M&Aの流れを11ステップで徹底解説!準備からPMIまで全手順と成功のポイント
M&Aの成功へ向けて、各ステップについての注意点や必要期間の目安までを網羅的に解説します。まずはM&Aの全体像を把握し、成功への第一歩を踏み出しましょう。
M&Aを検討し始めたものの、「何から始めればよいのか」「どのような手順で進めるのか」といった全体像が掴めず、不安を感じていませんか。
M&A成功の第一歩は、準備・交渉・契約・統合プロセス(PMI)までの流れを正確に理解することです。
本記事では、M&Aの全体像を図解し、具体的な11のステップ、売却側(売り手)・買収側(買い手)の注意点、必要期間の目安までを網羅的に解説します。
この記事を読み終える頃には、M&Aの各フェーズでの対応が明確になり、自信を持ってプロジェクトを進められるようになるはずです。
まずはM&Aの全体像を把握し、成功への第一歩を踏み出しましょう。
M&Aの流れ|全体像とフロー
M&Aは、目的の設定から始まり、相手探し、交渉、契約締結、そして最終的な経営統合(PMI)に至るまで、数多くのステップを踏む複雑なプロセスです。
そのプロセスは、大きく「準備・検討フェーズ」 「マッチング・交渉フェーズ」 「最終契約・統合フェーズ」の3つに分けられます。
1. 準備・検討フェーズ
M&Aの目的を定め、戦略を練る初期段階です。
専門家への相談や、株式譲渡や事業譲渡といった最適な手法(スキーム)の検討が含まれます。
M&Aの土台を固める重要なフェーズです。
2. マッチング・交渉フェーズ
候補となる相手企業を探し(ソーシング)、具体的な交渉を進める段階です。
秘密保持契約を結んだ上での情報交換やトップ面談から始まり、基本的な買収条件を交渉し、基本合意の締結を目指します。
3. 最終契約・統合フェーズ
買収対象企業のリスクを精査するデューデリジェンスを実施し、その結果を基に最終条件の交渉と契約締結を行います。
その後、経営権の移転(クロージング)と、両社の事業や組織を実際に統合していくPMI(Post Merger Integration:M&A後の統合作業)へと進みます。
各ステップがどのように連動し、次の段階へ進んでいくのかを理解することが、M&Aを成功に導くための第一歩となります。
M&A全体の流れ・手順①準備・検討フェーズ
M&Aの成功に向けた土台作りの段階です。
なぜM&Aを行うのかという目的を明確にし、信頼できる専門家と共に戦略を練ります。
そして、M&Aの目的を達成するために最適な手法(スキーム)を構築する、M&Aの初期プロセスについて解説します。
STEP1:M&Aの目的・方針の明確化
M&Aの検討を開始するにあたり、最初に行うべきは「なぜM&Aを行うのか」という目的と方針を明確にすることです。
自社の経営課題を棚卸し、M&Aによって何を達成したいのかというゴールを具体的に設定することが、その後の意思決定の土台となります。この段階で経営陣の意思を統一しておくことが、プロセスの途中で方針がブレることを防ぐ上で極めて重要です。
売り手のポイント
なぜ会社や事業を売却するのか(後継者問題の解決、事業の選択と集中、創業者利益の確保など)、その目的を明確にします。
希望する売却価格のイメージや、従業員の雇用維持、取引先との関係継続など、M&Aを実現する上で譲れない条件は何かを整理しておくことが重要です。
買い手のポイント
なぜ買収を行うのか(事業規模の拡大、新規事業への参入、技術や人材の獲得など)という戦略的な目的を具体化します。
M&Aによってどのようなシナジー効果を得たいのか、買収にかけられる予算の上限、どのような業種や規模の企業をターゲットとするのか、といった方針を固めます。
STEP2:専門家・仲介会社への相談と契約
M&Aは法務、財務、税務など高度な専門知識を要するため、独力で進めるのは困難です。
M&Aの目的や方針が固まった段階で、信頼できる専門家や仲介会社に相談することが一般的です。過去の実績や得意な業界、手数料の体系などを比較検討し、自社に最適なパートナーを選定しましょう。
売り手のポイント
自社の業界におけるM&A実績が豊富で、企業文化や事業の強みを深く理解してくれる専門家を選びましょう。
情報漏洩は企業価値を大きく損なうため、秘密保持を徹底してくれるかどうかも重要な選定基準です。
