中小企業や個人が買い手のM&Aの事例14。失敗しやすいポイントは

中小企業や個人が買い手のM&Aの事例14。失敗しやすいポイントは

M&Aの事例をチェックすることにより、どこでつまずきやすいのか、どのようなケースが成功につながりやすいのか、実際のケースをもとに理解できます。M&Aの実態や成功のために押さえておくべきポイントとともに、14の実例を確認しましょう。

M&Aの実態を知ろう

事例を詳しく見ていくにあたり、まずはM&Aの現状を把握します。国内のM&A実施件数は、どのように推移しているのでしょうか?また用いられるスキームの特徴も確認します。

M&Aが実施された件数

『2021年版中小企業白書』によると、国内のM&A実施件数は2019年に4000件を超えています。リーマンショック後の2010年前後、そして2020年はコロナ禍の影響から件数が落ち込みましたが、大きなトレンドは右肩上がりに増えている状況です。

このようにM&Aの件数が増加している理由の一つに、国内市場の『成熟化』が挙げられます。人口が減少しつつある国内市場では、顧客にいかに自社の商品やサービスを選んでもらうかが重要です。

パイの奪い合いが起こっている中、M&Aにより顧客を取り込む動きが活発化していると考えられます。

参考:2021年版中小企業白書 第3章事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用 第2部危機を乗り越える力 P.Ⅱ-358|中小企業庁

よく使われるM&Aスキーム

M&Aスキームの中でも、よく利用されるのは3種類です。

一つ目が『株式譲渡』です。株式譲渡とは、売却会社の株主が保有する株式を取得する方法のことをいいます。手続きが簡単である点や、会社側の人材をそのまま引き継げるのがメリットです。

二つ目が『事業譲渡』です。事業譲渡は、会社の持つ事業の一部や全部を買収する手法です。譲渡対象となる事業を選べるため、負債をはじめ、不要な資産を引き継ぐ必要がありません。

そして三つ目が『会社分割』です。会社分割とは、事業の権利義務の一部や全部を包括的に買い手が引き継ぎます(例えば不要な資産は引き継がないということができません)。既存の会社が引き継ぐ『吸収分割』と、新しく設立する会社が引き継ぐ『新設分割』の2種類に分類されます。

先の事業譲渡比べ、包括的に資産・負債、契約などを移転できることがメリットと言えるでしょう。

M&Aの取引金額は?

会社を買収するときには、どのくらいの金額が必要なのでしょうか?取引金額を確認することで、自社の目指すM&Aにどのくらいの予算が必要なのか見ていきましょう。

有名企業のM&Aでは巨額になる例も

上場企業や大企業など、多くの人が知る有名企業のM&Aでは、取引金額が数百億円や数兆円にのぼるケースもあります

例えば、楽天が宿泊予約サイト『旅の窓口』を運営するマイトリップ・ネットの株式を親会社の日立造船から譲り受けた際には、323億円を支払いました。

またGMOフィナンシャルホールディングスによるZHDのFX取引事業の買収では、子会社のワイジェイFXの株式を290億円で取得しています。

小規模なM&Aでは100万円以下も

数百億円規模の資金が必要なM&Aがある一方、100万円以下の資金で取引が成立するケースもあります。例えば中小企業やサイトの買収といった、小規模なM&Aです。

M&Aの金額に決まりはありません。売り手と合意できれば、取引金額はいくらでも可能です。実際にM&Aマッチングサイトでは、300万円や500万円といった価格帯で金額を設定する仕組みになっているサービスもあります。

事業の内容や引き継ぐ資産、今後のビジョンなどに従って交渉を進め、売り手・買い手双方が納得のいく金額を模索しましょう。

M&Aは成功するとは限らない

資金と時間をかけM&Aを実施したとしても、失敗するケースも少なくありません。M&Aの成功とはどのような状態を意味するのでしょうか?失敗する代表的な原因も解説します。

M&Aの成功とは?

