エグゼキューションとは?M&Aでの意味とオリジネーションとの違いを解説
エグゼキューションとは、M&Aで相手が決まったあと、契約を締結して取引を成立させるまでの実務全般を指します。英語の意味からオリジネーション・PMIとの違い、秘密保持契約から企業価値評価・デューデリジェンス・クロージングまでの業務内容と担い手を解説します。
- 01 エグゼキューションとは|M&Aにおける「実行」の段階
- 英語の execution は「実行」「遂行」
- M&Aでは「相手が決まってから成約まで」の実務を指す
- 表記ゆれ|エクゼキューション・エクスキューションも同じ意味
- 02 オリジネーション・エグゼキューション・PMI|M&Aの3つのフェーズ
- オリジネーション|案件を見つけて、提案する
- エグゼキューション|合意に向けて実行する
- PMI|引き継いだあとに成果を出す
- 3つのフェーズの違いを整理する
- 03 エグゼキューションで実際に行う業務
- 秘密保持契約を結び、情報を開示する
- 企業価値を評価し、譲渡価格の目安を出す
- 条件を交渉し、基本合意書を締結する
- デューデリジェンスで買い手が対象会社を調査する
- 最終契約を結び、クロージングを迎える
M&Aの解説記事を読んでいると、エグゼキューションという言葉に出会うことがあります。日本語に訳せば「実行」ですが、M&Aの世界では単なる実行という意味ではなく、相手が決まったあと、契約を締結して取引を成立させるまでの実務を指す用語として使われています。
検索では「エグゼキューションとは何か」「どの業務のことなのか」という疑問が多く見られます。オリジネーションやPMIといった似た言葉との関係が整理できていないと、資料を読んでも話が入ってこないためです。
この記事では、エグゼキューションの意味を英語の語義からたどり、オリジネーション・エグゼキューション・PMIという3つのフェーズのなかでどこに位置するのかを整理します。そのうえで、実際に行う業務、担い手、つまずきやすい点までを解説します。M&A全体の手順を先に確認したい方はM&Aの流れの記事をご覧ください。
エグゼキューションとは|M&Aにおける「実行」の段階
まず言葉の意味から確認します。日常のビジネス会話で使われる「エグゼキューション」と、M&Aで使われる「エグゼキューション」は、指す範囲が違います。
英語の execution は「実行」「遂行」
エグゼキューションは英語の execution をカタカナにした言葉で、実行・遂行を意味します。動詞 execute の名詞形です。
ビジネスの現場では、M&Aとは関係なく「戦略のエグゼキューション」「エグゼキューション力が高い」といった使い方もされます。この場合は決めたことを最後までやり切る力という意味合いです。
一方、金融や投資銀行の分野では、execution は取引を成立させるまでの一連の実務を指す専門用語として定着しています。M&Aで使われるエグゼキューションも、この流れをくむ言葉です。
M&Aでは「相手が決まってから成約まで」の実務を指す
M&Aにおけるエグゼキューションは、相手が決まったあと、契約を締結して取引を成立させるまでの実務全般を指します。
具体的には、秘密保持契約の締結、企業価値評価、条件交渉、基本合意書の締結、デューデリジェンス、最終契約書の締結、クロージングまでが含まれます。相手を見つけたあとの「詰めの作業」すべてを実行する段階、と考えると分かりやすいでしょう。
ただし、どこからをエグゼキューションと呼ぶかは、明確に決まっているわけではありません。会社や書籍によっては、相手探しの段階から含めて「エグゼキューション」と呼ぶこともあります。資料を読むときは、その文書がどこからどこまでを指しているのかを確認してください。
この記事では、実務でもっとも一般的な「相手が決まったあと、成約まで」という区切りで解説します。
表記ゆれ|エクゼキューション・エクスキューションも同じ意味
この言葉は音をカタカナに写したものなので、検索するときに表記が揺れやすいという特徴があります。
- エグゼキューション:もっとも一般的な表記
- エクゼキューション:「グ」が濁らない表記
- エクスキューション:スペルの ex- をそのまま読んだ表記
- エクセキューション:「ゼ」が「セ」になった表記
いずれも同じ execution を指しており、意味に違いはありません。M&Aの資料で見かけたときは、どの表記でも同じ業務のことだと考えて問題ありません。
なお、似た響きの言葉にインプリメンテーション(implementation)があります。こちらは「実装」「導入」の意味で、決まった計画をシステムや組織に落とし込む場面で使われます。M&Aのエグゼキューションとは別の概念です。
