子会社化とは?完全子会社・連結子会社の違いとM&A手法を解説
子会社化とは何かを基礎からわかりやすく解説。完全子会社・連結子会社・非連結子会社・特例子会社の違いを比較表で整理し、子会社化に使われるM&A手法(株式譲渡・株式移転・株式交換・株式交付)や、子会社化のメリット・デメリットまでまとめました。
M&Aや会社経営の話題で「子会社化」という言葉をよく見かけますが、「完全子会社」「連結子会社」「非連結子会社」など似た用語が多く、どれがどう違うのか混乱しやすいものです。「子会社化とは何か」「子会社にはどんな種類があるのか」を検索しても、専門用語が多くて頭に入りにくい、という方も多いのではないでしょうか。
本記事では、子会社とは何か、子会社化とは何かを基礎から整理し、完全子会社・連結子会社・非連結子会社・特例子会社の違いを比較表でわかりやすく解説します。あわせて、子会社化に使われるM&A手法(株式譲渡・株式移転・株式交換・株式交付)や、子会社化による影響(メリット・デメリット)まで一気通貫でまとめました。
「子会社化とは」「完全子会社と連結子会社の違い」「子会社化するとどうなるのか」を押さえたい経営者・経営企画のご担当者や、M&Aで会社を子会社化・グループ化しようと考えている方が、読み終えたときに全体像をつかめる内容です。
子会社とは?親会社との関係
まずは子会社の意味と、親会社との関係を確認します。子会社は「親会社に支配されている会社」ですが、その「支配」には形式的な基準と実質的な基準の2つがあります。
子会社・親会社の定義(会社法)
子があれば必ず親がいるように、子会社があれば必ずそれを支配する親会社が存在します。会社法では、親会社・子会社は次のように定義されています。
- 親会社:株式会社を子会社とする会社、その他その株式会社の経営を支配している法人
- 子会社:会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社、その他その会社が経営を支配している法人
要約すると、親会社とは子会社の意思決定機関(株主総会)を支配している会社のことです。議決権とは、株主総会での決議に加わって決定に参加できる権利で、一般的にはひとつの株式にひとつの議決権があります。
「支配」とは|形式基準と実質基準
会社法における「経営を支配」とは、ある会社の財務および事業の方針の決定を支配していることを指します(会社法施行規則3条)。支配の判定には、次の2つの考え方があります。
- 形式基準:議決権の過半数(50%超)を保有しているかどうか
- 実質基準:議決権が過半数に満たなくても、役員の派遣や契約などによって実質的に財務・事業の方針を決定しているかどうか
つまり、議決権の過半数を持っている場合だけでなく、実質的に経営を支配している場合も親子関係が成り立つということです。株式の保有割合だけで機械的に決まるわけではない点がポイントです。
子会社・関連会社・グループ会社の違い
子会社と混同されやすいのが「関連会社」や「グループ会社」です。これらは支配の程度や言葉の使われ方が異なります。違いを整理しておきましょう。
関連会社との違い
関連会社とは、子会社にはあたらないものの、他の会社から財務・事業の方針決定に重要な影響を受ける会社です。子会社と関連会社の違いは、ひとことで言えば他の会社から受ける支配・影響の程度にあります。関連会社と判断されるのは、主に次のケースです。
- 親会社が議決権の20%以上を保有している場合は、原則として関連会社に該当する。
※ただし、実質的に支配している場合は子会社となる - 議決権が15%以上20%未満でも、役員の派遣・重要な融資・重要な取引などで重要な影響を与えている
子会社が「支配されている会社」であるのに対し、関連会社は「重要な影響を受けている会社」という位置づけです。なお、関連会社は連結決算では持分法という方法で処理されます。連結決算における全部連結と持分法の違いは持分法と全部連結の違いの記事で詳しく解説しています。
グループ会社・関係会社との違い
「グループ会社」や「関係会社」は、日常的によく使われますが、実は会社法で明確に定義された言葉ではありません。
一般にグループ会社とは、親会社・子会社・関連会社をすべて含めた会社の総称として使われます。同じ意味で関係会社と呼ばれることもあります。つまり、子会社や関連会社はグループ会社という大きなくくりの中に含まれる、という関係です。
