企業価値とは?会社の価値を測る指標・計算方法・高める方法を解説

企業価値とは?会社の価値を測る指標・計算方法・高める方法を解説

企業価値(会社の価値)とは、企業の経済的価値を金額化した経営の重要指標です。株式価値・時価総額との違い、EV/EBITDA倍率・PER・ROEなど6つの指標、3つの計算方法、企業価値を高める5つの方法まで実務目線で徹底解説します。

目次

M&Aや投資、経営戦略の策定において、「企業価値」は欠かせない重要な概念です。会社の価値はどのように評価され、どんな指標で測られるのでしょうか。経営者や投資家、M&Aを検討する方にとって、企業価値の正しい理解は意思決定の基盤となります。

本記事では、企業価値の定義から、事業価値・株主価値・時価総額・バリュエーションとの違い、企業価値を測る代表的な6つの指標、計算方法、企業価値を高める5つの方法、M&Aでの活用シーン、よくある質問まで実務目線で徹底解説します。

会社の価値を正しく理解し、経営や投資判断に活かすためのヒントが詰まっています。ぜひ最後まで読み進めてください。

企業価値とは?意味と会社の価値を測る重要性

「企業価値」とは、企業全体が持つ経済的な価値を金額で表したものです。M&Aや投資判断、経営戦略の策定など、さまざまな場面で重要な指標として活用されます。

企業価値の定義|企業の経済的価値の総額

企業価値とは、企業が事業活動や保有資産を通じて生み出す経済的価値の総額のことです。会社の規模・収益力・将来性・無形資産などを総合的に評価した結果として算出されます。

企業価値は、企業の価値を客観的に数値化する重要な指標です。経営者にとっては自社の現在地を把握する物差しとなり、投資家にとっては投資判断の根拠となります。M&Aの現場では、買収価格交渉の出発点として機能します。

企業価値が注目される理由

企業価値が現代経営で注目される背景には、以下のような変化があります。

  • M&Aの活発化: 事業承継・成長戦略としてのM&A件数が増加
  • 株主資本主義の浸透: ROE・ROICなど株主価値重視の経営指標
  • 無形資産の重要性向上: ブランド・技術・人材といった見えない価値が評価される時代
  • 事業承継ニーズ: 後継者不在による中小企業の売却検討増加
  • 資金調達の多様化: ベンチャーキャピタル・私募債など多様な調達手段

企業価値の向上は、社会的信頼性の獲得・資金調達コストの低下・優秀な人材の確保にも直結します。「企業価値経営」という言葉が広く使われるようになったのも、こうした背景があるためです。

上場企業と非上場企業の評価の違い

企業価値の測り方は、上場企業と非上場企業で大きく異なります。

上場企業の場合は株式時価総額(株価×発行済株式総数)が市場で日々算出され、企業価値の目安として機能します。市場参加者の評価がリアルタイムで反映されるため、客観性が高いのが特徴です。

一方、非上場企業には市場価格が存在しません。そのため、財務データや事業計画をもとに複数の評価手法を組み合わせて企業価値を算定する必要があります。中小企業のM&Aでは、この非上場企業の企業価値評価が交渉の中核となります。

企業価値と関連用語との違いを整理

企業価値を正しく理解するためには、混同されがちな関連用語との違いを明確に把握することが重要です。M&Aや投資の現場で頻繁に使われる用語との関係性を整理します。

事業価値との違い

事業価値とは、企業の本業が将来生み出すと見込まれるキャッシュフローの総価値のことです。いわば、その企業の「稼ぐ力」そのものを金額化したものです。

企業価値は、この事業価値に非事業用資産(本業に不要な遊休不動産・有価証券・余剰資金など)の価値を加算して算出されます。

  • 計算式: 企業価値 = 事業価値 + 非事業用資産の価値

多くの企業では企業価値の大部分を事業価値が占めますが、多額の現預金や不動産を保有している場合は非事業用資産の価値も無視できません

株主価値・株式価値との違い

株主価値とは、企業価値の中から最終的に株主の取り分となる価値のことです。「株式価値」もほぼ同じ意味で使われます。

企業は株主資本だけでなく、金融機関などからの借入金も活用して事業を運営しています。そのため、企業価値全体から先に返済義務のある負債(有利子負債など)を差し引いた残りが株主のものとなります。