手数料体系(着手金の有無、成功報酬の計算方法など)についても契約前に十分に確認しましょう。
買い手のポイント
自社の買収戦略の実現を強力にサポートしてくれる専門家を選びます。
幅広いソーシング(相手探し)のネットワークを持っているか、デューデリジェンスやPMIのサポート体制は充実しているかも確認すべきポイントです。
売り手・買い手双方の代理となる「仲介」か、自社の利益最大化を目指す「FA(ファイナンシャル・アドバイザー)」か、専門家の立場も理解しておきましょう。
STEP3:シナリオ選定・スキーム構築
M&Aには、株式譲渡や事業譲渡、合併、会社分割など、様々な手法(スキーム)が存在します。
どのスキームを選択するかによって、手続きの複雑さや税負担、従業員の処遇などが大きく変わってきます。
専門家と相談しながら、M&Aの目的や自社の状況に最も適したスキームを構築することが、円滑な取引の実現につながります。
売り手のポイント
どのスキームを選択するかによって、経営者が受け取る対価にかかる税金の種類や額が大きく異なります。
税負担を最小限に抑えられるよう、専門家と十分に協議することが重要です。
また、従業員の雇用契約がどのように引き継がれるかも、スキームによって異なるため確認が必要です。
買い手のポイント
買収後の経営統合のしやすさや、必要な許認可をスムーズに引き継げるか、といった観点からスキームを検討します。
特定の事業のみに関心がある場合は事業譲渡、会社全体を一体として引き継ぎたい場合は株式譲渡が基本となります。
簿外債務を引き継ぐリスクなども考慮して、最適なスキームを選択します。
M&A全体の流れ・手順②マッチング・交渉フェーズ
候補となる相手企業を探し出し、交渉を進めるM&Aの核心部分です。
相手探し(ソーシング)から始まり、秘密保持契約、トップ面談、基本的な条件交渉を経て、大筋の合意を形成するまでの重要なステップを解説します。
STEP4:ターゲット企業・候補ソーシング(相手探し)
M&Aの具体的なスキームが固まったら、次はいよいよ売却先または買収先の候補となる企業を探す「ソーシング」のフェーズに入ります。
仲介会社が持つ独自のネットワークやデータベースを活用するほか、M&Aマッチングプラットフォームを利用する方法もあります。
この段階では、まだ企業名は伏せた状態(ノンネーム)で情報交換が行われるのが一般的です。
売り手のポイント
ノンネームシート(社名を伏せた企業概要書)で開示する情報が、自社が特定されにくい内容になっているかを確認します。
価格条件だけでなく、自社の企業文化や事業の将来性を理解し、従業員を大切にしてくれる相手かどうかという視点で候補先を見極めることが重要です。
買い手のポイント
自社のM&A戦略に合致するターゲット候補を幅広くリストアップし、優先順位をつけます。
財務状況や事業内容といった定量的な情報だけでなく、企業文化や経営者のビジョンといった定性的な情報も収集し、自社との適合性を慎重に判断します。
STEP5:秘密保持契約(NDA/CA)の締結と情報交換
アプローチしたい候補企業が絞り込めたら、より詳細な情報交換を行うために「秘密保持契約書(NDA/CA)」を締結します。
NDAを締結後、売り手はIM(インフォメーション・メモランダム)と呼ばれる企業概要書を買収候補先に提示し、本格的な検討が開始されます。
この段階でトップ同士の面談(トップ面談)が行われ、経営理念や事業への想いなどを共有し、相互理解を深めます。
売り手のポイント
NDAの契約内容(秘密情報の定義、目的外使用の禁止、有効期間など)を弁護士などの専門家と十分に確認します。
情報開示は段階的に行い、一度に全ての機密情報を渡すことは避けるべきです。
トップ面談では、自社の強みや将来性をアピールするとともに、相手経営者の人柄や経営に対する考え方を見極めます。
買い手のポイント
NDAを締結し詳細なIMを入手したら、その情報の管理を徹底します。
IMの内容を精査し、自社の買収目的と合致するかを深く検討します。
トップ面談は、数字だけではわからない企業の雰囲気や経営者のビジョンを理解し、信頼関係を構築するための絶好の機会です。
STEP6:意向表明書(LOI)提出
買収候補企業がM&Aに前向きな意向を固めた場合、売り手に対して「意向表明書(LOI:Letter of Intent、基本合意書の前段階)」を提出します。
