非上場株式(未公開株)の売却|3つの売却先と流れ・税金を解説
非上場株式(未公開株)は証券取引所で売れないため、売却先を自分で探す必要があります。第三者へのM&A・発行会社への譲渡(自己株式取得)・親族や役員という3つの売却先の違い、売却の流れ5ステップ、価格の決まり方、20.315%の税金とみなし配当まで解説します。
証券取引所に上場していない会社の株式は、未公開株(非上場株式)と呼ばれます。日本の株式会社の大半は非上場であり、経営者やその親族、役員が株式を保有しています。
こうした株式は、上場株式のように証券取引所で売ることができません。「相続で受け取ったが現金化したい」「会社を退いたので持ち株を手放したい」と考えても、そもそも誰に売ればよいのかが分かりにくいのが実情です。
この記事では、未公開株を売りたいときの3つの売却先を軸に、売却の流れ、価格の決まり方、税金、そしてつまずきやすい注意点までを整理します。売り手の立場で読み進められる構成にしているので、自社株や相続した株式の扱いに悩んでいる方の参考にしてください。
未公開株(非上場株式)とは?上場株式との違い
まずは言葉の整理からです。未公開株がどういう株式で、上場株式と何が違うのかを押さえておくと、このあとの売却の話が理解しやすくなります。
未公開株・非上場株式・非公開株の違い
この分野では似た言葉がいくつも出てきますが、日常的にはほぼ同じ意味で使われています。
| 呼び方 | 指しているもの | 使われ方 |
|---|---|---|
| 未公開株 | 証券取引所に上場していない会社の株式 | 一般向けの記事や報道でよく使われる |
| 非上場株式 | 同上 | 税務・実務の文書で使われることが多い |
| 非公開株 | 同上、または非公開会社の株式 | 文脈によって指す範囲が少し変わる |
厳密にいうと、会社法には「公開会社」「非公開会社」という区分があり、これは上場しているかどうかではなく、発行する株式の全部または一部に譲渡制限がないかどうかで決まります。上場していない会社の多くは全株式に譲渡制限を付けているため、結果として「非上場=非公開会社」となるケースがほとんどです。この記事では、読みやすさを優先して「未公開株(非上場株式)」に表記を統一します。
なぜ自由に売買できないのか
上場株式であれば、証券取引所を通じて誰でも売買できます。価格も市場で決まり、売りたいときに売れます。
一方、未公開株には市場がありません。買いたい人と売りたい人が自分で相手を探し、価格も個別に交渉して決めることになります。さらに多くの非上場会社では、株式の譲渡に会社の承認が必要とされているため、相手が見つかっても会社が認めなければ譲渡できません。
| 項目 | 上場株式 | 未公開株(非上場株式) |
|---|---|---|
| 売買の場 | 証券取引所 | 市場はなく、相対の取引 |
| 価格 | 市場で決まる | 当事者の交渉、または評価方法にもとづく算定 |
| 買い手探し | 不要(市場に買い手がいる) | 自分で探す必要がある |
| 会社の承認 | 不要 | 譲渡制限があれば必要 |
| 換金までの期間 | 売却は即日、入金は数営業日後 | 数か月から1年程度かかることもある |
譲渡には会社の承認が必要なことが多い
非上場会社の多くは、定款で「株式を譲渡するには会社の承認が必要」と定めています。これを譲渡制限株式といいます。売り手が勝手に第三者へ売ることを防ぎ、経営に関与してほしくない相手が株主になるのを避けるための仕組みです。
売る側から見ると、買い手を見つけただけでは手続きが終わらないということになります。会社に対して譲渡承認請求を行い、取締役会または株主総会の承認を得てはじめて、株主名簿の書き換えまで進めます。
もし会社が承認しない場合でも、売り手が「承認しないのであれば買い取ってほしい」とあわせて請求していれば、会社または会社が指定する買取人が買い取ることになります。承認手続きの詳細や、拒否されたときの流れは譲渡制限株式の記事で解説しています。
