売り手にとってM&Aとは?メリット・デメリットと注意点を徹底解説!

売り手にとってM&Aとは?メリット・デメリットと注意点を徹底解説!

後継者の不在や会社の将来性への不安等の解決にM&Aは有効な手段となりえます。M&Aのメリット・デメリット、成功させるためのポイント、具体的な手続きの流れや費用まで、網羅的に解説します。

目次

「後継者が見つからない」「会社の将来性に漠然とした不安がある」など、事業の未来に悩みを抱えていませんか。

こうした課題を解決する有効な選択肢の一つがM&Aです。
本記事では、M&Aを検討する売り手の皆様が知っておくべき、M&Aのメリット・デメリット、成功させるためのポイント、具体的な手続きの流れや費用まで、網羅的に解説します。

この記事を最後まで読めば、M&Aに関する不安や疑問が解消され、ご自身の会社にとって最善の決断を下すための知識が身につくでしょう。
後悔のない未来を選択するために、まずはM&Aの全体像を正しく理解することから始めましょう。

M&Aとは?基本知識から種類やメリット、成功のポイントなどを解説
手法
M&Aとは?基本知識から種類やメリット、成功のポイントなどを解説

今後の成長戦略や事業承継の手段として、M&Aを選択する企業が増えています。売り手・買い手には、どのようなメリットがもたらされるのでしょうか?実際のM&A事例を挙げながら、M&Aの種類や成功のポイントを解説します。

M&Aはどのような流れで進むのか。期間、費用、必要となる書類
手法
M&Aはどのような流れで進むのか。期間、費用、必要となる書類

M&Aは一定のプロセスに基づいて実行されます。初めて会社を買収する人は、M&Aのフローやかかる期間、取り交わされる契約書の種類を把握しておきましょう。マッチングサイトで売り手を効率よく見つけるコツや、デュー・デリジェンスの重要性も解説します。

売り手にとってのM&Aは?近年増加傾向の理由

近年、M&Aは特別なものではなく、多くの企業にとって現実的な経営戦略の一つとして認識されるようになりました。
特に中小企業において、売り手としてM&Aを選択するケースが増加しています。

その背景には、後継者問題の深刻化やM&Aに対するイメージの変化、そして国による支援体制の拡充があります。
本章では、売り手側のM&Aが増加している3つの主要な理由について詳しく解説します。

後継者不在による事業承継の手段増加

多くの中小企業が後継者不足という深刻な課題に直面しています。経営者の高齢化が進む一方で、親族や社内に適当な後継者が見つからないケースは少なくありません。

このような状況で、廃業ではなく、M&Aで第三者に事業を引き継ぐ選択肢が注目されています。これにより、経営者は会社と従業員の未来を守りつつ、事業の継続を図ることが可能になります。

M&Aに対するイメージ改善と理解促進

かつてM&Aは「身売り」や「乗っ取り」といったネガティブなイメージで語られることがありました。
しかし、近年ではその認識が大きく変わり、企業の成長戦略や事業承継の有効な手段として広く認知されるようになっています。

メディアで友好的なM&Aの成功事例が報じられる機会が増えたことや、M&Aに関する情報発信が活発になったことで、経営者の間での理解が深まったことが大きな要因です。このポジティブなイメージが、M&Aを検討する心理的ハードルを下げています。

中小企業向け支援体制の拡充による実行容易化

国や地方自治体も、中小企業の事業承継を重要な政策課題と位置づけ、M&Aを推進するための支援体制を強化しています。
各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターでは、専門家による秘密厳守の無料相談やマッチング支援を受けられます。

また、M&A仲介会社やプラットフォームサービスも多様化し、以前よりも負担が少なく、M&Aの専門家のサポートを受けられる環境が整っています。
こうした支援体制の拡充が、中小企業にとってM&Aをより身近で実行しやすい選択肢にしています。

企業の後継者不足をどうする?実態と取り得る対策、具体的な解決策
具体的事例
企業の後継者不足をどうする?実態と取り得る対策、具体的な解決策

少子高齢化や事業承継対策の遅れなどにより、後継者不足に悩む企業が増加中です。後継者問題の解消法や後継者人材の育成ポイント、後継者を見つけるのに有用なM&Aについて解説します。特に中小企業の経営者や個人事業主は、参考にしてみましょう。

事業を継承したい場合はどうする?承継の方法や基本的な流れを解説
手法
事業を継承したい場合はどうする?承継の方法や基本的な流れを解説

売上の低迷や後継者問題などを理由として、会社の事業を引き継いでもらいたいと考える事業主は決して少なくありません。会社の事業を継承させたい場合や、逆に他者の事業を継承したい場合はどうすればよいのでしょうか?事業承継の方法や流れ、注意点などを解説します。

社長の後継者は募集可能?M&Aの利点や承継のポイントも紹介
具体的事例
社長の後継者は募集可能?M&Aの利点や承継のポイントも紹介

親族内に後継ぎがいない場合、どのような方法で後継社長を探せばよいのでしょうか?従業員承継や外部招聘のほか、近年はM&Aによる事業承継を選択する企業が増えています。第三者承継の利点や後継者に選ばれる会社になるためのポイントを解説します。