  • 計算式: 株主価値(株式価値) = 企業価値 − 有利子負債

M&Aで株式譲渡を行う際の価格は、この株主価値を基準として交渉が進められます。有利子負債が多い企業ほど、企業価値が同じでも株主価値は小さくなるのがポイントです。

時価総額との違い

時価総額は、上場企業のみに用いられる指標で、計算式は「株価 × 発行済株式総数」です。株式市場における投資家たちが評価した、その時点での株主価値を示します。

時価総額は市場心理を反映するため、業績以外の要因(マクロ経済・業界ニュース・投資家心理)によって短期間で大きく変動します。一方、企業価値はファンダメンタルズに基づく「企業本来の価値」を意味するため、より長期的・本質的な指標といえます。

M&Aの実務では、時価総額をそのまま使うのではなく、コントロールプレミアム(経営権取得に対する上乗せ)を加味した企業価値で交渉が行われます。

バリュエーション(企業価値評価)との違い

「企業価値」と「バリュエーション(企業価値評価)」も混同されがちですが、両者は厳密には異なる概念です。

  • 企業価値: 評価された結果としての金額(名詞・数値)
  • バリュエーション: 企業価値を算定する行為・手法・プロセス(動詞・行為)

つまり、バリュエーションという手法を用いて企業価値という数値を算出するという関係です。M&Aや投資の現場では、まずバリュエーションを実施し、その結果として企業価値の金額が決まります。

バリュエーションとは?M&Aでの3つのアプローチ・計算方法をわかりやすく解説
用語説明
バリュエーションとは?M&Aでの3つのアプローチ・計算方法をわかりやすく解説

バリュエーションとは、M&Aや投資判断において企業価値を客観的に算定する手法です。コスト・マーケット・インカムの3つのアプローチ、時価純資産法・DCF法など計算方法、買い手と売り手の目的、バリュエーションレポートまで実務目線で徹底解説します。。

企業価値を測る代表的な6つの指標

企業価値を多角的に評価するために、実務では複数の指標が用いられます。それぞれの指標は異なる側面から企業の価値を測るため、組み合わせて総合的に判断することが重要です。

EV(Enterprise Value)|企業全体の価値

EV(Enterprise Value)は、株主と債権者の両方に帰属する企業全体の価値を示す指標です。M&Aの実務で最も使われる代表的な指標のひとつです。

  • 計算式: EV = 株式時価総額 + 有利子負債 − 現金及び現金同等物

EVは買収に必要な実質的なコストを表すため、M&Aの買収価格を検討する際の基準として広く活用されます。

EV/EBITDA倍率|M&Aで多用される評価指標

EV/EBITDA倍率は、EVをEBITDA(税引前利益+支払利息+減価償却費)で割った値で、投資回収にかかる年数の目安を示します。

  • 計算式: EV/EBITDA倍率 = EV ÷ EBITDA

業界平均は5〜10倍程度が目安で、成長業界では10倍超になることもあります。EV/EBITDA倍率は国際比較に適している(税制や減価償却の違いを排除できる)ため、M&Aで多用されます。

PER(株価収益率)

PER(Price Earnings Ratio)は、株価が1株当たり純利益の何倍かを示す指標です。「株価が割安か割高か」を判断する代表的な指標として、株式投資・M&Aの双方で活用されます。

  • 計算式: PER = 株価 ÷ 1株当たり純利益(EPS)

日本の上場企業の平均PERは15倍前後とされます。PERが高いほど投資家の期待が高いことを意味しますが、業種や成長段階によって適正水準が大きく異なる点に注意が必要です。

PBR(株価純資産倍率)

PBR(Price Book-value Ratio)は、株価が1株当たり純資産の何倍かを示す指標で、企業の資産価値に対する市場評価を表します。

  • 計算式: PBR = 株価 ÷ 1株当たり純資産(BPS)