非上場株式(未公開株)を売りたいときの3つの売却先
未公開株を手放す方法は、大きく3つあります。それぞれ手続きの重さも、価格の決まり方も、税金の扱いも違います。まず全体像を比べてみましょう。
| 売却先 | 価格の決まり方 | 向いているケース |
|---|---|---|
| ①第三者(M&A) | 買い手との交渉で決まる | 会社ごと譲りたい |
| ②発行会社(自己株式取得) | 当事者の協議で決まる | 持ち株だけ手放したい |
| ③親族・役員・従業員 | 当事者の協議で決まる(税務上の時価に注意) | 事業を身内に引き継ぎたい |
手続きの重さも違います。①は買い手探しから始めるためもっとも時間がかかり、②は会社の資金繰り次第、③は相手が決まっているぶん比較的軽く済みます。一方で①は、事業の収益力や将来性、買い手とのシナジーが価格に織り込まれるため、純資産を上回る価格がつく可能性があります。
「できるだけ高く売りたい」なら①、「会社との関係を整理したい」なら②、「事業を承継させたい」なら③、というのが大まかな考え方です。以下でひとつずつ見ていきます。
①第三者に譲渡する(M&A)
会社の株式をまとめて第三者に譲渡し、経営権ごと引き継いでもらう方法です。中小企業のM&Aでは、この株式譲渡がもっとも多く使われます。株式譲渡では会社そのものが同じ法人として存続するため、会社が持つ資産・負債や結んでいる契約も、原則としてそのまま会社に残ります。事業譲渡のようにひとつずつ移す手続きが基本的に不要なぶん、進め方がシンプルだからです。
ただし、契約によっては株主が変わることを理由に、相手方への通知や承諾が必要になる場合があります(チェンジ・オブ・コントロール条項)。
買い手は将来の収益や事業の強みを見て価格を判断します。そのため、帳簿上の純資産を上回る金額がつくこともあります。なお、会社ごと譲る場合は、金融機関からの借入に付けている経営者保証をいつ解除するかを契約条件に含めておく必要があります。
一方で、買い手を探すところから始める必要があり、条件交渉やデューデリジェンス(買収監査)を経て契約・決済に至るまで、半年から1年程度かかることも珍しくありません。
②発行会社に譲渡する(自己株式取得)
会社そのものに株式を買い取ってもらう方法です。会社が自社の株式を取得することを自己株式の取得(金庫株)といいます。
「株式を持っているが経営には関わっていない」「相続で株式を受け取ったが持ち続ける理由がない」といった少数株主にとって、現実的な出口になります。会社側にとっても、株式の分散を防げるメリットがあります。
ただし、会社はいくらでも買い取れるわけではありません。自己株式の取得は株主への払い戻しにあたるため、分配可能額の範囲内でしか行えません(財源規制)。会社に十分な余剰資金がなければ、そもそも成立しない選択肢です。
手続きの面でも、第三者への譲渡とは流れが変わります。特定の株主から買い取る場合、会社側で株主総会の特別決議が必要です(会社法156条・160条)。このときほかの株主には、自分の株式も買い取りの対象に加えるよう求める権利(売主追加請求権)があるため、会社が想定したとおりに買い取れないこともあります。
もうひとつ、税金の扱いが他の2つと大きく異なる点にも注意が必要です。個人株主が発行会社に株式を売った場合、受け取った代金のうち一定の部分がみなし配当として配当所得に区分され、総合課税(累進税率)の対象になります。詳しくは「未公開株を売るときの税金」で説明します。
③親族・役員・従業員に譲渡する
子どもや配偶者などの親族、あるいは役員・従業員に株式を譲る方法です。事業承継の一環として行われることが多く、譲渡と同時に経営も引き継ぐケースが一般的です。
この場合も、売買価格は当事者間で決めます。ただし、税務上の時価と大きくかけ離れた価格で譲渡すると、当事者の関係や取引の条件によって贈与税などの問題が生じることがあります。