これはあくまで「意向」を示すものであり、法的な拘束力はありませんが、その後の交渉のベースとなる重要な書類です。
売り手は、提出された意向表明書の内容を比較検討し、どの候補先と独占的に交渉を進めるかを決定します。
売り手のポイント
複数の候補先からLOIが提示された場合は、提示価格だけでなく、スキーム、従業員の処遇、今後のスケジュールといった条件を総合的に比較検討します。
LOIに記載される独占交渉権の期間は、交渉の長期化を避けるためにも、1ヶ月~3ヶ月程度の適切な期間に設定することが望ましいです。
買い手のポイント
現時点での買収希望価格とその算定根拠を、誠意をもって具体的に提示します。
買収によってどのようなシナジーを想定しており、相手企業の事業を今後どのように成長させていきたいかというビジョンを示すことで、売り手の信頼を得やすくなります。
STEP7:企業価値評価と条件交渉
意向表明書の内容を基に、M&Aの価格やその他の条件について本格的な交渉が始まります。
企業価値評価(バリュエーション)は、DCF法・純資産法・類似会社比較法といった手法を組み合わせ、収益性・資産・将来性を総合的に評価して行われます。
価格だけでなく、従業員の雇用維持や役員の処遇、支払方法といった諸条件についても、双方が納得できる着地点を探ります。
売り手のポイント
自社の企業価値を客観的な根拠に基づいて主張できるよう、専門家と共に準備します。
将来の事業計画や無形の資産(技術力、ブランド、顧客基盤など)が、評価額に適切に反映されるよう交渉することが重要です。
価格条件だけでなく、従業員の雇用維持といった非価格条件も重視し、交渉の優先順位を決めておきましょう。
買い手のポイント
複数の評価手法を用いて対象企業の価値を多角的に分析し、適正な買収価格のレンジを把握します。
交渉においては、売り手の希望を尊重する姿勢を見せつつも、デューデリジェンスでリスクが発見された場合に価格調整が可能であることなど、柔軟な交渉戦略を立てておきます。
STEP8:基本合意書(MOU)締結
主要な条件について双方が大筋で合意に至った段階で、「基本合意書(MOU:Memorandum of Understanding)」を締結します。
基本合意書には、現時点での合意内容(譲渡価格、スケジュールなど)に加え、「独占交渉権」や「デューデリジェンスの実施権」といった条項が盛り込まれるのが一般的です。
一部の条項(独占交渉権・秘密保持義務など)を除き、基本合意書には法的拘束力がありません。
また、基本合意書では後の価額変更の可能性を考慮して、明確な金額は記載しないことが多く、ある程度の金額の幅を持たせて、上限と下限の金額を記載しておくのが良いでしょう。
売り手のポイント
基本合意書を締結すると、他の候補先との交渉ができなくなるため、独占交渉権を付与する相手を慎重に選ぶ必要があります。
これまでの交渉内容が、基本合意書に正確に反映されているかを十分に確認します。
トラブル防止のため、曖昧な表現があれば具体的に修正を求めましょう。
買い手のポイント
安心してデューデリジェンスに時間とコストを投じるために、独占交渉権を確保することが極めて重要です。
今後のデューデリジェンスや最終契約に向けたスケジュールを明確にし、双方の認識を合わせておくことで、その後のプロセスが円滑に進みます。
M&A全体の流れ・手順③最終契約・統合フェーズ
M&Aの取引を法的に完了させ、期待する効果を実現する最終段階です。
詳細な企業調査(デューデリジェンス)でリスクを洗い出し、最終契約を締結、そして買収した企業を自社に統合するPMIの進め方について解説します。
STEP9:デューデリジェンス(DD)の実施
基本合意締結後、買い手は売り手企業の実態を詳細に調査する「デューデリジェンス(DD)」を実施します。
買収対象企業が抱えるリスク(簿外債務、訴訟リスク、労務問題など)を事前に把握する精密検査とも言える手続きであり、M&Aの意思決定に直結する重要なプロセスです。
調査の結果、重大なリスクが発見された場合は、買収価格の減額交渉や、最悪の場合、取引の中止に至ることもあります。
売り手のポイント
DDで想定される問題点(潜在的な訴訟、未払残業代、知財リスクなど)を事前に洗い出し、専門家と対策を協議しておきます。
DDで要求される資料は多岐にわたるため、事前に準備を進め、迅速かつ正確に提出できる体制を整えます。
