企業買収の流れと手法。メリットやデメリット、成功のポイントを解説

企業買収の流れと手法。メリットやデメリット、成功のポイントを解説

企業の買収は、どういった流れで実行されるのでしょうか。買収の方法や手続きに加えて、買収を行うメリット・デメリットも解説します。実際の成功事例・失敗事例を通じて、買収を成功させるポイントも理解しましょう。まずはプロセスを知ることが大事です。

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M&Aの一般的なプロセスは?準備から契約までの各過程のポイント
具体的事例
M&Aの一般的なプロセスは?準備から契約までの各過程のポイント

M&Aはいくつものプロセスで成り立っています。それぞれの過程を着実・丁寧に進めていくことが、M&A成功の鍵といえるでしょう。M&Aを『準備』『交渉』『最終契約』の三つのフェーズに分け、注意点やポイントを解説していきます。

M&Aの流れを11ステップで徹底解説!準備からPMIまで全手順と成功のポイント
事業承継
M&Aの流れを11ステップで徹底解説!準備からPMIまで全手順と成功のポイント

M&Aは大企業だけでなく、零細企業にとっても事業承継や成長戦略に有効な選択肢です。や具体的な手法、メリット・デメリット、成功に向けた進め方まで、網羅的に解説します。

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買収とは?

買収とは、他社の事業または会社の経営権を買い取ることで、株式会社を買収する場合は、株式の過半数を取得することを指します。まずは、買収の具体的な意味やパターンを理解しましょう。

買収の意味

M&Aにおける『買収』の意味は、『他社の株式を買い取って傘下に入れること』です。
一般的には過半数の株式を取得すると、買収が成立しますが、条件によってはそれ以下でも買収は可能です。

株式の過半数を保有すれば、株主総会で普通決議を通せるため、事業運営をコントロールするのであれば、過半数の取得を目指します。
さらに2/3以上を取得すると、株主総会の特別決議を成立させられるので、実質的に経営を支配することが可能です。

買収された企業は、株式を買い取った企業の子会社またはグループ企業となり、事業を続けます。片方の会社が消える、会社の合併とは形式が異なります。買収と合併両方の意味を含む『M&A』も、企業買収と同様の意味として使われる用語です。

友好的買収と敵対的買収がある

買収には主に『友好的買収』と『敵対的買収』の二つのパターンがあります。企業同士の関係によって、意味合いが変化するのが特徴です。

『友好的買収』は、お互いの会社が合意した上で実行される買収です。買い手側が相手企業と話し合い、買収の方法やスケジュール、今後の経営方針などを決めます。

一方、買収される側が反発している場合、買い手が発行済株式の過半数を取得する『敵対的買収』もあります。買収対象となった企業は、株式を取得されないように動いたり、別の友好的な企業に買収してもらったりと防衛策を講じます。

敵対的買収は、買収される側の反発によって時間やコストがかかるケースがほとんどです。買い手は友好的買収によって、スムーズに話を進められるのが理想です。

買収とM&Aの違い

買収とM&Aとの違い“

買収は上記のように、特定の企業が他の企業を支配するため、一定数の株式を取得したり、事業を買い取ったりすることを指します。

それに対してM&Aとは、企業の『合併(Mergers)』と『買収(Acquisitions)』を指す用語のため、買収はM&Aの一種という位置づけです。

ただし下図のように、広義のM&Aには、合弁会社(ジョイントベンチャー)の設立をはじめとした資本提携も含まれる場合もあります。

広義のM&Aと狭義のM&A

また、M&Aには該当しないものの、企業同士の業務提携や共同開発なども、企業間提携の一種です。ここで大まかな違いを押さえておきましょう。

敵対的買収の方法。目指す株式の保有割合、TOBの流れなど
用語説明
敵対的買収の方法。目指す株式の保有割合、TOBの流れなど

当事者の合意なしで行われる『敵対的買収』は、株式公開買付(TOB)によって行われます。発行済み株式の何割を取得すれば、企業買収が成立するのでしょうか?TOBの流れや敵対的買収のリスクについても解説します。

経営者が知っておきたい買収防衛策。非上場化以外の方法も
用語説明
経営者が知っておきたい買収防衛策。非上場化以外の方法も

株式を市場に公開している企業は、多かれ少なかれ敵対的買収のリスクにさらされています。経営陣の同意を得ない株の買い占めに対抗するために、どのような防衛策を講じるべきなのでしょうか。買収者の狙いや買収されやすい企業の特徴も解説します。

企業買収の流れ

企業買収のプロセスは複雑ですが、大きく分けると「①検討・準備」「②交渉」「③最終契約」「④統合」の4段階で進みます。

各フェーズには専門的な知識や慎重な判断が求められるため、それぞれの段階で何を行うべきかを正確に理解しておくことが、買収を成功に導く鍵となります。

企業買収の流れ①:検討・準備フェーズ

検討・準備フェーズは、企業買収の成功を左右する最も重要な初期段階です。
この段階では、買収の目的を明確にし、自社の戦略と照らし合わせて計画を立てます。

M&Aの専門家を選定し、どのような企業を、どの手法で買収するのか、大枠の方向性を固めることが主なタスクとなります。

M&A戦略と目的の明確化

まず初めに、「なぜM&Aを行うのか」という目的を具体的に定義します。
例えば、新規市場への参入、既存事業の強化、技術や人材の獲得など、自社の課題や成長戦略に沿って目的を明確化します。

この目的が曖昧なままでは、適切な買収対象企業の選定が困難になるだけでなく、買収後の統合プロセスで混乱が生じる原因となります。

M&Aの専門家(弁護士・会計士など)の選定と相談

企業買収には、法務、財務、税務など高度な専門知識が不可欠です。
そのため、M&Aの経験が豊富な仲介会社、ファイナンシャル・アドバイザー(FA)、弁護士、公認会計士などの専門家を選定し、協力を仰ぐことが一般的です。

専門家を早期に選びパートナーとすることで、プロセスを円滑に進め、リスクを減らせます

買収対象企業の条件設定

M&Aの目的が明確になったら、次はその目的を達成するために、どのような条件を持つ企業を買収対象とすべきかを具体的に設定します。

事業内容や規模、財務状況、技術力、企業文化、所在地などから理想的な企業の条件をリストアップします。
この条件設定が、後の候補先選定の重要な基準となります。

買収スキーム(手法)の検討

どのような手法で買収を行うか(スキーム)を検討します。
代表的なスキームには、対象企業の株式を取得する「株式取得」、特定の事業のみを譲り受ける「事業譲渡」、会社を分割してその一部を承継する「会社分割」などがあります。

選ぶスキームによって手続きの難易度や税務、従業員の処遇が変わるため、M&Aの目的や企業の状況に応じて最適な手法を選びます。

M&AでFAを起用する場面とは。対象の案件や業務内容を解説
用語説明
M&AでFAを起用する場面とは。対象の案件や業務内容を解説

M&AにおけるFA(ファイナンシャルアドバイザー)は、経営陣の意思決定をサポートする補佐役です。高い専門性と交渉力、戦略立案力を持ち合わせており、複雑なM&Aのプロセスをサポートします。FAの必要性や業務内容について理解を深めましょう。

M&Aアドバイザリーの見極め方。活用する方法、注意点も
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M&Aアドバイザリーの見極め方。活用する方法、注意点も

M&Aアドバイザーは、の一連の流れをフルサポートしてくれる頼もしい存在です。アドバイザーを選ぶ際は、業態や報酬体系のほかにどのような点をチェックすればよいのでしょうか?見極め方のポイントや注意点を解説します。

M&Aに関する業務と資格の関係。さまざまな専門家を上手に活用
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M&Aに関する業務と資格の関係。さまざまな専門家を上手に活用