非上場株式の税務上の評価は、売り手と買い手がどういう立場か(同族株主にあたるかなど)によって考え方が変わり、相続税評価額がそのまま売買価格になるわけでもありません。価格を決める前に税理士へ確認しておくことをおすすめします。
役員や従業員に譲る場合は、買い取り資金をどう用意するかが実務上の壁になります。持株会や金融機関の融資を組み合わせるなど、資金面の設計が必要です。後継者が見つからないときの選択肢は跡継ぎがいない会社の5つの選択肢でも整理しています。
非上場株式を売却する流れ 5STEP
ここからは、実際に未公開株を売るときの手順を5つのステップに分けて見ていきます。第三者や親族・役員へ譲る場合を想定した流れです。発行会社に買い取ってもらう場合は、STEP3の譲渡承認請求に代えて会社側で株主総会の決議が必要になりますので、あわせて後述の注意点をご確認ください。
STEP1|株券の有無と株主名簿を確認する
最初にやるべきは、自分が株主であることを証明できる状態かの確認です。ここが整理されていないと、あとの手続きが止まります。
会社が株券発行会社であれば、株券を手元に持っているかを確認します。株券発行会社の株式譲渡は、株券を交付しなければ効力が生じません。株券が見当たらない場合は、株券喪失登録の手続きが必要です(会社法221条以下)。登録から1年を経過しないと株券は再発行されないため、売却のスケジュールに大きく影響します。
なお、定款上は株券発行会社でも、実際には株券を発行していない会社も少なくありません。この場合は定款を変更して株券不発行会社へ移行するほうが早いこともあるので、司法書士や弁護士に確認してください。
会社が株券不発行会社の場合は株券そのものがないため、まず株主名簿の記載を確認します。会社に株主名簿記載事項証明書の交付を請求し、自分の氏名と持ち株数が正しく記載されているかを確認しておきましょう。
あわせて、定款で譲渡制限の有無と承認機関(取締役会か株主総会か)も確認しておくと、STEP3がスムーズです。
STEP2|買い手を探し、条件を交渉する
未公開株には市場がないため、買い手は自分で見つける必要があります。会社ごと譲るのであれば、国内最大級のM&A・事業承継マッチングプラットフォーム「TRANBI(トランビ)」のようなサービスや仲介会社を通じて買い手を探します。持ち株だけを手放すのであれば、発行会社や既存株主が相手になります。
相手が決まったら、譲渡する株式の数と1株あたりの価格、決済の時期、表明保証の範囲などを詰めていきます。会社ごとの譲渡であれば、買い手によるデューデリジェンス(買収監査)がこの段階で入ります。
STEP3|譲渡承認請求を行う
譲渡制限株式であれば、会社に対して譲渡承認請求を行います。請求書には、譲渡する株式の数と、譲り受ける人の氏名・名称を記載します。
請求できる人は、どの段階で請求するかによって変わります。
- 売り手(現在の株主)が譲渡前に請求する場合:単独で請求できます(会社法136条)
- 買い手が取得後に請求する場合:原則として元の株主と共同で行う必要があります(会社法137条)
会社は請求を受けたら、取締役会設置会社であれば取締役会、取締役会を置かない会社であれば株主総会で承認するかどうかを決めます(会社法139条1項)。ただし、定款で別の機関(代表取締役など)を承認機関と定めている場合は、その定めに従います。STEP1で定款を確認しておくのはこのためです。
なお、譲渡先が発行会社そのもの(自己株式の取得)である場合、この譲渡承認請求は不要です。会社法136条が、承認請求の対象となる譲渡先から発行会社を除いているためです。この場合は、次に説明する会社側の手続きに進みます。
注意したい点は期限です。会社が請求の日から2週間(定款でこれより短い期間を定めている場合はその期間)以内に承認・不承認を通知しなかった場合、譲渡を承認したものとみなされます(会社法145条1号)。売り手から見れば、会社が動かないまま2週間が過ぎれば譲渡が認められる、ということになります。
STEP4|株式譲渡契約を結ぶ