オリジネーション・エグゼキューション・PMI|M&Aの3つのフェーズ
エグゼキューションという言葉は、単独で覚えるより前後のフェーズとセットで捉えたほうが理解しやすくなります。M&Aの実務は、大きく3つのフェーズに分かれています。
オリジネーション|案件を見つけて、提案する
オリジネーションは、M&Aの案件そのものを生み出す段階です。英語の origination は「起こすこと」「創出」を意味します。
具体的には、譲渡を検討していそうな会社を探す、買収意欲のある会社に提案する、両者を引き合わせる、といった活動です。「まだ案件になっていないものを、案件にする」段階だと考えてください。
売り手にとっては、この段階が相手探しにあたります。近年はM&Aマッチングサービスを使って、自分で相手を探すケースも増えています。
エグゼキューション|合意に向けて実行する
相手が決まり、双方が具体的に検討を始めたところからエグゼキューションが始まります。
ここからは、決まった相手と、具体的な条件を詰めていくという作業が中心になります。企業価値の評価、条件のすり合わせ、相手企業の調査、契約書の作成といった専門的な業務が続きます。
3つのフェーズのなかでもっとも実務の負荷が高いのがこの段階です。案件によって差が大きく、数か月から1年程度、規模によってはそれ以上かかることもあります。
PMI|引き継いだあとに成果を出す
PMI (Post Merger Integration)は、クロージング後の統合作業です。
制度や業務プロセスを合わせる、組織や人事を再編する、企業文化を融合させる、といった取り組みを指します。契約が終わったあとの話ですが、期待した成果を実現できるかどうかを大きく左右するため、実務ではエグゼキューションと同じくらい重視されます。
詳しくはPMIの記事で解説しています。
3つのフェーズの違いを整理する
3つのフェーズを並べて比べると、担当する業務も、かかる期間も、関わる人も変わることが分かります。
| フェーズ | この段階ですること | 主に関わる人 |
|---|---|---|
| オリジネーション | 相手を探す、提案する、引き合わせる | 経営者、仲介会社、マッチングサービス |
| エグゼキューション | 企業価値評価、条件交渉、デューデリジェンス、契約締結 | 経営者、FA・仲介、弁護士、会計士 |
| PMI | 制度・業務・組織・企業文化の統合 | 買い手の経営陣と現場、譲渡した経営者 |
エグゼキューションだけが独立しているわけではありません。オリジネーションで誰と組むかを誤ると、エグゼキューションでいくら詰めても条件は良くなりません。そのため、実務では3つを続きのものとして捉えます。
エグゼキューションで実際に行う業務
ここからは、エグゼキューションの中身を順に見ていきます。個々の手続きが「全体のなかでどういう役割を持つのか」を中心に説明します。各手続きの詳しい進め方は、それぞれの記事で解説しています。
秘密保持契約を結び、情報を開示する
相手が決まったら、まず秘密保持契約(NDA)を結びます。
この段階で売り手は、決算書や事業計画、取引先の情報といった社外に出したくない情報を開示することになります。契約が成立するとは限らない相手に社内の情報を渡すため、情報の使い道と、話が流れたときの返却・破棄の方法を先に決めておく必要があります。
秘密保持契約の締結が、実質的なエグゼキューションの入り口になります。
企業価値を評価し、譲渡価格の目安を出す
次に、対象となる会社や事業がいくらの価値を持つのかを算定します。これがバリュエーションです。
中小企業のM&Aでは、時価純資産に営業利益の数年分を足す方法がよく使われます。ほかに、将来のキャッシュフローから逆算する方法や、類似する上場企業の指標を当てはめる方法もあります。
ただし、算定した金額がそのまま売買価格になるわけではありません。算定額はあくまで交渉の出発点で、最終的な譲渡価格は当事者の合意で決まります。算定の考え方は企業価値の記事で解説しています。
条件を交渉し、基本合意書を締結する
価格の目安が出たら、譲渡の方法、時期、従業員の処遇、経営者の引き継ぎ期間といった条件を詰めます。合意した内容は基本合意書(MOU)にまとめます。
なかでも従業員の処遇は、譲渡の方法によって手続きが変わります。株式譲渡では会社がそのまま存続するため雇用契約は原則として維持されますが、事業譲渡では従業員を個別に転籍させる形になり、一人ひとりの同意が必要です。
