譲渡制限株式とは?株式譲渡自由の原則と譲渡を拒否された場合を解説
譲渡制限株式とは、譲渡に会社の承認が必要な株式です。株式譲渡自由の原則との関係から、定款の記載例、承認手続きの5ステップと2週間・40日・10日の期限、譲渡を拒否されたときの買い取りの流れ、相続人等への売渡請求までわかりやすく解説します。
株式会社の株式は、本来は自由に売買できるのが原則です。しかし、中小企業の多くは、定款で「株式を譲渡するには会社の承認が必要」と定めています。これが譲渡制限株式です。
譲渡制限株式は、好ましくない第三者が株主になることを防ぎ、経営の安定を保つための重要な仕組みです。日本の中小企業では、この譲渡制限を設けた「株式譲渡制限会社(非公開会社)」が広くみられます。
この記事では、譲渡制限株式の意味と株式譲渡自由の原則との関係から、株式譲渡制限会社のメリット・デメリット、会社法に基づく譲渡承認の手続き、相続・事業承継やM&A(株式譲渡)実務での注意点までをわかりやすく解説します。自社株式の管理や事業承継を検討するうえでの参考にしてください。
譲渡制限株式とは?(株式譲渡自由の原則と例外)
まずは、譲渡制限株式の基本的な意味と、「株式譲渡自由の原則」との関係を整理します。
譲渡制限株式の定義
譲渡制限株式とは、その株式を譲渡によって取得するために、会社の承認を必要とする株式のことです。株式を売買する際に、会社(株主総会または取締役会)の承認を得なければ、譲渡の効力を会社に対して主張できません。
譲渡制限は、定款で定めることによって設けられます。中小企業の多くは、発行するすべての株式に譲渡制限を付けており、これによって株主を信頼できる関係者に限定しています。
株式譲渡自由の原則とその例外
そもそも株式は、株主が自由に譲渡できることが原則です。これを株式譲渡自由の原則といい、会社法127条に定められています。株主が投資した資金を回収する手段を確保するために、株式の売買は本来自由とされているのです。
しかし、この原則をそのまま貫くと、会社にとって好ましくない第三者が株式を買い集め、経営に介入してくるおそれがあります。そこで会社法は、定款で定めることにより、株式の譲渡に会社の承認を必要とすることを認めています。これが株式譲渡自由の原則の「例外」であり、譲渡制限株式の根拠です。
普通株式・種類株式との関係
譲渡制限の根拠条文は、付け方によって2つに分かれます。発行するすべての株式に譲渡制限を付ける場合は会社法107条で、このとき株式の種類はひとつなので種類株式発行会社にはなりません。一方、一部の種類の株式にだけ譲渡制限を付ける場合は会社法108条で、9種類ある種類株式のひとつとしての「譲渡制限株式」になります。中小企業で多いのは前者です。
種類株式として設計する場合は、配当や議決権の内容が異なる他の種類株式と組み合わせることもできます。
種類株式全体の中での位置づけや、優先株式・議決権制限株式など他の種類との違いを知りたい方は、種類株式の記事もあわせてご覧ください。本記事では、そのうち中小企業で広く使われている「譲渡制限株式」に絞って詳しく解説します。
株式譲渡制限会社(非公開会社)とは
発行するすべての株式に譲渡制限を付けている会社を「株式譲渡制限会社」といいます。ここでは、その意味と公開会社との違いを整理します。
株式譲渡制限会社の意味
発行する全部の株式に譲渡制限を付けている会社を、株式譲渡制限会社と呼びます。会社法上は「非公開会社」とも呼ばれ、上場企業などの「公開会社」と区別されます。
ここでいう「公開会社」とは、株式を証券取引所に上場している会社のことではなく、発行する株式の全部または一部に譲渡制限がない会社を指します。逆に、すべての株式に譲渡制限がある会社が非公開会社(株式譲渡制限会社)です。用語の意味が一般的なイメージと異なるため、注意が必要です。
公開会社との違い
株式譲渡制限会社(非公開会社)と公開会社には、次のような違いがあります。
| 項目 | 株式譲渡制限会社(非公開会社) | 公開会社 |
|---|---|---|
| 株式の譲渡 | 全株式に会社の承認が必要 | 一部または全部が自由に譲渡可能 |
| 取締役会の設置 | 任意(設置しなくてよい) | 必須(会社法327条1項1号) |
| 役員の任期 | 最長10年まで伸長可能 | 取締役2年・監査役4年が原則 |
| 主な会社 | 中小企業の多く | 上場企業など |
中小企業で株式譲渡制限が広く使われている理由
