中小企業M&Aを成功させるには?基本的な流れと注意点、事例を紹介
近年は中小企業のM&Aが増えており、事業の買収・売却が目立っています。大手企業や海外企業のイメージがいまだに強いM&Aですが、今後さらに中小企業の案件も増えてくるでしょう。そこで中小企業向けに、M&Aの流れや注意点を解説します。
2022-11-18
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中小企業におけるM&Aの現状
中小企業を対象とするM&Aはここ数年、増加傾向にあります。まずは中小企業によるM&Aの現状から確認していきましょう。
中小企業のM&Aは増加傾向
日本国内におけるM&Aの市場規模は、すでに20兆円を超えている状況です。レコフデータ社の調査によれば、2017年に国内全体のM&A件数は3,000件を突破し、2019年には4,000件を超えました。さらに、今後も同じような水準が続くと予想されます。
従来M&Aといえば、大企業や海外企業が行うものというイメージを持つ人も多かったものの、国内企業のほとんどを占める中小企業の案件も順調に増えており、小規模ビジネスのM&Aも盛んです。
都市部の企業はもちろん、地方の中小企業にとってもM&Aが身近になってきています。
参考: 2021年版「中小企業白書」 第2節 M&Aを通じた経営資源の有効活用|中小企業庁
コロナ禍もM&A増加の要因に
ここ数年の新型コロナウイルスの影響を受け、M&Aに注目する経営者が増えているのも、案件が増加している要因の一つです。
2011年頃からM&Aの件数は順調に増加してきましたが、さらにコロナ禍で経営状況が変化したことで、事業の買収や売却を検討する経営者が増えています。
また、三菱UFJリサーチ&コンサルティングによれば、ポストコロナ時代を見据えて中核事業を強化するため、あるいは新規事業分野への進出のために、M&Aを積極的に検討する企業も出てきています。
参考: 2020年M&Aの実態調査~ポストコロナ時代を見据えたM&A戦略とは|三菱UFJリサーチ&コンサルティング
そもそもM&Aとは?
近年のM&Aニーズの高まりを受けて、事業の買収や売却に興味を持った人もいるのではないでしょうか?まずはM&Aとはどういうものなのか、基本的な知識を確認します。
M&Aの基本知識
M&Aとは『Mergers and Acquisitions』の略語で、日本語では『合併』と『買収』といった意味になります。企業の買収には、相手との合意でなされる友好的な買収と、合意なく実行される敵対的買収がありますが、一般的には友好的買収が大半です。
その話題性から、M&Aといえばどうしても敵対的買収が注目される傾向にあり、人によっては、外資系企業が日本企業を乗っ取るイメージを持っている人もいます。
しかし、少なくとも日本においては、経営者同士の合意によって事業の買収や売却がなされるケースが多く、企業の成長戦略の一環と捉えられています。
「合併」と「買収」の違い
M&Aは企業の『合併(Mergers)』と『買収(Acquisitions)』の両方の意味を含む用語ですが、両者の間には次のような違いがあります。
- 合併:二つ以上の企業を統合する行為で、既存の企業を存続させる方法と、新たに新企業を設立する方法がある
- 買収:一方の企業が他方の株式や事業を買い取って傘下に入れる行為。経営権の取得や事業の買い取りを指す
企業の合併には、複数の企業を統合することで、軸となる企業が別の企業を吸収する形になる合併(吸収合併)と、複数の企業を統合して、新たに新会社を設立する新設合併の2種類があります。
一方、買収は一般的に企業が別の企業の株式や事業を取得し、経営権を持つ方法です。株式を買い取る株式譲渡、事業の一部もしくは全部を選択して買い取る事業譲渡などがあります。
合併の場合、法人格が消滅する企業が出現しますが、買収は購入側・売却側ともに法人格は消滅せず、それぞれ存続する点にも違いがあります。
中小企業のM&Aが注目されている理由
日本でもM&Aの事例が増えていますが、背景の一つに百貨店業界やコンビニ業界など、近似した事業を集約してコストの削減を図る大企業が増えた点があります。加えて、近年は以下のような事情から、中小企業のM&Aも注目されるようになりました。
少子高齢化による後継者問題の顕在化