対応窓口を一本化し、買い手とのコミュニケーションを円滑に行うことが、信頼関係を維持する上で重要です。
買い手のポイント
公認会計士・弁護士・税理士などの専門家を起用し、財務・法務・税務・ビジネス全般を多角的に調査します。
DDは単なるリスク調査だけでなく、買収後のPMI(経営統合)を円滑に進めるための情報収集の機会でもあります。
売り手に対して高圧的な態度を取らず、良好な関係を維持しながら必要な情報を引き出す姿勢が求められます。
STEP10:最終契約(DA/SPA)交渉・締結
デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終的な条件交渉が行われます。
双方が条件に合意すると、「最終契約書(DA:Definitive Agreement)」を締結します。
株式譲渡の場合は「株式譲渡契約書(SPA:Stock Purchase Agreement)」が用いられるのが一般的です。
最終契約書は基本合意書と異なり、記載された内容すべてに法的拘束力があります。
売り手のポイント
表明保証条項の内容を十分に理解することが最も重要です。
開示した情報が真実かつ正確であることを保証するものであり、違反があった場合は損害賠償を請求されるリスクがあります。
契約内容に曖昧な点や不利な条項がないか、弁護士などの専門家と最終確認を徹底します。
買い手のポイント
DDで判明したリスクを、買収価格の調整や、価格調整条項、表明保証条項などに反映させます。
これにより、買収後に予期せぬ損失が発生するリスクをヘッジします。
クロージングの前提条件も明確に定め、取引を安全に実行できる体制を整えます。
STEP11:クロージング(決済・譲渡実行)とPMI開始
最終契約の締結後、契約内容に定められた前提条件が全て満たされたことを確認し、株式や事業の譲渡と、その対価の支払いを行う手続きを「クロージング」と呼びます。
クロージングをもってM&Aの取引は法的に完了しますが、M&Aの成功はここで終わりではありません。
クロージング後は、買収した企業や事業を自社に統合し、当初期待したシナジー効果を創出するための「PMI(Post Merger Integration:経営統合プロセス)」が本格的に始まります。
売り手のポイント
クロージングの前提条件が全て満たされているか、最終確認を行います。
譲渡対価の入金を確認した上で、株式や資産の引き渡しを確実に行います。
従業員や取引先へのアナウンスのタイミングや内容について、買い手と十分に協議し、混乱を招かないよう配慮します。
買い手のポイント
クロージング前から具体的なPMI計画(経営体制、業務プロセス、ITシステム統合など)を策定し、クロージング後速やかに実行に移せるように準備します。
PMIチームを正式に発足させ、従業員の不安を払拭するため積極的にコミュニケーションを行い、円滑な経営統合を目指します。PMIの成否がM&Aの成否を左右>します。
売却側・買収側それぞれのM&Aの注意点
M&Aは、株式や事業を譲渡する「売却側」と、譲り受ける「買収側」という異なる立場が存在します。
立場によって注意点や準備内容は大きく異なります。
ここでは、売却側と買収側、それぞれの視点から、M&Aを成功に導くための重要な注意点を解説します。
売却側におけるM&Aの注意点
売却側にとっての成功は、希望条件で会社や事業を譲渡し、従業員や取引先への影響を抑えたうえで、事業承継の達成や創業者利益の確保につなげることです。そのために、まず自社の強みや課題を客観的に分析し、企業価値を適正に評価することが重要です。
自社に対する過大な評価は、交渉の長期化や破談の原因となります。
また、M&Aの検討は原則として非公開で進める必要があります。情報漏洩は従業員の動揺や取引先の不安を招き、企業価値の低下に直結するため、秘密保持の徹底は必須です。交渉の過程では、価格だけでなく、従業員の雇用維持や自社の文化を尊重してくれる相手かどうかを見極めることも、円満なM&Aの実現には欠かせません。
買収側におけるM&Aの注意点
買収側にとっての成功は、M&Aで当初の目的(事業拡大、新規市場参入など)を達成することです。そのためには、まず自社の経営戦略に基づいた明確な買収方針を持つことが不可欠です。
その方針に従って、相手企業を慎重に選定し、デューデリジェンスによってリスクを正確に洗い出す必要があります。