日本の中小企業では、株式譲渡制限会社(非公開会社)が広くみられます。理由はシンプルで、中小企業にとっては株主を信頼できる関係者(創業家・役員など)に限定し、経営の安定を保つことが重要だからです。株式が外部に自由に流出すると、経営方針をめぐる対立や、望まない第三者の介入を招きかねません。譲渡制限は、こうしたリスクから会社を守る基本的な仕組みとして広く使われています。
譲渡制限株式のメリット・デメリット
譲渡制限株式には、経営の安定というメリットがある一方、換金性の低さなどのデメリットもあります。両面を理解しておきましょう。
メリット
譲渡制限株式の主なメリットは次のとおりです。
- 好ましくない第三者の排除:会社の承認なく株式が第三者に渡らないため、望まない者が株主になることを防げる
- 経営の安定:株主を信頼できる関係者に限定でき、敵対的な買収や経営介入を受けにくい
- 相続対策・事業承継:株式の分散を防ぎ、後継者へ株式を集約しやすくなる
- 役員任期の伸長など運営の柔軟性:非公開会社として、機関設計や役員任期で柔軟な運営ができる
デメリット・注意点
一方で、次のようなデメリット・注意点もあります。
- 換金性の低さ:自由に売却できないため、株式を現金化しにくい
- 買い手が限られる:譲渡に会社の承認が必要なため、売却先が制約される
- M&A時の手続き負担:株式譲渡でM&Aを行う際、譲渡承認の手続きが必要になり、時間と手間がかかる
- 少数株主の保護が問題になることも:少数株主が株式を売りたくても売れず、塩漬けになるケースがある
- 新しく設けるときの負担:全部の株式に譲渡制限を新設する定款変更は特殊決議が必要なうえ、反対株主から株式買取請求を受ける可能性がある(会社法309条3項1号・116条1項1号)
譲渡制限株式は経営の安定に役立つ一方、いざ株式を売買する場面では手続きの負担が生じます。とくにM&Aを検討する際は、後述する承認手続きの流れを理解しておくことが重要です。
譲渡制限株式の譲渡承認手続きと、拒否された場合の流れ(会社法)
譲渡制限株式を売買するには、会社法に定められた承認手続きを踏む必要があります。手続きには厳格な期限があり、これを過ぎると「みなし承認」となるため、正確な理解が重要です。請求から価格決定までの流れを5つのステップに分けて解説します。会社が譲渡を拒否した場合にどうなるかも、あわせて確認しましょう。
①譲渡承認請求(会社法136条・137条)
譲渡制限株式を譲渡しようとする株主(または譲り受けた人)は、会社に対してその譲渡を承認するか否かの決定を請求します。これを譲渡承認請求といいます。
株式を譲渡しようとする株主からの請求は会社法136条、すでに株式を取得した人からの請求は137条に基づきます。請求では、譲渡する株式の数と、譲受人の氏名・名称を明らかにします。なお、取得者から請求する場合は、原則として元の株主と共同で行う必要があります。
②承認機関での決定(取締役会・株主総会)
譲渡承認請求を受けた会社は、承認するかどうかを決定します。取締役会設置会社では取締役会、取締役会がない会社では株主総会で決議するのが原則です(会社法139条1項)。
決定した内容は、譲渡承認請求をした人へ通知しなければなりません(会社法139条2項)。139条2項そのものに期限の定めはありませんが、請求の日から2週間以内に通知しないと、後述する「みなし承認」が生じます(会社法145条1号)。実質的には、この2週間が通知の期限になります。
③みなし承認に注意(会社法145条)
ここが実務で最も注意すべきポイントです。会社が請求の日から2週間以内に承認・不承認の通知をしなかった場合、譲渡を承認したものとみなされます(会社法145条1号)。これを「みなし承認」といいます。
つまり、承認したくない場合でも、会社が対応を怠って2週間を過ぎると、自動的に譲渡が認められてしまいます。実際に、代表者宛の請求書が社内で放置され、意図しない人物が株主になってしまった事例もあります。譲渡承認請求を受けたら、速やかに承認機関を開催し、期限内に通知することが不可欠です。
④譲渡を拒否されたら|会社・指定買取人が買い取る
会社が譲渡を承認しない、つまり譲渡を拒否した場合でも、株主が株式を換金する道は残されています。譲渡承認請求のときに「承認しないのであれば、会社または指定買取人が買い取ってほしい」とあわせて請求していれば、会社は買い取りに応じる必要があります(会社法138条・140条)。
言い換えると、株主が買い取りもあわせて請求している場合、会社は「譲渡を拒否したうえで、あとは放置する」という対応を選べません。拒否するのであれば、会社自身が買い取るか、買い取る第三者(指定買取人)を指定するか、どちらかを決めることになります。
