M&AのIM(企業概要書)とは?必要な記載項目7つとテンプレートを解説

M&AのIM(企業概要書)とは?必要な記載項目7つとテンプレートを解説

IM(企業概要書)とは、M&Aで売り手企業が買い手候補に開示する機密資料です。記載すべき必要項目7つ(会社概要・事業・財務・SWOT・取引先・知財・譲渡理由)、エグゼクティブ・サマリーの作り方、テンプレート活用法、買い手の心を動かす作成のコツまで解説します。

目次

M&Aを進める上で、買い手の検討意欲を大きく左右する資料がIM(企業概要書)です。買い手が「この会社を本格的に検討したい」と判断する根拠となるため、売り手にとってIMの品質はM&A成約の確率を直接左右します。

本記事では、IM(企業概要書)の基本から、ノンネームシート・ティーザーとの違い、記載すべき7項目、エグゼクティブ・サマリーの作り方、テンプレートの活用法、買い手の心を動かす作成のポイント、管理上の注意点までを実務目線で網羅的に解説します。

これからIMを作成する売り手の方、IMを受け取った買い手の方、双方が押さえておきたい知識をまとめました。

IM(企業概要書)とは|M&Aで必須の機密資料

M&Aを検討している人の中には、「IM」という用語を見聞きしたことがある人も多いのではないでしょうか。IMはM&A実務の中核を担う重要な資料で、買い手が本格的な検討に進むかどうかを判断する判断材料となります。

IMの正式名称と日本語表記

IMは「Information Memorandum」の頭文字を取ったもので、日本語では「企業概要書」と訳されます。「IM(アイエム)」と略して呼ばれるのが一般的です。

IMには、売り手企業の事業内容・財務状況・組織体制・強み・将来計画など、買い手の検討に必要な機密情報が網羅的に記載されます。単なる紹介資料ではなく、企業の実態を体系的に整理した実務資料として位置づけられます。

イメージとしては「会社の履歴書」と考えると分かりやすいでしょう。買い手はこの一冊を通して、対象企業が自社にとって投資価値があるかを判断していきます。

IMの役割とM&Aプロセスにおける重要性

IMが果たす役割は、大きく3つあります。

  • 買い手の検討材料を提供する: 事業内容・財務・組織などの詳細情報を一冊にまとめる
  • 買い手社内の稟議・投資委員会の資料として機能する: 買い手はIMを基に社内承認を進める
  • 後続のDD・条件交渉の土台となる: IMの整理度合いがその後の交渉スピードに直結

IMの精度や見せ方によっては、M&Aが先に進まない可能性もあります。IMは買い手の意向表明(LOI)企業価値評価に直結する重要資料であり、売り手にとっては自社をアピールするための最重要ドキュメントといえます。

CIM(Confidential Information Memorandum)との違い

M&A実務では、IMと並んで「CIM(シーアイエム)」という用語が使われることもあります。CIMは「Confidential Information Memorandum」の略で、「機密情報メモランダム」と訳されます。

結論からいうと、IMとCIMは実務上ほぼ同じ意味で使われていると考えて差し支えありません。CIMの方が「機密性が高いこと」を強調した名称ですが、いずれも秘密保持契約(NDA)締結後に開示される資料です。

米系の投資銀行や大手FAではCIMの名称を使うケースが多く、中小M&Aの実務では「IM」「企業概要書」という呼称が一般的です。呼び方の違いはあれど、果たす役割は同じだと理解しておけば問題ありません。

IMとノンネームシート(ティーザー)の違い

M&Aの初期段階では、IMよりも前に「ノンネームシート」「ティーザー」と呼ばれる資料が買い手候補に開示されます。IMとこれらの資料は、機密性・情報量・使われるフェーズが大きく異なります。

ノンネームシート・ティーザーとは

ノンネームシートは、業種・エリア・売上規模・事業内容など、会社が特定されない範囲で構成される匿名の概要資料です。ノンネームという名前のとおり、企業名は明かされません。