M&Aを実施する目的はさまざまですが、どれも業績アップを期待して行う施策のはずです。そのため『M&Aの成功=業績アップ』といえるでしょう

例えば買収対象企業が持つノウハウや技術を取り込み、自社の業績アップにつなげたいと考えているとします。この場合、ノウハウや技術を当初の構想通りに活用し、効率化や新製品の開発につなげ、業績が上がれば成功です。

ただしM&Aは、全てのケースで成功するわけではありません。特に海外企業の買収は難易度が高いといえるでしょう。

言語や文化の違いによる統合の難しさはもちろん、物理的に距離が離れていることで思うように指導が行き届かない可能性も考えられます。国ごとの法律の違いもハードルになるでしょう。

失敗の可能性とよくある原因

失敗する可能性はM&Aの実施件数が少ないときほど高くなる傾向があります。特に仕入れや、営業拠点・店舗の統廃合によるコスト削減の項目では、M&Aの実施件数が多いほどシナジー効果を期待しやすいでしょう。

また売り手に対して実施する調査であるデューデリジェンスが不十分なことも、M&Aが失敗する原因です。法務や財務に関するデューデリジェンスは入念に行っていても、ビジネスの内容に関する調査は不足しているケースがあります。

対象会社のビジネスについてよく知らなければ、高値で買収しすぎて採算が取れなくなることや、実体のない取引に気付けないことがあるでしょう。

新規事業の創出が目的のM&A事例

M&Aがどのように行われてきたのかを見てきました。具体的な事例では、どのようなケースがあるのでしょうか?新規事業にチャレンジする買い手による、M&Aの事例を紹介します。

化粧品などを扱うお店を買う

多角的な事業展開を目指し、化粧品を扱うお店の買収をした事例では、最初の問い合わせ時には「若い男性では無理だと思います」と、よい返事をもらえなかったそうです。

そこで女性スタッフがいる点をアピールし、交渉の場につくこととなりました。その後は順調に進みましたが、店舗の賃貸契約に必要な保証会社の審査に落ちるといった想定外の事態が起こります。

また譲渡希望価格は50万円でしたが、この中には在庫費用が含まれていないことが発覚し、追加で30万円の支払いが必要だったそうです。

引き継ぎ期間の1カ月間は、店舗を担当する女性社員を派遣しました。同時に経営者自身も週1~2回は店舗を訪れ、無事に引き継ぎまでたどり着きました。


想定外の保証審査落ちや在庫出費なども経験!? 今後、10事業のM&Aに向けた一歩:健康食品・化粧品販売店を買収
成功事例インタビュー
想定外の保証審査落ちや在庫出費なども経験!? 今後、10事業のM&Aに向けた一歩:健康食品・化粧品販売店を買収

2020年5月に広告デザイン会社から独立した佐々木 学さんが起業後、健康食品や化粧品を扱う恵比寿の店舗を50万円で譲り受けたのは2021年4月のこと。

靴磨き店の無償譲渡を受ける

自分たちの事業を育てていきたいという気持ちから、予算100万円ほどで首都圏の案件を探していた事例では、最終的に靴磨き店の無償譲受に成功しています。

ただし完全な無償ではなく、テナントとして入居している商業施設に支払う一時申込金が必要でした。加えて、ホームページのレンタルサーバーへの移行に対しても、15万円ほどのコストがかかりました。

想定外のコストはかかったものの、お店を任せるスタッフがプロフェッショナルであることも手伝い、契約へと進んだ事例です。


靴磨き店のM&Aに成功!コロナ禍を逆手に店舗にとらわれない逆転の発想で勝負
成功事例インタビュー
靴磨き店のM&Aに成功!コロナ禍を逆手に店舗にとらわれない逆転の発想で勝負

コンサルティングファームに所属していた、起業志望のメンバー3人で設立したパスティブ合同会社。これまで「既存事業のリソースを活用して、新規事業の立ち上げをサポートする」コンサルティングを手掛けてきた経験から、新規事業の創出を検討する中でM&Aという手法に目を付けます。

運送業者がマッチングサイトを買う

沖縄県の運送業者は、船や空港に倉庫を持つ大きな企業の下請けとして、低単価の仕事を受けているケースがほとんどだったそうです。

業界のそうした構造的な課題を解決するため、荷物を送りたい人と運べる人を結ぶマッチングサイトを買収した事例を紹介します。当初の価格は200万円でしたが、それでも回収できる金額を考えるとリーズナブルと考え、交渉を開始したそうです。

交渉は順調に進み、約4カ月で成約し、最終的な買収金額は60万円となりました。ただしテキストベースでやり取りを進める中で、文章の意味を取り違えてしまうといった難しさに直面したそうです。