M&Aの売り手の売却先企業の選定ポイント

M&Aを成功させるためには、自社にとって最適な買い手企業を見つけることが極めて重要です。
売却価格は重要ですが、それだけで判断すると、従業員の雇用や事業の将来に予期せぬ問題が生じる可能性があります。

ここでは、売り手の視点から、後悔しない売却先企業を選定するための7つの重要なポイントを解説します。
これらのポイントを総合的に評価し、慎重に相手を見極めましょう。

希望条件に合う売却価格

まず、自社が希望する売却価格を満たしているかは、重要な選定ポイントです。
企業の価値を正当に評価し、納得のいく価格を提示してくれる買い手候補を探しましょう。

自社の目的に合ったM&Aスキーム

M&Aの手法(スキーム)も重要です。

株式譲渡か事業譲渡かによって、税負担や手続きが大きく異なります。
自社の状況や目的に最も適したスキームを提案してくれるかどうかも、買い手選定の重要な判断材料となります。

従業員の雇用維持と処遇改善の可能性

長年会社を支えてくれた従業員の雇用を守ることは、多くの経営者にとって最優先事項の一つでしょう。
M&A後も原則として従業員の雇用を維持し、労働条件を維持または改善してくれる買い手であるかは、必ず確認すべきです。

トップ面談で、従業員の処遇に関する考え方や具体的な計画を質問し、誠実な回答が得られるかを見極めることが重要です。
従業員が安心して働き続けられる環境を整えている企業を選びましょう。

企業文化・経営理念の親和性

企業文化や経営理念が大きく異なると、従業員に摩擦や混乱が生じ、大量離職につながる恐れがあります。
自社が大切にしてきた価値観や文化を尊重し、理解を示してくれる買い手を選ぶことが、円滑な統合の鍵となります。

これまでの事業で重視してきた価値や社風を伝え、相手企業との文化や理念に親和性があるか確認しましょう。
互いの文化を尊重し合える関係性が理想です。

事業の継続と成長につながるシナジー

M&Aの目的は、単なる事業の売却ではありません。
自社の事業が買い手のリソースやネットワークと組み合わさることで、さらなる成長を遂げられるかどうかも重要な視点です。

これは「シナジー効果」と呼ばれます。買い手の持つ販売網、技術力、ブランド力などが自社の事業にどのようなプラスの効果をもたらすのかを具体的に検討しましょう。
事業の将来的な発展が見込める相手こそ、理想的なパートナーと言えます。

買い手企業の財務基盤と信頼性

M&Aの取引を確実に完了させるためには、買い手企業の財務的な安定性が不可欠です。
たとえ良い条件を提示されても、資金調達がうまくいかず、最終的に契約が破談になるリスクも考慮しなければなりません。

買い手企業の財務状況や過去の実績を調査し、信頼できる相手かどうかを慎重に判断する必要があります。
M&A仲介会社などの専門家に相談し、客観的な視点で評価することが求められます。

M&A後の経営方針と売り手経営者の関与

M&Aが成立した後、事業がどのような方針で運営されるのか、そして売り手である経営者自身がどのように関与を求められるのかも、事前に確認しておくべき重要なポイントです。

一定期間引継ぎのために経営に関与する必要があるのか、完全に退くのか。
M&A後のご自身のキャリアプランとも照らし合わせ、双方にとって納得のいく形を模索することが大切です。

自営業の後継者を募集する方法は?M&Aマッチングサイトの活用も
事業承継
自営業の後継者を募集する方法は?M&Aマッチングサイトの活用も

「後継者が見つからない」「廃業は何とか避けたい」という中小企業経営者は、事業承継のマッチングを活用しましょう。マッチングの仕組みや支援機関の選び方、『後継者に選ばれる企業』になるためのポイントを解説します。

事業承継のマッチングはどう進める?支援機関の選び方や手順を解説
事業承継
事業承継のマッチングはどう進める?支援機関の選び方や手順を解説

「後継者が見つからない」「廃業は何とか避けたい」という中小企業経営者は、事業承継のマッチングを活用しましょう。マッチングの仕組みや支援機関の選び方、『後継者に選ばれる企業』になるためのポイントを解説します。

事業承継とは何か?基本知識から後継者問題の解決方法も紹介
事業承継
事業承継とは何か?基本知識から後継者問題の解決方法も紹介

事業承継とは、どのような意味を持つ言葉なのでしょうか。会社を後継者に引き継ぐ際に使われます。よく混同されやすい『事業譲渡』との違いも知っておきましょう。そのほか、事業承継を行う際の手順や問題点も解説します。

売り手にとってのM&Aのメリット

M&Aは売り手にとって、会社売却以上に多くのメリットをもたらします。
後継者問題の解決から創業者利益の確保、従業員の雇用の安定まで、その利点は多岐にわたります。

この章では、売り手の視点から見たM&Aの5つの主要なメリットについて、それぞれ具体的に解説していきます。

メリット①:創業者利益を現金化できる

経営者にとって、会社は長年の努力の結晶であり、その価値は個人の資産と密接に結びついています。
M&Aによって自社の株式や事業を売却することで、これまで築き上げてきた会社の価値を現金として受け取ることができます。