条件が固まったら、売り手と買い手で株式譲渡契約を結びます。譲渡制限株式では、会社の承認を得る時期と契約を結ぶ時期を取引の条件に応じて設計します(先に契約を結び、承認の取得を決済の前提条件とすることもあります)。契約書には、少なくとも次の内容を定めます。
- 譲渡する株式の種類と数、1株あたりの価格
- 売買代金の支払い時期と方法
- 株式の権利がいつ買い手に移るか
- 売り手が株式を適法に保有していることの表明保証
- 株主名簿の書き換えに売り手が協力する義務
契約の締結日と代金の決済日を分ける場合は、決済日や決済の前提条件を契約書で定めます。会社ごとの譲渡では、記載項目や表明保証の設計が結果を左右します。詳しくは株式譲渡契約書(SPA)の記事をご覧ください。
STEP5|代金の決済と株主名簿の書き換え
決済日には、契約で定めた条件にしたがって売買代金の支払いと株式譲渡の手続きを行います。株券発行会社であれば、このタイミングで株券を交付します。
最後に、会社に対して株主名簿の書き換え(名義書換)を請求します。株主名簿が書き換わってはじめて、買い手は会社に対して株主であると主張できるようになります。
この名義書換は、株券不発行会社では売り手と買い手が共同で請求するのが原則です(会社法133条2項)。株券発行会社であれば、買い手が株券を提示して単独で請求できます。いずれにしても、代金を受け取ったあとに売り手が協力しないとトラブルになるため、STEP4の契約書に協力義務を明記しておくのが安全です。
未公開株の価格はどう決まるのか
未公開株には市場価格がありません。では、価格はどのように決まるのでしょうか。誰に売るかによって考え方が変わります。
M&Aでは当事者の合意で決まる
第三者へのM&Aで株式を譲渡する場合、価格は基本的に売り手と買い手の交渉によって決まります。法律で一律の計算式が定められているわけではありません。
とはいえ、根拠のない価格を提示しても交渉は進みません。売り手は後述する評価方法をもとに希望価格を組み立て、買い手は自社にとっての価値を計算して価格を提示します。買い手候補が複数いれば、条件を比べながら決めていくことになります。
相続・贈与では相続税評価額を用いる
相続や贈与によって株式を取得する場合、相続税・贈与税の計算には、財産評価基本通達にもとづいて算定した相続税評価額を用います。これは税額を計算するための評価額です。
一方、親族への売買では、相続税評価額がそのまま売買価格になるわけではありません。税務上の時価と大きく離れた価格をつけると、贈与税などの問題が生じることがあります。非上場株式の税務上の評価は立場によって考え方が変わるため、価格の根拠を残したうえで、事前に税理士へ確認しておくことが大切です。
代表的な3つの評価アプローチ
株式の価値を計算する方法は、大きく3つのアプローチに分かれます。どれかひとつを選ぶのではなく、複数の方法で計算して見比べるのが実務の進め方です。
| アプローチ | 考え方と主な手法 | 向いているケース |
|---|---|---|
| コスト・アプローチ | 資産と負債から計算する。 簿価純資産法、時価純資産法 |
資産を多く持つ会社。中小企業でよく使われる |
| インカム・アプローチ | 将来の利益から計算する。 DCF法、収益還元方式、配当還元方式 |
事業計画があり、成長が見込める会社 |
| マーケット・アプローチ | 似た会社や取引事例と比べる。 類似会社比較法、市場株価法 |
同業の上場企業が複数ある業種 |
コスト・アプローチは客観的な数字にもとづくため納得を得やすい反面、将来の収益力が反映されません。インカム・アプローチは将来性を織り込めますが、事業計画の精度に結果が左右されます。マーケット・アプローチは比較対象となる会社が見つからないと使えません。
どの方法が自社に合うかの判断には専門的な知識が必要です。公認会計士やM&A仲介会社など、評価の実務に慣れた専門家に相談するのが確実です。各手法の計算方法はバリュエーションの記事で詳しく解説しています。
未公開株を売るときの税金