ティーザーもほぼ同義で使われ、買い手の興味を引くための「予告編」的な資料を指します。仲介会社が買い手候補を広く探すフェーズで活用されます。

記載される情報量はA4用紙1枚程度に簡潔にまとめられ、買い手は「この案件に興味があるかどうか」を短時間で判断できます。

情報の濃淡・実名の有無

IMとノンネームシートの大きな違いは、実名の有無と情報量です。

  • ノンネームシート: 匿名・A4用紙1枚程度・概要のみ
  • IM(企業概要書): 実名開示・数十ページに及ぶ詳細資料

IMでは会社名・所在地・具体的な事業実態・財務データ・組織図など、すべてを盛り込みます。そのため、IMの開示前には必ず秘密保持契約(NDA)を締結し、情報の取り扱いには細心の注意が払われます。

使われるフェーズと目的の違い

両資料は、M&Aプロセスにおける役割が明確に分かれています。

  • ノンネームシート: 「興味喚起」フェーズで使われ、買い手候補を広く探す目的
  • IM: 「本格検討」フェーズで使われ、買い手が意向表明(LOI)を出すかどうかを判断する目的

つまり、ノンネームシートで「会ってみたい」と思わせ、IMで「意向表明を出す」と決断させるという段階的な目的があります。それぞれのフェーズで適切な情報量と内容を準備することが、スムーズなM&A進行のカギとなります。

IMの作成者と取り交わす流れ

IMはM&A交渉準備段階における重要な資料のひとつです。売り手はアピールポイントを漏れなく伝えると同時に、企業の情報を正確に記載しなければなりません。IMは誰がどのような流れで作成・開示されるのでしょうか。

誰がIMを作成するのか

IMの作成は、売り手側のM&Aアドバイザーや仲介会社が行うケースが大半です。M&Aアドバイザーは、売り手または買い手のどちらか片方と契約を結び、クライアントの利益最大化に向けたアドバイスを行う専門家です。

売り手自らが簡易的なIMを作成するケースもありますが、IMの精度によって交渉の可否が決まるため、プロの手を介した方が安心できるというのが一般的な考え方です。

IMの内容について、何をどこまで開示するかは売り手側に委ねられます。交渉前の段階では「売り手のアピールポイント」が大部分を占めると考えてよいでしょう。一方で買い手は、データの正確性や虚偽の有無を精査する必要があります。

NDA締結後にIMが開示される流れ

M&Aではさまざまな企業の機密情報が開示されます。売り手と買い手のマッチング後はすぐに交渉をスタートさせるのではなく、まず秘密保持契約(NDA)を締結するのが通常です。IMには企業の重要な機密情報が記載されるため、NDAの締結前に開示されることはありません。

標準的な流れは以下のとおりです。

  1. 買い手がノンネームシート・ティーザーを確認する
  2. 売り手と買い手が秘密保持契約(NDA)を締結する
  3. 売り手から買い手へIMが開示される
  4. 買い手がIMを基に意向表明(LOI)を出すかどうかを判断する

このプロセスにより、機密情報の漏えいを防ぎつつ、買い手の本格検討に必要な情報を段階的に開示できる仕組みが整います。

入札方式での扱い

仲介会社を通さずに複数の買い手候補が同時に検討する「入札方式」でM&Aを進める場合、NDA締結後に入札に関する資料(プロセスレター)と一緒にIMが配布されます。

入札方式では、複数の買い手が同じIMを基に企業価値評価を行い、買収提案を提出します。IMの完成度がそのまま入札価格に影響するため、入札方式のM&Aでは特にIMの品質が重要視されます。

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IMの必要項目|記載すべき7つの要素

IMには、買い手が多角的に分析を行えるよう、一定の網羅性を持った項目整理が求められます。ここでは、企業概要書に盛り込むべき主要な7項目について具体的に解説します。全体像を分かりやすく伝えるため、実際のIMではグラフや表、画像なども積極的に用いるのが一般的です。

①会社概要・組織情報

IMの冒頭に記載するのは「会社概要」です。登記簿謄本に記載される基本情報とほぼ同じ内容と考えてよいでしょう。

  • 企業名・所在地・設立年月日
  • 代表者名・資本金・支店数
  • 沿革・株主構成・組織図
  • 役員のプロフィール
  • 従業員数・雇用形態別の内訳・平均年齢・勤続年数
  • 許認可の取得状況・有資格者の状況