M&Aでは、M&Aアドバイザーをはじめ、多くの専門家に実務面のサポートを求めるのが一般的です。専門家に依頼する際、業務に関連する資格の有無は確認すべきなのでしょうか?優秀なアドバイザーを見分けるコツや各段階における専門家の活用例を紹介します。

企業買収の流れ②:交渉フェーズ

検討・準備フェーズで固めた戦略に基づき、具体的な買収候補先を探し、交渉を進めていくのが交渉フェーズです。

候補先のリストアップから始まり、秘密保持契約の締結、トップ同士の面談を経て、基本的な条件について合意を形成するまでの一連のプロセスが含まれます。

買収候補先の選定(ロングリスト・ショートリストの作成)

設定した条件に基づき、買収候補となる企業を探します。
従来はM&A仲介会社や金融機関のネットワークに頼ることが主流でしたが、近年ではオンラインのM&Aプラットフォームも有力な選択肢となっています。

M&Aプラットフォームを活用することで、地域や業種を問わず幅広い候補先から効率的に情報を収集でき、コストを抑えられる可能性もあります。
これらの手法を組み合わせ、候補企業のリスト(ロングリスト)を作成し、事業内容や財務状況などの公開情報を基に分析します。
その後、優先度の高い企業を数十社に絞り込んだリスト(ショートリスト)を作成します。

ノンネームシートによる候補先への打診

ショートリストの中から特に有力な候補先に対して、M&A仲介会社などを通じて打診を行います。
この際、買い手企業が特定されないよう、企業名や具体的な事業内容を伏せた匿名の資料(ノンネームシート)を用います。

売り手企業は、このノンネームシートを見て、交渉を進めるかどうかを初期的に判断します。

秘密保持契約(NDA)の締結

売り手企業が交渉に興味を示した場合、より詳細な情報を開示する前に、秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)を締結します。

これは、交渉過程で知り得た相手企業の内部情報や交渉の事実そのものを、外部に漏らさないことを法的に約束するものです。
M&Aの交渉において、非常に重要な契約となります。

企業概要書(IM)の開示と検討

NDA締結後、売り手企業は事業内容や財務状況、組織体制をまとめた「企業概要書(IM:Information Memorandum)」を買い手に開示します。

買い手企業は、このIMを精査し、自社の買収戦略との適合性や、買収によって期待できるシナジー効果などを詳細に分析・検討します。

トップ面談の実施

IMの検討を経て、買収への意欲がさらに高まった段階で、買い手と売り手の経営トップ同士による面談が実施されます。

トップ面談では、経営理念や企業文化、事業の将来性、経営者の人柄など書面では分からない点を確認し、信頼関係を築きましょう。

意向表明書(LOI)の提出

トップ面談などを通じて、買収の意向が固まったら、買い手企業から売り手企業に対して「意向表明書(LOI:Letter of Intent)」を提出します。

LOIには、現時点での買収希望価格、買収スキーム、今後のスケジュール、デューデリジェンス(後述)の実施範囲などを記載します。
通常、この時点では法的拘束力はありませんが、交渉の方向性を揃えるために重要な文書です。

基本合意書(MOU)の締結と独占交渉権の設定

LOIの内容を基に、買い手と売り手の間で協議を行い、基本的な条件について合意に至った場合、「基本合意書(MOU:Memorandum of Understanding)」を締結します。

この際、買い手企業が安心してデューデリジェンスを実施できるよう、一定期間は売り手が他社と交渉することを禁止する「独占交渉権」を買い手企業に付与するのが一般的です。

M&Aのロングリストはどう作成する?M&A戦略と選定基準が重要
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M&Aのロングリストはどう作成する?M&A戦略と選定基準が重要

M&Aの第一のプロセスは、無数の企業の中から自社に合ったターゲットを選定することです。ロングリストはショートリストの前に作成される候補先リストで、基準に満たない企業をふるい落とす目的があります。作成のポイントを確認しましょう。

M&Aで取り交わすLOIとは何か。記載内容や法的拘束力を解説
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M&Aで取り交わすLOIとは何か。記載内容や法的拘束力を解説

M&Aの交渉初期で取り交わされる『LOI』は、基本的な合意内容や価格を定めた仮の契約書です。独占交渉権や秘密保持義務の条項には法的効力があるため、条件をよく確認する必要があります。記載すべき事項や作成方法について解説します。

優先交渉権と独占交渉権の違いとは。基本合意書における注意点
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優先交渉権と独占交渉権の違いとは。基本合意書における注意点

M&Aを行う際に、優先交渉権を設ける場合があります。設定することにより、買い手と売り手にどのような影響を与えるのでしょうか?得られるメリットを見ていきましょう。また優先交渉権を得るタイミングについても紹介します。

企業買収の流れ③:最終契約フェーズ

交渉フェーズで基本的な合意に達した後、買収対象企業を詳細に調査し、最終的な契約を締結するのが最終契約フェーズです。

この段階では専門家によるデューデリジェンス(DD)を実施し、隠れたリスクを確認します。
その結果を踏まえて最終的な買収価格や条件を交渉し、最終契約を締結します。

デューデリジェンス(DD)の実施

デューデリジェンス(DD)とは、買収対象企業の価値やリスクを詳細に調査するプロセスです。
弁護士や公認会計士などの専門家チームを編成し、様々な側面から企業の実態を把握します。

DDによって、帳簿に現れない簿外債務や訴訟リスクなどが判明することもあります。
M&Aの最終判断に欠かせない重要な手続きです。

財務デューデリジェンス

対象企業の財政状態や収益性を詳細に分析します。決算書の正確性、資産・負債の実態、キャッシュフローの状況などを調査し、将来の事業計画の妥当性を評価します。

法務デューデリジェンス

契約関係、許認可、知的財産権、訴訟、コンプライアンス体制など、法的な観点からリスクがないかを調査します。企業の定款や登記、重要な契約書などが主な調査対象となります。

税務デューデリジェンス

過去の税務申告が適正に行われているか、税務上の繰越欠損金の有無、潜在的な税務リスクなどを調査します。買収スキームが税務に与える影響も検討します。

人事デューデリジェンス

従業員の労働条件、人事制度、労務関連の紛争リスク、キーパーソン(重要な従業員)の退職リスクなどを調査します。買収後の人事制度統合に向けた課題も洗い出します。

ITデューデリジェンス

情報システムの状況、セキュリティ、ライセンス契約、システムの陳腐化リスクなどを調査します。買収後のシステム統合にかかるコストや期間を把握する目的もあります。

ビジネスデューデリジェンス

対象企業の事業内容、市場での競争優位性、顧客基盤、サプライチェーン、将来の成長性などを分析します。買収によって期待できるシナジー効果を具体的に評価します。

デューデリジェンス結果に基づく最終条件交渉

デューデリジェンスで判明した問題点やリスクを基に、買い手と売り手の間で最終的な条件交渉を行います。

例えば重大な簿外債務が見つかった場合には、買収価格の減額を要求したり、売り手側に表明保証(特定の事実の真実性を担保させること)を求めたりします。交渉の結果、M&Aが破談となるケースも少なくありません。

デュー・デリジェンスでM&Aのリスク回避。かかる費用や期間など
手法
デュー・デリジェンスでM&Aのリスク回避。かかる費用や期間など

M&Aの最終合意に至る上で、デュー・デリジェンス(DD)は欠かすことのできない重要なプロセスです。資金に限りのある中小企業や個人事業主は、何をどのように実行すればよいのでしょうか?DDの種類や費用、期間について理解を深めましょう。

財務デュー・デリジェンスの調査内容や必要性とは。主な二つの役割
手法
財務デュー・デリジェンスの調査内容や必要性とは。主な二つの役割

財務デュー・デリジェンスとは、買い手が対象企業の財務状況や資金繰りを調査することです。最終契約の締結前に行われるのが一般的で、簿外債務などの財務リスクを洗い出します。財務デュー・デリジェンスの意義や調査内容について解説します。

