社長の後継者は募集可能?M&Aの利点や承継のポイントも紹介

社長の後継者は募集可能?M&Aの利点や承継のポイントも紹介

親族内に後継ぎがいない場合、どのような方法で後継社長を探せばよいのでしょうか?従業員承継や外部招聘のほか、近年はM&Aによる事業承継を選択する企業が増えています。第三者承継の利点や後継者に選ばれる会社になるためのポイントを解説します。

『TRANBI』は、買い手や投資家と直接交渉ができる『事業承継・M&Aプラットフォーム』です。ユーザー登録数は10万人以上で、未経験者の売却率は70%に上ります。M&Aが初めての売り手様には、成約までの流れや交渉のポイントをまとめた『初心者向けガイド』を用意しました。案件探しの前にチェックしましょう。

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親族内に社長の後継者候補がいない場合は?

かつては家業を継ぐのが当たり前でしたが、少子高齢化や働き方の多様化によって、必ずしも親族内承継ができるとは限らない時代となりました。親族内に後継者候補が見つからない場合、廃業以外にどのような選択肢があるのでしょうか?

従業員に承継

一つ目の選択肢は『従業員承継』です。役員や従業員の中から後継者にふさわしい者を選定し、後継者として育成します。

古株の人材であれば、経営者の思いや組織風土、企業理念などに深い理解があるため、事業承継が円滑に進みます。他の従業員や取引先からも受け入れられやすく、現場の混乱を最小限に抑えられるでしょう。

一方で、従業員承継は前例主義になりやすいのがデメリットです。目まぐるしく変化する経営環境に、いかに柔軟に対応できるかが問われるでしょう。

外部から招聘

社内に経営者候補がいない場合は、社外の優秀な人材に経営者になってもらう『外部招聘』を検討しましょう。

後継者の選択肢が広がる上、経営手腕に優れた人材を妥協なく選定できます。前経営者のやり方が踏襲されやすい従業員承継に対し、社内に新しい風が吹き込まれるのもメリットです。

ただし、外部招聘は社内で反発が起きやすく、「新しい経営者のやり方が受け入れられない」という従業員が出てくる可能性があります。引退するまでの限られた時間でしっかりと引き継ぎを行い、信頼関係を醸成しなければなりません。

M&Aで他の会社に引き継ぐ選択肢も

M&Aは『Mergers and Acquisitions』の略語で、企業の合併と買収を意味します。かつては『身売り』や『会社の乗っ取り』というイメージがありましたが、近年はM&Aを事業承継の手段とする中小企業が増えているのが実情です。

M&Aには、従業員承継や外部招聘にはない多くのメリットがあります。

有能な経営者に会社を任せられる

中小企業のトップとしてかじを取るには、決断力や先見性、折衝力など多くの能力が求められます。自社に優秀な従業員がいても、必ずしも経営者としての資質があるとは限りません。

M&Aの最大のメリットは、有能な経営者に自社の経営を引き継げる点です。後継者の育成に要する時間が短縮できる上、相手が同業種の企業経営者であれば相互理解もスムーズに進むでしょう。

承継先を選定する際は、経営能力や実績だけでなく、経営者が信頼に足る人物かどうかをしっかりと見極める必要があります。

シナジー効果で事業が拡大する可能性

長年育ててきたブランドや商品を存続させられるだけでなく、シナジー効果により事業が拡大する可能性があります。シナジー効果とは、複数の企業が協力することで、1+1=2以上の大きな効果や利益がもたらされることです。

例外もあるものの、M&Aでは大きな会社が小さな会社を買収するのが一般的です。資金力のある企業の傘下に入れば、より多くの資金が事業に投下できるため、成長スピードが上がるでしょう。従業員が活躍できるチャンスも増えると予想されます。

シナジー効果については、以下のコラムで詳しく解説しています。

 シナジー効果とは?意味や事例、譲渡対価への影響について解説
用語説明
シナジー効果とは?意味や事例、譲渡対価への影響について解説

多くの企業は『シナジー効果の創出』をM&Aの目的の一つとして掲げます。日本語では相乗効果を意味しますが、具体的にはどのような事例を指すのでしょうか?対義語である『アナジー効果』の意味や、シナジー効果に関連するフレームワークも紹介します。

譲渡益を獲得できる

後継者探しを諦めて廃業を選択した場合、経営者は廃業に伴う費用を負担しなければなりません。一方、M&Aで会社や事業を売却すれば、譲渡益を獲得できます。

譲渡価格には、有形資産や負債だけでなく、知的財産権や技術力、ノウハウといった無形資産の価値が反映されます。引退が1~2年先であれば、経営改善に注力しましょう。

コストの圧縮や債務の整理、ガバナンスの再整備などを進めることで、企業価値が向上し、より高い譲渡価格を実現できます。

後継社長を募集する方法は?