運送会社がマッチングサイトを購入!?真の狙いは沖縄の運送業界のDX化で正しく儲かる仕組みづくり
成功事例インタビュー
運送会社がマッチングサイトを購入!?真の狙いは沖縄の運送業界のDX化で正しく儲かる仕組みづくり

沖縄で土木・舗装業の資材運搬運送事業を手掛ける株式会社樹来。新規事業を検討するためTRANBIを閲覧していたところ、「荷物を送りたい人と荷物を運べる人を繋げるマッチングサイト」の案件に出会い、60万円で買収しました。

収益の安定化を目的としたM&A事例

昨今では、コロナ禍によるライフスタイルの変化など、従来の生活環境が変わったことで低迷した業界や事業も少なくありません。環境が変化しても収益を安定させるために、別事業を展開することは有効な手段です。収益の安定化を目的としたM&Aの事例を見ていきましょう。

サラリーマンが自転車回収業を買う

観光業を営む会社でサラリーマンとして働いており、コロナ禍をきっかけに「安定などない」「収入アップの挑戦をあきらめてはいけない」と、改めて感じたことから実施されたM&Aの事例です。

ある程度の形ができあがっている事業を引き継ぎ、成長させたいと考えていたことから、気になる案件の情報を整理し、比較していました。そんな中で見つけたのが、譲渡金額100万円の自転車回収業です。

車が1台あれば続けられるため、維持費が最小限である点が魅力でした。人気案件で多くのライバルがいましたが、今後の取り組みについて盛り込んだプレゼン資料で成約に至ったそうです。


不動産経営者ならではの着眼点!実は相性のいい「放置自転車の回収業」を買収~感謝のサイクルが生まれるビジネス~
成功事例インタビュー
運送会社がマッチングサイトを購入!?真の狙いは沖縄の運送業界のDX化で正しく儲かる仕組みづくり

複数棟のアパートを所有するなど、不動産ビジネスを展開している合同会社ファミリーツリー。経営されるBさんは、平日は別の会社に勤めておりサラリーマンの顔も持っています。

金属部品メーカーが飲食店を買う

事業の柱である金属部品の製造・販売の強化とともに、経営の多角化によりリスクを低減したいと考え、飲食店のM&Aを実施した事例もあります。

売り手のシェフパティシエは有名店で修行を積んだ経歴の持ち主で、経営をほかの人に任せて自分は商品開発に専念したいと考えていました。飲食店の経験のない買い手にとっては優秀な職人の獲得が必須であり、とても魅力的なマッチングでした。

譲渡金額は少額でしたが、数千万円の負債を引き受けなければいけない案件だったとのことです。それでも十分に利益で回収できる範囲内と判断し、交渉・成約へと進みました。


老舗金属部品メーカーがカフェレストランを傘下に!? 3代目社長が主導する多角化で100年先まで残る会社に
成功事例インタビュー
老舗金属部品メーカーがカフェレストランを傘下に!? 3代目社長が主導する多角化で100年先まで残る会社に

今はうまくいっているけれど、将来のことを考えて新しく事業を始めたい……、コロナ禍で経営の多角化を考える会社社長が増えています。兵庫県で金属部品製造を営む、深江発条株式会社社長の石割洋一さんもそのひとり。

コンサル会社がカフェを買う

本業のコンサル事業以外に事業の柱を作るため、ダイニングカフェを買収したケースでは、売り手に業績の開示を求めました。コンサルティング会社ならではの分析力で、成長させられる事業かどうかを見極めるためです。

引き継ぎをする際には、カフェで働くスタッフとのコミュニケーションを重視し、オーナーの交代に不安を感じているスタッフのケアに注力しました。

ヒアリングの機会を設けて不安を取り除くとともに、お店の目指す方向性、共通課題の理解、仲間意識の醸成を図っていったそうです。


コロナ禍で狙うはベッドタウンエリア!湘南の商業施設内カフェ買収に見出す勝機
成功事例インタビュー
コロナ禍で狙うはベッドタウンエリア!湘南の商業施設内カフェ買収に見出す勝機

スポーツブランドのブランディングやプロモーションに携わり、現在は起業してさまざまな業種・業態のブランドコンサルティングを手掛けている株式会社P&S代表の林修平さん。