M&AにおけるDDとは何か?買収監査の手順、種類、注意点を解説
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M&AにおけるDDとは何か?買収監査の手順、種類、注意点を解説

『DD』とは、M&Aにおける買収監査を指します。買い手は最終決定を下す前に、買収対象会社が重大なリスクや問題を抱えていないかを調査する必要があるでしょう。DDの手順や、問題が発覚した際の対処法についても解説します。

最終契約書(DA)の締結

最終的な条件交渉がまとまれば、合意内容を盛り込んだ「最終契約書(DA:Definitive Agreement)」を締結します。
株式譲渡契約書や事業譲渡契約書などがこれにあたります。

最終契約書は、基本合意書とは異なり、強い法的拘束力を持ちます。
契約内容に違反した場合は、損害賠償請求の対象となる可能性があります。

クロージング(決済と経営権の移転)

最終契約書で定められた前提条件がすべて満たされた後、買収代金の決済と、株式や事業資産の引き渡しが行われます。
この一連の手続きを「クロージング」と呼びます。

クロージング完了時点で経営権が買い手企業に正式に移転し、買収の法的手続きが完了します。

企業買収の流れ④:統合フェーズ(PMI)

クロージングによって法的な手続きが完了しても、M&Aが成功したとは言えません。
買収によって期待したシナジー効果を創出するためには、両社の経営方針、業務プロセス、組織文化などを融合させる「統合プロセス(PMI:Post Merger Integration)」が不可欠です。

PMIの成否が、M&Aの最終的な成功を決めると言っても過言ではありません。

PMI(経営統合)計画の策定

PMIはクロージング後に始めるのではなく、最終契約の交渉段階から計画的に準備することが重要です。

経営体制、業務プロセス、人事制度、ITシステム、企業文化など、多岐にわたる領域で統合計画を策定します。特に、統合後100日間で達成すべき目標を定めた「100日プラン」を作成することが一般的です。

PMIの実行(100日プランなど)

クロージング後、速やかに策定したPMI計画を実行に移します。特に初期段階である100日プランは、従業員の不安を払拭し、統合の方向性を明確に示す上で非常に重要です。

経営陣がリーダーシップを発揮し、従業員と連携しながら計画を実行することが求められます。

経営体制・業務プロセスの統合

役員体制や組織構造、意思決定プロセスなどを一本化します。
また、購買、生産、販売、経理といった各業務プロセスについても、重複をなくし、より効率的な方法へと統合・最適化を図ります。

人事制度・企業文化の統合

評価制度や報酬体系、福利厚生といった人事制度の統合は、従業員のモチベーションに直結するため、特に慎重に進める必要があります。また、異なる企業文化を持つ従業員同士が一体感を醸成できるよう、ビジョンや価値観の共有を促進する施策も重要です。

ITシステムの統合

会計システムや人事システム、顧客管理システムなど、両社で利用しているITシステムを統合します。システムの統合には多大なコストと時間がかかる場合があるため、計画的な移行が求められます。

関係者への情報開示

PMIを進めるにあたり、従業員、取引先、顧客、株主といったステークホルダーに対して、適時適切に情報開示を行うことが重要です。

特に従業員に対しては、統合の目的や今後の方向性を丁寧に説明し、不安を取り除くことで、人材の流出を防ぎ、円滑な統合を促進します。

PMIはM&Aの成否を分けるプロセス。重要性や必要な期間を解説
用語説明
PMIはM&Aの成否を分けるプロセス。重要性や必要な期間を解説

M&Aの成功の鍵を握るのは『PMI(統合作業)』です。急激な統合は従業員の混乱を招くため、現状を把握しながら計画的に進めていく必要があります。100日プランの立て方やPMIの準備を始める適切なタイミング・期間について解説します。

企業買収の代表的な手法(スキーム)

買収の形態は一つではありません。株式会社を買収する場合は株式の取得が一般的ですが、ほかにも買収のスキームがあります。代表的な手法を確認しておきましょう。

株式取得

買収する企業の株式を取得するには、いくつかの方法があります。

一般的には、発行済株式を買い手に譲渡する「株式譲渡」が用いられます。
また、新たに株式を発行して買い手に割り当てる「新株引受」も採用されることがあります。

また、買い手が買収先の企業を完全に支配したい場合には、『株式交換』または『株式移転』が用いられるケースがあります。買収側が相手の株式を全て交換取得することで、100%の完全支配と子会社化が可能です。

その他に TOB(公開買付)やMBO(経営陣による買収)といった方法もあります。
TOBは公開買い付けの手法で、株式を売ってくれる株主を募ります。
MBOは自社役員による株式の買い付けです。

株式譲渡とは?メリットデメリットから手続きのポイントまで紹介
手法
株式譲渡とは?メリットデメリットから手続きのポイントまで紹介

株式譲渡は中小企業のM&Aで多く用いられる手法です。手続き後は会社の経営権が買い手側に移りますが、会社自体は存続します。買い手と売り手にはどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?手続きの流れや譲渡所得税の計算方法も解説します。

事業譲渡

事業譲渡は、売り手企業の事業の一部または全部を買い手に譲渡する方法です。
特に売り手が複数の事業を行っており、一部の事業だけを売却したい場合によく採用されるスキームです。

多くの場合、会社を丸ごと売却するわけではないため、事業を譲渡しても売り手側の企業はそのまま残ります。売り手企業は事業を売却した代金を受け取り、利益として計上する仕組みです。

譲渡対象は事業全体に限らず、土地・建物といった有形資産や、ノウハウなどの無形資産も含まれます。
売り手の事業譲渡の利益は、売り手の主体者である会社に入るので法人税の課税対象です。

事業譲渡とは何か?売り手側のメリット・デメリットや注意点を紹介
手法
事業譲渡とは何か?売り手側のメリット・デメリットや注意点を紹介

会社の事業を売却するときに利用する『事業譲渡』とは、何なのでしょうか。行う目的や意味を解説します。会社の譲渡と何が異なるのか、事業譲渡特有のメリット・デメリットも知っておきましょう。事業譲渡の流れや、実際の事例も紹介します。

会社分割

会社分割

会社分割は事業を分割して別の企業に承継する方法で、『吸収分割』と『新設分割』があります。前者は買い手企業へ事業の権利を包括的に移すやり方で、後者は新しく設立した企業に包括的に権利を移します。

吸収分割では、承継する企業が対価として株式や金銭をもとの会社に渡します。
新設分割では、新設会社の株式を発行して対価とします。

株式を対価にする場合は、子会社化やグループ企業同士の事業承継を目的としているケースが多くなります。事業の一部を他社に売却する際には、金銭でやり取りされるのが一般的です。

 組織再編行為の「会社分割」とは?吸収分割や新設分割を行うケース
用語説明
組織再編行為の「会社分割」とは?吸収分割や新設分割を行うケース

『会社分割』は、会社の事業構造を大きく変える際に用いられる『組織再編行為』の一種です。吸収分割と新設分割の2種類があり、活用に適したシチュエーションが異なります。事業譲渡との違いや会社分割にあたっての注意点を解説します。

企業買収の各スキームの方法と手順

買収の代表的なスキームである『株式取得』『事業譲渡』『会社分割』について、それぞれの手順を簡単に解説します。概要と具体的な手続きを理解した上で、最適なスキームを選択しましょう。

株式取得の手続き

買収する企業の株式を取得する場合、上場企業か非上場企業かによって方法が異なります。

上場企業の場合

上場企業であれば株式は公開されているので、売り手と買い手の双方の合意で買収が実行される場合は、『TOB(株式公開買い付け)』が主に利用されます

上場企業の一般的な株式取得の手続き

TOBでは、買収先の企業の株式を保有している株主に対し、買い付けの期間や株式数、価格などを告知し、売却を呼びかけます。株式を売却してもよいと考える株主は、証券取引所を通さずに買い手企業に株式を売却します。具体的な流れは以下を参考にしましょう。

