飲食店のM&Aは個人でも実現しやすい?相場、引き継ぎの流れなど

飲食店のM&Aは個人でも実現しやすい?相場、引き継ぎの流れなど

昨今では飲食店においてもM&Aが活発化しています。今なぜ飲食店が人気なのか見ていきましょう。また今後を見据えて飲食店を買収する場合、どのような案件があるのでしょうか?実際に成立したM&Aの事例や、M&A実現までの流れも紹介します。

飲食店とM&A事情

飲食店を取り巻く環境は、この数年でがらりと変化しました。社会情勢が目まぐるしく変わる中、M&Aの市場においてはどのような動きがあったのでしょうか?まずは飲食店のM&Aについて、近年の傾向を見ていきましょう。

感染症の流行で打撃を受けた飲食業界

新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、宴会やインバウンドによる需要を想定した業態の飲食店は大きなダメージを受けました。特に2020年3月以降は、売上が激減しています。

東京五輪の開催による観光客の増加を見越し、これ以前に飲食店のM&Aを行った事業者は、想定していた利益を上げられず苦戦したケースが多いでしょう。

感染症対策として営業が規制された時期もあり、飲食店を取り巻く状況は厳しいものでした。しかし規模の小さな飲食店は協力金を受け取り、切り抜けられたケースも多く、店舗を手放すに至った事業者はそれほど多くありません。

アフターコロナを見据えてM&Aが活発に

感染症拡大により、先の見通しが立ちにくい昨今、M&Aに踏み切るのはリスクが高いという考えもあります。一方、感染症の終息後を見越して行動するのであれば、今がビジネスチャンスだという捉え方もあります。

事態が落ち着き気兼ねなく外食できる環境になれば、これまで思うようにできなかった外食を楽しみたいと考える人が大勢いるはずです。そのような層を顧客にして利益を上げるには、M&Aで今のうちに飲食店を獲得するのが得策といえるでしょう。

その際、SNSによる集客やオリジナルグッズの販売など、ファン作りを意識した展開を行うのがポイントです。時代に合わせた店舗運営方法を取り入れることで、アフターコロナ時代に売上拡大を目指せるでしょう。

なぜ開業ではなくM&Aなのか

飲食店を自ら開業して始める方法もある中、開業ではなくM&Aを実施するのは、リスクを抑えつつ飲食店を始められるからです。買収の対象となる飲食店が築いてきた、ブランド力を生かせるのもポイントといえます。

エリア、ターゲット選定ミスのリスクがない

これから飲食店を始める事業者にとって、何もないところからターゲットを定めエリアを選定するのは、難易度が高いでしょう。実際に、開業してから軌道に乗るまでに苦労している事業者は多いものです。

一方、M&Aにより飲食店を買収すれば、既にターゲットが決まっており顧客がいます。店舗も十分に収益が見込めるエリアにあるため、自力で探す必要がありません。

買収して引き継ぐと、すぐに利益を得られる可能性がある状態です。そのため飲食店を始める際に抱えるリスクを最小限に抑えられるでしょう。

ブランド力や評判を買える

開業したての飲食店にはまだ歴史がなく、ブランド力もありません。M&Aによって飲食店を引き継げば、その店が築いてきた歴史やブランドをそのまま引き継ぐことができます

例えば、創業50年の老舗洋食店が築いた地域でのポジションを、一から作り上げるのは、並大抵のことではありません。M&Aであれば、古くからの顧客がいつもの味を目当てに来店するそのポジションを、丸ごと買収できます。

ブランド力のある飲食店には、顧客だけでなく優秀な人材も集まりやすいため、従業員の採用もスムーズに進みやすいでしょう。

飲食店のM&Aが個人にも人気の理由

M&Aを大企業だけが行っていたのは、もはや過去のことです。現在では中小企業でも行われており、個人が会社や店舗を買収するケースも増えています。中でも飲食店のM&Aは、価格の相場が安く個人にも人気です。

ほかの業種よりもM&A相場が安価

大規模なM&Aは、数億円を超える高額の買収価格で成立し、ニュースで取り上げられるような事例もあります。一方、飲食店のM&Aであれば、相場は『100万~250万円』と、他業種と比べ安価です。