これは「創業者利益の確定」と呼ばれます。
これにより得た資金は、引退後の生活資金や、新たな事業への挑戦、あるいは個人の資産運用など、様々な目的に活用することが可能になります。

メリット②:後継者不在でも事業承継可能

後継者が見つからないために、優良な事業でありながら廃業せざるを得ないケースは後を絶ちません。
M&Aは、こうした「後継者不在問題」を解決する極めて有効な手段です。

親族や社内に後継者がいなくても、意欲と能力のある第三者企業に引き継げます。
これにより、長年培ってきた技術やノウハウ、取引先との関係などを次世代につなぐことが可能になります。

メリット③:成長余地のある企業に引き継げる

自社単独では難しかった大規模な投資や販路拡大も、資金力やネットワークを持つ大手企業の傘下に入ることで実現可能になる場合があります。M&Aは、事業の成長を加速させるための起爆剤となり得ます。

自社の事業や技術を高く評価し、さらなる成長のために投資を惜しまない買い手企業に引き継ぐことができれば、事業は新たなステージへと飛躍できるでしょう。
これは、経営者にとって大きな喜びとなります。

メリット④:負債やリスクの軽減が図れる

会社の経営には、常に様々なリスクが伴います。
特に中小企業の経営者は、会社の借入金に対して個人保証を行っているケースが多く、事業が傾いた場合には個人資産を失うリスクを抱えています。

M&Aによって会社を売却する際、買い手や金融機関との交渉・合意が必要ですが、経営者個人の保証を解除できる可能性があります。
経営の負担や将来の不安から解放され、安心して引退後の生活を送れます。

メリット⑤:従業員の雇用を守りやすい

後継者が見つからずに廃業を選択した場合、従業員は職を失うことになります。これは経営者にとって、非常に心苦しい決断です。

M&Aであれば、従業員の雇用を維持したまま事業を引き継いでもらうことが可能です。
多くの場合、買い手企業は既存の従業員のスキルや経験を高く評価し、雇用を継続します。
ただし、M&A後の配置や労働条件については、買い手と事前に確認・合意しておくことが、円滑な引継ぎの鍵となります。

事業の跡継ぎいない問題をどうする?経営者が取り得る選択肢を解説
具体的事例
事業の跡継ぎいない問題をどうする?経営者が取り得る選択肢を解説

少子高齢化による人手不足をはじめ、さまざまな要因で跡継ぎがいない問題に直面する企業が増えています。廃業の大きな原因であり、早急に跡継ぎを見つけたいと考えている事業主も多いでしょう。後継者が不在の場合に取り得る選択肢を解説します。

シナジー効果とは?意味や事例、譲渡対価への影響について解説
用語説明
シナジー効果とは?意味や事例、譲渡対価への影響について解説

多くの企業は『シナジー効果の創出』をM&Aの目的の一つとして掲げます。日本語では相乗効果を意味しますが、具体的にはどのような事例を指すのでしょうか?対義語である『アナジー効果』の意味や、シナジー効果に関連するフレームワークも紹介します。

中小企業M&Aを成功させるには?基本的な流れと注意点、事例を紹介
具体的事例
中小企業M&Aを成功させるには?基本的な流れと注意点、事例を紹介

近年は中小企業のM&Aが増えており、事業の買収・売却が目立っています。大手企業や海外企業のイメージがいまだに強いM&Aですが、今後さらに中小企業の案件も増えてくるでしょう。そこで中小企業向けに、M&Aの流れや注意点を解説します。

売り手にとってのM&Aのデメリット・リスク

M&Aは多くのメリットがある一方で、売り手にとって注意すべきデメリットやリスクも存在します。

ここでは、M&Aを進める上で売り手が直面しうる5つの代表的なデメリット・リスクについて解説します。
これらのリスクを事前に理解し、対策を講じることが成功の鍵です。

デメリット① 希望条件で売却できない

M&Aを検討し始めても、必ずしも自社が希望する価格や条件で売却できるとは限りません。
自社の価値評価が想定より低かったり、魅力的な買い手が見つからなかったりするケースもあります。

業績悪化時や業界の先行き不透明な場合は、買い手探しが難航する可能性があります。
M&Aを成功させるには、適切なタイミングを見極め、企業価値を高める努力を日頃から行っておくことが重要です。

デメリット② 従業員の離職リスクがある

M&Aによって経営者が変わることは、従業員にとって大きな環境の変化であり、不安を感じる人も少なくありません。
新しい経営方針や文化に馴染めず、モチベーションが低下し離職するリスクがあります。

特に、M&Aのプロセスや今後の処遇について十分な説明がない場合、従業員の不信感は増大します。
従業員の不安を払拭し、円滑な統合を図るためには、買い手企業と連携し、丁寧なコミュニケーションを心がけることが不可欠です。

デメリット③ 機密情報が漏れる可能性

M&Aの交渉過程では、買い手候補に対して、自社の財務状況や技術情報、顧客リストといった機密情報を開示する必要があります。
この際、秘密保持契約(NDA)を締結しますが、情報漏洩のリスクを完全にゼロにすることは困難です。

万が一、交渉が破談になった後に情報が漏洩すれば、事業に深刻なダメージを与える可能性があります。
信頼できる相手を慎重に選び、情報開示の範囲を交渉の進捗に応じて段階的に管理することが重要です。