 敵対的買収の方法。目指す株式の保有割合、TOBの流れなど
手法
敵対的買収の方法。目指す株式の保有割合、TOBの流れなど

当事者の合意なしで行われる『敵対的買収』は、株式公開買付(TOB)によって行われます。発行済み株式の何割を取得すれば、企業買収が成立するのでしょうか?TOBの流れや敵対的買収のリスクについても解説します。

M&Aの株式譲渡ではSPAの作成が必須。作成のポイントを確認
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M&Aの株式譲渡ではSPAの作成が必須。作成のポイントを確認

M&Aで出てくる『SPA』とは、株の相対取引で締結される株式譲渡契約書のことです。契約書には、交渉で合意した内容のほかに株主名簿の書換やクロージング条件、表明保証などを細かく盛り込む必要があります。作成時のポイントや注意点を解説します。

非上場企業の場合

一方、非上場企業は株式譲渡の手続きを経るのが一般的で、多くの場合、譲渡制限付き株式を買い手企業に譲渡します。譲渡制限を付ける理由は、株式が予期せぬ相手に保有される事態を避け、経営権の分裂を防ぐためです。

非上場企業の一般的な株式取得の手続き

譲渡の手順としては、まず事業を譲渡する非上場企業のオーナーが、株主総会や取締役会に対して株式譲渡承認請求を行います。

請求が承認されると、株式の譲渡人と譲受人である買い手企業との間で株式譲渡契約が締結されます。その後、株主の名義が買い手企業に変更されると、譲渡手続きは完了です。

譲渡制限株式の目的と譲渡の流れ。不承認の場合における手続きも
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譲渡制限株式の目的と譲渡の流れ。不承認の場合における手続きも

株主は本来、保有する株式を自由に譲渡できますが、会社の定款に特別な定めがある場合は、株式の譲渡が制限されます。株式を他者に譲りたい場合は、どのような手順を踏めばよいのでしょうか?譲渡制限株式の目的や手続きの流れを解説します。

非上場株式の譲渡は契約前にまず内容確認。譲渡承認など手続きを解説
手法
非上場株式の譲渡は契約前にまず内容確認。譲渡承認など手続きを解説

非上場株式の譲渡を実施するには、気を付けるべきポイントが複数あります。株式譲渡を実施する際のトラブルを避けるため、確実にチェックしましょう。非上場株式の株価算定方法や、譲渡時の準備・手続きも解説します。

事業譲渡の手続き

事業譲渡の流れは株式譲渡と大きく変わりません。
候補先のリストをもとに条件を絞り込み、相手先を選定することから始まります。

買収したい企業が決まった後は、当事者同士で面談をして、事業譲渡の範囲や価格を定めた『基本合意書』を締結する流れです。

ただし、一切の権利義務を包括的に譲り受ける株式譲渡とは異なり、事業譲渡は『個別承継』です。引継ぐ債権や債務が選択できる分、事前調査は入念に行う必要があるでしょう。その後、取締役会の決議などを経て譲渡契約を結びます。

事業売却の方法を解説。事業譲渡の利点、流れ、税金などを把握しよう
手法
事業売却の方法を解説。事業譲渡の利点、流れ、税金などを把握しよう

事業売却は会社が持っている事業の全部や一部を譲渡する取引です。その他のM&Aスキームとの違いや、メリット・デメリットを把握し、自社に適切な取引を検討しましょう。事業譲渡の基本的な流れや、事業価値の算定方法も紹介します。

会社分割の手続き

会社分割の場合、まずは分割される企業と事業を承継する企業とで、分割契約を結ぶ必要があります。取締役会を設置している場合は、事前に承認を得ておかなければいけません。

分割契約の内容には、分割資産や債務、雇用契約などの権利義務関係や、承継する株式、効力の発生日などが含まれます。
その後、取締役会の決議や株主総会の特別決議を経る必要があります。
債権者から異議申し立てがあった場合の対応も求められます。

会社分割の仕組みや押さえておくべきポイントに関しては、以下の記事でも解説しています。こちらを参考にしてください。

 組織再編行為の「会社分割」とは?吸収分割や新設分割を行うケース
手法
組織再編行為の「会社分割」とは?吸収分割や新設分割を行うケース

『会社分割』は、会社の事業構造を大きく変える際に用いられる『組織再編行為』の一種です。吸収分割と新設分割の2種類があり、活用に適したシチュエーションが異なります。事業譲渡との違いや会社分割にあたっての注意点を解説します。

株主総会は何をする場?株主の権利や必要な手続きを簡単に解説
用語説明
株主総会は何をする場?株主の権利や必要な手続きを簡単に解説

株式会社の最高意思決定機関である『株主総会』は、いつ・誰が・どのようにして開催するのでしょうか?決議には大きく3種類あり、決議内容の重要度に応じて議決方法が変わります。株主総会の不開催により引き起こされるリスクも把握しておきましょう。

株主総会における特別決議とは?株式の保有割合が重要
用語説明
株主総会における特別決議とは?株式の保有割合が重要

重要度の高い議案について審議する際は、株主総会の特別決議が実施されます。株式の保有割合や株式の種類によっては拒否権が行使でき、提起された事案が覆される場合もあります。特別決議の詳細と株式との関係性について解説します。

買収の目的は何か?

買収の目的は、最終的には企業の競争力を強めることですが、買い手側にとっては複数の理由が絡み合う場合もあるでしょう。買収の主な理由としては、以下のものが挙げられます。

経営資源を獲得するため

安定した利益を上げる事業体として、すでに確立されている企業を買収すれば、その企業が所有する経営資源を全て買い手が使えるようになります。オフィスや工場などの有形の資源だけでなく、売り手企業が培ってきたノウハウや従業員も手に入ります。

これから新たな領域に進出しようと考えている企業や、自社の競争力を強めようとしている場合に役立つでしょう。
同じ分野で事業を営む企業を買収する場合、工場の拡大や商品ラインナップの拡充も可能です。

経営資源が少ない企業でも、買収を重ねることで事業の幅を広げられます。
十分な資金があれば、これまで経験のない分野にも進出できるでしょう。
実際、買収した事業分野に新たに参入したり、経営の多角化のために事業買収をしたりする企業は多くあります。

組織再編のため

複数の事業の一元化や、ノウハウの統合による競争力強化などのために、組織再編を図る目的で買収に踏み切る場合もあります。

二つの会社がグループ企業になることで、人事異動や経営資源の移動がスムーズになるでしょう。事業部の統合も可能です。

また、企業としての規模が大きくなると、一つの事業だけではリスクが伴います。例えば旅行業が下火になった場合、旅行業のみを生業としていると、経営が立ち行かなくなる可能性があります。

極端な例ではありますが、複数の事業を展開していれば、一つの事業の業績が下がったときに他の事業でカバーできます。大企業が買収に踏み切る場合は、経営リスクの低減を目的とすることも少なくありません。

赤字会社を買収するメリットと注意点。価格の決め方や成功例も解説
具体的事例
赤字会社を買収するメリットと注意点。価格の決め方や成功例も解説

企業買収は黒字会社が対象になるのが一般的ですが、赤字会社が買収されるケースも珍しくありません。赤字の要因はさまざまで、資源さえ投下すれば黒字に成長する企業もあります。成功事例とともに、赤字会社を買収する際のポイントを解説します。

リストラクチャリングの意味と目的。M&Aとの関係も解説
手法
リストラクチャリングの意味と目的。M&Aとの関係も解説

リストラクチャリングは、『組織の再構築』を意味する言葉です。不採算部門を売却・縮小し、経営資源をコア事業に集中投下すれば、経営の合理化が図れます。リストラクチャリングの事例やM&Aとの関係性についても解説します。