一般的な求人募集で、社長の後継者を見つけるのは容易ではありません。知り合いの紹介でよい人材に巡り合えるケースもありますが、選択肢の幅が狭まってしまうのがデメリットです。後継者を広く募るには、どのような方法が最適なのでしょうか?

事業承継・引継ぎ支援センターに相談

後継者不在に悩む中小企業や小規模事業者の相談窓口となるのが、『事業承継・引継ぎ支援センター』です。国によって各都道府県に設置されており、事業承継に精通した専門家が在籍しています。

第三者承継を検討している場合は、『後継者人材バンク』を活用しましょう。後継者のいない事業者と創業を志す起業家を引き合わせるサービスで、相談・登録は無料です。以下は、マッチング成立までの大まかな流れです。

1.センター職員と面談する

2.後継者不在事業主が匿名での企業情報を登録する

3.センター職員から、ノンネーム情報に興味を持った起業家の情報が伝えられる

4.センター職員と起業家が面談する

5.当事者同士が面談する(3回が目安)

6.マッチング成立後、引き継ぎ作業をスタートする

参考:後継者人材バンク|事業承継・引継ぎポータルサイト

参考:事業引継ぎハンドブック|中小企業庁

M&Aマッチングサイトを活用

M&Aマッチングサイトとは、売り手と買い手がオンライン上で交渉できるプラットフォームです。

M&Aアドバイザーや仲介業者が間に入ると、相手の真意がくみ取りにくかったり、交渉に至るまでに時間がかかったりする場合がありますが、M&Aマッチングサイトを活用すれば、匿名のまま相手とファーストコンタクトが取れます。

『TRANBI(トランビ)』は、国内最大級の成約実績を誇るM&Aマッチングプラットフォームです。『会社を売る』というと抵抗感を覚えるかもしれませんが、事業承継や後継者探しのためにサービスを活用する中小企業も少なくありません。

売り手は以下の機能をすべて無料で使えるため、気軽に登録してみましょう。

  • 売却案件の掲載
  • 買い手との交渉・オファー
  • 成約
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経営幹部の採用に強い求人サイトを利用

後継者不足が深刻化している近年は、外部招聘のニーズが高まっています。『経営幹部の採用に強い求人サイト』や『経営幹部の登用サービス』を活用すれば、一般の求人サイトでは出会えないようなエグゼクティブに接触できるでしょう。

外部の人間が後継者に就任すると、多かれ少なかれ社内に混乱が生じます。従業員の反発や離反が相次ぎ、承継後の会社経営に支障が出るかもしれません。

まずはマネージャーや部長に就任してもらい、社内での信頼が醸成された時点で昇級を検討するのもよいでしょう。後継者の育成や引き継ぎには時間がかかるため、採用に早めに着手することをおすすめします。

親族以外に事業を引き継ぐポイント

親族外承継を選択すれば、後継者不在に伴う廃業の危機が回避できます。一方で、後継者の人柄や能力を見極められなかったり、育成や引き継ぎに十分な時間が取れなかったりすると、事業承継は失敗に終わるでしょう。親族外承継の留意点を解説します。

経営者としての資質・能力を見極める

経営者には向き・不向きがあります。最高責任者としての重い責任と使命を負わなければならないため、生半可な気持ちでは務まりません。

従業員承継や第三者承継では、経営者としての資質・能力を見極めた上で候補者を選定する必要があります。以下は、経営者になるために必要な資質・能力の一例です。

  • 事業に関する専門知識・スキル・実務経験
  • 取引先・顧客・金融機関との折衝能力
  • リーダーシップ
  • 人脈を形成する力
  • コミュニケーション能力
  • 誠実さ
  • 熱意や向上心
  • 社会的な責任感