売却代金がそのまま手元に残るわけではありません。誰に売るかによって税金の扱いが変わるため、手取りが大きく違ってくることがあります。ここでは個人株主のケースを整理します。
第三者に売ったときは20.315%の申告分離課税
個人が未公開株を第三者に譲渡して利益が出た場合、譲渡所得として申告分離課税の対象になります。給与など他の所得とは分けて計算し、税率は所得の大きさにかかわらず一定です。
- 所得税:15%
- 復興特別所得税:0.315%(所得税額の2.1%)
- 住民税:5%
- 合計:20.315%
課税の対象になるのは、売却代金そのものではなく利益の部分です。計算式は次のとおりです。
譲渡所得 = 譲渡価額 - (取得費 + 譲渡費用)
取得費は、その株式を手に入れるためにかかった金額です。創業時から持っている株式などで取得費がわからない場合は、譲渡価額の5%を概算取得費として使うことが認められています。ただし、実際の取得費のほうが大きければそのぶん税金は減るため、出資の記録や払込証明が残っていないかを先に探すことをおすすめします。
発行会社に売ると「みなし配当」になる
発行会社に買い取ってもらう場合には注意が必要です。この場合、受け取った代金は原則として次の2つに分けて課税されます(譲渡対価が資本金等の額に対応する部分以下であれば、みなし配当は生じません)。
- 株式の譲渡所得になる部分:資本金等の額に対応する部分が譲渡所得の収入金額となり、そこから取得費などを差し引いた譲渡益が申告分離課税(20.315%)の対象
- みなし配当になる部分:それを超える一定の部分はみなし配当として配当所得に区分され、総合課税(累進税率)の対象
配当所得は給与などと合算して累進税率で課税されるため、所得が多い人ほど税負担が重くなります。第三者に売れば譲渡益に対して一律20.315%で済むところが、発行会社に売ると配当所得となる部分にそれを上回る税率がかかることもあるということです。
また、みなし配当となる部分には、支払いの際に20.42%(所得税・復興特別所得税。住民税はかかりません)が源泉徴収され、確定申告で精算します。
「会社に買い取ってもらうのがいちばん手軽そう」と考えて進めると、手取りで差がつく場合があります。金額が大きいときは、事前に税理士へ試算を依頼しておくと安心です。
相続した株式を発行会社に売るときの特例
ただし、相続で取得した未公開株を発行会社に譲渡する場合には特例があります。一定の要件を満たすとみなし配当課税は行われず、譲渡対価の全額が株式の譲渡所得の収入金額として扱われます。そこから取得費や譲渡費用を差し引いた譲渡益が、累進課税ではなく申告分離課税(20.315%)の対象になります。
主な要件は次のとおりです。
- 相続または遺贈で取得した非上場株式であること
- その相続について納付すべき相続税額があること
- 相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに発行会社へ譲渡すること(相続開始からおおむね3年10か月以内)
- 譲渡の時までに、特例に関する届出書を発行会社へ提出すること
同じ期間内であれば、納めた相続税の一部を取得費に加えられる取得費加算の特例も使えます。相続した株式を会社に買い取ってもらって納税資金にあてる、という場面ではこの2つをセットで検討することになります。
いずれも期限と届出がある制度です。相続税を納めたあとで気づいても間に合わないことがあるため、相続が発生した段階で税理士に相談しておくのが確実です。M&A全体の税金はM&Aの税金の記事で解説しています。
参考:No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)|国税庁 / No.1477 相続により取得した非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の課税の特例|国税庁 / No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁
未公開株の譲渡で注意すべきこと
