事業承継で第三者承継を選ぶメリット。具体的な事例や注意点を紹介
親族や従業員に事業の後継者が見つからず、やむなく廃業を選択する事業主は少なくありません。しかし近年は、第三者に事業を引き継ぐ『第三者承継』の事例が増えています。親族や従業員以外に事業を承継するメリットや注意点を解説します。
2022-11-28
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第三者承継とは?
第三者承継とは、事業主の親族や従業員以外の相手に、事業を引き継いでもらう手法です。後継者のいない事業を継続させるための手法として、規模を問わず多くの企業や個人事業の引き継ぎで採用されています。
親族や従業員以外の相手に事業を引き継ぐ方法
親族や従業員以外の第三者にM&Aにより事業を引き継ぐ手法は、もともと大企業や外資系企業の戦略として知られていました。
しかし、後継者のいない事業の増加や、政府が第三者承継を支援している背景もあり、徐々に中小企業や個人事業主の間でも広く認知されつつあります。
第三者承継は、事業主の身内や気心の知れている従業員ではなく、他人に事業を引き継いでもらう手法です。
したがって、事業を安定して継続してもらえるか、従業員の雇用を維持できるかなど、現事業主としてしっかり判断しなければいけません。
事業承継では何が引き継がれる?
第三者承継に限らず事業承継では、経営権に加えて、次のように有形資産や知的資産など、事業に必要なあらゆるものが承継されます。
- 経営権:事業主として事業を経営する権利
- 有形資産:事業用の設備、株式(株式会社の場合)、事業資金
- 知的資産(無形資産):業務を進めるのに必要な知識や技術、ノウハウ、顧客情報、取引先(人脈)、経営理念、特許など
特に知的資産はさまざまで、従業員が有する知識やノウハウ、顧客や取引先の情報、経営理念なども含まれます。
顧客や取引先に関しては、単に情報として引き継がれるのみならず、それまで培ってきた信用もあるので、事業主が替わってもスムーズに事業を継続できるでしょう。
なお、事業承継における経営権の譲渡については、以下の記事で詳しく解説しています。こちらも参考にしてください。
近年は第三者承継の事例が増加
後継者の不在や売却益を得られるなどの理由から、近年はM&Aによる第三者承継を選択する事業主が増えています。世代交代を必要とする年齢の事業主が多いのに加えて、事業の成長戦略としてM&Aを採用する企業も目立つようになりました。
また、近年まで日本では一般的ではなかったものの、海外のように、M&Aでの事業売却を前提として起業する人も増えています。今後、事業規模にかかわらず、M&Aによる第三者承継の事例はさらに増加するでしょう。
M&Aの仲介業者やマッチングサイトなども、充実しつつあります。マッチングサービスの特徴やメリットは以下の記事で解説しているので、こちらも確認しましょう。
第三者承継を選ぶメリット
事業の引き継ぎに第三者承継を選択するメリットを解説します。後継者問題の解決や従業員の雇用維持など、さまざまなメリットがあるので、廃業前にぜひ検討したいところです。
跡継ぎ問題を解決できる可能性がある
第三者承継では広く事業の引き継ぎ先を募集できるので、近年増加している中小企業の後継者不在問題を解決できる可能性があります。
親族や従業員の中に、事業運営の資質や意欲を持つ人材がいないケースも多く、やむなく廃業を選択する事業主も少なくありません。承継先を身内や従業員に限定することで、どうしても行き詰まる事業が増えているのが実態です。
一方、第三者に事業を継いでもらえれば、経営者としての能力や資質、意欲を確認した上で引き継ぎ先を選択できます。
承継先によっては、現状よりも大きく事業が成長する可能性もあるでしょう。事実、M&Aによる第三者承継で慢性的な赤字状態から脱却し、安定した黒字経営を実現している事業もあります。
事業の売却益を得られる
事業者にとって、第三者に株式や事業を譲渡(売却)すれば、売却益を得られるのも大きなメリットです。それを元手に新たにビジネスを始めたり、老後の生活の基盤にしたりできます。
廃業する場合でも、残った事業資産を売却すれば相応の資金にはなりますが、一般的に第三者承継の方が得られる利益が大きくなります。
ただし、事業の売却で得た利益には税金がかかるので注意しましょう。株式会社の場合、オーナー経営者が株式譲渡によって第三者に事業承継した場合、その利益は所得税(および住民税)の対象となります。
