2021-06-22

想定外の保証審査落ちや在庫出費なども経験!? 今後、10事業のM&Aに向けた一歩:健康食品・化粧品販売店を買収

買い手(法人):(株)ミステマール

<中小企業の多角化を目指したM&A・買収事例>

 

2020年5月に広告デザイン会社から独立した佐々木 学さんが起業後、健康食品や化粧品を扱う恵比寿の店舗を50万円で譲り受けたのは2021年4月のこと。

買い交渉の申し込み件数が100件以上も入った人気案件ですが、成約にはどのようにこぎつけたのでしょうか?また、なぜ知見をもたない異業種のM&Aにチャレンジされたのでしょうか?

「最初は収支がトントンでもいい。将来的には10程度の事業を買収して、何かの事業がダメでも違う事業で補える形で、企業としてはトータルで利益を出していきたい」と語る佐々木さんにM&Aへの考え方を伺ってきました。

【最初の買い申し込みはあっさり断られたものの、機転を利かせて交渉の継続に成功!】

- まず今回のM&Aのきっかけから教えてください。
これまで広告デザイン関連の会社で執行役員を務めていましたが、2020年3月に退職。5月にミステマールという会社を立ち上げて、一人でコンサルティング業務を請け負っています。M&Aに興味を持ったのは、前職の役員時代に新規事業開発や事業買収のプロジェクトに関わっていたことがきっかけです。

0から1をつくる新規事業の開発は、コストもリソースも必要です。すでに存在する事業を買うのなら、事業開発のハードルは低くなります。私のような一人の事業体にとっては、形あるものを1から10に伸ばすことのほうが容易であり、適しているのではないかと思っていました。

もし自分が体を壊したりしたら仕事がストップしてしまうリスクを考えると、起業当初から自分自身が稼働しなくても収益があげられるストック型ビジネスと実際に動いた分が稼ぎになるフロー型ビジネスを意識して事業を運営していきたいと考えていました。

キャッシュリッチな会社ではないので、まずは手頃な金額感を案件選択の際に最優先させました。100万円以内でいい事業はないかと探していたところに、今回の健康食品・化粧品販売を営む事業の売却案件を見つけました。譲渡希望金額が50万円とあったので、まずは問い合わせてみました。

特に業種や業態にこだわりはなく、ただ形のないサービスを提供してきたので、何か具体的な形のあるもの、例えば実店舗の運営をやってみたいとは思っていました。

- 実際に問い合わせてみていかがでしたか。
最初に問い合わせをしたときに、まず売り手のYさんからは「若い男性では無理だと思います」という大変ショックな返信がきたんです。化粧品を扱う事業という特性上、先方としては男性だと難しいと判断されたのでしょうね。

- それは厳しいですね、どうやってそこから売り手様の心を変えたのでしょうか。
なんとかして交渉をしたいという思いがあったので、まずは交渉の土台に立たせてもらおうと考えました。そこで、こちらも女性がいるから安心してほしいとアピールすることにしました。実は私にはもう一つ会社があり、私より年上の女性に取締役をお願いしているんです。その方と一緒にまずはお話を伺いたいとお伝えし、最初の面談にこぎつけることができました。


(売却当時の店舗の様子)

- 売り手様の気持ちを踏まえた対応、とても素晴らしいですね。
はい、ただ現地に伺ってみると驚きの連続でした。実際の店舗は“恵比寿”、“健康食品・化粧品”というキラキラとしたワードと異なる昭和をイメージさせるものでした。扱う商品は数種類。店舗を運営しているのは売り手の奥様で、商品を熟知した70代の大ベテランでした。

お客様が来ると、お茶を出して1時間も2時間も悩みを聞き、「これを飲めば大丈夫」と商品をすすめるこの時分稀に見る丁寧な接客スタイルを大事にしていました。1日数組ほどのお客様しか来店されませんが、1個1万円もする商品を一度に3個、4個購入してくださるという高単価なビジネスモデルでした。驚きとともに、継続的に優良な固定客を獲得できていることは何ものにも代えがたい価値があり、取り扱い商品の幅を広げることができればある程度の収益を見込める可能性があることに大きな希望を感じました。

- なかなか個性がある案件だったのですね。
その後、当社の女性取締役と訪問して会話も交わしたところ、「あなたたちになら売ってもいいかもね」と嬉しいお返事をいただきました。他にあった買い交渉も検討し、実際に会ったりしたものの、店舗を任せるにはピンとこなかったとのこと。

売り手様から大事にしてほしいと言われたのは「お店そのもの」、それと「お客様を守ってほしい」」ということでした。もちろん事業を引き継ぐことに同意し、ただ今後の事業の運営に関しては、時代の流れや実際に取り組むことができるスタイルも踏まえて任せてほしいとお伝えて、先方にご理解いただきました。