企業を買収するメリット

買収によって事業を拡大するための時間の節約や、競争優位性を高める効果などが期待できます。買収のメリットを最大化するには、相手企業の選定や企業価値の確認が欠かせません。まずは、買収における一般的なメリットを見ていきましょう。

事業同士のシナジーが発揮できる

買収した事業と自社の既存の事業とを組み合わせることで、相乗効果(シナジー)による生産性のアップや事業の効率的な成長が期待できます
不足している経営資源を獲得でき、弱みを克服できるのもメリットです。

シナジー効果を高めるには、相手企業の選定が重要です。自社の強みや得意領域を活かせる分野を対象にする必要があります。

赤字の企業を買収する際には、譲渡金額を低く抑えられる場合が多いですが、将来的に黒字に転換できるのか慎重に判断しなければいけません。

 シナジー効果とは?意味や事例、譲渡対価への影響について解説
用語説明
シナジー効果とは?意味や事例、譲渡対価への影響について解説

多くの企業は『シナジー効果の創出』をM&Aの目的の一つとして掲げます。日本語では相乗効果を意味しますが、具体的にはどのような事例を指すのでしょうか?対義語である『アナジー効果』の意味や、シナジー効果に関連するフレームワークも紹介します。

経営のリスクを分散できる

企業は継続的に成長し、利益を生み出していく必要があります。しかし、単一の事業のみを営んでいる場合、成熟期以降の事業では成長がほとんど見込めず、徐々に生み出せる利益が小さくなっていきます。

また、環境や時代の変化などで、経営の屋台骨が揺らいでしまう可能性もあるでしょう。そういった経営上のリスクを買収によって軽減できます。

自社と異なる業界の企業を買収した場合、事業の多角化により、新たな市場が開拓できます。収益の柱を二つ、三つと増やすことで、経営の安定化が見込めるほか、事業や製品のライフサイクルにおけるリスクの分散も可能です。

また、買収による技術やノウハウの獲得によって、自社の弱点の穴埋めや既存事業の強化ができるのも大きなメリットです。売り手側の顧客リストや仕入れ先リストが手に入れば、よりスピーディーに事業を拡大できるでしょう。

スケールメリットを獲得できる

同じ分野の企業を買収する場合でも、効率的に既存事業の拡大が可能となり、スケールメリットを獲得できます。M&Aを活用したスピーディーな成長戦略の実行により、業界トップレベルの地位を確立した企業は少なくありません

ライバル企業を買収することで、市場競争に勝ち残る戦略を選択する企業は多く、収益力の低下した企業が、業界トップ企業に売却を持ちかけるケースもあります。

時間とコストを節約できる

自社で一から新規事業を立ち上げるとなると、どうしても準備に時間がかかります。物理的な資源だけでなく、人員の確保も必要でしょう。新たな知識の習得も求められます。

しかし、当該分野の企業を買収することで、物資や人員の確保が簡単にできるようになり、時間の節約につながるでしょう。買収にコストはかかるものの、将来にわたってそれ以上のリターンを得られる可能性があります。

ただし、新規事業の立ち上げにかかるコストと買収にかかるコストを比較した上で、どれぐらいの期間で投資費用を回収できるか、試算してみることが大事です。買収に失敗する例も多いので、事前調査と費用対効果による慎重な判断が求められます。

M&Aの買い手の目的は?メリット・デメリットと流れを徹底解説!
事業承継
M&Aの買い手の目的は?メリット・デメリットと流れを徹底解説!

自社の成長戦略としてM&Aの成功の鍵は、目的を明確にし、相乗効果が見込める相手を選び、手順に沿って着実に進めることです。M&Aにおける買い手の主な目的等を明確にし、M成長を加速させる具体的な第一歩を踏み出しましょう。

シナジー効果とは?意味や事例、譲渡対価への影響について解説
用語説明
シナジー効果とは?意味や事例、譲渡対価への影響について解説

多くの企業は『シナジー効果の創出』をM&Aの目的の一つとして掲げます。日本語では相乗効果を意味しますが、具体的にはどのような事例を指すのでしょうか?対義語である『アナジー効果』の意味や、シナジー効果に関連するフレームワークも紹介します。

企業を買収する際の注意点

買収には注意すべき点もあります。選択を誤ると買収のメリットを活かせないばかりか、大きな損失を被る結果になりかねません。企業の買収では、以下のリスクがあることを、よく認識しておく必要があります。

買収先との不和や人材の流出

敵対的買収を選択した場合は、相手企業との間に軋轢が生まれやすくなります。無理に買収を強行しても、事業の統合がうまく進まないケースが多いでしょう。経営陣同士の話し合いがうまく進まない場合には、買収を断念する必要もあります。

また、たとえスムーズに買収が成立した場合でも、注意すべき点はあります。買収される企業に勤めている従業員は、労働条件が大きく変わる可能性があるため、優秀な人材が離職する恐れがあります。

さらに望まない人事異動によって、一時的にせよ仕事の生産性が落ちたり、モチベーションが低下してしまったりする従業員が出るかもしれません。

簿外債務や偶発債務の発覚

企業の買収にあたっては、相手の会計帳簿をチェックして債務を確認するのが一般的です。しかし、帳簿に記載されていない債務(簿外債務)が存在するケースがあるので、注意しなければいけません

簿外債務の代表例としては、計上されていない買掛金をはじめ、従業員への未払い給与や残業代、退職一時金などが挙げられます。従業員に支払う金銭や、過去のトラブルによる債務が残っていないかは、事前にしっかりと確認しておきたいポイントです。

また、買収の段階では予期しなかった債務が発生するリスクもあります。過去に販売した商品のリコールや取引先・従業員からの損害賠償請求などの偶発的な債務です。買収後に予期せぬ費用負担が発生する可能性がないか、事前によく調べておく必要があります。

 簿外債務の危険性とは?買い手が把握しておかなければならない理由
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簿外債務の危険性とは? 買い手が把握しておかなければならない理由

簿外債務とは、帳簿に記載されていない債務です。M&Aで中小企業を買収する際には、特に簿外債務に注意しましょう。M&A完了後に簿外債務があると判明し、思わぬ損害を被るケースもあります。簿外債務の具体例や損害を防ぐ方法を確認しましょう。

偶発債務と簿外債務の違いは?具体例、買収価格との関係を解説
用語説明
偶発債務と簿外債務の違いは?具体例、買収価格との関係を解説

M&Aの交渉段階で買い手が注意すべきなのが、対象会社の『偶発債務』です。企業価値の算定や今後の事業計画に大きな影響を与えるため、契約締結前にリスクを洗い出す必要があります。偶発債務の種類や発覚した場合の対処法について解説します。

「のれん」の減損リスク

『のれん』とは目に見えない企業的価値のことで、人的資産や数値で表せないノウハウ・ブランドなどが含まれます。買収時の買取価格と企業の純資産評価額に差額が生まれるのは、対象企業の『のれん』が買収価格に上乗せされるためです。

「のれん」とは人的資産やブランド力、ノウハウなど数値化しにくい企業価値を指します。
買収時の買取価格と企業の純資産評価額に差額が生まれるのは、対象企業の『のれん』が買収価格に上乗せされるためです。

想定よりも「のれん」の価値が低く、思うようなメリットが得られなかった場合は、減損損失を計上する必要があります。
事実、高額な『のれん代』を計上したため、買収後に大きな損失を被った企業は少なくありません

『のれん』の価値が低くなる原因としては、買収後に想定通りの収益が上げられない場合や、人材流出や買収後のトラブルなども考えられます。

 のれん代(営業権)の意味と営業権との違いは?計算方法、減価償却も解説
用語説明
のれん代(営業権)の意味と営業権との違いは?計算方法、減価償却も解説

のれん代はM&Aにおいて買収金額と買収された会社の純資産との差額です。営業権と呼ばれることもあります。のれん代の計算方法や、高くなる理由も見ていきます。のれん代について知れば、M&Aを適正価格で進めやすくなるはずです。

買収された会社に起きる変化。経営者や社員の待遇は買い手次第?
具体的事例
買収された会社に起きる変化。経営者や社員の待遇は買い手次第?