まとめると、支配されているのが「子会社」、重要な影響を受けているのが「関連会社」、それらを含む全体の呼び名が「グループ会社(関係会社)」と整理できます。
子会社の種類
ひとくちに子会社といっても、いくつかの種類があります。基本となるのは「完全子会社」「連結子会社」「非連結子会社」の3つで、これに障害者雇用に配慮した「特例子会社」を加えた4種類を押さえておきましょう。
完全子会社
完全子会社とは、親会社に発行済株式の全部を保有されている子会社で、一般的には議決権の100%を親会社が保有しています。完全子会社に対して、親会社は「完全親会社」と呼ばれます。ひとつの親会社が複数の完全子会社を持つことはありますが、完全子会社が複数の親会社に支配されることはありません。
例えば2020年9月、日本電信電話(NTT)は株式公開買い付け(TOB)によってNTTドコモの完全子会社化を実施しました。通信事業の競争力強化がその目的とされています。
連結子会社・非連結子会社
連結子会社とは、親会社の連結財務諸表に取り込まれる子会社です。親会社・子会社・関連会社を単一の組織とみなして決算を行うことを「連結決算」といい、その対象となる子会社が連結子会社です。
一方、非連結子会社とは、連結の対象とならない子会社です。ほとんどの子会社は連結対象ですが、経営への影響が小さい子会社・支配が一時的な子会社・規模が小さい子会社など重要性が乏しい子会社は、連結の範囲から除かれることがあります。
なお、連結決算が義務づけられるのは原則として上場会社などであり、日本の多くの中小企業では連結財務諸表を作成する義務はありません。連結子会社・非連結子会社の連結決算上の扱い(全部連結・持分法)については持分法と全部連結の違いの記事で詳しく解説しています。
特例子会社
特例子会社とは、障害者の雇用促進を目的として設立される子会社です。国は事業主に対し、常時雇用する労働者のうち障害者が占めるべき割合を「法定雇用率」として定めています。
民間企業の法定雇用率は、2026年7月1日から2.7%に引き上げられました(従来は2.5%)。あわせて、障害者を1人以上雇用する義務が生じる企業の範囲も、常時雇用する労働者が40人以上から37.5人以上へと広がっています。
特例子会社を設立すると、その子会社で雇用する障害者を親会社に雇用されているものとみなし、グループ全体で法定雇用率を達成できることが特徴です。特例子会社と認められるには、主に次のような要件があります。
- 親会社が子会社の意思決定機関(株主総会等)を支配していること
- 雇用される障害者が5人以上で、全従業員に占める割合が20%以上であること
- 障害者の雇用管理を適正に行う能力を有していること(専任の指導員の配置など)
- 厚生労働大臣の認定を受けていること
なお、名前がよく似た用語に「特定子会社」がありますが、特例子会社とはまったく別の概念です。特定子会社とは金融商品取引法(開示府令)上の区分で、親会社に対する取引額(売上高・仕入高)や資本金・純資産が一定規模以上あり、その異動が臨時報告書などの開示対象となる子会社を指します。障害者雇用を目的とする特例子会社とは意味がまったく異なるため、混同しないよう注意しましょう。
子会社の種類【比較表】
4種類の子会社を整理すると、次のとおりです。
| 種類 | 定義 | ポイント |
|---|---|---|
| 完全子会社 | 発行済株式の全部を保有される子会社 | 親会社は完全親会社。完全な親子関係 |
| 連結子会社 | 連結財務諸表に取り込まれる子会社 | グループ決算に業績を合算 |
| 非連結子会社 | 連結の対象とならない子会社 | 重要性が低い・一時的な支配など |
| 特例子会社 | 障害者雇用を目的に設立する子会社 | 雇用率をグループ全体で算定できる |
完全子会社・連結子会社・子会社の違い
検索でも「完全子会社と連結子会社の違い」「連結子会社と完全子会社はどう違う?」といった疑問が多く見られます。混同しやすい3つの違いを、比較表で整理します。
完全子会社・連結子会社・非連結子会社の違い【比較表】
「子会社」という大きなくくりの中に、完全子会社・連結子会社・非連結子会社が位置づけられます。それぞれの違いは次のとおりです。