最後に、実務でつまずきやすいポイントを4つ挙げておきます。どれも売る前に気づいていれば防げるものです。
名義書換をしないと譲渡を主張できない
株券発行会社では、株券を交付しなければ株式譲渡の効力が生じません。また、株券を持っている人は適法な所持人と推定されるため(会社法131条1項)、株券を手元に置いたままにしておくと、思わぬトラブルの原因になります。
株券不発行会社では、株主名簿への記載・記録が対抗要件になります(会社法130条)。株式を取得しても名義書換が済んでいなければ、原則として会社やほかの第三者に対してその取得を主張できません。二重譲渡のようなトラブルを防ぐためにも、譲渡後は速やかに名義書換を進めることが重要です。
売り手にとっても、名義書換が終わるまでは株主名簿に自分の名前が残ったままです。株主総会の招集通知が届き続けたり、後日の紛争で株主として扱われたりするおそれがあるため、決済と同時に名義書換まで完了させておきましょう。
名義株・株主名簿が整備されていないケース
設立が古い会社では、名義株の問題が残っていることがあります。かつて発起人が7人必要だった時代に、名前だけ借りて株主として登記したまま整理されていない、というケースです。
また、株主名簿そのものが作られていない、あるいは何十年も更新されていない会社も珍しくありません。この状態のままでは誰が株主なのかを証明できず、譲渡の手続きが進みません。
売却を考え始めたら、まず株主名簿の現状を確認し、必要なら実態に合わせて整備することから始めてください。買い手が見つかってから着手すると、交渉が止まります。
少数株主は買い手が限られる
持ち株が数パーセントの少数株主の場合、第三者に売るのは現実的でないことが多いのが実情です。買っても経営に関与できず、配当も期待しにくい株式を、外部の人が買う理由が乏しいためです。
この場合の出口は、発行会社か支配株主に買い取ってもらう形が中心になります。ただし、発行会社にも支配株主にも買い取る義務はありません。発行会社の場合は分配可能額の範囲内でしか取得できず、応じるかどうかは会社の判断です。
なお、譲受人を決めたうえで譲渡承認請求を行い、あわせて「承認しないなら買い取ってほしい」と請求した場合にかぎり、会社が承認しなければ会社または指定買取人が買い取ることになります(会社法138条・140条)。譲受人を示さずに買い取りだけを求めても、この仕組みは使えません。
買い手が見つからないとき
会社ごと譲りたいが後継者も買い手も見当たらない、というのは中小企業でよくある状況です。ただ、自分の身近な範囲に買い手がいないだけということも少なくありません。
近年は、事業を譲り受けたい個人や中小企業がインターネット上のマッチングプラットフォームで買い手候補を探せるようになっています。国内最大級のM&A・事業承継マッチングプラットフォーム「TRANBI(トランビ)」では、無料の会員登録で買い手候補の反応を見ながら検討を進められます。
会社を売ること自体を検討し始めた段階であれば、会社を売りたい経営者が今から整えておく10項目の記事もあわせてご覧ください。
未公開株の譲渡に関するよくある質問(FAQ)
未公開株の売却について、よく寄せられる疑問にお答えします。
未公開株はどこで売れますか?
証券取引所では売れません。売却先は第三者(M&A)・発行会社・親族や役員の3つが基本です。会社ごと譲るのであればM&Aのマッチングプラットフォームや仲介会社を通じて買い手を探し、持ち株だけを手放すのであれば発行会社や既存株主に打診するのが現実的です。
未公開株を売るのにどれくらい時間がかかりますか?
相手がすでに決まっていて持ち株だけを譲るのであれば、承認手続きと契約で1〜2か月程度が目安です。会社ごとのM&Aで買い手を探すところから始める場合は、買い手候補との交渉やデューデリジェンスを含めて半年から1年程度かかることも珍しくありません。株主名簿の整備が必要な場合は、さらに前倒しで準備が要ります。
会社が譲渡を承認してくれない場合はどうなりますか?