PBR1倍が「解散価値と同等」とされる基準で、1倍を下回ると「割安」または「将来性が低い」と評価されます。近年、東京証券取引所がPBR1倍割れ企業に改善を要請するなど、企業価値向上の文脈で注目されています。

ROE(自己資本利益率)

ROE(Return on Equity)は、株主から預かった資金をどれだけ効率的に利益に変換しているかを示す指標です。株主目線での企業価値評価に欠かせません。

  • 計算式: ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100(%)

日本企業の平均ROEは8〜10%程度で、10%以上が優良企業の目安とされます。ROEの向上は株主価値の向上に直結するため、企業価値経営の中核指標です。

ROIC(投下資本利益率)

ROIC(Return on Invested Capital)は、株主資本と借入金を含めた投下資本全体に対する利益率を示す指標です。資本効率の高さを総合的に評価できます。

  • 計算式: ROIC = 税引後営業利益(NOPAT) ÷ 投下資本 × 100(%)

ROICがWACC(加重平均資本コスト)を上回れば、その企業は資本コストを超える価値を創出していると評価されます。近年、ROIC経営は企業価値向上のキードライバーとして注目されています。

ROE・ROA・ROICで読み解くM&A戦略|資本効率経営の実践ポイント
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ROE・ROA・ROICを軸にM&Aを再定義。資本コスト(WACC)との関係、ROIC逆ツリー、選択と集中、遊休資産の整理まで、資本効率経営の実践ポイントを解説します。

企業価値の計算方法|3つのアプローチと算出の流れ

企業価値を算出する方法は、「コスト・アプローチ」「マーケット・アプローチ」「インカム・アプローチ」の3つに大別されます。それぞれ強みと弱みが異なるため、複数を組み合わせて多角的に評価するのが一般的です。

コスト・アプローチ|純資産を基準にした評価

コスト・アプローチは、企業が保有する純資産を基準に企業価値を算定する方法です。貸借対照表の数値が基になるため、客観性が高く誰が評価してもほぼ同じ結果が出るのがメリットです。

主な手法には以下があります。

  • 簿価純資産法: 貸借対照表の純資産をそのまま採用
  • 時価純資産法: 資産・負債を時価評価して算定
  • 再調達原価法: 同等の資産を新たに調達する場合の費用で評価

デメリットは、将来の収益性やシナジーが反映されないことです。事業継続を前提としたM&Aには向きません。

時価純資産法とは?計算式・修正純資産・含み損益の考え方をわかりやすく解説
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時価純資産法とは?計算式・修正純資産・含み損益の考え方をわかりやすく解説

時価純資産法とは、企業の資産・負債をすべて時価に置き換えて純資産を算出するコストアプローチの評価手法です。計算式の仕組みから、含み損益・簿外債務・偶発債務の調整、DCF法や年買法との使い分けまで、中小企業のM&A実務に役立つ知識をわかりやすく解説します。

マーケット・アプローチ|市場価格を基準にした評価

マーケット・アプローチは、類似する上場企業や過去のM&A取引事例を参考に企業価値を算定する方法です。市場の実勢が反映されるため客観性に優れています。

主な手法には以下があります。

  • マルチプル法(類似会社比較法): 類似企業の評価倍率を活用
  • 類似取引比較法: 過去の類似M&A取引価格を参考
  • 市場株価法: 上場企業の市場株価をベースに算定

デメリットは、類似企業の選定が難しいこと、個別の事情が反映されにくいことです。

マルチプル法とは?EV/EBITDA・PERの見方と企業価値評価の考え方をわかりやすく解説
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マルチプル法とは?EV/EBITDA・PERの見方と企業価値評価の考え方をわかりやすく解説

マルチプル法とは何かをわかりやすく解説。EV/EBITDAやPERの見方を中心に、企業価値評価の基本や計算方法、類似会社比較法(CCA)やM&Aでの使い方まで実務目線で整理します。