また自力で飲食店を開業するためには、少なくとも約800万円の費用がかかります。そのため、開業と比較してもM&Aであれば低コストで飲食店を始められる方法です。

M&Aプラットフォームの『TRANBI(トランビ)』には、0円で譲り受け可能な飲食店や、100万円で買収できる創業40年の飲食店などの案件の紹介もありました。

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飲食店のM&A価格の決まり方

飲食店の価格は『時価純資産+実質営業利益の3~5倍』が目安です。ただし実際の価格は、さまざまな要素によって上下します。

例えば売上を左右する立地は、駅に近いほど価格が高くなりやすいでしょう。また幅が広く交通量の多い道路に面していることも、高額になりやすい条件です。

店舗の規模や構造も価格に影響します。またその時々の流行も価格に反映されるため、人気のある飲食店ならば、その分高額になりやすいでしょう。

飲食店のM&Aにはどのような案件が?

買収を行い飲食店を始める場合、案件によって飲食店の状況はさまざまです。後継者がいないため売却を検討している飲食店のほか、人気が高まっている今だからこそ売却によって利益を確定したいと考えている事業者もいます。

売上低下や後継者不在に悩む飲食店

売上が好調でこのまま続けていけば何も心配ない、という状態の飲食店が売却されるケースはそう多くありません。M&A市場に出ている案件は、思うような売上を出せていない飲食店が多いでしょう。

また後継者がいないため、M&Aによる事業承継を希望している飲食店もあります。そのためM&Aを行い利益の出る飲食店へ成長させるには、売り手と買い手の持つ有形無形のさまざまな資産を生かすのがポイントです。

例えば、買い手がマーケティングの知識やノウハウを培ってきたのであれば、飲食店の人気メニューを効果的にアピールし、売上アップを実現できるかもしれません。

注目が集まるジャンルは?

飲食店の中でも、特に注目が集まっているのは『焼き肉』や『すし』です。そのほかに日常食業態も注目されています。これらの飲食店は、いずれもコロナ禍の影響を受けづらいのが特徴です。

特に焼き肉は、1年を通して繁閑の差が小さく、収益が安定しやすいのも魅力といえます。そのため、既に飲食店を展開している企業が買収するケースが増えています。

需要の高いテイクアウト対応の飲食店も

『テイクアウト』ができる飲食店も人気の業態です。飲食店の多くはコロナ禍により業績が低迷しましたが、テイクアウトのできる業態は業績が好調に推移しました。

加えて、社会情勢の変化に対応するため、テイクアウトに乗り出す飲食店が増加したことにより、消費者の選択肢が増えました。これにより、テイクアウトの魅力は以前より高まっている状態です。

テイクアウト専門の飲食店のM&Aを行うなら、固定客の多さに加え、ショッピングモールへの卸やイベントへの出店などが案件選びのポイントといえます。

またテイクアウトに対応できる体制が整っていれば、悪天候や時間帯による売上低下への対策にもつながるかもしれません。

飲食店のM&Aを実現させるには

M&Aによって飲食店を買収するなら、まずは案件を探す必要があります。案件探しはどこで行うのでしょうか?加えて、M&Aの具体的な手続きについても紹介します。

案件の探し方

案件を探す方法は複数あります。中でも代表的なのが以下の4種類です。

  • M&A仲介会社:売り手と買い手の間に立つ中立な立場からのサポートを受けられる
  • 金融機関:M&Aに特化した部署のサポートを受けられる
  • 事業承継・引継ぎ支援センター:国が設置する相談窓口で、事業承継に関する幅広い相談に対応している
  • M&Aプラットフォーム・マッチングサイト:サイトを通した売り手と買い手のマッチングを支援する

飲食店を買収したいと思っても、自力ではなかなか案件は見つかりません。M&Aプラットフォームの『トランビ』なら、会員登録後すぐに案件を探し始められます。飲食店だけでも登録数が300件を超えているため、条件に合った案件が見つかるはずです。

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M&Aの進め方

飲食店のM&Aの流れは、ほかの業種とほぼ同じです。マッチングしたら秘密保持契約書を交わし、資料の開示を受けます。その後、客として入店し『店舗視察』を実施するのは飲食店ならではです。

次に買い手は意向表明書を提出し、トップ面談を行います。面談で合意に至ったら、基本合意書を取り交わし、買い手は飲食店に対する買収調査(デュー・デリジェンス)を実施します。