特に、財務諸表に現れない偶発債務や法務リスクを見逃すと、買収後に巨額の損失や訴訟リスクに直結します。
また、M&Aの成否を大きく左右するのがPMI(経営統合プロセス)です。
買収後の統合作業を円滑に進めるため、交渉段階からPMIの計画を具体的に立て、相手企業の文化や体制を尊重しながら、丁寧なコミュニケーションを心がけることが重要です。
M&Aの流れにかかる期間目安とスケジュール策定方法
M&Aのプロセスには通常どの程度の期間がかかるのでしょうか。
ここでは、各フェーズの標準的な期間の目安と、円滑にプロジェクトを進めるためのスケジュール策定のコツについて解説します。
M&Aは多くの関係者が関わる複雑なプロジェクトであるため、適切なスケジュール管理が成功の鍵を握ります。
フェーズごとの標準期間(準備〜クロージングまでの合計期間)
M&Aにかかる期間は、案件の規模や複雑さ、交渉の進捗状況によって大きく変動しますが、一般的には準備を開始してから最終的なクロージングまで、一般的に早くても半年、通常は1年かかると言われています。
特に、相手探し(ソーシング)やデューデリジェンス、最終契約交渉の各フェーズは時間を要する傾向です。
一方で、当事者間の合意形成がスムーズに進んだり、小規模な案件であったりする場合は、数ヶ月で完了するケースもあります。
逆に、大規模案件や規制対応が必要な場合は、1年半〜2年以上かかるケースもあります。
スケジュール策定のコツ
円滑にM&Aを進めるためには、現実的なスケジュールを策定し、プロジェクトとして管理していく視点が重要です。
まず、各ステップのタスクを洗い出し、それぞれの所要期間を見積もり、全体のタイムラインを作成します。
その際、外部要因で変動しやすいデューデリジェンスや許認可取得には、猶予期間を設けることが重要です。
また、M&Aアドバイザーなどの専門家と緊密に連携し、定期的に進捗を確認する会議を設けることで、遅延の早期発見と対策が可能になります。
M&A仲介会社・専門家の選び方と活用方法
M&Aを成功させるには、自社を理解し、適切に支援してくれる信頼性の高い専門家が不可欠です。
しかし、M&A仲介会社やアドバイザーは数多く存在し、どこに依頼すればよいか迷う経営者も少なくありません。
ここでは、自社に最適なM&Aの専門家を見極めるための選び方の基準や、彼らの役割について具体的に解説します。
選び方の基準(実績・知見・サポート範囲)
M&Aの専門家を選ぶ際は、まず過去の実績を確認することが重要です。
特に、自社の業界や事業規模に近い案件の取り扱い実績が豊富であれば、業界特有の事情を理解した上での的確なアドバイスが期待できます。
また、担当者の専門知識・経験に加え、誠実さや説明力も重要な選定基準です。長期にわたる交渉を二人三脚で進めるパートナーとして、信頼関係を築ける相手かどうかを見極めましょう。サポート範囲も会社によって異なるため、相手探しからPMIまで一貫支援できるのか、または特定フェーズに特化しているのかを確認することが重要です。
仲介会社・アドバイザリーの主な役割
M&A仲介会社やアドバイザーは、M&Aの戦略立案から相手企業の探索・紹介、交渉のサポート、企業価値評価、契約書の作成支援まで、多岐にわたる役割を担います。
特に、複雑で専門的な交渉において、当事者間の緩衝材となり、客観的な視点から議論を整理し、合意形成を促進する役割は非常に重要です。
また、膨大な資料の準備が必要となるデューデリジェンスにおいても、円滑な進行をサポートしてくれます。
専門家を活用することで、経営者は日常業務への影響を最小限に抑えつつ、M&Aという重要な経営判断に集中することができます。
専門家選びで注意すべきポイント
専門家選びで注意すべき点として、料金体系が挙げられます。
M&Aの仲介手数料は、成功報酬型が一般的ですが、その計算方法(レーマン方式など)や着手金の有無は会社によって異なります。
契約前に料金体系を確認し、必ず複数社から見積もりを取得することが望ましいです。
また、売手と買手の双方から手数料を受け取る「仲介」か、一方の利益を代表して動く「アドバイザリー(FA)」か、その立場を確認することが重要です。
自社の利益を守るためにも、契約形態を正しく理解しておきましょう。
M&Aの流れに関するよくある質問(Q&A)