【交渉は順調でも・・・保証審査落ちや想定せぬ在庫費用の発生など幾つかハードルあり】

- なにか想定外のトラブルやM&Aを実行する上で苦労されたことはありましたか?
Yさんと無事に合意し、いざ引き継ぎを進めましょうといったときに、大きな壁が立ちはだかりました。店舗は賃貸借契約の上に成り立っていたため、事業譲渡を見据えて不動産の契約名義を当社名義で巻き直そうとした際、保証会社の審査に落ちてしまいました

ミステマールは創業して1年も経っていなかったためので、外部からは全く信用力がありませんでした。今までは大手の会社に所属していたので、独立した際にあるの自身のリスクに気づいていませんでした。このとき、M&Aとは売り手・買い手それぞれの意思だけではなく、さまざまな要因で引き継ぐことができなくなるケースもあるんだと思い知らされました。

保証審査に関しては、その後保証会社に今度は自分の信用力を示す細かい経歴書のほか、取締役個人が連帯保証人になってくれることを伝える資料などを持参するなどして再申請したところ、なんとか審査に通過することができました

- 再申請が通ることもあるんですね!諦めたらいけないということがわかるエピソードです。
他には譲渡金額の中に在庫の費用が含まれていないことが契約の段階になってわかりました。別途30万円を支払い、買い取ることにしたので、これは想定外の出費になりました。事業譲渡のときには何が譲渡対象になっているかをお互いにきちんと確認しなければならないと思いました。

その他注意点として、営業利益と“本当に事業であげられている収益”は別ものである可能性があるということ。特に小規模の事業を運営されている場合、利益に関して個人経費をうまく調整する代わりに役員報酬や人件費を含まない数字が最終利益として記載されていることがあります

本来なら記載されていなければならない人件費分のコストを見誤ってしまうと失敗してしまいかもしれません。表面的な数字だけを追わず、内訳をよく精査し、実態をきちんと把握することを心掛けるべきですね。



(新しく改装された店舗)

【200人の優良顧客リストは譲渡金額以上の価値】

- 引き継ぎはどのように進められましたか。
Yさんは1か月ぐらいかけて引き継ぎをしたいとおっしゃってくださったので、まずは当社の20代女性社員を派遣して、店舗での事業運営を教えていただきました。その間、私も1週間に1〜2回は店舗に通いました。

引き継ぎ時には、200人ほどの顧客情報が網羅された手書きのノートを受け取りました。そこには名前、住所、電話番号のほか、購入頻度、購入希望商品、家族の中での商品の実際の利用者など、細かい情報が記載されていました。顧客リストだけでも、譲渡金額である50万円以上の価値が十分にあります

お客様からの注文は、対面と電話がメインで、支払いは現金のみというクラシックなスタイルでした。電話注文の場合は振込先の口座を口頭で伝えるという、なかなか今では珍しいやり方ですね(笑)。まずは、競合店舗と同じスタート地点にたてるように、EC、キャッシュレス決済の導入など、お客様の利便性を考慮した取り組みを進めています。店舗スタッフの負担も軽減できますしね。

売り手様のように長時間つきっきりの接客は難しいですが、代わりにコロナ禍でお会いできないときにもLINEでのコミュニケーションでお客様の細かいケアを心掛けて、既存のお客様を離さないようにする工夫も重ねていきたいと思っています。

その他、店舗に関しては「美容・健康」の商材を取り扱っていることに合わせた改装も施しました。あとは優良な顧客がいるにもかかわらず高単価な商品を数種類しか取り扱っていないので、より広い商品ラインナップへと拡充していきたいですね。



(新たな商品が陳列された様子)

【目標は10年以内に10事業をM&Aで展開すること】

- 今後の展開についてお考えをお聞かせください。
今回のコロナ禍で改めて感じましたが、外部環境でいきなり何かがダメになるリスクは常にはらんでいます。何かで生き残れることができるように、事業を多角化することの必要性を感じました。

実は未経験なのですが、本業以外に民泊事業もM&Aで買収しました。今時分の経営は厳しいもののオリンピックや年末年始、受験といったシーズンの需要を活かし、なんとか収支を年間でトントンにもっていき、2年後ぐらいに安定して利益を出したいと思います。

今後も小規模の事業の買収は続けていき、目標としては10年以内に10事業の運営を目指します。一つの事業で月10万円の利益を出す、まずはそのためにいろいろな拠点でノウハウを積み重ねていくことが、次につながるのかなと思っています。



(女性スタッフが切り盛りする店内)


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  • 池田純子)
  • ライター紹介池田純子

    大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーのライター・編集者に。暮らしやお金、子育てにまつわる雑誌記事の執筆や単行本の製作に携わる。さまざまな生き方を提案するインタビューサイト「いま&ひと」を主宰。

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