株主構成には、株式の種類・株主名・持株比率まで正確に記載します。M&Aは株式譲渡で行われるケースが多く、「誰がどのくらいの株式を保有しているか」は買い手の大きな注目点となるためです。属人的な要素が強い事業では、キーマンの存在や継続関与の可否も重要な検討ポイントとなります。

②事業内容・ビジネスモデル

事業内容では、サービスや製品の具体的な特徴、収益構造、ビジネスフローを分かりやすく整理します。事業形態としてフロー型ビジネス(個別取引が積み上がる型)かストック型ビジネス(継続課金型)か、あるいはその組み合わせかは重要なポイントです。

  • 資金の流れ・商品の仕入先・取引の流れ
  • ターゲット顧客層・客単価
  • セールスポイント・販売チャネル
  • 業界・地域におけるポジション・役割
  • 自社の優位性・独自性

複雑な事業内容を文字だけで説明するのは難しいものです。写真・グラフ・図解(フロー図)を盛り込むと、買い手がビジネスモデルのイメージをつかみやすくなるでしょう。

③財務状況(過去3〜5期分)

財務状況では、売上・原価・営業利益・EBITDAの推移を過去3〜5期分にわたって詳細に提示します。貸借対照表の資産・負債の内訳についても、買い手が実態を把握できるよう透明性を持って開示しましょう。

  • 損益計算書(過去3〜5期分)
  • 貸借対照表
  • 資産・負債の内訳
  • 借入状況(残高・年間返済額など)
  • キャッシュフローの推移

節税対策やオーナー特有の経費などを除いた「実態損益(修正後利益)」の算出も欠かせません。企業が本来持つ収益力を数値で示すことが、適切なバリュエーションにつながります。

資産や負債に大きな変動があった場合は、その理由を補足記載しましょう。「大きな赤字が出た理由は何か」「急激に売上が伸びたのはなぜか」など、買い手から質問が出る可能性が高いためです。

④市場環境・競合分析(SWOT)

自社が属するターゲット市場の規模・業界トレンド・将来の市場予測について客観的なデータを示します。競合他社と比較した際の優位性(技術・顧客基盤・ブランド)と、抱えている弱みを分析しましょう。

整理の手法として有用なのがSWOT分析です。SWOT分析とは、Strengths(強み)・Weaknesses(弱み)・Opportunities(機会)・Threats(脅威)の4つの観点から自社の立ち位置を整理するフレームワークです。

買い手は、自社が参入することでどのような戦略的価値を生み出せるかをこの項目で検討します。客観的な市場データとSWOT分析を組み合わせることで、買い手に説得力のあるアピールが可能になります。

⑤主要取引先と契約関係

売上の大部分を占める上位の顧客リストや、重要な仕入先・外注先とのリレーションシップを開示します。特定の取引先への依存度が高い場合は、その関係性の継続性が買収価格に影響を与える可能性があります。

長期契約の有無や、経営権が変わった際に契約解除が可能になるチェンジ・オブ・コントロール(COC)条項の有無も重要な確認事項です。事業の安定性を裏付ける根拠として、取引構造の透明性を確保しましょう。

⑥許認可・知的財産・設備状況

事業を継続するために不可欠な許認可、保有している特許権・商標権・著作権などの知的財産を一覧化します。許認可の継承可否はM&Aスキーム(株式譲渡か事業譲渡か)の選択にも影響を与える重要要素です。

あわせて、本社・工場・店舗などの不動産所有形態(自社所有か賃借か)、主要設備の稼働状況や老朽化の程度についても具体的に記載します。買収後に追加の設備投資が必要になるかどうかは、買い手にとっての将来コスト見積もりに直結するためです。

⑦譲渡の理由と事業計画

譲渡の理由は、経営者によってさまざまです。後継者不在・成長加速・出口戦略・選択と集中など、譲渡の背景をポジティブかつ明確に説明しましょう。「なぜこのタイミングで売却を選択するのか」を買い手に質問されることを想定し、理由や経緯を補足しておくのが望ましいといえます。

あわせて、今後の事業計画(短期1年以内・中期3〜5年・長期5年以上)を提示します。M&A実行後は買い手が事業計画を引き継ぐことになるため、現段階での進捗・実現性・具体的なアクションをできるだけ詳細に記載するのが理想です。