インカム・アプローチ|将来収益を基準にした評価

インカム・アプローチは、企業が将来生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引いて企業価値を算定する方法です。将来性やシナジー効果を反映できるのが最大の強みです。

主な手法には以下があります。

ベンチャー企業やスタートアップなど、現在は赤字でも将来性が見込める企業の評価に適しています。ただし、事業計画の精度や割引率の設定によって結果が大きく変動します。

DCF法とは?企業価値評価の仕組みと計算方法をわかりやすく解説|FCF・WACC・継続価値
手法
DCF法とは?企業価値評価の仕組みと計算方法をわかりやすく解説|FCF・WACC・継続価値

DCF法とは、将来のフリー・キャッシュ・フロー(FCF)を現在価値に割り引いて企業価値を算出する評価手法です。DCF法の仕組みや計算方法、割引率(WACC)や継続価値(ターミナルバリュー)の考え方、企業価値・株式価値の算出プロセスまでわかりやすく解説します。

企業価値を高める5つの方法

企業価値の向上は、すべての企業経営者にとっての共通課題です。社会的信頼性の向上・資金調達コストの低下・M&A時の高い譲渡価額など、メリットは多岐にわたります。実務で効果が出やすい5つの方法を解説します。

収益性の向上(売上拡大・利益率改善)

企業価値を高める最も基本的な方法は、本業の収益性を向上させることです。売上拡大と利益率改善の両輪で取り組む必要があります。

  • 売上拡大: 新規顧客開拓・既存顧客深耕・価格改定・新商品開発
  • 利益率改善: 原価削減・業務効率化・付加価値の高い商品へのシフト
  • 顧客単価向上: アップセル・クロスセル・サブスクリプション化

特に利益率の改善は企業価値に直接インパクトを与えます。売上が同じでも、利益率が5%から10%に改善すれば、DCF法による企業価値は2倍近くになることもあります。

資本効率の改善(ROIC・ROEの向上)

ROIC・ROEといった資本効率を示す指標の改善は、企業価値向上の重要なドライバーです。少ない資本で大きな利益を生み出す体質を作ることが目標です。

  • 不採算事業の整理: 低収益の事業から撤退し、資本を集中
  • 運転資本の圧縮: 在庫削減・売掛金回収サイクル短縮
  • 資産の有効活用: 遊休資産の売却・稼働率向上
  • 適正な資本構成: 過剰な自己資本の見直し・自社株買い

ROICがWACCを上回る状態を維持することが、企業価値創出の絶対条件です。

無形資産・ブランド価値の強化

現代の企業価値の大きな割合を占めるのが、ブランド・技術・人材・顧客基盤といった無形資産です。財務諸表には表れにくいですが、長期的な競争優位の源泉となります。

  • ブランド構築: 一貫したブランドメッセージ・顧客体験の向上
  • 技術投資: R&D・特許取得・DX推進
  • 人材育成: 教育研修・キーマンの定着・採用力強化
  • 顧客基盤: 顧客満足度向上・LTV向上・コミュニティ形成

無形資産はM&A時に「のれん」として高く評価されるため、長期的な企業価値向上に直結します。

非事業資産の整理(遊休不動産・余剰資金の活用)

本業に活用されていない非事業資産は、保有しているだけで固定資産税やコストが発生します。これらを整理・活用することで企業価値を高められます。

  • 遊休不動産の売却: 売却益で本業投資・有利子負債返済
  • 余剰資金の活用: 戦略的投資・M&A・株主還元
  • 政策保有株式の見直し: 持ち合い株式の縮小
  • 子会社・関連会社の再編: 不採算子会社の売却・カーブアウト

東証のコーポレートガバナンス・コードでも、政策保有株式の縮減や資本効率の向上が求められています。

M&A・新規事業による成長加速

オーガニックな成長に加えて、M&Aや新規事業による非連続的な成長も企業価値向上の有力な手段です。

  • 同業他社のM&A: 市場シェア拡大・スケールメリット獲得
  • 異業種・周辺領域M&A: 事業領域拡大・新規顧客獲得
  • 技術獲得型M&A: 自社にない技術・ノウハウの取り込み
  • 新規事業立ち上げ: 既存事業のシナジーを活かした新市場参入