会社自身が買い取る場合は株主総会の特別決議が必要です(会社法140条2項・309条2項1号)。一方、指定買取人を指定する場合は、取締役会設置会社では取締役会の決議、取締役会を置かない会社では株主総会の特別決議によります(会社法140条4項・5項)。あらかじめ定款で指定買取人を定めておくこともできます。
また、譲渡承認から買い取りまでの手続きには、次の期限があります。期限内に通知しないとみなし承認となり、拒否したかったはずの譲渡が成立してしまいます(会社法145条)。
| 通知の内容(通知する人) | 起算日 | 期限 |
|---|---|---|
| 承認・不承認の通知(会社) | 譲渡承認請求の日 | 2週間以内 |
| 会社が買い取る旨の通知(会社) | 不承認を通知した日 | 40日以内 |
| 指定買取人が買い取る旨の通知(指定買取人) | 不承認を通知した日 | 10日以内 |
この40日と10日は、どちらのルートを選ぶかによる択一の関係です。指定買取人が10日以内に通知すれば、会社が40日以内に通知していなくてもみなし承認は生じません(会社法145条2号かっこ書)。逆にいえば、指定買取人でいくと決めた場合の10日はかなり短いということです。拒否の判断をしたときほど、どちらの方法をとるのかを早めに決め、期限を管理することが重要になります。
このように、株式を売りたい株主に会社が買い取り先を用意することで、株主が投資を回収する道を確保しつつ、望まない第三者への流出を防ぐ仕組みになっています。逆にいえば、買い取りの資金や買取人のあてがないまま、拒否だけを続けることはできないということでもあります。
⑤売買価格の決まり方(会社法144条)
買い取りの際の売買価格は、まず当事者(会社・指定買取人と株主)の協議で決めます。ただし、協議の進みぐあいとは関係なく、買い取りの通知があった日から20日という申し立ての期限が進みます。この20日以内であれば、当事者は裁判所に売買価格の決定を申し立てることができます(会社法144条2項)。裁判所は、譲渡承認請求のときにおける会社の資産状態その他一切の事情を考慮して、価格を決定します(同条3項)。
注意したいのは、協議も申し立てもないまま20日が過ぎた場合です。このときは、1株あたり純資産額に対象株式の数を掛けた額が売買価格になります(会社法144条5項)。協議している間も期限は止まらないため、日程の管理が欠かせません。
なお、107条・108条は譲渡制限株式を定款で定めるための根拠条文で、実際の譲渡手続きは136条以下に規定されています。条文番号もあわせて押さえておくと、実務や専門家への相談がスムーズになります。
定款での定め方・記載例
譲渡制限は、定款に定めることで設けられます(会社法107条2項1号・108条2項4号)。ここでは、実務でよく使われる記載例を紹介します。
承認機関を定める記載例
譲渡制限の定款規定では、どの機関が承認するかをあわせて定めます。取締役会設置会社では取締役会、取締役会を置かない会社では株主総会を承認機関とするのが基本です(会社法139条1項)。
| 承認機関(想定される会社) | 定款の記載例 |
|---|---|
| 取締役会 (取締役会設置会社) |
当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を受けなければならない。 |
| 株主総会 (取締役会を置かない会社) |
当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。 |
| 代表取締役 (機動的に判断したい会社) |
当会社の株式を譲渡により取得するには、代表取締役の承認を受けなければならない。 |
会社法139条1項には「定款に別段の定めがある場合は、この限りでない」という定めがあるため、代表取締役を承認機関とすることもできます。承認機関の招集が不要になるぶん2週間の通知期限に間に合わせやすくなる一方、譲渡を承認するか拒否するかの判断が一人に集中する点には注意が必要です。
定款で承認を不要とする記載例
実務では、一定の場合にあらかじめ承認があったものとして扱う定めを置くこともあります(会社法107条2項1号ロ・108条2項4号)。これは、③で説明した期限切れによる「みなし承認」(会社法145条)とは別のもので、会社が意図して定款に置く手続き簡素化の仕組みです。例えば、既存株主間の譲渡には承認を不要とすることで、手続きの手間を減らせます。