事業計画はバリュエーションにも大きな影響を与えるため、買い手が投資回収の期間やリターンを予測できる前提条件を明示しましょう。

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エグゼクティブ・サマリーの作り方とフォーマット例

IMの冒頭に必ず配置されるのが「エグゼクティブ・サマリー」です。エグゼクティブ・サマリーの出来栄えは、買い手がIMの本文を読み進めるかどうかを左右する重要なパートです。ここでは、エグゼクティブ・サマリーの役割・内容・フォーマットを解説します。

エグゼクティブ・サマリーの役割

エグゼクティブ・サマリーとは、買い手のエグゼクティブ(企業幹部)に必ず目を通してほしい内容を簡潔にまとめたもので、IMの冒頭部分に1〜2ページで記載されます。

買い手の経営者の中には、資料の全てに目を通すのが難しい多忙な人もいます。冒頭にエグゼクティブ・サマリーがあることで、隅々まで目を通さなくても対象企業のアピールポイントを容易に理解できるのです。

同時に、その後に続く詳細内容のガイドラインの役割も果たします。売り手にとっては、自社の魅力を伝えるための最重要パートといっても過言ではないでしょう。

盛り込むべき内容

エグゼクティブ・サマリーには、IM全体のエッセンスを凝縮して記載します。標準的に盛り込むべき内容は以下のとおりです。

  • 会社の基本情報(社名・所在地・設立年・代表者)
  • 事業概要(何をしている会社か)を1〜2行で
  • 主要な財務指標(直近の売上・営業利益・EBITDA)
  • 独自の強み・優位性(3〜5項目に厳選)
  • 主要顧客・取引先の概要
  • 譲渡理由
  • 譲渡希望条件の概要

すべての情報を詰め込もうとせず、「この案件は検討する価値がある」と感じてもらえる情報に絞り込むのがコツです。

フォーマット・構成例

エグゼクティブ・サマリーのフォーマットに厳密なルールはありませんが、1〜2ページに収め、視覚的に整理されたレイアウトにするのが一般的です。

標準的な構成例は次のようなものです。

  • 上段: 会社の基本情報を表形式で簡潔に
  • 中段: 事業内容と独自の強みを箇条書きまたは図解で
  • 下段: 主要な財務指標を表またはグラフで提示
  • 最下段: 譲渡理由と譲渡希望条件の概要

図やグラフ、写真を効果的に使い、「読ませる」というよりも「見て分かる」レイアウトを意識しましょう。買い手のエグゼクティブがエレベーターの中でも理解できるレベルの分かりやすさが理想です。

IMのテンプレート・サンプル活用ガイド

「IM作成は専門家に頼むものの、まずは自社でテンプレートを使って下書きしてみたい」という売り手も少なくありません。インターネット上にはIMのテンプレートやサンプルが数多く公開されていますが、テンプレートの活用にはメリットと注意点の両方があります。

テンプレート活用のメリット

IMテンプレートを活用する主なメリットは以下のとおりです。

  • 記載項目の抜け漏れ防止: 必要な項目が事前に整理されている
  • 作業時間の短縮: ゼロから構成を考える必要がない
  • 専門家との打ち合わせがスムーズに: 自社情報の棚卸しが先に進む
  • 業界標準のフォーマットに準拠できる: 買い手にとって読みやすい

特に、初めてM&Aを検討する経営者にとっては「何を準備すべきか」の指針になります。

テンプレートで網羅すべき項目チェックリスト

IMテンプレートには、最低限以下の項目が含まれているかを確認しましょう。

  • 表紙(会社名・案件名・作成日・機密表示)
  • エグゼクティブ・サマリー(1〜2ページ)
  • 会社概要・沿革・組織図
  • 役員・従業員情報
  • 事業内容・ビジネスモデル(フロー図含む)
  • 市場環境・競合分析・SWOT
  • 主要取引先・契約関係
  • 許認可・知的財産・主要設備
  • 過去3〜5期分の財務諸表(BS・PL)
  • EBITDA・実態損益の算定
  • 事業計画(短期・中期・長期)
  • 譲渡理由・譲渡希望条件
  • 付録(契約書サンプル・許認可証など)