基本合意書は法的な拘束力を持たせないのが一般的です。ただし、秘密保持と独占交渉権といった一部の条項には拘束力を持たせることが多く、この点は例外です。
買い手が提示する意向表明書(LOI)や、一定期間ほかの相手と交渉しないことを約束する独占交渉権も、この段階で登場します。
デューデリジェンスで買い手が対象会社を調査する
基本合意のあと、買い手が対象会社を調査します。これがデューデリジェンス(DD)です。
財務、法務、税務、事業、人事など複数の観点から実施され、規模によっては1か月以上かかります。売り手は依頼された資料を次々に出していく立場になるため、資料が整理されていないと調査が長引きます。
財務デューデリジェンスでは、決算書だけでは把握しにくい債務や、収益・費用の実態が確認されます。契約内容と実態のずれについては、法務デューデリジェンスなどを通じて確認されることもあります。ここで簿外債務や偶発債務が見つかると、価格や条件の見直しにつながることがあります。
最終契約を結び、クロージングを迎える
調査の結果を踏まえて条件を確定し、最終契約を締結します。株式譲渡であれば株式譲渡契約書(SPA)、事業譲渡であれば事業譲渡契約書と呼ばれる契約書です。
最終契約には、表明保証が盛り込まれます。開示した内容が事実と違っていた場合に、どちらがどこまで責任を負うかを定めるものです。
契約後、引き渡しと代金の決済を行って取引が完了します。株式譲渡では株主名簿の名義書換によって株主が入れ替わり、事業譲渡では対象になる資産・契約・従業員を個別に移していきます。この一連の手続きがクロージングです。ここまで到達して、はじめてエグゼキューションが終わります。
誰がエグゼキューションを担うのか
エグゼキューションは専門的な業務の連続なので、当事者だけで完結させるのは容易ではありません。誰が何を担当するのかを整理しておきます。
FAと仲介会社|立ち位置が違う
M&Aの実務を支援する専門家には、大きく2つの立ち位置があります。
- FA(ファイナンシャル・アドバイザー):売り手か買い手の一方だけに立ち、依頼した側の利益を最大化するように動く
- 仲介会社:売り手と買い手のあいだに立ち、両者の合意形成を進める
どちらが良いという話ではありません。違いは依頼者との契約関係と、取引における立場です。自社の利益を代表して交渉にあたる立場を求めるのか、双方の間に立って合意形成を進める支援を求めるのか。取引の規模、目的、必要な支援の内容から選びます。FAと仲介の使い分けはM&Aアドバイザリーの記事で詳しく整理しています。
なお、支援を受けると費用が発生します。着手金、中間金、成功報酬といった料金体系は会社によって異なるため、契約前に仲介手数料で確認しておくことをおすすめします。
弁護士・会計士・税理士が関わる場面
FAや仲介会社が全体を進行する一方で、契約書の作成や税務の判断は個別の専門家が担います。
- 弁護士:契約書の作成とレビュー、法務デューデリジェンス、許認可の確認
- 公認会計士:財務デューデリジェンス、企業価値の算定
- 税理士:税務デューデリジェンス、譲渡にかかる税金の試算
中小企業のM&Aでは、顧問税理士が最初の相談相手になることも多くあります。誰にどこまで依頼できるかはM&Aと資格の記事で整理しています。
契約書の内容に不安がある場合は、早い段階で弁護士に相談しておくと安心です。M&Aにおける弁護士の役割はM&Aのサポートに弁護士は有効?の記事で詳しく解説しています。
経営者自身がやらなければならないこと
専門家に任せられる業務は多いものの、経営者本人にしかできないことがあります。
- 条件の判断:どの条件なら譲れて、どこは譲れないのかを決める
- 資料の提供:デューデリジェンスで求められる資料をそろえる
- トップ面談:買い手の経営陣と直接会って、相手を見極める
- 社内外への説明:従業員や取引先に、いつ何を伝えるかを決める
とくに条件の優先順位は、専門家が代わりに決めることはできません。エグゼキューションが始まる前に、何を大切にしたいのかを自分の言葉で整理しておくと、交渉の場面で迷いにくくなります。
エグゼキューションでつまずきやすい点
相手が決まったからといって、そのまま成約するとは限りません。この段階で止まりやすいポイントを、あらかじめ知っておきましょう。
デューデリジェンスで問題が見つかる
代表的なケースが、調査の過程で想定していなかった事実が出てくることです。
未払残業代、社会保険料の未納、係争中の訴訟、契約書のない主要取引。こうしたものが出てくると、価格の引き下げや、条件の追加を求められます。金額の大きさによっては、交渉そのものが白紙に戻ることもあります。