他社に会社や事業が買収されると、買収された側(売り手)にはさまざまな変化が生じます。経営陣・社員の待遇や、取引先との関係性はどうなるのでしょうか?株式譲渡と事業譲渡を例に挙げ、買収後に起きる変化について解説します。

買収にかかる費用の相場

企業の買収にかかる費用は、相手企業の価値によって大きく変わります。大まかな費用を把握するために、買収価格の決まり方や、買収の手続きにかかる費用について知っておきましょう。

買収価格はどう決まる?

買収価格はデュー・デリジェンスと企業価値評価、売り手との交渉を基に具体的な価格が決められます。買収価格を算定する方法として、主に『インカム・アプローチ』『コスト・アプローチ』『マーケット・アプローチ』の三つが有名です。

  • インカム・アプローチ:買収事業の将来的な収益を予測する方法
  • コスト・アプローチ:貸借対照表の純資産の項目を基準にする方法
  • マーケット・アプローチ:類似企業の市場価格などと比較する方法

これらのうち、中小企業の場合は、大まかな相場の計算にコストアプローチが用いられるのが一般的です。例えば、対象企業の時価純資産額に、過去2~3年間の営業利益の平均額を合わせた式で計算されます。

 M&Aの価格の相場はいくら?一般的な評価方法や価値を決める要素
具体的事例
M&Aの価格の相場はいくら?一般的な評価方法や価値を決める要素

M&Aの成約価格の相場は、業種や規模によって異なります。価格はどのように決まるのでしょうか?中小企業のM&A価格を決める際、参考として用いられる算出方法や、価格を左右する要素を確認しましょう。買収の可否の判断に役立つ指標も紹介します。

買収の手続きにかかる費用は?

買収手続きには上記の事業評価額に加えて、以下のように買収に関わる人の人件費や仲介業者、アドバイザーへの手数料や報酬、税金などがかかります。

  • デュー・デリジェンスの費用:小規模な企業買収案件で50万~300万円程度
  • 仲介業者に支払う手数料やアドバイザリー費用など:業者によって異なる
  • 税金:株式譲渡の場合は買い手はなし、売り手は譲渡所得の20.315%(所得税および復興特別所得税が15.315%・住民税が5%)、事業譲渡の場合は消費税10%(譲渡側は法人税)

M&Aの仲介業者に支払う各種手数料や報酬は業者によって異なり、成功報酬は取引金額に応じて計算されます(レーマン方式)。手続きにかかる費用を全て合わせると、数百万円から数千万円の費用がかかるでしょう

なお株式譲渡の場合、事業の譲渡側は株券の発行費用がかかる場合もあります。

 M&Aで発生する手数料はいくら?買収コストに含めて予算を考えよう
具体的事例
M&Aで発生する手数料はいくら?買収コストに含めて予算を考えよう

M&Aの費用において大きな部分を占めるのが、M&A仲介会社への手数料とデュー・デリジェンス費用です。案件探しから成約までには、どれほどのコストがかかるのでしょうか?手数料を買収コストに含める重要性や、税務上の取り扱いについても解説します。

M&Aはどのような流れで進むのか。期間、費用、必要となる書類
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M&Aはどのような流れで進むのか。期間、費用、必要となる書類

M&Aは一定のプロセスに基づいて実行されます。初めて会社を買収する人は、M&Aのフローやかかる期間、取り交わされる契約書の種類を把握しておきましょう。マッチングサイトで売り手を効率よく見つけるコツや、デュー・デリジェンスの重要性も解説します。

買収を成功させるためのポイント

買収を成功させるには事前準備が欠かせません。どの企業をどの程度の価格で買い取るのかはもちろん、経営陣同士の話し合いにも時間をかけましょう。企業価値の評価を誤ると、思ったような結果が出ないこともあります。

M&A戦略の明確化

買収の目的を明確にした上で、M&Aの戦略を構築する必要があります。利益を増やしたいのか、経営リスクの分散を考えているのかなどによって、買収すべき企業やそのためのコストが変わるのは当然です。

自社の事業戦略との整合性を前提として、買収によって具体的に何を得るのか、どの程度コストがかかり、そのための予算はどれぐらい用意できるかなどを明らかにして、M&Aの戦略を策定しましょう。入念な市場調査も欠かせません。

買収すれば、企業は自ずと成長するという考え方ではなく、戦略に基づいて慎重に買収する企業を選定する必要があります。

トップ同士の面談をしっかり行う

買収を行う前には、基本的に経営陣同士の面談の場が設けられます。敵対的買収では話し合いが行われないケースもありますが、基本的に面談の時間は長く取り、お互いの考え方や将来のビジョンなどを確認しましょう。

買収の成否は面談時の交渉によっても変わってきます。うまく交渉すれば、買収にかかるコストの節約も可能です。買収後のトラブルや人材の流出も避けられるでしょう。

面談や交渉では、真摯かつ誠実な態度が求められます。条件のすり合わせだけでは同意が得られない可能性も考慮し、相手とよい関係を築きたいという気持ちを持つことが大事です。

買収企業の価値評価は正確に

企業の価値評価を誤ると、買収後のトラブルや損失につながります。単に帳簿を眺めるだけでは、隠れた債務や将来起こりうるリスクに気づけない可能性があるので、不明点や疑問点はしっかりと確認することが大事です。

相手の説明に明確な根拠はあるか、データの裏付けはあるかを確認し、トラブルの兆候がないか見極めましょう。面談や買収手続きを通して、相手の企業を深く知ることが、正しい価値の把握につながります。

買収後のPMIにも注力する

事業譲渡後の統合プロセス(PMI)にも注力しなければ、結局は買収が失敗に終わってしまう可能性が高くなります。クロージング後に慌てて統合計画を策定するのではなく、基本合意書を締結する前後から、ある程度はPMIの指針を決めておきましょう。

PMIはまず、買収した事業をどれぐらいの期間で既存事業に統合するのか検討し、そのための統合計画(ランディング・プラン)を策定します。クロージング後の3~6カ月の間に達成すべきプロセスを明確にして、実行プランに落とし込みましょう。

一般的には『100日プラン』『180日プラン』といったように計画し、やるべきタスクの洗い出しと実行すべきアクションを整理します。

買収後に想定していなかった問題が発生する場合も珍しくないので、臨機応変に対応できる体制にしておくことも大事です。

企業価値評価で用いられるDCF法。将来のFCF、TVの算出とは
手法
企業価値評価で用いられるDCF法。将来のFCF、TVの算出とは

DCF(Discounted Cash Flow)法は、将来のキャッシュ・フローを現在の価値に割り引いて、企業価値を算定する方法です。精度の高い事業計画書を使用することで、企業価値をより適正に判断できます。DCF法で企業価値を算出する流れと大まかな計算方法を解説します。

バリュエーションの目的とポイント。三つの手法の違いを理解しよう
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バリュエーションの目的とポイント。三つの手法の違いを理解しよう

M&Aにおけるバリュエーションとは、買収対象の企業価値を評価することです。売り手と買い手は、その評価をもとに価格交渉の妥協点を探っていきます。バリュエーションの目的と、評価に用いられる三つの手法について詳しく解説します。

PMIはM&Aの成否を分けるプロセス。重要性や必要な期間を解説
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PMIはM&Aの成否を分けるプロセス。重要性や必要な期間を解説