M&Aは時間を買う戦略であり、自社で一から構築するよりも短期間で企業価値を大きく高めることが可能です。ただし、PMI(統合プロセス)の成否が企業価値向上の鍵となります。

事業ポートフォリオとは?PPM・資本効率・M&Aで読み解く企業価値と経営の構造
用語説明
事業ポートフォリオとは?PPM・資本効率・M&Aで読み解く企業価値と経営の構造

事業ポートフォリオの基本からPPM、資本効率(ROIC・ROE)、シナジー、カーブアウト、M&Aまでを体系的に解説。企業価値を高める経営の構造と、選択と集中の実践ポイントをわかりやすく整理します。

M&Aにおける企業価値の活用シーン

M&Aの実務では、企業価値の正確な把握が交渉の成否を左右します。売り手・買い手それぞれの立場での活用ポイントを解説します。

売り手にとっての企業価値把握の重要性

売り手にとって企業価値の把握は、適正価格での売却と安値での買い叩き防止のために不可欠です。

特に創業者にとって、会社は人生をかけて育て上げてきた結晶です。決算書の数字だけでは見えない無形資産(技術力・ブランド・顧客基盤・人材)を定量化することで、説得力ある交渉が可能になります。

また、企業価値を客観的に把握することで、売却前に価値を高める施策(不採算事業の整理・収益性改善・無形資産の見える化)を計画的に実施できます。M&Aの3〜5年前から準備を始めることで、譲渡価額を大きく向上させることが可能です。

買い手にとっての企業価値分析

買い手にとって企業価値分析は、「高値づかみ」のリスク回避と投資妥当性の判断のために重要です。

M&Aは多額の資金を投じる一大投資です。客観的な企業価値評価を行わずに売り手の希望額や感覚だけで価格を決めると、投じた資金を回収できなくなる恐れがあります。

また、企業価値分析のプロセスを通じてデューデリジェンス(DD)と連動し、事業のリスクや課題を事前に洗い出すことができます。これは買収後の経営計画(PMI)を立てる上でも重要な情報となります。

専門家への相談が必要な理由

企業価値評価は専門性の高い業務であり、第三者の専門家に依頼することで客観性と信頼性が確保できます。

  • M&A仲介会社: マッチングから評価・交渉サポートまで一貫対応
  • 会計事務所・税理士: 財務面からの企業価値評価
  • ファイナンシャルアドバイザー(FA): 高度な企業価値分析・戦略立案
  • 弁護士: 法務リスクの洗い出し・契約書チェック

特に中小M&Aでは、M&Aマッチングプラットフォーム+専門家連携の活用が、コストを抑えながら適正な企業価値評価を実現する有力な選択肢です。

企業価値に関するよくある質問

企業価値についてよく寄せられる疑問にお答えします。

企業価値と株式価値の違いは何ですか?

企業価値は株主と債権者の両方に帰属する企業全体の価値であるのに対し、株式価値(株主価値)は株主のみに帰属する価値です。計算式は「株式価値 = 企業価値 − 有利子負債」となります。M&Aで株式譲渡を行う際の価格は株式価値が基準となります。有利子負債が多い企業ほど、企業価値が同じでも株式価値は小さくなります。

中小企業でも企業価値は測れますか?

はい、測れます。むしろ中小企業のM&Aや事業承継では、企業価値評価が必須です。中小企業の場合は、時価純資産に数年分ののれん(営業権)を加算する「年買法」が中小M&A実務で多用されます。また、DCF法・マルチプル法など複数の手法を組み合わせて評価することで、より客観性の高い企業価値を算定できます。M&Aマッチングプラットフォームでは、無料で簡易的な企業価値算定サービスを提供しているところもあります。

赤字企業の企業価値はゼロですか?