日本では少子高齢化が進んでおり、後継者問題に悩む企業が増えています。特に、独自の技術やスキルを要する事業は深刻な跡取り問題に悩んでいるケースも多く、後継者がいないために廃業を決める事業主は少なくありません。
しかし一方で、近い業種の事業を営む資本力のある企業と統合することで、何とか事業の存続を図りたいといったニーズから、M&Aを検討するケースも増えています。
実際のところ、後継者不在の中小企業の中には黒字経営のところも多く、承継先が見つかれば安定した経営を続けられる場合も珍しくありません。
そういった理由から、中小企業庁もM&Aの意義として経営者の高齢化への対応を挙げており、事業承継の手段として重要性が高いとしています。
参考: 中小M&Aの意義|中小企業庁
効率的な事業拡大を目指す企業の増加
市場環境のめまぐるしい変化や技術進歩などに素早く対応するため、自社にない技術やスキル、設備などを有する企業とのM&Aによって、事業拡大を目指す中小企業も現れています。
必要な技術を自社で育むよりも、すでに持っているところと統合することで、効率的に経営リソースを獲得しようとする企業が増えたというわけです。
従来、M&Aといえば大企業のイメージが強かったものの、近年は中小企業の事例も増えてきたため、選択肢の一つに入れる経営者が増えたことも背景にあります。近年は成長戦略の一つとして、個人事業主の間でもM&Aが検討されるケースが増えました。
人口減少を背景とした人材不足の加速
国全体の急激な人口減少を背景として、慢性的な人手不足に悩む企業が増えている点も、M&Aが注目されている理由の一つです。
自社で人材を募集・雇用するよりも、M&Aによって大企業の傘下に入り、その知名度を生かして優秀な人材を獲得するという試みも見られるようになりました。
また、買い手側もM&Aによって売り手企業に所属している人材を獲得できるので、当該分野の人手不足を補えます。その分野の技術やノウハウを効率的に入手できるのもメリットです。
いずれの立場にしても、うまくM&Aを活用すれば新たな体制の下でスタッフを雇用し、事業を継続できる可能性が高まります。もともとライバル企業に所属していた優秀な人材に、自社で働いてもらえるというケースもあるでしょう。
中小企業庁によるM&Aの推進
国の行政機関の一つである中小企業庁が本格的にM&Aを推進しているのも、中小企業のM&Aが注目されるようになった背景にあります。
同庁は2021年4月に『中小M&A推進計画』を策定し、官民の連携による中小企業における事業承継の支援強化を打ち出しています。
中小企業の生産性向上と創業促進の観点からM&Aを再定義し、設備投資や研究開発に並んで重要な施策と位置づけており、事業承継ガイドラインの改訂に加えて費用補助の拡充などが検討されています。
※参考: 「中小M&A推進計画」を取りまとめました|経済産業省
中小企業M&Aのメリット
では、中小企業が積極的にM&Aを検討するメリットを掘り下げてみましょう。ここでは主に、企業買収における売り手側と買い手側のメリットを確認します。
売り手側のメリット
M&Aにおける売り手側のメリットは次の通りです。
- 先細りになっている事業を継続できる
- 後継者問題を解決できる
- 従業員の雇用を維持できる
- 売却益を得られる
- 経営上の不安やプレッシャーから解放される
M&Aによって事業を継続できる可能性が高まり、後継者問題の解決にもつながります。
さらに、本来は廃業によって勤務先を替えなければならなかった従業員も、そのまま働き続けることが可能になるでしょう。事業の売却によって利益を得られるので、新たな事業を始める可能性も高まります。
特に、オーナー経営者が個人保証で企業の負債を背負っている場合は、M&Aによって企業の資産だけでなく負債も譲渡できるケースもあります。経営上の不安や金銭的なプレッシャーから解放されるのも、事業売却のメリットといえるでしょう。
買い手側のメリット
M&Aにおける買い手側のメリットとしては、次の点が挙げられます。
- 低リスクで効率的に事業を拡大できる
- 自社の弱点を補って競争優位を獲得できる
- 経営の効率化を図れる
- 社内の技術やスキルを向上できる
- 競合を取り込める可能性がある
自社の積極的な成長を望む経営者にとっては、M&Aによって低リスクで事業を拡大できるのが魅力です。