M&Aの成功の鍵を握るのは『PMI(統合作業)』です。急激な統合は従業員の混乱を招くため、現状を把握しながら計画的に進めていく必要があります。100日プランの立て方やPMIの準備を始める適切なタイミング・期間について解説します。

買収の成功事例

企業買収に成功した事例は、有名企業から中小企業、個人事業に至るまで多くあります。ここでは、特に、買収によって販路の拡大や事業の多角化、新たな顧客の創出に成功した事例を紹介します。

また、以下の記事でも多くの成功事例を紹介しているので、こちらも参考にしてみましょう。

 M&Aの成功事例から何が学べる?共通点、戦略の重要性を確認
具体的事例
M&Aの成功事例から何が学べる?共通点、戦略の重要性を確認

M&Aに成功する企業や個人は、案件探しや交渉段階において何を重要視しているのでしょうか?実際の成功事例を見ることで、成功のヒントやリスク回避のポイントが分かります。M&Aの成功・失敗の定義についても解説します。

日本たばこ産業(JT)

日本の大手たばこメーカー『日本たばこ産業(JT)』は、1999年に米国の大手たばこメーカー『RJRI』を買収しました。目的は海外での販路を築くためです。

RJRIには、『ウィンストン』や『キャメル』など有名な銘柄がそろっており、当時77億9000万ドルで買収が実行され、JTインターナショナルとして再編されました。

当初は利益が出るまでには数年を要しましたが、明確な目的設定と綿密な計画によって、海外で幅広い販路を構築しています。

楽天

『楽天市場』をはじめ、インターネット関連事業で知られる楽天グループは、買収によって事業を拡大してきた企業です。2004年に『マイトリップ・ネット』を100%子会社化し、旅行予約サイト『楽天トラベル』に事業統合しました。

また、証券会社の『楽天証券』も、『DLJディレクトSFG証券』の買収によって生まれた事業です。2005年には『KCカード』を買収し、楽天カードの発行を開始しています。

現在では、買収で獲得した多くの事業が有名なサービスに成長しています。買収によって事業の多角化を成し遂げた成功例といえるでしょう。

クラウドサーカス

累積導入実績38,000以上のマーケティング・営業支援ツール『Cloud CIRCUS』を提供しているクラウドサーカス社では、2020年にチャットボットのサービスをM&Aによって買収し、新たにツールの提供を始めました。

これまで以上にSaaS事業への投資を加速するため、M&Aによって『Cloud CIRCUS』のサービスラインナップを増やす計画を立てており、シナジーを発揮できるツールやサービスの積極的な買収に乗り出しています。

さらにチャットボットの買収・運用に成功した後には、コロナ禍でオフライン集客の要だった展示会の出展ができない企業のために、オンライン展示会プラットフォームを買収しました。

ユーザーがゲーム感覚で展示会を巡れるサービスを提供することで、コロナ禍で売上げの低迷に悩むクライアントに対して、新規顧客の獲得の場を積極的に提供しています。

クラウドサーカスが売上ゼロのオンライン展示会プラットフォームを買収!SaaS事業を主軸とする買い手の狙いとは?
M&A・買収事例インタビュー
クラウドサーカスが売上ゼロのオンライン展示会プラットフォームを買収!SaaS事業を主軸とする買い手の狙いとは?

マーケティング領域においてクラウドツールの活用が進んでおり、事業者にとっては「顧客が求めるツールをいかに早く提供するか」が問われています。

企業買収の失敗事例も確認しておこう

買収に成功する企業がある一方で、失敗に終わるケースも少なくありません。失敗といわれた過去の買収事例も紹介します。失敗事例を知ることで、検討中の買収計画が妥当か判断する基準にもなるでしょう。

キリンホールディングス

酒類を含む飲料メーカーの『キリンホールディングス』は、2011年にブラジルのビールメーカー『スキンカリオール』を買収しています。当時の買収価格は3,000億円です。

スキンカリオールはブラジルの大手企業として知られていましたが、その後の景気悪化を受けて業績が悪化しています。買収後に赤字が続き、海外事業としての利益はほとんどない状況です。

数年間は『ブラジルキリン』として経営を続けたものの、結局2017年にオランダの『ハイネケン』に770億円で事業を売却し、大きな損失が生まれました。買収後の予期せぬ状況の変化によって、失敗に終わってしまった事例です。

LIXIL

住宅設備メーカーのLIXILは、2014年に南アフリカの住宅関連会社『グローエ・ドーン・ウォーターテック』を買収しました。

買収自体は無事に完了したものの、グローエの子会社である『ジョウユウ』も同時に取得したLIXILは、翌年同社の不正会計によるトラブルで、大きな損害を出してしまいました。子会社の状況を正確に把握できていなかったことが原因です。

買収前に子会社を含めた企業価値の把握や、面談時の確認ができていれば防げた事例でしょう。特に海外企業の買収は失敗する可能性が高いので、関連会社を含めて徹底した事前調査が求められます。

 M&Aの失敗事例からトラブル対処法を学ぶ。準備と調査の不足は禁物
具体的事例
M&Aの失敗事例からトラブル対処法を学ぶ。準備と調査の不足は禁物

日本におけるM&Aの成功率は、かなり低いとされています。M&Aの成功・失敗の定義は難しい面がありますが、想定していた効果が得られなければ、少なくとも成功したとはいえません。多くの失敗事例に触れ、トラブルやリスクを回避する方法を学びましょう。

TRANBIを利用した企業買収の事例

企業買収というと大企業の大規模な取引を思い浮かべがちですが、M&AプラットフォームTRANBI(トランビ)では、中小企業や個人事業主によるスモールM&Aも活発に行われています。ここでは、TRANBIを活用して企業買収を成功させた3つの事例について、課題・活用方法・結果を簡潔にご紹介します。

サラリーマンが半年で企業買収した事例

買収の背景

インターネット広告会社で新規事業企画を担当していたSさんは、起業志向がある一方、ゼロから事業を立ち上げる難しさと、打ち込める具体的なテーマが見つからないことに課題を感じていました。
『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』を契機に個人M&Aを知り、著者のオンラインサロンで一般の会社員や主婦も挑戦している実例に触れて自信を得ました。

TRANBIの活用方法

TRANBIに登録後は、アドバイスを踏まえ交渉数を増やし、予算500万円以下×実店舗に絞って探索。
鎌倉のセルフホワイトニング店は、Google評価やSEOの強さ、競合不在、広告未着手という伸び代から有望と判断しました。

150万円の価格差は交渉で解消しました。資金調達では日本政策金融公庫向けに30枚のプレゼン資料を用意し信頼を獲得し、開示不足は自ら数字を整理して補いました。
面談では未経験を正直に伝え、「人柄を気に入ってもらえたこと」が選定理由となりました

結果

興味を持ってから5か月で成約しオーナーに就任しました。
営業日やブース増設で売上は前月比2.5倍へ。店長が運営・サービス改善、本人が集客・インフラ整備を担う2名体制に。
お金への感覚が磨かれ本業提案の質も向上。
将来は多店舗化と事業再生にも挑戦する展望です。

※「予備知識のない普通のサラリーマンでも半年でM&Aはできる!」31歳でホワイトニングサロンのオーナーに就任

1ヶ月で成約したスモールM&Aの事例

買収の背景

Sさんは、事業立ち上げの時間を短縮し、リスクを減らす目的でM&Aを検討しました。
「良いものを作るが売りが弱い会社」「IT活用で生産性を高められる会社」との連携で自社の強みを活かしたい一方、当初は探索の軸が曖昧で選別と交渉が難航していました。

TRANBIの活用方法

TRANBIでの探索と交渉を重ねる中で「M&Aの軸」を明確化し、意思決定と差別化が大幅に向上しました。
成約案件は軸に合致し、売り手の誠実さも決め手でした。

小規模ゆえ精緻なDDが難しいため「人」を重視。実名で早期に交渉を申し込み、オンライン面談からわずか1週間後に現地訪問しました。

手土産でのアイスブレイク、質問はリスト化して負担軽減、提案はディスカッション型で背景理解を深めました。
最悪時の最大損失額を見積もるなどリスク管理も徹底。
自治体のIT誘致策等、承継以外の補助金活用も視野に入れ、地域ネットワーク拡大の効果も得ました。

結果

誠実で迅速な対応と明確な軸により、実質1ヶ月で成約。
買収した養殖事業は単体で進めつつ、今後はIT×福祉×養殖を組み合わせ、より強固なモデル構築を目指しています。
スモールM&Aにおける「軸」と「人」の重要性を示す事例です。

※M&Aは、人対人。デジタル世代のマーケのプロが大事にしたM&Aの「軸」とは?