- 例:「株主が当会社の株式を他の株主に譲渡する場合には、承認をしたものとみなす。」
なお、定款変更の決議要件は内容によって変わります。承認機関を変える場合や譲渡制限を撤廃する場合は株主総会の特別決議ですが、発行する全部の株式に新しく譲渡制限を設ける定款変更は、より要件の重い「特殊決議」(議決権を行使できる株主の半数以上、かつその株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要です(会社法309条3項1号)。定款の定め方によってその後の手続きの負担や柔軟性が変わるため、司法書士や弁護士などの専門家と相談しながら設計するのが安心です。
相続・事業承継と譲渡制限株式
譲渡制限株式は、相続や事業承継の場面でも重要な論点になります。とくに、株式が相続によって望まない相手に渡るのを防ぐ仕組みが用意されています。
相続人等への売渡請求(会社法174条)
譲渡制限株式であっても、相続による取得には会社の承認は不要です。相続は「譲渡」ではないため、承認手続きの対象外だからです。そのため、放っておくと、経営に関与してほしくない相続人が株主になってしまう可能性があります。
これを防ぐため、会社はあらかじめ定款に定めておくことで、相続などで譲渡制限株式を取得した者に対し、その株式を会社へ売り渡すよう請求できます(会社法174条)。これを「相続人等に対する売渡請求」といいます。株式の分散を防ぐ手段のひとつですが、次の制約があります。
- あらかじめ定款に定めておくこと:相続が起きてから定めても間に合いません
- 株主総会の特別決議が必要(会社法175条1項・309条2項3号)
- 会社が相続などを知った日から1年以内に請求すること(会社法176条1項ただし書)
- 財源規制:自己株式の取得にあたるため、分配可能額の範囲内でしか買い取れません
さらに、この制度には見落とされやすい「逆転リスク」があります。売渡請求を決議する株主総会では、請求の対象となる相続人等は議決権を行使できません(会社法175条2項)。そのため、オーナー経営者が亡くなって後継者が株式を相続した場面で、ほかの少数株主が結束して後継者に売渡請求を行い、経営権を奪うという使われ方も理屈のうえでは可能です。定款に売渡請求の定めを置く際は、この点も踏まえて専門家と設計することをおすすめします。
事業承継での活用と注意点
事業承継では、譲渡制限株式によって後継者へ株式を集約し、経営権を安定させることができます。ただし、譲渡制限そのものはこれから株式が外部へ分散するのを防ぐ仕組みであり、すでに分散した株式を集める効果はありません。すでに親族間で分散している場合は、相続が起きたタイミングでの売渡請求や、少数株主との個別の買い取り交渉によって、後継者へ議決権を集約していくことになります。
一方で、少数株主が保有する株式の買い取りや価格の折り合いが、承継の障害になることもあります。自社株の承継設計は、税務・法務の両面から検討が必要なため、事業承継M&Aのスキームの選び方もあわせて確認するとよいでしょう。
M&A(株式譲渡)実務での承認プロセスと注意点
中小企業のM&Aは、その多くが株式譲渡によって行われます。対象会社の株式が譲渡制限株式である場合、譲渡承認の手続きがM&Aプロセスの重要な一部になります。
株式譲渡M&Aでの承認取得の流れ
譲渡制限株式を対象とする株式譲渡によるM&Aでは、売り手が会社に譲渡承認請求を行い、承認機関(取締役会または株主総会)で承認を得たうえで、株式を買い手へ譲渡します。承認は、最終契約の締結やクロージング(決済)の前提条件となるのが一般的です。
オーナー経営者が全株式を保有している場合は承認もスムーズですが、株式が複数の株主に分散している場合は、それぞれから承認や同意を得る必要があり、手続きが複雑になります。
デューデリジェンス・契約との関係
M&Aでは、買い手が対象会社を調査するデューデリジェンス(買収監査)の段階で、株式の譲渡制限の内容や、過去の株式異動が適法に承認されているかを確認します。過去にみなし承認や承認漏れがあると、株主の地位に争いが生じ、M&Aの障害になることがあるためです。
また、株式譲渡契約書(SPA)では、譲渡承認が適法に得られていることを、表明保証や前提条件として盛り込むのが通常です。譲渡制限株式のM&Aでは、承認手続きの適正さが取引の安全性を左右します。
譲渡制限株式に関するよくある質問(FAQ)
譲渡制限株式について、よく寄せられる疑問にお答えします。
譲渡制限株式とは簡単にいうと何ですか?
