の発行済株式を100%取得)
- 子会社: 株式交換完全子会社(法人格は維持)
- 対価: 親会社の株式が一般的(現金・社債・新株予約権も可)
- 買収資金: 株式対価なら現金不要
- 三角株式交換: 親会社の完全親会社の株式を対価にする手法
株式交換は「現金を使わずに完全子会社化したい」場合に強力な選択肢となります。
株式移転の特徴
株式移転とは、1社または複数の会社が新設する会社に自社の全株式を取得させ、完全子会社となる手法です。新設会社が新たな親会社となります。
株式移転の主な特徴は以下のとおりです。
- 単独株式移転: 1社が新設会社の傘下に入る
- 共同株式移転: 複数の会社が新設会社の傘下に入る
- 新設親会社: 株式移転設立完全親会社
- 主な用途: ホールディングス(持株会社)化・対等な経営統合
複数社が並列で新設会社の傘下に入る共同株式移転は、対等な経営統合を実現できるためグループ再編で活用されます。
株式交換と株式移転の違い
株式交換と株式移転はどちらも完全親子会社関係を構築する手法ですが、親会社の作り方に違いがあります。
| 項目 | 株式交換 | 株式移転 |
|---|---|---|
| 親会社の作り方 | 既存の会社が親会社になる | 新たに親会社を設立する |
| 主な用途 | 既存企業がM&Aで他社を完全子会社化 | 複数社が経営統合してホールディングス化 |
| 新設登記 | 不要 | 必要 |
「既存企業を傘下に入れたい」場合には株式交換、「新しい親会社を設立してグループ全体を再編したい」のであれば株式移転を選択します。
第三者割当増資とは
第三者割当増資は、会社が新たに株式を発行し、特定の第三者(買い手)に引き受けてもらう手法です。狭義のM&Aには含まれない場合もありますが、買収・提携の手段として広く活用されています。
第三者割当増資の基本
第三者割当増資の主な特徴は以下のとおりです。
- 新株発行: 既存株主は残ったまま新株を発行
- 資金調達: 会社に直接資金が入る(株主への金銭ではない)
- 株式の希薄化: 既存株主の持株比率が低下
- 取締役会・株主総会の決議: 募集事項の決定が必要
- 変更登記: 効力発生日から2週間以内に必要
株式譲渡が既存株主から株式を取得するのに対し、第三者割当増資は会社に直接資金が払い込まれる点が大きな違いです。
資本業務提携での活用
第三者割当増資は資本業務提携の手段として活用されることが多くあります。買い手の引き受け株式数によって、対象会社との関係性は以下のように変わります。
- 少数出資(1/3未満): 資本提携・資本業務提携
- 過半数取得: 子会社化・経営支配
- 100%取得: 完全子会社化
第三者割当増資は「対象会社の財務基盤を強化しつつ買い手が経営に関与する」形態であり、業務提携や資本業務提携の入口として有効です。一方、既存株主の株式を買収するわけではないため、100%の経営権掌握を目指す買い手には不向きです。
M&Aの種類に関するよくある質問
M&Aの種類についてよく寄せられる疑問にお答えします。
M&Aの種類は何種類ありますか?
狭義のM&Aには、代表的な7つのスキームがあります。「株式譲渡」「事業譲渡」「合併(吸収合併・新設合併)」「会社分割(新設分割・吸収分割)」「株式交換」「株式移転」「第三者割当増資」です。これらは大きく分けて、「買収(株式取得・事業取得)」「合併」「会社分割」「組織再編(株式交換・株式移転)」に分類されます。広義のM&Aには、これに加えて経営権の移転を伴わない「業務提携」「資本提携」「資本業務提携」が含まれます。実務上は、これら全てを目的・状況に応じて使い分けることが重要です。
中小企業のM&Aで最もよく使われる手法は何ですか?