遠隔地の企業を買収した事例

買収の背景

四国で旅行代理店を営むMさんは、過去に手放したバス事業を再びグループに取り戻したいと考えていました。
ただし地元での買収は反発リスクがあり、コロナ禍という不確実な環境下での意思決定も課題でした。

TRANBIの活用方法

TRANBIでバス事業を中心に運送・宿泊もチェックしていると、コロナ禍で売却を決断されたバス事業の案件を見つけました。
掲載後に段階的値下げが進み、当初の3分の1になった時点でMさんは交渉に参加しました。,br> 仲介会社と協議し、早期決断を優先して当初提示の8分の1で合意しました。
固定費1〜2年分の追加値引き提案は、売り手が運転資金に充てたい意向を尊重し見送りました。

地元の反発を避け観光需要の拠点を広げるため、あえて遠隔地の甲信越のバス会社を選択。
旅行代理店と隣接業種で業務の勘所が分かっていたことも後押しになりました。
株式譲渡翌日に従業員説明会を開き、時間無制限の相談会を4〜5時間実施。
後日も現地に滞在し業務フローを整備し、給与以外の数値データを全面開示して納得感を高めました。

結果

コロナ禍を「掘り出し物」と捉え、当初の8分の1で甲信越の貸切バス会社を取得しました。
誠実な対話と情報開示で早期に信頼を構築し、志を同じくする部長のリーダーシップも得て、事業は早期に軌道に乗せることに成功しました。
今後は間接部門を四国に集約しつつ、北海道・関東・関西・九州・沖縄など主要観光地に基盤を持ち、人口が残るエリアで安定経営を目指す戦略です。

※M&Aの肝は引継ぎ先従業員への誠実な対応~購入金額が当初の8分の1に?!四国の旅行代理店が観光バス事業を買収

企業買収の流れに関するよくある質問

Q. 企業買収のプロセスで最も時間がかかるのはどのフェーズですか?

A. 案件によって異なりますが、一般的に交渉フェーズと買収後の統合フェーズ(PMI)に時間がかかる傾向があります。

交渉フェーズでは、候補先の選定からトップ面談、条件交渉、デューデリジェンスと多くのステップを踏むため、数ヶ月かかることが珍しくありません。
統合フェーズ(PMI)は両社の文化やシステムを融合させる段階で、買収目的を果たすために数年かかることもあります。

Q. 企業買収にかかる期間はどのくらいですか?

A. 買収の規模や複雑さ、当事者間の交渉の進捗状況によって大きく変動しますが、一般的には相談を開始してから最終契約の締結(クロージング)まで、半年から1年以上かかるケースが多いです。

検討・準備フェーズに1〜2ヶ月、交渉フェーズに3〜6ヶ月、最終契約フェーズに2〜3ヶ月が目安です。
ただし、これはあくまで一般的なスケジュールであり、より迅速に進む場合もあれば、交渉が難航してさらに長期化する場合もあります。

Q. 買収価格はどのように決まりますか?

A. 買収価格は、専門家による客観的な企業価値評価を基に算定されます。
企業価値評価には、将来の収益性に着目する「インカム・アプローチ」、純資産を基準とする「コスト・アプローチ」、類似企業との比較による「マーケット・アプローチ」など、様々な手法があります。

ただし、これはあくまで理論値です。最終的な買収価格は、この評価額を参考にしつつ、売り手と買い手の間の交渉によって、事業の将来性やシナジー効果への期待値なども加味されて決定されます。 M&A戦略はなぜ重要?自社の課題や目的、資金調達方法の整理を

中小企業M&Aを成功させるには?基本的な流れと注意点、事例を紹介
具体的事例
中小企業M&Aを成功させるには?基本的な流れと注意点、事例を紹介

近年は中小企業のM&Aが増えており、事業の買収・売却が目立っています。大手企業や海外企業のイメージがいまだに強いM&Aですが、今後さらに中小企業の案件も増えてくるでしょう。そこで中小企業向けに、M&Aの流れや注意点を解説します。

飲食店のM&Aは個人でも実現しやすい?相場、引き継ぎの流れなど
業種別M&A
飲食店のM&Aは個人でも実現しやすい?相場、引き継ぎの流れなど

昨今では飲食店においてもM&Aが活発化しています。今なぜ飲食店が人気なのか見ていきましょう。また今後を見据えて飲食店を買収する場合、どのような案件があるのでしょうか?実際に成立したM&Aの事例や、M&A実現までの流れも紹介します。

まとめ

企業買収は新たな経営資源の獲得や組織再編など、さまざまな目的で行われます。

買収の方法は株式の取得が一般的ではあるものの、一部事業の譲渡や会社分割が実行されるケースも珍しくありません。買収およびM&Aを成功させるには、明確な目的に基づいた戦略の構築と、相手企業の価値の見極めが必要です。

また、最近ではM&Aプラットフォームの台頭により、仲介会社やM&Aアドバイザーを通さず、M&Aを希望する会社が自ら主体的にM&Aを進める事例が増えています。今までは数百万円から数千万円ほど、かかっていた高額な手数料を支払わなくてもよいのが魅力です。

事業承継・M&Aプラットフォーム『TRANBI(トランビ)』では、数億円規模の大型案件から500万円以下の小規模案件まで多数掲載されています。月額有料プランに入れば成約手数料が不要で何回でも交渉、成約が可能です。

『事業承継・引継ぎ支援センターの最新案件情報』もサイト内でチェックできるため、効率よくM&Aの案件が探せるでしょう。『買いニーズ登録(売り手からのオファー受信設定)』という機能を設定しておけば、売り手からオファーを受けることも可能です。

買収先を検討しているならば、この機会に『TRANBI』を利用してみましょう。

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近年はM&Aのハードルが下がり、個人による事業や会社の買収が増えています。個人向けの案件は、どのような方法で探せばよいのでしょうか?初めてのM&Aで失敗しないコツや、買収資金の集め方などを解説します。

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後継者不足の中小企業が増えている昨今は、買い手にとって会社や事業を獲得しやすい状況です。中には後継者不在で黒字廃業に至るケースもあり、社会的な影響が増大しています。後継者不在に悩む会社の探し方や、M&Aの事例をチェックしましょう。

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手法
廃業する会社を買うには?価格の決まり方、案件の探し方など

後継者難により廃業する会社は、比較的安価で買える可能性があります。買収で失敗しないためには、廃業する会社を買うメリットやリスクを理解しておくことが重要です。価格の決まり方や案件の探し方についても、理解を深めておきましょう。

M&Aのメリット・デメリットを徹底解説|売り手・買い手・従業員の視点まで
事業承継
M&Aのメリット・デメリットを徹底解説|売り手・買い手・従業員の視点まで

M&Aは大企業だけでなく、零細企業にとっても事業承継や成長戦略に有効な選択肢です。や具体的な手法、メリット・デメリット、成功に向けた進め方まで、網羅的に解説します。

零細企業でもM&Aは可能!成功のコツと注意点を徹底解説
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