いいえ、赤字でも企業価値がゼロになるとは限りません。赤字企業でも、将来有望な技術・特許、顧客基盤、優秀な人材、市場シェアなどの無形資産があれば、買い手にとって価値ある企業として評価されます。特にベンチャー企業やスタートアップは現時点で赤字でも、将来の成長性を加味したインカム・アプローチで高い企業価値がつくことも珍しくありません。ただし、債務超過や継続困難な経営状態の場合は、企業価値がマイナス(負ののれん)になる可能性もあります。

企業価値の指標で最も重要なものは何ですか?

状況によって異なりますが、M&Aの実務で最も重視されるのはEV/EBITDA倍率です。投資回収にかかる年数の目安を示し、国際比較にも適しているためです。経営指標としてはROIC(投下資本利益率)が注目されており、これがWACC(資本コスト)を上回るかどうかで企業価値創出力が判断されます。単一指標で判断するのではなく、複数指標を組み合わせて多角的に評価するのが実務の鉄則です。

企業価値を高めるのにどのくらいの期間がかかりますか?

短期的な施策(余剰資産の整理・運転資本圧縮など)であれば半年〜1年で効果が出ることもあります。一方、本格的な収益性向上・ブランド構築・人材育成といった本質的な企業価値向上には3〜5年以上の中長期的取り組みが必要です。M&Aを売却出口として検討する場合は、3〜5年前から計画的に企業価値向上施策を実施することで、譲渡価額を大きく向上させることが可能です。

BtoB企業の企業価値評価で特に重要な指標は何ですか?

BtoB企業の企業価値評価では、一般的な指標に加えて顧客基盤の質や継続性を測る指標が重視されます。具体的には、顧客生涯価値(LTV)・解約率(チャーンレート)・継続課金収益(MRR/ARR)・主要顧客への売上依存度などです。BtoB企業は少数の大口顧客に売上が集中することが多いため、特定顧客への依存リスクの分析が重要です。また、長期契約やサブスクリプション型ビジネスでは将来キャッシュフローの予測精度が高いため、DCF法による企業価値評価が特に有効です。

まとめ|企業価値を正しく理解して経営に活かす

企業価値は、企業の経済的な価値を金額で表した経営の最重要指標です。本記事のポイントを整理しておきましょう。

  • 企業価値とは、企業全体が持つ経済的価値を金額化したもの
  • 企業価値 = 事業価値 + 非事業用資産、株式価値 = 企業価値 − 有利子負債
  • バリュエーション(評価行為)と企業価値(評価結果)は明確に区別する
  • 代表的な指標は、EV・EV/EBITDA倍率・PER・PBR・ROE・ROIC
  • 計算方法は3アプローチ。コスト(純資産)・マーケット(市場)・インカム(将来収益)を組み合わせる
  • 企業価値を高める5つの方法:収益性向上・資本効率改善・無形資産強化・非事業資産整理・M&A活用
  • M&Aでは、売り手・買い手とも企業価値評価が交渉の基盤
  • 専門家(M&A仲介・会計事務所・FA)への相談で客観性と信頼性を確保

企業価値の向上は、社会的信頼性の獲得・資金調達コストの低下・M&A時の高い譲渡価額など、経営に多くのメリットをもたらします。自社の現状把握から始め、中長期的視点で企業価値向上に取り組むことが、持続的成長の鍵です。

M&Aによる企業価値評価や事業承継の検討には、専門的な知識と経験が求められます。国内最大級のM&Aマッチングプラットフォーム「TRANBI(トランビ)」では、企業価値の簡易算定サービスや経験豊富な専門家の紹介を行っています。納得感のあるM&Aで、企業価値を最大化させましょう。

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記事監修: 株式会社トランビ 代表取締役CEO 高橋 聡
【プロフィール】
アスクホールディングス株式会社代表取締役社長、中小企業庁中小M&Aガイドライン作成委員。アクセンチュアを経てアスクホールディングス株式会社を先代から事業承継。中小企業におけるM&A活性化の必要性を痛感しトランビを創業。
著書: 「起業するより会社は買いなさい」サラリーマン・中小企業のためのミニM&Aのススメ
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