これらの項目が網羅されていれば、買い手の本格検討に必要な情報をひととおりカバーできます。テンプレートを選ぶ際は、この項目チェックリストと照合してください。

テンプレート活用時の注意点

一方で、テンプレートをそのまま流用するだけでは、自社独自の魅力や複雑なビジネスモデルは伝わりません。テンプレートに項目を埋めただけのIMは、買い手から見れば「どこかで見た普通の資料」になってしまいます。

  • テンプレートは「骨組み」として活用し、肉付けは自社の言葉で
  • 業界特有のKPI・指標は項目を追加する
  • 独自の強みを際立たせるセクションを設ける
  • 最終的にはM&Aアドバイザーの目を通す

買い手の心を動かすには、テンプレートをベースにしつつも、自社ならではのストーリーと強みを盛り込んだカスタマイズが不可欠です。

買い手の心を動かすIM作成のポイント

質の高いIMは、買い手の検討意欲を高め、条件交渉を有利に進めるための強力な武器となります。単なる情報整理にとどまらず、買い手の視点に立った資料作成のコツを3つに絞って解説します。

客観的データと数字で信頼性を担保

IMで最も重要なのは、情報の正確性と客観性です。誇張表現や根拠の乏しい予測は避け、統計データ・実際の決算書・公的資料に基づき、誰が見ても納得できる論理的な説明を心がけましょう。

数字の整合性が取れていない場合、買い手に不信感を与え、交渉条件の悪化や検討中止につながる可能性があります。細部まで数値を精査し、出典を明示することで、プロフェッショナルな資料としての体裁が整います。

図解・グラフで視覚化する

複雑なビジネスモデルや多岐にわたる組織構造は、テキストだけでなく図解・写真・グラフを積極的に活用しましょう。視覚的に整理された資料は、読み手の負担を減らし、事業の強みを直感的に理解させる効果があります。

パワーポイント等を用いて、買い手がそのまま社内説明や稟議で使用できるレベルに仕上げるのが理想的です。「分かりやすさ」は、買い手の検討プロセスのスピードアップを促す重要な要素となります。

買い手目線でシナジーを言語化する

売り手目線の「自慢」を並べるのではなく、買い手が買収後にどう利益を伸ばせるかという視点を忘れてはいけません。自社のリソースと買い手のリソースが合わさることで生まれるシナジー効果を、具体的なシーンとともに言語化しましょう。

たとえば「当社の顧客基盤×買い手の販売チャネルで、クロスセル機会が見込める」「当社の技術×買い手の生産設備で、製造原価を下げられる」など、具体的な掛け算で投資魅力を提示することがポイントです。

IM作成・管理上の注意点

IMは機密情報を多く含む資料であるため、作成および取り扱いには慎重なリスク管理が求められます。トラブルを未然に防ぎ、スムーズな交渉を進めるための注意点を3つ解説します。

マイナス情報(リスク)も誠実に開示

簿外債務・訴訟リスク・主要取引先の離脱懸念といったマイナス情報は、早い段階で誠実に開示することが鉄則です。

これらを開示せずに交渉を進めた場合、後のデューデリジェンス(DD)で発覚すると、表明保証違反や交渉中止につながる可能性があります。

初期段階で伝えておくことで、リスクを織り込んだ上での交渉が可能になり、結果として信頼関係を維持できます。マイナス要素については、対応策や今後の改善方針とあわせて説明するのが一般的です。

情報の鮮度を保つアップデート

M&Aの交渉は数か月から1年に及ぶこともあるため、情報の鮮度を保つことが不可欠です。決算月の経過や重要な経営指標に変動があった場合は、速やかにIMの内容を更新しなければなりません。

月次試算表を適宜追加するなど、最新の経営状況を共有できる体制を整えておくことが重要です。古いデータに基づいた検討は、最終段階での条件変更や買い手側の不信感の原因となるため、継続的な管理が求められます。

情報漏洩対策(管理番号・ウォーターマーク)

IMには極めて高い機密性が求められるため、資料には管理番号や透かし(ウォーターマーク)を入れるのが一般的です。これにより、万が一情報が流出した際に、どのルートから漏れたのかを追跡できます。

  • 各IMコピーに固有の管理番号を付与
  • 透かし(買い手社名・配布日)を全ページに表示
  • VDR(バーチャルデータルーム)で配布履歴を管理
  • 検討中止時は速やかに資料を破棄・返却させるルール

情報の流出は、自社のみならず取引先や従業員にも影響を及ぼす可能性がある点を認識しておく必要があります。

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IMに関するよくある質問

最後に、IM(企業概要書)についてよく寄せられる質問にお答えします。

IMは何ページくらいが適切ですか?