従業員の雇用を維持できる
廃業を選択した場合、そこで働いていた従業員は新たな職を探さなければいけませんが、事業承継の場合は経営者が代わるものの、従業員はそれまでの仕事を続けられます。引き継ぎ相手によっては、譲渡後の方が待遇が改善する場合もあるでしょう。
新たな経営者がうまく事業を成長させられれば、従業員も収入が上がる可能性もあります。一方で、職場環境や待遇が悪化してしまう恐れもあります。
そのため、事業譲渡を考えている事業主は、引き継ぎ相手の資質や能力、経営者としての考え方などを慎重に見極めなければいけません。
第三者承継で注意すべきポイント
第三者承継では、特に以下の点に注意が必要です。メリットだけではなく、デメリットやリスクも理解した上で、引き継ぎを検討しましょう。
理想の条件で承継できるとは限らない
第三者承継を選択すれば、広く引き継ぎ先を探すことが可能ですが、それでも必ず承継相手が見つかるとは限りません。
たとえ候補が見つかったとしても、自分の理想の条件で引き継ぎができない可能性もあります。条件交渉がうまくいかず、契約に至らない場合もあるでしょう。
また、引き継ぎ先の見極めが足りないと、承継した事業が立ち行かなくなってしまう恐れもあります。現経営者として、しっかり事業を継続できる承継先か判断する必要があるでしょう。
買い手によって環境が変わる可能性がある
事業の引き継ぎ先の経営能力や事業方針などによって、廃業には至らないまでも、職場環境が大きく変わってしまう可能性は十分あります。
従業員や取引先に大きな影響が出るので、自社の風土や価値観に合った引き継ぎ先かどうか慎重に見極めた上で、事業を譲渡しなければいけません。
たとえ経営者として優秀な引き継ぎ先でも、それまで事業が培ってきた風土にそぐわない相手かもしれません。事前の面談を通じて、経営者としての資質のみならず、考え方や価値観が合うかも確認しておきましょう。
取引先が離れてしまう恐れがある
現経営者との信頼関係で取引を続けていたクライアントの場合、事業承継によって経営者が交代したことで、取引が継続できなくなる可能性もあります。
さらに、トップの交代について社内で反発があったり、離職する社員が出てきたりする場合もあります。事業承継・M&Aは離職・離反のリスクから、失敗の可能性もあるので契約するまでは従業員に伝えないのが一般的ですが、会社の将来を意識させた上で経営者が交代することへの理解や職務の継続可否などを、それとなく確認しておくことは重要です。
M&Aによる第三者承継の成功事例
M&Aによる第三者承継の成功事例を最後に紹介します。いずれもM&Aプラットフォーム『TRANBI』を通じて成功した事例なので、確認した上で利用を検討してみましょう。無料で会員登録が可能です。
16年間育ててきた英会話教室を譲渡した事例
関東で2005年から英会話スクールを運営してきたA社では、競合の進出やコロナ禍によって経営が厳しくなっていました。オーナーは私生活を犠牲にして仕事に尽くしていたため、働き方を見直すためにM&Aでの事業譲渡を決意したという経緯があります。
掲載した日にすぐに申し込みが殺到し、最終的に資本力と経営力を持った買い手を見つけられ、既存の環境は維持したまま、無事に事業の承継に成功しました。
廃業寸前だった清掃事業者が事業承継に成功した事例
ビルやマンション、工場などの清掃を手がけているB社では、経営者の高齢化に加えて後継者の不在、売上の減少などの理由から、廃業が検討されていました。
顧問税理士を通じて相談を受けたM&Aコンサルタントのアドバイスにより、事業売却を検討するようになったのです。
もともと赤字に苦しんでいた同社でしたが、幅広く買い手を募った上で交渉を重ねたことで、最終的に都内の清掃ビルメンテナンス事業者への譲渡に成功しました。
まとめ
第三者承継は、事業主の親族や従業員以外の第三者に対して、事業を承継する方法です。近年は、後継者不足などの背景から事例が増えており、個人事業のM&Aも注目されています。
広く買い手を募れば引き継ぎ相手を見つけられる可能性が高くなり、従業員の雇用を維持できるのに加えて、事業主も事業の売却益が得られます。
ただし、安心して事業を任せられる相手を探す必要があります。どういった人材に引き継いでもらいたいか、人物像をできるだけ明確にしておきましょう。