想定外の問題で交渉が混乱するリスクを抑えるには、売り手側でも事前に自社の状況を確認しておくことが有効です。あとから発覚した場合に比べて、先に開示して対応策を一緒に考えるほうが、交渉への影響を抑えやすくなります。
交渉が長引き、当事者の熱が冷める
エグゼキューションにかかる期間は案件によって差が大きく、数か月から1年程度に及ぶこともあります。そのあいだに売り手・買い手のどちらかの状況や気持ちが変わることがあります。
資料の提出が遅れて調査が進まない、細かい条件で折り合わずに往復が続く。こうした遅れが積み重なると、当初は前向きだった相手が離れてしまうという事態が起こります。
スケジュールを決めて、区切りごとに双方で進捗を確認することが有効です。
クロージングの前提条件が満たせない
最終契約には、引き渡しの前に満たしておくべき条件が定められることがあります。これをクロージング条件と呼びます。
- 社内手続きを済ませること(株式譲渡では譲渡制限株式の譲渡について対象会社の株主総会または取締役会の承認、事業譲渡では原則として売り手の株主総会の特別決議が必要です)
- 主要な契約について、相手方の承諾または通知を済ませること(株式譲渡ではチェンジオブコントロール条項がある契約が中心ですが、事業譲渡では契約上の地位を移すこと自体に相手方の承諾が必要です)
- 許認可について、必要な承継・取得・変更届などの手続きを済ませること(株式譲渡では原則として維持されますが変更届が要る場合があり、事業譲渡では買い手側での取り直しが基本です)
- 借入について金融機関と話をつけておくこと(株式譲渡では借入は会社に残るため、支配株主の変更に関する条項への対応が必要になることがあります。事業譲渡では原則として引き継がれず、引き継ぐ場合は債務引受について金融機関の承諾が必要です)
契約を結んだあとにこれらが満たせないと、予定どおりクロージングできない可能性があります。条件によっては当事者が充足を免除したり、期限を延長したりすることもありますが、最終的に満たせなければ、契約の定めにもとづいて解除に至ることもあります。クロージングで、どの条件が必要になるかを確認しておいてください。
スモールM&Aのエグゼキューションはどう進むか
ここまでは、専門家が関わる一般的なM&Aを前提に説明してきました。ただ、譲渡金額が数百万円から数千万円規模のスモールM&Aでは、進め方が変わります。
FAを付けずに進めるケースが多い
スモールM&Aでは、FAや仲介会社に依頼せず、当事者どうしで交渉を進めることが珍しくありません。
理由は費用です。成功報酬に最低手数料が設定されている場合、取引の規模が小さいほど譲渡価格に対する費用の比率が高くなり、当事者にとって支援を頼みにくくなります。
そのぶん、経営者自身が進行を管理する場面が増えることになります。エグゼキューションの流れを理解しておく必要性は、むしろ大きくなります。
調べる範囲と契約書は、規模に見合った形にする
大企業のM&Aと同じ水準でデューデリジェンスを行えば、調査費用が譲渡価格を超えてしまうこともあります。スモールM&Aでは、調べる範囲を絞るのが実務的です。
- 基本的に確認したいもの:決算書(直近3期分程度を見ることが多い)、直近の試算表、借入の残高、簿外債務の有無
- 事業内容によって見るもの:主要な取引先との契約、賃貸借契約、許認可の引き継ぎ可否
- 省くことがあるもの:規模に対して費用が見合わない詳細な調査
契約書も同じで、条項を網羅した長大なものより、重要な取り決めに絞って明確に書くほうが、双方にとって守りやすくなります。とくに表明保証と、違反したときの取り扱いは、取引の規模にかかわらず慎重に検討したい条項です。
個人が買い手になる場合の進め方は個人のスモールM&Aの記事で解説しています。
プラットフォームを使って相手探しを効率化する
マッチングプラットフォームを使う場合、オリジネーション、つまり相手探しの部分を自分で進めることができます。
掲載されている案件を見て、興味があれば交渉を申し込む。関心が一致したら秘密保持契約を結んで詳細な情報を交換する。オンライン上で候補を探して直接交渉を申し込めるため、相手探しを効率化できる可能性があります。
国内最大級のM&A・事業承継マッチングプラットフォーム「TRANBI(トランビ)」では、無料の会員登録で掲載中の案件を確認できます。エグゼキューションに入る前に、どんな相手がどんな条件で動いているのかを見ておくと、準備すべきことがはっきりします。
よくある質問(FAQ)
エグゼキューションについて、よく寄せられる疑問にお答えします。
エグゼキューションとオリジネーションは何が違いますか?