デメリット④ 買い手との交渉が難航する

M&Aの交渉は、売却価格や従業員の処遇、経営の引継ぎ方法など、多岐にわたる項目について双方の利害を調整するプロセスです。
お互いの希望条件が大きく異なれば、交渉が長引き、精神的に負担が大きくなることもあります。

特に、法務や財務に関する専門的な知識が必要となる場面も多く、売り手側だけで交渉を進めるのは困難です。
M&Aの専門家である仲介会社やアドバイザーのサポートを受けながら、冷静に交渉を進めることが重要です。

デメリット⑤ 企業文化の違いで混乱する

M&Aが成立し、いざ統合(PMI:Post Merger Integration)が始まると、企業文化の違いが大きな壁として立ちはだかることがあります。
仕事の進め方や意思決定のプロセス、価値観の違いから、現場で混乱や対立が生じるケースは少なくありません。

文化的摩擦は、生産性低下や従業員離職につながる恐れがあります。
買い手選定の段階から、企業文化の親和性を重視するとともに、M&A後も双方の文化を尊重し、時間をかけて融合させていく努力が必要です。

買収された会社に起きる変化。経営者や社員の待遇は買い手次第?
具体的事例
買収された会社に起きる変化。経営者や社員の待遇は買い手次第?

他社に会社や事業が買収されると、買収された側(売り手)にはさまざまな変化が生じます。経営陣・社員の待遇や、取引先との関係性はどうなるのでしょうか?株式譲渡と事業譲渡を例に挙げ、買収後に起きる変化について解説します。

M&Aの失敗事例。トラブルを回避するためのポイントを解説
具体的事例
M&Aの失敗事例。トラブルを回避するためのポイントを解説

日本におけるM&Aの成功率は、かなり低いとされています。M&Aの成功・失敗の定義は難しい面がありますが、想定していた効果が得られなければ、少なくとも成功したとはいえません。多くの失敗事例に触れ、トラブルやリスクを回避する方法を学びましょう。

売り手から見たM&Aの種類と特徴

M&Aにはさまざまな手法(スキーム)があります。
どのスキームを選択するかによって、手続きの複雑さ、税金の負担、会社への影響などが大きく異なります。売り手としては、それぞれの特徴を理解し、自社の目的や状況に適した方法を選ぶことが重要です。

ここでは、中小企業のM&Aでよく用いられる代表的な7つのスキームについて、その特徴とメリット

株式譲渡

株式譲渡は、売り手の株主が保有する株式を買い手に売却し、経営権を移転させる方法です。手続きが比較的シンプルで、中小企業のM&Aにおいて最も多く利用されています。
  • メリット: 手続きが簡便で、会社を丸ごと引き継ぐため、事業への影響が少ない点が挙げられます。許認可も原則そのまま引き継がれますが、業種によっては届出や認可が必要です。
  • デメリット: 売り手企業が抱える負債や不要な資産もすべて引き継がれるため、買い手側がデューデリジェンス(買収監査)を慎重に行う必要があります。また、株主が分散している場合は、全株主から同意を得る手間がかかります。

株式取得(新株引受)

株式取得(新株引受)は、買い手が売り手の新株を引き受けて経営権を取得する方法です。第三者割当増資とも呼ばれます。

  • メリット: 売り手企業は、売却の対価として得た資金を会社の運転資金や設備投資に充てることができるため、事業の成長や財務体質の改善につながります。
  • デメリット: 既存株主の持株比率が低下するため、株主総会での特別決議など、複雑な手続きが必要になる場合があります。また、買い手が経営権を完全に取得するまでには時間がかかることがあります。

事業譲渡

事業譲渡は、会社の経営権ではなく、事業の一部または全部を売買する方法です。売り手は特定の事業だけを売却し、会社自体は手元に残すことができます。

  • メリット: 売りたい事業だけを選んで売却できるため、不採算事業を切り離し、主力事業に集中するといった選択が可能です。買い手にとっても、不要な負債を引き継ぐリスクがないという利点があります。
  • デメリット: 関連する資産や負債、契約、従業員を個別に移転する必要があり、手続きが煩雑になります。メ従業員の転籍には個別の同意が必要となり、事業に必要な許認可は原則として買い手が再取得する必要があります。

合併

合併とは、複数の会社が契約によって一つの会社に統合される手法です。一方の会社がもう一方の会社を吸収する「吸収合併」と、新しく設立した会社にすべての会社が統合される「新設合併」があります。

  • メリット: 複数の会社が一つになることで、スケールメリットやシナジー効果を追求しやすく、事業基盤の強化につながります。
  • デメリット: 権利義務を包括的に承継するため、手続きが複雑で時間もかかります。また、異なる組織文化を持つ従業員同士の融合(PMI)が難しく、現場の混乱を招く可能性があります。

会社分割

会社分割は、会社が営む事業の一部または全部を分割し、別の会社に承継させる手法です。既存の会社に承継させる「吸収分割」と、新しく設立した会社に承継させる「新設分割」があります。