| 区分 | 議決権の目安 | 連結決算での扱い | ひとことで |
|---|---|---|---|
| 子会社(一般) | 過半数超 (実質支配含む) |
原則、連結対象 | 支配されている会社全般 |
| 完全子会社 | 100% | 連結対象 | 株式を全部保有された子会社 |
| 連結子会社 | 過半数超 | 連結財務諸表に合算 | 決算を取り込む子会社 |
| 非連結子会社 | 過半数超だが除外 | 連結対象外(持分法など) | 合算しない子会社 |
混同しやすいポイントの整理
ポイントは、分類の「軸」が違うことです。完全子会社は議決権の保有割合(100%かどうか)による区分、連結子会社・非連結子会社は連結決算の対象になるかどうかによる区分です。
そのため、ひとつの会社が「完全子会社であり、かつ連結子会社でもある」ということは珍しくありません。例えば議決権を100%保有し、連結決算にも取り込む子会社は、完全子会社かつ連結子会社です。「完全子会社か連結子会社か」という二者択一ではなく、見ている観点が異なるだけと理解すると混乱しにくくなります。
子会社化に使われるM&A手法
増資や株式分割で子会社を作る方法もありますが、M&Aでは他社の株式を「買い取る(買収)」ことで子会社化を進めるのが一般的です。ここでは代表的な4つの手法を解説します。
株式譲渡
株式譲渡は、対象企業の株式の過半数以上を買い取って経営権を取得し、自社の傘下に入れる方法です。中小企業のM&Aで最も多く使われる手法で、株式の取得方法には主に次の3つがあります。
- 相対取引:株主と直接交渉して株式を取得する
- 市場買い付け:上場企業の株式を証券取引所などで買い入れる
- 株式公開買い付け(TOB):買取価格・株数・期間を公開し、市場を通さずに買い入れる
市場買い付けと株式公開買い付けは上場企業の場合のみで、非上場企業の株式取得には相対取引が用いられます。
株式移転
株式移転は、単独または複数の会社が新たに親会社を設立し、その親会社に自社の株式をすべて移転させることで完全親子関係を築く手法です。子会社となる会社の株主には、親会社が発行する株式が割り当てられます。
株式譲渡では買収資金の調達が必要ですが、株式移転は「株式」を対価とするのが特徴です。グループ会社同士が経営統合する際にも使われ、完全親会社となった企業はホールディングス(持株会社)と呼ばれます。なお株式移転は、会社法で定められた組織再編のひとつです。
株式交換
株式交換は、既存の会社が親会社となり、子会社となる会社の株式をすべて取得して完全親子関係を構築する手法です。対価には一般的に「買い手企業の株式」が用いられますが、現金・社債・新株予約権を選ぶこともできます。
買い手は、売り手企業の株主総会で特別決議が成立すれば、反対株主がいた場合も完全子会社化を進められます。合併と異なり売り手企業は法人として存続し、株式移転とは「既にある会社を親会社とするか、新たに設立するか」という点で違います。
株式交付制度
株式交付制度は、2021年3月1日に施行された比較的新しい制度です。買い手が自社の株式を対価として、売り手を子会社(完全子会社に限らない)にできる点が特徴です。
従来、株式を対価とするM&Aは、株式交換による完全子会社化か現物出資に限られていました。株式交付制度により、完全子会社化を目的としない場合でも自社株式を対価にできるようになりました。ただし対象となる子会社は「株式会社」のみで、持分会社や外国法人には使えない点に注意が必要です。
子会社化に使われるM&A手法【比較表】
4つの手法を、対価・特徴・親子関係の観点で比較すると次のとおりです。
| 手法 | 主な対価 | 特徴 | 築ける関係 |
|---|---|---|---|
| 株式譲渡 | 現金 | 過半数取得で経営権を取得。中小M&Aで最多 | 支配(子会社化) |
| 株式移転 | 株式 | 新設した親会社に全株を移転。持株会社化に活用 | 完全親子関係 |
| 株式交換 | 株式など | 既存の会社が全株取得。特別決議で実行可 | 完全親子関係 |
| 株式交付 | 自社株式 | 2021年施行。完全子会社化以外にも使える | 子会社化(過半数) |
子会社化するとどうなる?メリット・デメリット