中小企業のM&Aで最も多く活用されているのは「株式譲渡」です。理由は以下の通りです。
(1)手続きが比較的シンプル(株主名簿の書き換えで完了)、
(2)会社の許認可・契約関係がそのまま維持される、
(3)従業員の雇用契約も自動的に承継される、
(4)オーナー経営者が全株式を保有しているケースが多いため、株主の合意形成が容易、
(5)事業承継の場面で広く選択されている。
ただし、個人事業主の場合は株式譲渡ができないため事業譲渡が用いられます。また、簿外債務リスクを回避したい場合も事業譲渡が選ばれる傾向があります。
株式譲渡と事業譲渡の最も大きな違いは何ですか?
株式譲渡と事業譲渡の最大の違いは、「譲渡対象」です。株式譲渡は会社全体(株式・経営権)を譲渡するのに対し、事業譲渡は事業の一部または全部を個別に選択して譲渡します。これに伴い、承継範囲(包括承継か個別承継か)、簿外債務リスク(承継するか回避できるか)、許認可(継続するか再取得か)、手続きの煩雑さ、税負担(消費税の有無)などが大きく異なります。「会社を丸ごと引き継ぎたい」なら株式譲渡、「特定事業だけを切り出したい」「簿外債務を回避したい」なら事業譲渡が適しています。
吸収合併と新設合併はどちらがよく使われますか?
実務的には吸収合併が圧倒的に多く採用されています。理由は以下のとおりです。
(1)新設合併は新会社設立の手続き・許認可の再取得・設立コストなど負担が大きい、
(2)上場会社が新設合併すると一度上場廃止になり再上場が必要、
(3)吸収合併では存続会社の許認可がそのまま維持される、
(4)組織文化の統合も吸収合併の方が比較的進めやすい。
ただし、新設合併には「対等な統合のイメージを社内外にアピールできる」という大きなメリットがあるため、対等合併や統合を強調したい場合には選ばれることもあります。
M&Aの種類はどう選べばよいですか?
M&Aの種類を選ぶ際は、以下の5つの観点から総合的に判断します。
(1)目的: 事業承継・成長戦略・選択と集中など、何を達成したいか、
(2)承継範囲: 会社全体か特定事業のみか、
(3)リスク: 簿外債務などの引き継ぎリスクを許容できるか、
(4)税負担: スキームによる税負担の違い(法人税・消費税など)、
(5)手続きの煩雑さ: 時間とコストをどれだけかけられるか。
これらを踏まえると、中小企業の事業承継型M&Aなら株式譲渡、不採算事業の切り離しなら事業譲渡、グループ全体の経営統合なら合併・株式移転などが選択肢となります。判断が難しい場合は、M&A専門家への相談が推奨されます。
まとめ|M&Aの種類と違いを理解して最適な選択を
M&Aには、株式譲渡・事業譲渡・合併・会社分割・株式交換・株式移転・第三者割当増資という7つの主要スキームがあり、それぞれに明確な特徴と適したシーンがあります。本記事の重要ポイントを整理しておきましょう。
- 株式譲渡: 会社全体を譲渡・中小企業の事業承継で最多利用
- 事業譲渡: 事業のみを個別選択・簿外債務回避可能
- 合併: 会社を統合・吸収合併が一般的
- 会社分割: 事業を包括承継で切り離す組織再編
- 株式交換: 既存会社で完全子会社化
- 株式移転: 新設会社でホールディングス化
- 第三者割当増資: 資本提携・資本業務提携の手段
- 選択時は目的・承継範囲・リスク・税負担・手続きの5観点で判断
特に重要なのが「株式譲渡・事業譲渡・合併の違い」の理解です。譲渡対象・承継範囲・経営権の移転・簿外債務リスク・手続きの煩雑さが大きく異なるため、目的とリスク許容度に応じて慎重に選択する必要があります。
M&Aの種類選択は、企業の将来を大きく左右する重要な意思決定です。計画的な準備と専門家(弁護士・税理士・M&Aアドバイザー)のサポートを活用して、自社に最適な手法を選びましょう。
事業承継・M&Aや事業の譲渡・譲受のご相談は、国内最大級のM&A・事業承継マッチングプラットフォーム「TRANBI(トランビ)」をぜひご活用ください。経験豊富な専門家による無料相談が受けられます。