  • メリット: 事業譲渡と同様に、特定の事業を切り出して承継させることができます。労働契約承継法に基づく所定の手続き(労働者への事前説明など)を経ることで、分割対象事業に主として従事する従業員の雇用契約は、個別の同意なく承継されます。
  • デメリット: 権手続きが複雑であり、株主や債権者を保護するための手続きが必要となります。税務上の取り扱いも複雑なため、専門家の助言が不可欠です。

株式交換

株式交換は、売り手企業がその発行済み株式のすべてを買い手企業に取得させ、その対価として買い手企業の株式や現金を受け取る手法です。これにより、売り手企業は買い手企業の完全子会社となります。

  • メリット: 買い手企業は、買収資金として自社の株式を活用できるため、多額の現金を準備する必要がありません。また、売り手企業の法人格は維持され、独立性を保ちやすい特徴があります。
  • デメリット: 買い手企業の株価が下落すると、売り手側が受け取る価値も減少するリスクがあります。また、株主総会の特別決議が必要など、手続きは複雑です。

株式移転

株式移転は、一つまたは複数の会社が、その発行済み株式のすべてを新しく設立する会社(親会社)に取得させる手法です。既存の会社は、新設された親会社の完全子会社となります。主に、共同持株会社を設立する際に用いられます。

  • メリット: 複数の企業がグループとして統合する際に、それぞれの独立性を保ちながら経営の効率化を図ることができます。
  • デメリット: 株式交換と同様に手続きが複雑であり、時間とコストがかかります。中小企業のM&Aでは利用例が少ない方法です。
M&Aにはどんな種類がある?株式譲渡、事業譲渡、合併の違い
手法
M&Aにはどんな種類がある?株式譲渡、事業譲渡、合併の違い

昨今は多くの企業においてM&Aが成長戦略として位置付けられています。M&Aと一口にいっても複数のスキーム(手法)があるため、目的によって最適なものを選択する必要があります。株式譲渡や事業譲渡など、M&Aの種類とその特徴について解説します。

組織再編行為の「会社分割」とは?吸収分割や新設分割を行うケース
手法
組織再編行為の「会社分割」とは?吸収分割や新設分割を行うケース

『会社分割』は、会社の事業構造を大きく変える際に用いられる『組織再編行為』の一種です。吸収分割と新設分割の2種類があり、活用に適したシチュエーションが異なります。事業譲渡との違いや会社分割にあたっての注意点を解説します。

株式交換はどんなケースで利用される?メリット、必要な手続きなど
手法
株式交換はどんなケースで利用される?メリット、必要な手続きなど

株式交換とは、特定の株式会社を『完全子会社化』する目的で使われます。現金ではなく、株式を対価にできるため、買い手は買収資金を調達する必要がありません。手続きの大まかな流れやメリット・デメリットを解説します。

売り手がM&Aを行う際の注意点

M&Aは、売り手企業の未来を左右する重要な経営判断です。
成功すれば多くのメリットを享受できますが、進め方を誤ると、思わぬトラブルに発展し、後悔する結果になりかねません。

ここでは、売り手がM&Aを円滑に進め、最良の成果を得るために、特に注意すべき5つのポイントを解説します。
これらの注意点を常に念頭に置き、慎重にプロセスを進めましょう。

注意点①:情報漏洩に最大限の注意を払う

M&Aを検討しているという情報が、正式発表前に社内外へ情報が漏れるのは避けるべきです。
従業員の動揺や離職、取引先・金融機関との関係悪化を招く恐れがあります。

M&A仲介会社などの専門家と秘密保持契約を締結することはもちろん、社内でも情報を共有する範囲を経営陣など最小限にとどめることが重要です。交渉相手とのやり取りも、細心の注意を払って行いましょう。

注意点②:企業価値を正しく伝える準備する

自社の価値を買い手候補に正しく、そして魅力的に伝える準備が不可欠です。自社の強みや技術、将来的な収益性を客観的データで説明できなければ、高い評価は得られません。

事業計画書企業概要書(インフォメーション・メモランダム)といった資料を、専門家のアドバイスを受けながら丁寧に作成しましょう。
自社の魅力を最大限にアピールすることが、より良い条件での売却につながります。

注意点③:複数の買い手を比較検討する

最初に声をかけてくれた一社とだけ交渉を進めるのは、得策ではありません。
より良い条件を引き出し、自社にとって最適なパートナーを見つけるためには、複数の買い手候補を比較検討することが非常に重要です。

複数候補と交渉すれば競争が生まれ、売却価格や条件が有利になる可能性が高まります。
また、様々な企業の考え方やビジョンに触れることで、自社の将来にとって本当に良い相手は誰かを見極めることができます。

注意点④:手数料や税負担を事前に確認する

M&Aには、仲介会社に支払う手数料や、弁護士・税理士への報酬など、様々な費用が発生します。また、株式や事業を売却して得た利益(譲渡所得)には、税金が課せられます。

これらのコストを事前に把握しておかないと、「手元に残る現金が想定よりずっと少なかった」という事態になりかねません。契約前に、手数料の税計算を専門家に確認し、手取り額を試算しておくことが重要です。