譲渡承認請求のときに「承認しないのであれば買い取ってほしい」とあわせて請求していれば、会社または会社が指定する買取人が株式を買い取ります。売買価格は当事者の協議で決め、整わない場合は期限内に申し立てれば裁判所が決定します。ただし、買い取りの請求をせずに承認だけを求めた場合は、拒否されるとその相手には譲渡できません。詳しくは譲渡制限株式の記事をご覧ください。
取得費がわからない株式でも売れますか?
売却自体は問題なくできます。税金の計算では、取得費が不明な場合に譲渡価額の5%を概算取得費とすることが認められています。ただし実際の取得費のほうが大きければ税負担は軽くなるため、出資時の払込記録や過去の決算書、株主名簿の記載などを先に探しておくと有利です。
相続した未公開株を現金化したいのですが、何から始めればよいですか?
まず株主名簿に自分の名義で記載されているかを確認してください。相続による取得は「譲渡」にあたらないため会社の承認は不要ですが、名義書換の請求は必要です。そのうえで、発行会社に買い取りの意向があるかを打診するのが一般的な流れです。
相続税を納めている場合は、相続開始からおおむね3年10か月以内に発行会社へ譲渡すると税負担が軽くなる特例があります。ただし、譲渡する日までに所定の届出書を発行会社へ提出しておく必要があります。期限と手続きの両方があるため、早めに税理士へ相談してください。
買い手が見つからない株式はどうすればよいですか?
少数株主であれば、発行会社や支配株主への買い取り打診が中心になります。会社ごと譲れる立場であれば、選択肢はもっと広がります。近年はマッチングプラットフォームを通じて、後継者を探す売り手と事業を譲り受けたい個人・企業が直接出会えるようになりました。
「地元に買い手がいない」と思っていた会社に、遠方や異業種から複数の打診が入ることもあります。まずは市場に出してみて反応を見る、という進め方も検討してみてください。
未公開株を現金化するにはどうすればよいですか?
証券会社の口座で売却することはできないため、相手を見つけて個別に譲渡することになります。現金を受け取れるのは、譲渡承認と契約を経た決済日です。株主名簿の書き換えは、その後の手続きになります。
手続きには株主名簿の確認から名義書換まで一定の時間がかかり、譲渡益には税金もかかります。「すぐに現金化したい」という場合ほど、株主名簿の整備と売却先の見当をつけることを先に進めておくと、実際に動き出したときの期間を短くできます。
まとめ|未公開株は売却先の選び方で手取りが変わる
未公開株(非上場株式)は証券取引所で売買できないため、売り手が自分で相手を探し、価格も個別に決める必要があります。多くの会社では譲渡に会社の承認が必要な点も、上場株式との大きな違いです。
本記事のポイントを整理します。
- 売却先は第三者(M&A)・発行会社・親族や役員の3つ。価格・手続きの重さ・税金がそれぞれ違う
- 売却の流れは株主名簿の確認 → 買い手探し → 譲渡承認請求 → 契約 → 決済と名義書換の5ステップ
- 会社が2週間以内に承認・不承認を通知しないと、譲渡を承認したものとみなされる
- 第三者への譲渡益は20.315%の申告分離課税。発行会社に売るとみなし配当となり総合課税になる部分がある
- 相続した株式を発行会社に売る場合は、一定の要件を満たせば、おおむね相続開始から3年10か月以内の譲渡について税制上の特例を使える
- 株主名簿が整備されていないと手続きが止まる。売却を考え始めた時点で現状を確認しておく
もっとも大きな分かれ道は、どこに売るかを知っているかどうかです。「会社に買い取ってもらうしかない」と思っていた株式が、第三者への譲渡なら大きく違う評価になることもあります。
後継者が見つからない、買い手の当てがないという方は、廃業を決める前に「TRANBI(トランビ)」で買い手候補を探してみてください。国内最大級のM&A・事業承継マッチングプラットフォームとして、中小企業や個人事業の譲渡・譲受を無料の会員登録から始められます。