他社の経営リソースを得ることで自社の弱点を補いつつ、競争優位を確立しやすくなります。場合によっては、競合そのものを取り込むというケースもあるでしょう。
事業が成長するまでにかかる時間を短縮でき、社内の技術力の向上も期待できます。経営の効率化を図り、社内の生産性を向上させられるのもメリットです。
また、新しい市場への参入を考えている企業の場合、すでにその市場で一定の地位を確立している企業を買収すれば、法規制の問題や商習慣の違いなどを一気に解消できる可能性もあります。
中小企業のM&Aスキーム(手法)
M&Aによって事業を譲渡(あるいは譲受)するための方法は『スキーム』と呼ばれ、一般的に以下の手法が考えられます。それぞれ概要を理解しておきましょう。
M&Aのスキームに関しては、以下の記事でも説明しています。ぜひご覧ください。
株式譲渡
株式譲渡とは、売り手企業の発行済み株式を買い手企業が取得することで、経営権を得る方法です。
大株主から株式を買い取ったり、証券取引所を介して株式を買い入れたりする方法が一般的です。あるいは『TOB(株式公開買い付け)』によって、不特定多数の株主から買い集める手法もあります。
中小企業のM&Aで最もよく利用されているスキームであり、経営権の移行手続きも他の方法に比べて簡潔なのが特徴といえるでしょう。株式の過半数を取得すれば経営権を得られ、全ての株式を取得することで完全子会社化が可能です。
事業譲渡・会社分割
事業譲渡は企業の有する事業の一部、あるいは全部を、別の企業に譲渡する方法です。譲渡対象となるのは、人材や資産、ノウハウ、ブランドなどが考えられます。また、事業を包括的に分割して第三者に引き継いでもらう、『会社分割』と呼ばれる手法もあります。
事業譲渡は個々の事業が売買の対象となりますが、会社分割は組織再編にあたるので、企業の持つ権利や契約なども新たな企業に引き継がれるのが特徴です。
事業譲渡により、買い手側は必要な資産(あるいは負債)を選択して獲得できるので、帳簿に記載されていない債務を引き継ぐリスクを避けられるのがメリットといえます。
株式交換
株式交換は、企業が他の企業の株式を全て取得し、完全子会社化する方法です。自社の株式と対象企業の全株式を交換することで子会社とします。一方、子会社にする企業の株式を、新設した企業の株式と交換するスキームは『株式移転』と呼ばれます。
どちらも、売り手側の企業に株主が多数いる場合は困難な手法ですが、当該企業の株主総会で承認を受けられれば、全ての株式の取得が可能です。
ただし、株式譲渡に比べると手続きが複雑であることに加え、完全子会社の株主が親会社の株主になってしまうこともあるため、経営権を完全に承継させたいような小規模の事業承継の場合にはあまり採用がされないスキームといえます
新設合併・吸収合併
複数の企業が事業体を一つにし、組織再編を行う手法は合併と呼ばれ、上記のように『新設合併』と『吸収合併』があります。
前者は複数の事業体を合併し、新たに設立した企業がその権利や義務の全てを引き継ぐもので、後者は一方の企業(消滅企業)の権利や義務の全てを存続企業に承継させる方法です。
新設合併は事業の引き継ぎに加えて、会社設立の費用や手間もかかるため、実際には合併といえば吸収合併を指すケースがほとんどです。
資本提携・業務提携
提携とは、複数の企業が事業運営のために協力し合うことです。資本を出し合う資本提携や、お互いの企業が資金や技術、ノウハウなどを出し合う業務提携が挙げられます。
資本提携を結ぶことで、自社にない経営資源を効率的に獲得でき、資源同士のシナジー効果で新たな商品やサービスの開発が可能になります。
一方、業務提携では他社の知識やノウハウを利用できるため、業務生産性の向上が期待できるのに加えて、社内の技術レベルの向上も可能です。
M&Aの基本的な流れ
M&Aの基本的なプロセスについて解説します。事業の売り手側と買い手側でプロセスは異なりますが、ここでは共通の流れを簡単に確認しましょう。
M&Aの流れに関しては以下の記事でも説明しているので、ぜひご覧ください。
1.M&Aの検討とスキームの決定
まずは、M&Aを実施する意思を社内で固め、スキームを決定します。中小企業の場合は、自社にM&Aのノウハウがない場合は、外部の専門業者に相談することもあります。
ただし、専門家に相談する場合には、アドバイザリー契約や秘密保持契約を結ぶ必要があります。