譲渡制限株式とは、譲渡によって取得するのに会社の承認が必要な株式のことです。株式は本来自由に譲渡できることが原則(会社法127条)ですが、定款で定めることで譲渡に会社の承認を必要とできます。好ましくない第三者が株主になるのを防ぎ、経営を安定させる目的で、中小企業の多くが導入しています。
自社が株式譲渡制限会社かどうかは、どう調べればいいですか?
会社の定款または登記事項証明書(登記簿)で確認できます。登記事項証明書では「株式の譲渡制限に関する規定」という欄に、「当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会(または株主総会)の承認を要する」といった内容が記載されています。この欄があれば株式譲渡制限会社(非公開会社)、なければ公開会社です。登記事項証明書は法務局で取得できます。
会社の承認を得ずに勝手に譲渡したらどうなりますか?
会社の承認を得ずに譲渡制限株式を譲渡した場合でも、譲渡した当事者間では有効と考えられています。ただし、会社に対しては効力を主張できません。承認を受けていない取得者には、そもそも株主名簿の書き換えを請求する権利が認められていないからです(会社法133条・134条)。つまり、買った側は会社に対して株主としての権利を行使できないことになります。
もっとも、この状態のままとは限りません。株式を取得した人から会社に対して、あとから譲渡承認を請求することもできます(会社法137条)。承認が得られれば、株主名簿の書き換えを請求できるようになります。
会社に株式の譲渡を拒否されたら、もう売れないのですか?
売れなくなるわけではありません。譲渡承認請求のときに「承認しないのであれば買い取ってほしい」とあわせて請求していれば、会社が譲渡を拒否した場合、会社または会社が指定する買取人が株式を買い取ります(会社法140条)。売買価格は当事者の協議で決めますが、整わない場合は、買い取りの通知があった日から20日以内に申し立てれば裁判所が決定します(会社法144条2項)。申し立てないまま20日が過ぎると、1株あたり純資産額をもとにした価格に確定します(同条5項)。ただし、買い取りの請求をせずに承認だけを求めた場合は、拒否されるとその相手には譲渡できません。請求の書き方によって結論が変わるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
上場と譲渡制限株式の関係は?
株式を証券取引所に上場するには、株式が自由に売買できる(譲渡制限がない)ことが前提です。そのため、譲渡制限株式のままでは上場できません。将来的に上場(IPO)を目指す場合は、上場準備の過程で譲渡制限を外す(公開会社へ移行する)定款変更が必要になります。
譲渡制限株式を第三者に売りたい場合、どう進めればよいですか?
まず定款で承認機関を確認し、譲受人の候補が決まった段階で譲渡承認請求を行うのが基本の流れです。中小企業の場合、株式の売却は会社そのものの譲渡(M&A)と一体で進むことが多く、譲受人を探す段階からの検討が必要になります。買い手候補の探し方や譲渡時の準備については、非上場株式の譲渡の記事もあわせてご覧ください。
親族内や社内に譲受人の候補が見当たらない場合は、M&A・事業承継のマッチングプラットフォームで買い手候補を探す方法もあります。国内最大級のM&A・事業承継マッチングプラットフォーム「TRANBI(トランビ)」では、無料の会員登録で買い手候補の反応を見ながら検討を進められます。
まとめ|譲渡制限株式は中小企業・事業承継の要
譲渡制限株式とは、譲渡によって取得するのに会社の承認を必要とする株式です。株式譲渡自由の原則(会社法127条)の例外として、定款で定めることにより設けられ、日本の中小企業では、全株式に譲渡制限を付けた株式譲渡制限会社(非公開会社)が広くみられます。
本記事のポイントを整理します。
- 譲渡制限株式は、好ましくない第三者の排除・経営の安定・事業承継対策に役立つ
- 譲渡には承認手続きが必要で、会社が2週間以内に通知しないと「みなし承認」になる(会社法145条)
- 株主が買い取りもあわせて請求していれば、会社が拒否しても会社・指定買取人が買い取る(会社法140条・144条)
- 相続人等への売渡請求(会社法174条)で、相続による株式分散も防げる
- 株式譲渡によるM&Aでは、承認手続きの適正さが取引の安全性を左右する
譲渡制限株式は、中小企業の経営の安定と円滑な事業承継を支える基本的な仕組みです。自社株式の管理やM&A・事業承継を検討する際は、承認手続きや定款の定めを正しく理解し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。会社の売却や後継者探しを検討されている方は、国内最大級のM&A・事業承継マッチングプラットフォーム「TRANBI(トランビ)」もぜひご活用ください。