本業とのシナジーを目的としたM&A事例

本業で実施している事業とのシナジーを発揮できれば、より大きな成果が期待できます。シナジーを目的に行われたM&Aの事例を確認しましょう。

IT企業が保育園事業を買う

保育園の事業を始めても、小規模では経営効率が上がりにくいでしょう。ゼロから始めて行き詰まり困っている保育園を、買収したいと考えたIT企業があります。

IT事業と保育園のシナジー効果を見込み、黒字化を目指し買収に踏み切ったケースです。売り手からは従業員の雇用継続や正社員化の条件があったため、それに同意する形での買収となりました。

交渉自体はスムーズに進みましたが、保育園の運営に必要な許認可付きの事業譲渡という点が難しかったそうです。許認可は申請後の審査に数カ月かかり、事業を開始できるタイミングを読めません。

実際に審査がおりてから、事業開始までの準備期間は半月のみでした。


小規模保育園をM&Aで再生!IT企業が業界に吹き込む新たな風とは?
成功事例インタビュー
小規模保育園をM&Aで再生!IT企業が業界に吹き込む新たな風とは?

コロナ禍の2020年6月、IT開発や保育事業を手掛ける㈱Funkitが、都心の企業主導型保育園を買収。すでに全国で13の保育園を運営していますが、許認可事業という性質上、「買収合意しても譲渡実行予定日が決められず苦労した」と話すのは代表の吉村勇作さん。M&A実施に至る動機から交渉、引き継ぎ、今後の展開まで、じっくりとお話を伺いました。

コンテンツ強化でベビーアート事業を買う

親子を対象にイベントやワークショップを提供する事業を実施している会社が、コンテンツを強化するためにベビーアート事業を買収した事例です。予算は500万円以下ほどで考えていたところ、実際の譲渡金額は150万円で妥結しました。

金額はベビーアートの商標登録・40種類ほどある体験プログラム・インストラクター養成講座の開発費用などから算出したものです。しかし、いざ契約を結ぼうという段階で、社内監査役から指摘を受けます。

対象会社にも対応をお願いし、懸念点を解消していきました。丁寧なやり取りにより時間はかかってしまいましたが、無事成約に至った事例です。


コロナ禍で停滞する会社を救うのは、買収したベビーアート事業!?
成功事例インタビュー
コロナ禍で停滞する会社を救うのは、買収したベビーアート事業!?

「子ども」「写真」「教育」……、親子向けにリアルな体験を提供する既存事業とのシナジーを第一に考えてキーワード検索した結果、出逢ったのが、赤ちゃんの五感を刺激する「ベビーアート」。

PR会社が出版事業を買う

PRコンサルティング業を営んでおり、シナジーを期待できる事業のM&Aを希望した事例です。出版事業を行う対象会社との交渉はスムーズで、経営状況の確認や取引の流れを決める2回のオンラインミーティングで話がまとまりました。

1000万円の予算に対して、譲渡金額は600万円です。ISBNや書籍JANコードの取得は難易度が高そうですし、流通を担う取次会社や書店とのネットワークも一朝一夕で築けるものではありません。

ゼロベースから築くよりスムーズな事業展開がかなうだろうと考え、M&Aを決定しました。


出版事業を600万円で買収!人脈が豊富なベテランPRマンの狙いとは?
成功事例インタビュー
出版事業を600万円で買収!人脈が豊富なベテランPRマンの狙いとは?

パブリックアフェアーズやPRコンサルティングの支援を行う企業の代表を務めているIさん。今回600万円で出版事業の買収に成功しました。なぜ出版事業を選んだのでしょうか?出版事業を購入するメリット、出版事業の活用の秘訣などを伺ってきました。

ワイン卸業者が飲食店を買う

メインで行っているワイン卸業のスムーズな展開を考え、飲食店のM&Aを実施したのは、自らも飲食業の経験を持つオーナーでした。

敷金や礼金がかからず買収費用を抑えやすい、株式譲渡を実施できる案件に絞り探したのがポイントです。さらに経営者が高齢で後継者がいない案件に絞り、最終的に0円で譲渡を受けられました。

買い手に飲食業の経験があった点も、売り手経営者へ与える印象にプラスとなり、スムーズな契約に至った要因です。


コロナ禍の飲食店M&A~ワインバル運営企業の狙いとは?
成功事例インタビュー
コロナ禍の飲食店M&A~ワインバル運営企業の狙いとは?