子会社化すると、親会社・子会社の双方にメリットとデメリットが生じます。「子会社化するとどうなるのか」「会社の傘下に入るとどうなるのか」を、両者の立場から整理します。
親会社側のメリット・デメリット
【親会社側のメリット】
- 同業以外を子会社化すれば新たな領域へスムーズに事業展開できる(同業なら市場シェア拡大)
- 役員・従業員の移籍が退職扱いとなる場合、支給する退職金を経費計上でき、節税につながることがある
【親会社側のデメリット・注意点】
- 株式譲渡で子会社化した場合、資産だけでなく負債も引き継ぐことになる
- 子会社が不祥事を起こすと、グループ全体のブランドイメージを毀損する恐れがある
子会社側のメリット・デメリット
【子会社側のメリット】
- 親会社のブランド・知名度・信用によって、子会社の業績が向上する可能性がある
- 親会社の確立されたビジネスモデルや経営資源を活用して成長できる
【子会社側のデメリット・注意点】
- グループのイメージ統一のため、社名変更やブランド名の使用中止を求められる場合がある
- 親会社が不祥事を起こすと、子会社の信用も低下する恐れがある
このように、会社の傘下に入る(子会社になる)ことは、独立性の一部と引き換えに経営資源や信用を得る選択といえます。M&Aによる子会社化を検討する際は、親会社・子会社それぞれの立場でメリット・デメリットを見極めることが大切です。
子会社化に関するよくある質問
子会社・子会社化について、多く寄せられる質問にお答えします。
Q. 子会社化とは何ですか?
A. ある会社が別の会社の議決権の過半数を取得する、または実質的に経営を支配して、自社の子会社にすることです。M&Aでは株式譲渡・株式移転・株式交換・株式交付などの手法で子会社化が進められます。
Q. 完全子会社と連結子会社の違いは?
A. 完全子会社は議決権を100%保有される子会社、連結子会社は連結財務諸表に取り込まれる子会社です。分類の軸が異なるため、議決権を100%保有し連結決算にも含める子会社は「完全子会社かつ連結子会社」となります。二者択一の関係ではありません。
Q. 会社の傘下に入る(子会社になる)とどうなりますか?
A. 親会社の経営方針のもとに入る一方、親会社のブランド・信用・経営資源を活用でき、業績向上が期待できます。ただし社名やブランド名の変更を求められたり、親会社の不祥事の影響を受けたりする可能性もあります。
Q. 子会社と関連会社の違いは何ですか?
A. 親会社から受ける支配・影響の程度が違います。支配されているのが子会社(議決権の過半数など)、重要な影響を受けているのが関連会社(議決権が原則として20%以上など)です。
Q. 子会社を買収・子会社化するにはどの手法がありますか?
A. 主に株式譲渡・株式移転・株式交換・株式交付があります。中小企業のM&Aでは、現金を対価に過半数の株式を取得する株式譲渡が最も多く用いられます。
Q. 特例子会社とは何ですか?
A. 障害者雇用に特別な配慮をして設立する子会社で、そこで雇用する障害者をグループ全体の法定雇用率に算入できます。民間企業の法定雇用率は2026年7月から2.7%に引き上げられ、対象となる企業の範囲も広がっています。
まとめ|子会社化とは
子会社とは、他の会社に議決権の過半数を保有される、または実質的に経営を支配されている会社です。子会社には完全子会社・連結子会社・非連結子会社・特例子会社といった種類があり、それぞれ分類の軸や性質が異なります。
本記事のポイントを整理します。
- 子会社=議決権の過半数保有、または実質的な支配を受けている会社
- 関連会社との違い=支配(子会社)か、重要な影響(関連会社・議決権20%以上)か
- 種類=完全子会社(100%)/連結子会社(決算に合算)/非連結子会社(連結対象外)/特例子会社(障害者雇用)
- 完全子会社と連結子会社の違い=議決権の割合による区分か、連結対象かによる区分か(軸が違う)
- M&A手法=株式譲渡・株式移転・株式交換・株式交付(中小M&Aでは株式譲渡が主流)
子会社化は、事業拡大やグループ再編、事業承継の有力な選択肢です。会社の譲渡・譲受や子会社化をご検討の際は、国内最大級のM&A・事業承継マッチングプラットフォーム「TRANBI(トランビ)」もあわせてご活用ください。