企業規模や事業の複雑さによりますが、中小企業のM&Aでは20〜40ページ程度、中規模以上では50〜100ページ程度が一般的な目安です。ページ数の多さではなく、買い手が必要とする情報を網羅できているかが重要です。エグゼクティブ・サマリーは1〜2ページ、本編は項目ごとに2〜10ページの配分を意識すると、バランスの取れたIMになります。

IMの作成期間はどれくらいかかりますか?

標準的には1〜2か月が目安です。社内の情報整理(2〜3週間)、骨子作成(1週間)、ドラフト執筆と推敲(2〜3週間)、最終確認(1週間)という配分が一般的です。M&A交渉のスケジュールに余裕を持って、譲渡を考え始めた段階から早めに準備を進めるのがおすすめです。

IMは自分で作成しても良いですか?

法律で義務付けられているわけではありませんが、成約を目指すのであれば、M&Aアドバイザーや専門家への依頼を強く推奨します。IMの精度は買い手の検討意欲・買収価格・交渉スピードに直結するためです。テンプレートを使って自分で下書きを作成し、専門家にブラッシュアップを依頼するという折衷案も有効です。

CIMとIMは何が違うのですか?

実務上、CIMとIMはほぼ同じ意味で使われています。CIMは「Confidential Information Memorandum」の略で、「機密情報メモランダム」と訳されます。米系の投資銀行や大手FAではCIMの名称、中小M&A実務では「IM」「企業概要書」という呼称が一般的です。名称の違いはあれど、果たす役割は同じと理解しておけば問題ありません。

IMは何社くらいの買い手に開示しますか?

非公開の相対取引では1〜3社程度、複数の買い手を集める入札方式では10〜30社程度に開示されるのが一般的です。開示先が多くなるほど情報漏洩リスクも高まるため、NDA締結・管理番号付与・ウォーターマークなどの情報管理を徹底することが重要です。

まとめ|質の高いIMがM&A成約のカギ

IM(企業概要書)は、M&Aという重大な意思決定において、買い手の本格検討を支える中核資料です。本記事のポイントを整理しておきましょう。

  • IMは「Information Memorandum(企業概要書)」の略で、買い手の意向表明やDDの土台となる資料
  • ノンネームシート・ティーザーとは情報量・実名の有無・使われるフェーズが異なる
  • NDA締結後に開示され、売り手側のM&Aアドバイザーが作成するのが一般的
  • 記載項目は7つ:①会社概要 ②事業内容 ③財務状況 ④市場・SWOT ⑤取引先 ⑥許認可・設備 ⑦譲渡理由・事業計画
  • 冒頭のエグゼクティブ・サマリーは1〜2ページにエッセンスを凝縮
  • テンプレートは「骨組み」として活用し、自社らしさを肉付けする
  • 客観的データ・図解・買い手目線でのシナジー言語化が買い手の心を動かす
  • マイナス情報も誠実に開示、情報の鮮度管理と漏洩対策(管理番号・ウォーターマーク)を徹底

IMの精度や見せ方によっては、M&Aが先に進まない可能性もあります。売り手はIMの作成に長けた優秀なM&Aアドバイザーを選定し、買い手はIMの正確性を判断できる専門家にサポートを依頼するのが理想です。

「TRANBI(トランビ)」は売り手と買い手をつなぐ国内最大級のM&Aプラットフォームです。サイト内では専門家の無料紹介を行っているほか、M&Aに関するさまざまな情報を公開しています。質の高いIMで最適なパートナーと出会うための一歩として、ぜひご活用ください。

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記事監修: 株式会社トランビ 代表取締役CEO 高橋 聡
【プロフィール】
アスクホールディングス株式会社代表取締役社長、中小企業庁中小M&Aガイドライン作成委員。アクセンチュアを経てアスクホールディングス株式会社を先代から事業承継。中小企業におけるM&A活性化の必要性を痛感しトランビを創業。
著書: 「起業するより会社は買いなさい」サラリーマン・中小企業のためのミニM&Aのススメ
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