ここでは、M&Aのプロセスに関して経営者や担当者から寄せられる代表的な質問と回答をまとめました。
実務上の疑問や不安を解消するためにお役立てください。
Q. デューデリジェンスでは何を見られる?どこまで準備すべき?
A. デューデリジェンス(DD)では、財務・税務、法務、ビジネス、人事など、企業のあらゆる側面が調査対象となります。
具体的には、過去の決算書や税務申告書、重要な契約書、許認可、従業員情報、訴訟の有無などが精査されます。
買収側は、これらの情報から簿外債務や将来のリスクを洗い出します。
売却側としては、専門家から要求される可能性のある資料を事前にリストアップし、整理しておくことがスムーズな進行の鍵となります。
DDは企業の健康診断に例えられ、誠実な情報開示が信頼関係の構築につながります。
Q. 売却・買収どちらにも専門家は必要か?
A. M&Aは非常に専門性が高く、リスクも大きいため、売却側・買収側双方にとって専門家のサポートが必要だと言えます。
売却側は、適正な企業価値を算定し、有利な条件で交渉を進めるために専門家を必要とします。
一方、買収側は、デューデリジェンスによるリスクの把握や、複雑な契約交渉を適切に進めるために専門家の知見が必要となる場合があります。
M&A経験が豊富な経営者は少数であり、専門家を活用することが成功確率を高める合理的な選択です。
Q. 失敗例や気を付けるべきリスクは?
A. M&Aの失敗例として多いのは、「PMI(経営統合)の失敗」です。
買収後に企業文化の不一致や従業員離職が生じ、期待したシナジーが得られず業績が悪化するケースがあります。
これを防ぐには、交渉段階からPMIを計画し、丁寧なコミュニケーションを重ねることが重要です。
その他、デューデリジェンスでのリスク見落としによる「高値掴み」や、交渉がまとまらず破談になる「ディールブレイク」、M&Aの検討が外部に漏れてしまう「情報漏洩」なども注意すべきリスクです。
Q. PMIはいつから・誰が進めるのか?
A. PMI(経営統合プロセス)は、クロージング後に開始すると誤解されがちですが、実際には最終契約の交渉段階、あるいはデューデリジェンスの段階から計画を開始するのが理想的です。
早期に計画を立てることで、クロージング後すぐに統合プロセスをスタートできます。
PMIを推進する主体は、通常、買収側企業内に設置される専門チーム「PMIチーム」です。
経営企画、財務、人事、法務、ITといった各部門のメンバーで構成され、必要に応じて外部のコンサルタントや専門家が参画します。
トップマネジメントの強いリーダーシップのもと、両社の従業員を巻き込みながら進めていくことが成功の鍵です。
まとめ
本記事では、M&Aの全体像から具体的な11のステップ、売買双方の注意点、期間、専門家の活用法まで、M&Aの流れを網羅的に解説しました。
M&Aの成功は、この複雑なプロセスを正確に理解し、各段階で適切な準備と判断を行うことにかかっています。
特に重要なのは、M&Aの目的を明確に設定すること、信頼できる専門家をパートナーに選ぶこと、そしてクロージング後のPMI(経営統合)までを見据えて計画することです。
M&Aは、後継者問題の解決や事業の成長加速など、企業が抱える様々な経営課題を解決する有効な手段となり得ます。
本記事がM&A理解を深め、貴社の成功に向けた一歩となることを願います。
まずは自社の現状分析と目的の明確化から始めてみてはいかがでしょうか。