注意点⑤:M&Aの目的と軸を見失わない

M&Aの交渉は長期にわたることが多く、複雑な論点が次々と出てきます。
その過程で、当初の目的を見失い、目先の金額など、些細な条件に固執してしまうことがあります。

「なぜM&Aをするのか」「何を最も大切にするのか」という原点を忘れないようにしましょう。
従業員の雇用なのか、事業の成長なのか、創業者利益の確保なのか。自社の軸を明確にしておくことが、交渉の場で適切な判断を下すための羅針盤となります。

会社売却の主な理由とは。売れる価格を知る方法や株式譲渡の流れなど
用語説明
会社売却の主な理由とは。売れる価格を知る方法や株式譲渡の流れなど

後継者不在で事業の将来に不安があるなら、廃業ではなく会社売却を検討するのがおすすめです。現状や仕組みを理解すれば、さまざまな問題を解決できると分かるでしょう。価格の算定やM&A手法の種類など、会社売却について詳しく解説します。

事業価値はどう決まる?算出方法や企業価値・株主価値との違いを紹介
用語説明
事業価値はどう決まる?算出方法や企業価値・株主価値との違いを紹介

M&Aで事業の譲渡価格を決めるには、対象企業の『事業価値』を見極めることが重要です。事業価値は企業価値の一部であり、将来的にどれだけの収益を生み出せるかを示します。企業価値・株主価値との違いや、価値の算出方法を解説します。

事業譲渡における従業員への対応。給与、退職金、有給の取り扱いなど
具体的事例
事業譲渡における従業員への対応。給与、退職金、有給の取り扱いなど

事業譲渡では、買い手企業に従業員が転籍するケースがあります。給与や退職金がどうなるのか、従業員の不安は尽きません。買い手と売り手は、従業員の待遇についてどう対応すればよいのでしょうか?デュー・デリジェンスの重要性についても解説します。

売り手側のM&Aの方法と流れ

M&Aは、思い立ってすぐに成立するものではありません。
専門家への相談から始まり、買い手探し、交渉、契約締結に至るまで、計画的に進める必要があります。

ここでは、売り手側の一般的なM&A方法と、7つのステップを解説します。
全体像を知ることで、各段階の行動が明確になり、手続きをスムーズに進められます。

手順①M&Aの検討と相談先の選定

まず、自社の経営課題を解決するために、M&Aが本当に最適な選択肢なのかを慎重に検討します。
その上で、M&Aを進めることを決断したら、信頼できる相談先を見つけることが最初のステップです。

相談先には、M&A仲介会社や金融機関、事業承継・引継ぎ支援センターなどがありますが、近年ではM&Aプラットフォームの活用も一般的です。
国内最大級のM&Aプラットフォーム「TRANBI」には、多様な業種・規模の買い手候補が数千社登録されています。
匿名で案件を登録し、買い手から直接アプローチを受けられるため、初期の候補探しに有効です。

手順②企業価値の評価と資料準備

次に、自社の企業価値がどのくらいになるのかを客観的に評価します。
これは「バリュエーション」と呼ばれ、売却価格の目安を把握し、交渉の基準とするために非常に重要です。 同時に、買い手候補に自社の魅力を伝えるための資料を準備します。
会社の基本情報や事業内容、財務状況などをまとめた企業概要書(ノンネームシート、インフォメーション・メモランダム)」を作成します。

バリュエーションの目的とポイント。三つの手法の違いを理解しよう
用語説明
バリュエーションの目的とポイント。三つの手法の違いを理解しよう

M&Aにおけるバリュエーションとは、買収対象の企業価値を評価することです。売り手と買い手は、その評価をもとに価格交渉の妥協点を探っていきます。バリュエーションの目的と、評価に用いられる三つの手法について詳しく解説します。

手順③買い手候補の探索と打診

準備が整ったら、いよいよ買い手候補を探します。
M&A仲介会社やプラットフォームを利用して、自社の事業とシナジーが見込める企業や、自社の希望条件に合う企業をリストアップします。

最初は社名を伏せたノンネームシートで打診し、興味を示した候補企業との間で秘密保持契約(NDA)を締結した上で、より詳細な企業概要書を開示し、具体的な検討を促します。

シナジー効果とは?意味や事例、譲渡対価への影響について解説
用語説明
シナジー効果とは?意味や事例、譲渡対価への影響について解説

多くの企業は『シナジー効果の創出』をM&Aの目的の一つとして掲げます。日本語では相乗効果を意味しますが、具体的にはどのような事例を指すのでしょうか?対義語である『アナジー効果』の意味や、シナジー効果に関連するフレームワークも紹介します。

手順④トップ面談と基本合意の締結

条件や親和性の高い企業を選び、経営者同士で面談(トップ面談)を行います。
ここでは、経営理念やビジョン、M&A後の事業方針を確認し、信頼関係を築くことが目的です。

交渉の結果、双方が大筋で合意に至れば、「基本合意書(LOI)」を締結します。
これには、現時点での売却価格やスケジュールなどが盛り込まれますが、価格など主要条件は法的拘束力がありませんが、独占交渉権や秘密保持義務には法的拘束力を持たせるのが一般的です。

M&Aで取り交わすLOIとは何か。記載内容や法的拘束力を解説
用語説明
M&Aで取り交わすLOIとは何か。記載内容や法的拘束力を解説

M&Aの交渉初期で取り交わされる『LOI』は、基本的な合意内容や価格を定めた仮の契約書です。独占交渉権や秘密保持義務の条項には法的効力があるため、条件をよく確認する必要があります。記載すべき事項や作成方法について解説します。