対象としている段階が違います。オリジネーションは相手を探して案件を作る段階、エグゼキューションは相手が決まったあと、契約を締結して取引を成立させる段階です。
順番としては、オリジネーションが先で、エグゼキューションが後です。
エグゼキューションにはどのくらいの期間がかかりますか?
案件によって差が大きいのですが、数か月から1年程度がひとつの目安です。デューデリジェンスに時間がかかる場合や、事業譲渡で許認可を買い手側が取り直す必要がある場合は、さらに延びることもあります。
スモールM&Aでは、調べる範囲が絞られるぶん、3か月程度で完了することもあります。
エグゼキューションは自社だけで進められますか?
小規模な取引であれば、当事者どうしで進めている例もあります。ただし、最終契約の内容は、締結後に一方の都合だけで変更することが難しいものです。契約書の作成やレビューだけでも専門家に依頼することをおすすめします。
とくに表明保証の範囲と、違反したときの責任の取り決めは、締結後に条件が不利だったと気づいても、一方的には変更できませんので注意が必要です。
エグゼキューションの途中で断ることはできますか?
最終契約の締結前であれば、交渉の中止を申し入れられるケースがあります。基本合意書は多くの条項を法的拘束力のないものとすることが多いためです。ただし、扱いは基本合意書の文言と交渉の経緯によって変わります。
なお、独占交渉権や秘密保持など、一部の条項には拘束力があります。また、最終契約を結んだあとの一方的な解除は、損害賠償の対象になることがあります。
ビジネス一般で使う「エグゼキューション」とは違うものですか?
言葉のもとは同じですが、指している範囲が違います。ビジネス一般では「決めたことをやり切る」という広い意味で使われるのに対し、M&Aでは相手が決まったあとの実務全般を指します。
「エグゼキューション力が高い」という言い方はビジネス一般の用法で、M&Aのフェーズを指しているわけではありません。
まとめ|エグゼキューションは「相手が決まったあと」の実務
エグゼキューションは、M&Aで相手が決まったあと、契約を締結して取引を成立させるまでの実務全般を指します。オリジネーション・エグゼキューション・PMIの3つのフェーズのうち、もっとも専門的な作業が集中する段階です。
本記事のポイントを整理します。
- エグゼキューションは英語の execution(実行)が語源。M&Aでは相手が決まったあと、成約までの実務
- 前の段階がオリジネーション(相手探し)、あとの段階がPMI(統合)
- 主な業務は、秘密保持契約、企業価値評価、条件交渉、基本合意、デューデリジェンス、最終契約、クロージング
- 担い手はFA・仲介会社・弁護士・会計士・税理士だが、条件の判断、資料の提供、トップ面談、社内外への説明は経営者本人にしかできない
- つまずきやすいのはデューデリジェンスでの発見、交渉の長期化、クロージング条件の未達
- スモールM&AではFAを付けずに進めることが多いため、経営者が流れを理解しておく必要性が大きい
全体の手順をあらためて確認したい場合はM&Aの流れ、契約後の統合についてはPMIの記事をご覧ください。