また、業者と契約するのであれば報酬も発生するため、どのような場合にどの程度の金額を支払わなければいけないのかという点についても、契約前に確認しておきましょう。
2.M&Aの相手企業を探す
次に策定したM&Aスキームに合った相手企業を探します。中小企業の場合は、相手を探すためにマッチングサイトや仲介業者の利用がおすすめです。
日頃から取引のある金融機関や税理士、あるいは事業承継を支援している公的機関に相談するのもよいでしょう。
事業を売却する場合は、マッチングサイト・仲介業者を通じて、相手先候補を選び、そこから事業規模や業種などで絞り込んでいきます。
なお、M&Aのマッチングサイト『TRANBI』ならば、個人事業の案件を含め、さまざまな案件を広く取り扱っています。上場企業のユーザーも多く、直接相手と交渉できるので、スムーズに売買相手を見つけられるでしょう。
3.トップ面談と交渉・合意形成
対象企業を選定したらM&Aを打診します。その結果、相手企業が本格的にM&Aを検討するとなれば、トップ同士の会談の場が設定されて本格的な交渉に入ります。
交渉を通して、採用するM&Aスキームや譲渡価格、秘密保持義務の設定がなされ、基本合意契約が締結される流れです。
基本合意が締結されると、次に買い手側が売り手側の実態を把握するための調査(デュー・デリジェンス)が実施され、具体的な条件交渉に進んでいきます。
4.最終契約を結んで経営統合
売買価格をはじめとしてM&Aの具体的な条件が決まったら、両者の間で最終契約書が締結されます。契約の取り交わし後に買い手側から譲渡代金が支払われ、細かい手続きを経て契約が完了します。
M&Aが完了すると、M&Aが完了すると、PMI(Post Merger Integration)と呼ばれるプロセスに移るのが一般的です。PMIはM&Aによる事業の合併・統合後のプロセスで、統合事業同士の企業文化や業務フローなどの違いをマネジメントする仕組みです。
PMIでは統合を阻害する要因を事前に検証しておき、その結果をもとに事業の統合・運用を進めていきます。
うまく運用すれば統合後の業務効率の低下や社員の離職といった問題を回避できますが、十分な準備とリソースがなければ、想定通りのシナジーを得られない場合もあります。社内が余計に混乱してしまう恐れもあるので、計画的に取り組むことが大事です。
中小企業のM&Aを成功させるポイント
中小企業のM&Aを成功させるには、特に以下の点を意識する必要があります。企業選定を誤ると契約に至らず徒労に終わったり、契約締結後に問題が発生したりする可能性も高いので、まずは時間をかけて自社に最適な相手を選定しましょう。
十分なシナジーを見込める相手を選ぶ
M&Aにおいては、短期間で良好な関係を構築でき、十分なシナジーが期待できる相手を慎重に選ぶことが大事です。どういった条件を満たす企業を選ぶ必要があるか明確にして、時間をかけて調査しましょう。
相手を絞り込む前に、まずは経営層においてM&Aの必要性と目的を明確にして、最適なスキームを選択しましょう。経営層にM&Aに関する理解を得ておくことも、重要な仕事です。
利害関係の調整に時間をかける
M&Aは多くの関係者に影響を与えるので、その影響の範囲と関係の調整に時間をかける必要があります。
調整をおろそかにすると、ステークホルダーや相手企業の社員などから反発を受け、M&Aの足かせになるだけでなく、自社の評判が悪化する恐れもあります。
人によっては、M&A自体に悪いイメージを持っているケースもあるので、統合や買収のメリットをM&A成約後にしっかりと説明して理解を得ることが大事です。
統合後のプロセスを明確にしておく
M&Aは事前にしっかりと戦略を立て、それに従って成功に導かなければいけません。ただし、統合後はスムーズに事業を継続させる必要があるので、適切にPMIを実施できるようにロードマップを設定しておくことも重要です。
企業はそれぞれ独自の文化を持っており、業務プロセスや導入されているシステム、意思決定の基準などに大きな違いがあります。
それぞれの企業の担当者が一丸となり、じっくりと時間をかけて統合を進めなければいけません。ロードマップがしっかりと設定されていれば、相応の労力はかかるものの、効率的に作業を進められます。
中小企業M&Aの成功事例