取引先や金融機関などのステークホルダーは、『上に立つ人間としてふさわしいか』『信頼に値する人間かどうか』を重視する傾向があります。

どんなに専門知識やスキルがあっても、ステークホルダーとの信頼関係を構築できなければ、会社の存続は困難であることを忘れないようにしましょう。

育成・引き継ぎには十分な時間を確保する

後継者が経営者としての資質・能力を備えるまでには、一定の期間を要します。後継者の育成・引き継ぎ計画を策定し、いつまでに何をすればよいかを明確にしましょう。

中小企業庁が発表した『中小企業白書(2021年版)』によれば、『事業承継の意思を伝えられてから経営者に就任するまでの期間』に関するアンケート結果は以下の通りです。

  • 半年以内:22.4%
  • 半年~1年未満:11.5%
  • 1~3年未満:22.4%
  • 3~5年未満:11.3%
  • 5年超:32.3%
会社が何年もかけて培ってきた技術や伝統を、短期間で承継するのは不可能に近いといえます。外部招聘やM&Aを活用する場合でも、半年以上の引き継ぎ期間を設けるのが望ましいでしょう。

後継者育成の重要性や計画の立て方については、以下のコラムで詳しく解説しています。

 後継者育成は早いほどよい?計画の立て方や育成のポイントを解説
手法
後継者育成は早いほどよい?計画の立て方や育成のポイントを解説

後継者育成は多くの企業にとっての課題です。経営者のスキルはすぐには身に付かないため、長期的な計画を策定した上で一歩ずつ進めていく必要があります。サクセッションプランのポイントや育成方法、後継者が見つからない場合の解決法を解説します。

参考: 2021年版「中小企業白書」 第1節 事業承継を通じた企業の成長・発展|中小企業庁

経営者の個人保証を外しておく

中小企業が金融機関から融資を受ける際には、経営者の個人保証を求められるケースがほとんどです。経営者の多くは会社の連帯保証人であり、会社が倒産して返済ができなくなった際は、経営者個人が保証債務を履行しなければなりません。

M&Aでは買い手企業が個人保証を引き継いでくれるケースもありますが、後継者候補が個人の場合、個人保証を理由に承継を拒否されてしまうのが実情です。

あくまでも金融機関の判断ではありますが、『経営者保証に関するガイドライン』の条件を満たす場合は、経営者の個人保証を解除できる場合があります。解除が実現すれば、事業承継のハードルは大きく下がるはずです。

事業承継時の経営者保証解除に向けた対策については、事業承継・引継ぎ支援センターに相談しましょう。

参考: 経営者保証のガイドライン|中小企業庁

後継者に選ばれる会社になるためには?

後継者に選ばれる会社になるためには、事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)が欠かせません。『強みの強化』と『ガバナンスの再整備』によって、自社の価値や魅力を引き上げましょう。

自社の強みを見つけて強化する

中小企業は、経営者のマンパワーが経営に強い影響を与える傾向があります。経営者の人柄や人脈などによってその会社の強みが形成されていた場合、経営者の引退と同時に魅力が失われていくケースも珍しくありません。

事業承継にあたり、経営者のマンパワーに依存しない自社の強みを見つけて強化しましょう。ブランドイメージやノウハウ、取引先との良好な関係性など、『無形資産』や『知的財産』に焦点を当てるのがポイントです。

強みを発掘する具体的な手法としては、SWOT分析や従業員へのヒアリング、顧客アンケートの活用などがあります。

ガバナンスの再整備を行う

経営者が交代すると、従業員やステークホルダーにさまざまな影響が及びます。事業承継後の会社経営が順調に進むように、ガバナンスの再整備を行いましょう。

組織体制を整え、指揮命令系統を明確にすれば、新体制発足後に生じる現場の混乱を最小限に抑えられます。

経営者に組織運営の権限が集中している場合は、責任の所在を明文化した上で、中間管理者やマネジメントチームに権限を委譲しましょう。就業規則や服務規程などの見直しも欠かせません。

まとめ

親族に後継者がいない場合は、従業員承継や外部招聘、M&Aなどの方法で事業承継が可能です。事業承継の支援機関も増えているため、まずは専門家に相談し、情報収集を行うところからスタートしましょう。

経営者の個人保証解除や磨き上げなど、引退までにやるべき項目は多くあります。短期間での事業承継は失敗につながりかねないため、十分な準備期間を確保することが重要です。