必要に応じて条件交渉を行い最終契約が成立すれば、あとは決済や引き渡しなどのクロージングで完了です。

また飲食店のM&Aで用いられる手法は、会社を丸ごと引き継ぐ株式譲渡や、事業の一部もしくは全部を引き継ぐ事業譲渡が代表的です。事業譲渡の場合、譲渡対象の資産を指定しなければいけません。必要な資産を確実に引き継ぐことができるかどうか確認が必要です。

無形資産の引き継ぎが欠かせない

店舗や厨房機器以外にも、飲食店には目に見えない『無形資産』が多数あります。買収した飲食店をスムーズに引き継ぐには、無形資産の引き継ぎも確実に実行しましょう。

例えばメニューやメニューの開発方法、接客のコツなどが、飲食店の無形資産に含まれます。小規模な飲食店の場合、これらのノウハウをマニュアル化できていないケースが多く、マニュアル作りから始めなければいけません。

また双方の条件が合うなら、オーナーに残ってもらうという選択肢もあります。

飲食店のM&A事例

具体的な飲食店のM&A事例についても確認しましょう。売り手はどのような理由で売却し、買い手は何を決め手に買収を決めたのでしょうか?注意点も紹介するため、今後のM&Aに役立つはずです。

立ち退きを迫られた店主からうどん店を承継

うどん店の店主は、店舗が入居していたビルの取り壊しにより、立ち退きを求められていました。自身が高齢なこともあり、売却を決意したそうです。

一方、買い手はおいしいうどんとスタッフの仕事ぶりを評価し、買収を決定しました。席数の増加や人件費の見直しにより、売上アップの余地があったのもポイントです。

買収金額自体は手頃な価格だったものの、M&A後に新店舗を開店しなければならず、大きな投資が必要でした。デメリットを正しく理解していたことから、スムーズにM&Aが成立した事例です。

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東京都内や関西で、20店舗以上の飲食店を経営する株式会社otto。コロナ禍で閉塞感の漂う飲食業界に危機感を感じ、「営業を続けるべき、価値のある飲食店を救いたい」という思いからM&Aを実施。

唐揚げ・もつ煮店を承継して異業種参入

ECサイトを運営する買い手は、かねてより飲食店に携わりたいと考えていたそうです。そこで案件数の多い『トランビ』を利用し、わずか1カ月の短期間で魅力的な案件と出会いました。

唐揚げともつ煮が名物の飲食店は、店主が新しいお店のオープンに向け売却を決めたそうです。元々テイクアウトやデリバリーによる売上が多い飲食店だったこともあり、コロナ禍の影響もほぼ受けず、業績は好調でした。

このような好条件の飲食店を500万円で買収できるという点に惹かれ、買い手はM&Aを決めたそうです。決定までには試食会があり、実際に新たなお店を始めたときの経営方法について、売り手側と深く話す機会を持てました。

競合も複数いましたが、熱意を持ってヴィジョンを伝えたことが売り手側の心に響いたようです。

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日本の伝統工芸品を扱うECサイトなど多彩な事業を展開する株式会社KAZAANA。代表取締役社長の樫村健太郎さんは、「飲食店を開きたい」と数年前から物件を探していましたが、なかなか魅力的で条件に合う物件に出会えませんでした。

まとめ

他業種と比較し買収金額が安価な飲食店は、個人でもM&Aにチャレンジしやすいのが特徴です。アフターコロナの業績アップを見据え、買収するケースが増えています。

特に注目されているのは、焼き肉やすしのほか、テイクアウトに対応している飲食店です。既に顧客がいる飲食店の買収により、M&A直後から利益を出せる可能性もあるでしょう。

飲食店の買収を計画しているなら、M&Aプラットフォームの『トランビ』を活用するのがおすすめです。豊富に案件があるため、希望に合う飲食店を見つけられるでしょう。

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記事監修:小木曽公認会計士事務所 小木曽正人(公認会計士、税理士)
【プロフィール】
1999年公認会計士2次試験合格後、大手監査法人にて法定監査、IPO支援等に従事したのち、2004年より東京と名古屋にてM&A専門チームの主力メンバーとして100件以上のM&A案件に従事。2014年12月に独立開業し、M&A、事業承継、株価評価といった特殊案件のみを取り扱った会計事務所を展開している。