ワインやオリーブオイルの輸入販売を行う株式会社フェリシダージ。飲食業も手掛けており、東京・中目黒の古民家バル「Y2T STAND」では日本未進出のポルトガルワインを提供しています。

旅行代理店が観光バス事業を買う

創業当初に手掛けていたバス事業をグループ内に再度取り入れたいという思いから、旅行代理店が観光バス事業を購入した事例もあります。

コロナ禍の影響で観光業界全体が下火になっている状況だからこそ、本来の価値より手頃な買収金額で成約しました。最終的には当初提示されていた価格の1/8でまとまったそうです。

ただしセットで引き継いだと思われていた不動産事業の収入がなくなっているという予想外の出来事もありました。当然あるものと考えていた収入源がなければ、計画が立ち行かなくなる可能性もあるため、確認が必要な点です。

また従業員の不安を解消すべく、引継ぎの際に時間無制限の相談会を実施しました。また売上へのモチベーションを高めてもらうために、会社の数値データを全て開示するといった大胆な施策も、従業員との一体感を生む上で功を奏したようです。


M&Aの肝は引継ぎ先従業員への誠実な対応~購入金額が当初の8分の1に?!四国の旅行代理店が観光バス事業を買収
成功事例インタビュー
M&Aの肝は引継ぎ先従業員への誠実な対応~購入金額が当初の8分の1に?!四国の旅行代理店が観光バス事業を買収

四国で旅行代理店を営む前田勇作(仮名)さんが、甲信越の貸切バス会社を買収したのが、今年2020年8月のこと。自社資産とのシナジー効果を求めるなら同地域もしくは近隣のほうが有利なはずだが、なぜわざわざ遠隔地の会社を買収したのでしょうか。そして、あえてコロナ禍でM&Aに踏み切った理由とは何だったのでしょうか。観光業の未来を見据える三代目後継者にお話を伺ってきました。

再生可能エネルギー関連企業が林業を買う

再生可能エネルギーで資源循環型経済社会を実現したい、という思いで事業を続けてきた中で、林業の維持発展にさらに寄与したいと考え、林業の買収に至った事例です。

対象会社は数億円の負債がある状態でした。そのため負債と経営者保証を含めて引き受けることを条件に、東京ドーム100個分の広さの山林も含め、数千万円での株式譲渡に合意してもらいました。

つまずいたのは契約の条文を把握する段階です。初めてのM&Aだったため、理解するのに時間がかかってしまったそうです。また、エネルギー供給用途の搬出事業に必要な認定を受けていないことも途中で判明しました。

山林についてよく知るスペシャリストが参謀役についていたからこそ、買収が成功した案件です。


東京ドーム100個分の山林を伴う林業の事業承継 〜林業×エネルギー事業で、衰退の一途をたどる林業を再生させる!〜
成功事例インタビュー
東京ドーム100個分の山林を伴う林業の事業承継 〜林業×エネルギー事業で、衰退の一途をたどる林業を再生させる!〜

日本の国土の約3分の2が森林に覆われているにもかかわらず、近年国産木材の需要が減り、従事者の高齢化などで林業は衰退の一途をたどっています。

海外の会社や事業を買ったM&A事例

M&Aをきっかけに海外に進出したい、海外の会社が展開している事業を買収したいという会社もあるでしょう。海外の会社とのM&Aの事例をチェックすれば、自社が取引をする場合の参考になるはずです。

初めてのM&Aで海外企業を買う

人材紹介業を営む中、エリア展開拡大の必要性から海外企業とのM&Aを実施した会社があります。しかし最初から海外企業に対象を絞っていたわけではありません。

TRANBIを利用する際に『海外案件に興味がある』にチェックを入れていたことで、代理人から声をかけられたのがきっかけだそうです。

初めてのM&Aですが、代理人の協力もあり、交渉は順調に進みました。オンラインでのミーティングを重ね、事業責任者に全て任せられると感じ、契約を決定したそうです。


海外の大型M&Aをオンラインでほぼ完結!四国の企業がマレーシアの大手人材派遣会社を買収
成功事例インタビュー
海外の大型M&Aをオンラインでほぼ完結!四国の企業がマレーシアの大手人材派遣会社を買収

四国に根付いた人材派遣、人材紹介業などを展開するアビリティーセンター株式会社。代表の三好輝和さんは、新規事業の立ち上げやエリア展開の必要性を感じたため2020年に初めてM&Aに挑戦し、マレーシアの大手人材派遣会社を買収しました。

Web広告会社が海外ゲームアプリを買う

プロモーション・Webメディア・ゲームなど多岐にわたる事業を展開しているベンチャー企業は、これまでの経験から、投資金の回収期間が2年ほどと短く譲渡金額が比較的少額な案件を探していました。