手順⑤デューデリジェンスへの対応

基本合意を締結すると、買い手側による詳細な調査「デューデリジェンス(DD)」が実施されます。
これは、売り手企業の財務状況や法務上のリスク、事業の実態などを精査し、買収の最終判断を下すためのプロセスです。

売り手は、買い手の求める資料を迅速に提出し、質問には誠実に回答する必要があります。この対応が不十分だと、買い手の不信感を招き、交渉が決裂する原因にもなりかねません。

デュー・デリジェンスでM&Aのリスク回避。かかる費用や期間など
手法
デュー・デリジェンスでM&Aのリスク回避。かかる費用や期間など

M&Aの最終合意に至る上で、デュー・デリジェンス(DD)は欠かすことのできない重要なプロセスです。資金に限りのある中小企業や個人事業主は、何をどのように実行すればよいのでしょうか?DDの種類や費用、期間について理解を深めましょう。

手順⑥最終交渉と最終契約の締結

デューデリジェンスの結果、大きな問題がなければ、最終的な条件交渉に入ります。
デューデリジェンスで新たなリスクが見つかれば、売却価格を見直す場合もあります。

双方がすべての条件に合意したら、法的な拘束力を持つ「最終契約書(DA)」を締結します。
実務では、株式譲渡の場合は「株式譲渡契約書(SPA)」、事業譲渡の場合は「事業譲渡契約書(APA)」など、スキームに応じた名称の契約書が用いられます。
契約書の内容は非常に専門的であるため、弁護士などの専門家によるリーガルチェックが不可欠です。

M&Aの株式譲渡ではSPAの作成が必須。作成のポイントを確認
用語説明
M&Aの株式譲渡ではSPAの作成が必須。作成のポイントを確認

M&Aで出てくる『SPA』とは、株の相対取引で締結される株式譲渡契約書のことです。契約書には、交渉で合意した内容のほかに株主名簿の書換やクロージング条件、表明保証などを細かく盛り込む必要があります。作成時のポイントや注意点を解説します。

手順⑦クロージング

最終契約書に定められた条件(クロージング条件)がすべて満たされた後、株式の譲渡と売買代金の決済が行われます。
これをもって、M&Aのすべての手続きが完了し、経営権が正式に買い手に移転します。

この一連のプロセスを「クロージング」と呼びます。契約内容によっては、クロージング後も売り手が一定期間引継ぎ業務を行う場合があります。

M&Aにおける基本合意書とは。必要になる理由とタイミングを確認
用語説明
M&Aにおける基本合意書とは。必要になる理由とタイミングを確認

基本合意書は、売り手と買い手との間で交わす合意文書です。合意形成を図るほか、M&Aのスケジュールを確認したり、買い手の交渉力を強化したりする役目もあります。基本合意書を交わすタイミングや他の契約書との違いを解説します。

財務デュー・デリジェンスの調査内容や必要性とは。主な二つの役割
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財務デュー・デリジェンスの調査内容や必要性とは。主な二つの役割

財務デュー・デリジェンスとは、買い手が対象企業の財務状況や資金繰りを調査することです。最終契約の締結前に行われるのが一般的で、簿外債務などの財務リスクを洗い出します。財務デュー・デリジェンスの意義や調査内容について解説します。

M&AにおけるDDとは何か?買収監査の手順、種類、注意点を解説
用語説明
M&AにおけるDDとは何か?買収監査の手順、種類、注意点を解説

『DD』とは、M&Aにおける買収監査を指します。買い手は最終決定を下す前に、買収対象会社が重大なリスクや問題を抱えていないかを調査する必要があるでしょう。DDの手順や、問題が発覚した際の対処法についても解説します。

非上場株式の譲渡は契約前にまず内容確認。譲渡承認など手続きを解説
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非上場株式の譲渡は契約前にまず内容確認。譲渡承認など手続きを解説

非上場株式の譲渡を実施するには、気を付けるべきポイントが複数あります。株式譲渡を実施する際のトラブルを避けるため、確実にチェックしましょう。非上場株式の株価算定方法や、譲渡時の準備・手続きも解説します。

M&Aで売り手にかかる費用・税金

M&Aを成功させるためには、そのプロセスで発生する費用や、売却益にかかる税金について正しく理解しておくことが不可欠です。
事前に資金計画を立てないと、想定外の出費に慌てたり、手元資金が予想より減る可能性があります。

この章では、M&Aで売り手側に発生する費用の種類と相場、そして税金について解説します。

M&Aにかかる費用の種類と相場

M&Aを進めるにあたり、売り手は主にM&A仲介会社などの専門家に支払う手数料が必要となります。
手数料の体系は支援機関ごとに大きく異なり、近年ではM&A支援機関登録制度において手数料の公表が求められています。

一般的な「レーマン方式」(取引金額に応じた料率計算)でも、料率や最低報酬額、中間金の有無などは異なります。
契約前には複数の支援機関の開示情報を比較検討し、料金体系を必ず確認しましょう。