中小企業のM&Aにまつわる実例を紹介します。どういった背景で事業主がM&Aを決意し、買収や譲渡を成功させたのか注目しましょう。
技術力を評価され事業売却に成功した製作所
茨城県の石岡市でプラスチック射出成型業を営む澤村製作所では、高齢の創業者が跡継ぎ問題に直面していました。もともと事業承継を考えていたものの、予定していた親族への引き継ぎができなくなったため、後継者探しを決意した経緯があります。
既存の従業員にも声をかけたものの受け手が見つからなかったため、事業の売却に踏み切ったところ、高い技術力に引かれて複数の買い手が集まりました。
最終的に、アニメ向けグッズの製造販売をしている企業への売却が決定し、事業の承継に成功しています。
廃業危機にあった妊活サロンがM&Aで復活
大阪府吹田市にある不妊治療専門の妊活サロン『cicogna(チコーニャ)』では、オーナーが病気になってしまったことで、事業継続のためのM&Aを決意しました。
そこで、同じく大阪で福祉事業を手がけるハートフルサンク社が買収に手を挙げ、無事に事業は復活を遂げています。
個人事業主から福祉事業を展開する法人に事業承継されたことで、より多くの層に不妊治療の提供が可能になりました。前オーナーは、同社と雇用契約を結ぶ形で活躍を続けています。
中小企業M&Aの注意点
M&Aは売り手側・買い手側ともにメリットが得られる手法ですが、注意すべき点もあります。契約後にトラブルを招かないように、以下の点に気を付けましょう。
従業員の就業環境やモチベーションへの配慮
経営統合や譲渡によって、従業員の労働環境は大きく変化するため、仕事へのモチベーションを保てなくなる人が出てくる可能性があります。事業の譲渡や買収をきっかけとして、それまで働いていた職場を辞める人は決して少なくありません。
どういったM&Aスキームを採用するにせよ、新しい環境に従業員がスムーズになじめるように、企業文化のすり合わせや働きやすい環境の構築などに注力する必要があります。
M&A後に従業員のモチベーションを維持するのは、新たな事業主にとって大事な仕事といえるでしょう。
誠実な交渉を心掛ける
M&Aに関する交渉では事前に相手方の情報を収集し、信頼できるか冷静に判断する必要があるのに加えて、相手に信頼してもらうための努力も必要です。限られた時間で信頼を得るには、常に誠実な交渉を心掛けなければいけません。
交渉の場で嘘をついたり情報を隠したりすると破談になる恐れがあり、たとえ契約が締結されても、後から問題になる可能性が高いでしょう。自社の評判を大きく損ねることになるので、相手を尊重して誠実に交渉を重ねる必要があります。
ガイドラインを参考にする
中小企業のM&Aに対して国は積極的に支援する姿勢を見せており、その一環として、経済産業省が2020年に中小企業向けのM&Aガイドラインを策定しています。
M&Aの実施にあたり、特に押さえておくべき点が網羅されているので、しっかり確認しておきましょう。経営者が知っておくべき基本的な内容が、無料で閲覧できます。
参考: 「中小M&Aガイドライン」を策定しました|経済産業省
中小企業M&Aの今後は?
中小企業のM&Aの今後についても簡単に確認しましょう。ここ数年の国内M&Aの相談件数を確認する限り、今後も着実に案件が増え続けることが予想できます。
規模を問わず企業のM&Aが加速する
国内のM&Aの事例は確実に増えており、今後、規模を問わず中小企業の買収や事業譲渡などがさらに加速するでしょう。
さまざまな経営統合や事業提携も進むと考えられるので、経営者は自社の成長のためにM&Aを事業戦略の一環として積極的に捉える必要があります。
企業そのものを買収・売却する以外にも、事業の一部を譲渡したり買収したりするのも、有効な選択肢となるでしょう。事業の成長や継続といった観点から、より広い視点でM&Aを考えることが重要です。
まとめ
中小企業のM&Aの現状や代表的なスキーム、M&Aの基本的な流れを解説しました。中小企業のM&Aは近年かなり増加しており、小規模事業同士の統合も少なくありません。
売り手側・買い手側の双方にメリットがあるので、この機会にシナジーを発揮できる相手を探してみましょう。株式譲渡をはじめ、さまざまなスキームがあるので、自社の環境にベストな方法を選ぶことが大事です。
まずは経済産業省のガイドラインを参考にしながら、M&Aに関する基本的な知識を学ぶことをおすすめします。