そこで目に留まったのが、インドの会社が開発・運営していた譲渡金額1300万円ほどのゲームアプリです。運営そのものは買収後も売り手企業がそのまま行う内容のため、自動的に月100万円を稼ぐアプリへの投資に近い取引でした。

アプリの特徴であるキャッシュマッチという課金方式に問題がないか、顧問弁護士に精査してもらう必要があり、その点には多少時間がかかったそうです。

ただし新システム開発のための資金を早急に集めたい売り手の要望もあり、交渉はスピーディーに進みました。


海外ゲームアプリの買収で、月収100万円が自動的に?!開発人脈や新たな課金モデルの発展性も見込む海外事業のM&A
成功事例インタビュー
海外ゲームアプリの買収で、月収100万円が自動的に?!開発人脈や新たな課金モデルの発展性も見込む海外事業のM&A

スマホ向けゲームアプリはヒットすれば大きな収入が見込める反面、流行りすたりが大きい分野。今回インドの会社で開発された、バイクレースゲームのアプリを買収した、株式会社WINGIT代表取締役社長の三島裕さん。

M&A成立までのポイント

ここまで見てきた事例を通し、M&Aが成立するまでのポイントを確認しましょう。ポイントを押さえておけば、スムーズに取引を進めやすくなります。

必要な期間や費用を把握して予算を組む

まず挙げられるのは、必要な期間の把握です。M&Aは秘密保持契約の締結から最終契約の締結までだけでも『1~3カ月』はかかります。

自社の事業展開と必要な期間を考え合わせた上で進めなければいけません。短期間で取引を完了させるには、準備にかける時間も必要です。

加えて費用も把握しておくとよいでしょう。必要な費用はケースによって異なります。買収価格が安いからといって、必ずしもお買い得とは限りません

価格だけでなく対象会社の持つ負債や利益、自社との統合のしやすさなども検討した上で取引を進めましょう。あらかじめ専門家のサポートにいくらかかるかも、問い合わせておくと安心です。

経営者の人柄や相性を見る

事業内容や利益率だけでM&Aを決めると、成立後に「こんなはずではなかった」と後悔する可能性があります。特に中小企業のM&Aは、売り手と買い手が友好的でなければ成立しません。

そのため対象会社の経営者がどのような人柄なのか、やり取りしているときの相性はどうかといった点も含めて、見ていく必要があります。

確かに信頼できる人物だと判断できれば、M&Aの成立後に不正が発覚するといったケースを避けやすくなるでしょう。

M&Aを成功に導くために必要なこと

M&Aは成立しただけでは成功といえません。成功に導くにはポイントがあります。紹介した事例も、成功に必要なポイントを押さえているはずです。

明確な戦略、ビジョンは必須

「良い会社があれば買収したい」といった、受け身のM&Aで成功するのは難しいでしょう。M&Aの目的がはっきりしないままでは、M&A自体が目的になってしまう可能性もあります。

必要なのははっきりとした『ビジョン』です。描いたビジョン達成のために、どのような戦略が必要か考えられれば、M&Aは成立したけれど期待したほどの成果が出ない、という事態を避けられます。

従業員のケアを丁寧に行う

M&A実施後は、異なる組織で働いてきた従業員同士の融和が欠かせません。人事面でスムーズに統合が進まなければ、対象企業の優秀な従業員が退職してしまう可能性もあります。

中小企業のM&Aでは、従業員も重要な資産というケースがほとんどです。従業員が流出してしまえば、期待したほどM&Aの効果を得られないでしょう。場合によっては事業が立ち行かなくなる事態もあり得ます。

従業員のモチベーション低下や人材流出を避けるには、従業員のケアがポイントです。買い手と売り手の従業員同士が交流できる勉強会や研修を実施したり、適切な権限委譲を行ったりするとよいでしょう。

まとめ

M&Aを成功に導くには、あらかじめポイントを押さえておくとスムーズです。例えば失敗する原因を把握しておくと役立ちます。必要な期間や予算を把握し、明確なビジョンを持って臨むのも重要です。

紹介した13の事例も役立つでしょう。自社が目指すM&Aに近い事例を参考に、注意点や成功のための取り組みをチェックできます。具体的な事例から案件探しや交渉のコツを見つけ、役立てましょう。