M&Aで売り手にかかる税金

M&Aによって利益(譲渡所得)が生じた場合、売り手には税金が課せられます。
課される税金の種類は、売り手が個人か法人か、またM&Aのスキームによって異なるため、注意が必要です。

  • 株式譲渡の場合: 個人の場合、株式譲渡益に対して所得税15.315%と住民税5%が課され、合計20.315%の申告分離課税が適用されます。売り手が法人の場合は、他の所得と合算され、法人税等の対象となります。
  • 事業譲渡の場合: 売り手である会社に、譲渡益に対して法人税等が課せられます。また、譲渡する資産(土地などの非課税資産を除く)の内容によっては、消費税の課税対象となるため、買い手から消費税を預かり、納税する必要があります。

税負担を減らすには、適切な節税策を検討することが重要です。
例えば、役員退職金として受け取ることで税制上の優遇措置である「退職所得控除」を活用する方法があります。

どのような対策が可能か、税理士などの専門家にあらかじめ相談し、最適なタックスプランニングを行うことが賢明です。

M&Aの税金は?スキーム別節税術と最新改正ポイントを徹底解説
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M&Aの税金は?スキーム別節税術と最新改正ポイントを徹底解説

M&Aの税金は、用いるスキームや売り手・買い手といった立場によって大きく異なりますが、その仕組みを正しく理解すれば、適切な対策を講じることが可能です。M&Aに関わる税金の基本から、売り手・買い手それぞれの具体的な税務、最新の税制改正、そしてすぐに実践できる節税策まで、専門的な内容を分かりやすく網羅的に解説します。

2025年度版 M&Aに関する税制と活用ポイント|中小企業向け優遇策を徹底解説
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2025年度版 M&Aに関する税制と活用ポイント|中小企業向け優遇策を徹底解説

M&Aに関連する税制を正しく理解し、適切な優遇措置を活用することで、税負担を大きく減らし、M&Aの効果を高めることができます。利用できる税制優遇措置が明確にし、M&Aをより有利に進めるための具体的なアクションプランの検討にお役立てください。

会社を売却する際にかかる税金の種類。株式譲渡、事業譲渡の違いは?
具体的事例
会社を売却する際にかかる税金の種類。株式譲渡、事業譲渡の違いは?

会社売却時にかかる税金は、M&Aスキームにより種類や税額が異なります。会社の売却を検討している場合は、売却時に発生する税金についてしっかり理解しておくことが重要です。会社売却時の税金や節税方法について解説します。

M&Aの売り手に関するよくある質問

M&Aは多くの経営者にとって初めての経験であり、様々な疑問や不安がつきものです。
ここでは、売り手の立場にある経営者から特によく寄せられる4つの質問について、簡潔にお答えします。

M&Aにはどれくらいの期間がかかる?

M&Aの期間は、企業の規模や業種、交渉の状況によって大きく異なりますが、一般的には半年から1年以上かかるケースが多いです。
相談先の選定から始まり、買い手候補探し、交渉、デューデリジェンス、契約締結と、多くのステップを踏む必要があります。
スムーズに進めるためには、早めに準備を開始することが重要です。

会社の価値はどう決まる?

会社の価値(企業価値)の算定には、様々な方法があります。
代表的なものに、会社の純資産に着目する「コストアプローチ」、類似する上場企業の株価などを参考にする「マーケットアプローチ」、将来の収益性を予測して価値を算出する「インカムアプローチ」などがあります。実際には、これらの方法を複数組み合わせて、最終的な売却価格は買い手との交渉によって決定されます。

従業員にはいつ告知する?

従業員への告知タイミングは、M&Aで最も慎重な判断が必要な事項の一つです。
情報が早期に漏れると、従業員の間に動揺が広がり、事業に支障をきたす恐れがあります。
情報漏洩を防ぐため、多くは最終契約後またはクロージング直後に告知します。
ただし、事業譲渡などで従業員の個別の同意が必要な場合は、より早い段階での説明が求められることもあります。

秘密は守られるのか不安がある場合は?

M&Aの情報管理は非常に重要です。
M&A仲介会社や交渉相手とは、必ず秘密保持契約(NDA)を締結します。
これにより、法的な拘束力をもって情報の目的外使用や漏洩を防ぎます。

信頼できる専門家や相手を選ぶことが大前提ですが、NDAを締結しても漏洩リスクは残るため、交渉進捗に応じて情報開示を段階的に管理することが有効です。

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まとめ|M&A売り手として後悔しない選択をしよう!

本記事では、M&Aを検討する売り手の視点から、そのメリット・デメリット、売却先の選定ポイント、具体的な流れや費用、注意点に至るまで、網羅的に解説しました。
M&Aは、後継者不在や事業の将来性といった経営課題を解決し、会社と従業員、そして経営者自身の未来を拓くための強力な選択肢です。

しかし、そのプロセスは複雑で、多くの重要な判断を伴います。
成功の鍵は、M&Aの目的を明確にし、信頼できる専門家のサポートを得ながら、自社にとって最適なパートナーを慎重に見極めることです。
情報収集を欠かさず各ステップを丁寧に進めれば、後悔のない最良の決断ができます。
この記事が、あなたの会社にとって明るい未来を切り拓く一助となれば幸いです。

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