会社を買うには?M&Aの手順・費用相場・メリットから探し方まで徹底解説
会社を買う(M&A)を検討中の方向けに、手順7ステップ、費用相場、メリット・リスク、失敗しない注意点、仲介・プラットフォーム等の探し方までわかりやすく解説します。
- 04 【手法別】会社を買うための4つの相談先・探し方
- 探し方①:M&A仲介会社・アドバイザリーに相談する
- 探し方②:M&Aマッチングサイト(プラットフォーム)を利用する
- 探し方③:事業承継・引継ぎ支援センター(公的機関)
- 探し方④:金融機関(銀行・信金)や税理士からの紹介
- 05 会社を買うまでの具体的な流れ(7ステップ)
- STEP1:戦略策定と条件設定(希望業種・予算・エリア)
- STEP2:案件探し(ソーシング)とノンネーム情報の確認
- STEP3:秘密保持契約(NDA)の締結と詳細情報の開示
- STEP4:トップ面談と意向表明書の提出
- STEP5:基本合意契約の締結
- STEP6:デューデリジェンス(買収監査)の実施
- STEP7:最終契約の締結とクロージング(決済・引渡し)
- 07 【業種別】会社を買う相場観とチェックポイント
- 飲食店:立地と内装が命、相場は「利益の3〜5年分」
- Webサイト・IT:利益重視、相場は「月利の18〜24ヶ月分」
- 建設業:資格と人が資産、相場は「純資産+利益の2〜5年分」
- 08 会社を買う際に失敗しないための注意点・成功のポイント
- ポイント①:デューデリジェンス(買収監査)を省略しない
- ポイント②:PMI(買収後の統合作業)の計画を事前に立てる
- ポイント③:売り手の売却理由(本音)を見極める
「会社を買う」という言葉から、どのような印象を持つでしょうか。
「一部の大企業だけに関係する話で、自分には縁がない」と感じる方や、「関心はあるものの、何から手を付ければよいのかわからず、失敗して大きな負債を抱えるのではないか」と不安に思っている経営者や個人の方も少なくないかもしれません。
会社を買うことは、事業の立ち上げにかかる時間を短縮しつつ、人材や顧客基盤も同時に獲得できる手段です。ゼロから事業をつくる苦労をショートカットし、すでに収益が出ている仕組みを手に入れることができます。
本記事では、会社を買収する際に押さえておきたい基礎知識をはじめ、具体的な7つの進め方、費用の目安、失敗を避けるための注意点、さらに個人によるM&Aの考え方まで、専門用語をできるだけ平易にしながら幅広く解説します。
読み終えた頃には、M&Aに対する漠然とした不安が軽減され、自社の成長戦略に沿った現実的な行動計画を描けるようになり、次の成長に向けた一歩を踏み出せるはずです。
「会社を買う」とは?M&Aの基礎知識と市場トレンド
会社を買うには、資産や契約、従業員の扱いを整理したうえで、法的な手続きを進めていきます。
ここではM&Aの定義や市場で注目されている背景、主な手法の違いについて、その全体像を丁寧に解説します。
会社を買う=M&A(合併・買収)の定義
「会社を買う」とは、ビジネス用語でM&A(Mergers and Acquisitions:合併と買収)と呼ばれる経済活動の一種であり、一般的には「株式譲渡」や「事業譲渡」といった手法を通じて行われます。これにより、買い手企業は対象企業の経営権そのもの(オーナーとしての地位)や、特定の事業資産(店舗、技術、顧客リスト、従業員など)を取得することになります。
かつてM&Aと言えば、「ハゲタカファンド」や大企業同士の敵対的買収といった少し怖いイメージが強かったかもしれません。しかし現在では、中小企業や個人レベルでも活発に行われる「友好的な承継」が主流になっており、企業の成長戦略としてだけでなく、事業承継の解決策としても、その重要性はますます高まっています。
なぜ今、会社を買うのか(市場背景)
日本でM&Aが注目される背景の一つに、後継者不足があります。
経営状態は良好で黒字であるにもかかわらず、後継者がいないために「廃業」を選択せざるを得ない中小企業が増加しており、これを防ぐために第三者に会社を譲る「事業承継M&A」のニーズが拡大しています。
また、変化の激しい現代市場において、ゼロから事業を立ち上げて軌道に乗せるには多大な時間と労力を要します。そのため、既存の事業を買収してその時間を短縮する「時間を買う」戦略が有効視されています。
このように、「会社を譲りたい売り手」と「成長スピードを上げたい買い手」のニーズが合致するケースが増えていることが、市場活性化の主要因です。
「株式譲渡」と「事業譲渡」の違い
会社を買う手法には主に「株式譲渡」と「事業譲渡」の2つがあり、それぞれ引き継ぐ範囲やリスクが大きく異なります。
イメージとしては、「株式譲渡」は「会社という箱ごと丸ごと買う」手法であり、すべての資産・負債・契約関係・従業員を包括的にそのまま引き継ぐため、手続きが比較的簡素で、経営権の移転もスムーズです。
一方、「事業譲渡」は特定の事業だけを選んで買う方法です。例えば飲食事業だけを取得し、不動産事業は取得しないといった選択ができます。これにより、不要な資産や簿外債務を引き継ぐリスクを回避できるメリットがありますが、契約関係や従業員の雇用契約などを一つひとつ結び直す必要があるため、手続きは非常に煩雑になる傾向があります。
会社を買う3つの主なメリット
会社を買うことには、自前でゼロから事業を立ち上げる場合と比較して、経営資源の獲得やスピード感において圧倒的な優位性があります。
ここでは、買い手企業が得られる代表的な3つのメリットについて、具体例を交えて解説します。
メリット①:事業立ち上げの時間とリスクを短縮(時間を買う)
最大のメリットは、事業が軌道に乗るまでの時間を大幅に短縮できる点にあり、まさに「時間を買う」行為と言えます。
例えば飲食店をゼロから開業する場合、物件探し、内装工事、メニュー開発、スタッフ採用、集客活動など、オープンして黒字化するまでに半年〜1年以上かかることも珍しくありません。
しかし、すでに営業している会社を買収すれば、店舗もメニューもスタッフも揃っており、固定客もついている状態からスタートできるため、買収したその初日から売上が立つことも可能です。また、建設業や運送業など許認可が必要な業種においては、取得にかかる膨大な手間や審査期間を省略できる点も、非常に大きな利点となります。
メリット②:既存の顧客・人材・技術の獲得
会社を買うことで、その企業が長年かけて培ってきた「見えない資産」を一括で手に入れることができます。
具体的には、自社にはない特殊な加工技術、業界特有の熟練したノウハウ、信頼関係の構築された優良な顧客リスト、そして何より、現場を熟知した優秀な従業員たちです。
これらを自社の既存事業と掛け合わせることで、例えば「技術はあるが営業力が弱い会社」を「営業力の強い会社」が買収することで、単なる足し算ではない「シナジー(相乗効果)」を生み出すことが期待できます。特に昨今の深刻な人材採用難の時代において、教育コストをかけずに、まとまった数の即戦力人材を確保できることは、経営戦略として極めて有効です。
メリット③:事業規模の拡大と多角化
M&Aを活用することで、自社の弱点エリアへの進出や、まったく新しい分野への参入をスムーズに行うことができます。
例えば、東京の会社が大阪の会社を買収すれば、一瞬にして関西の拠点を手に入れることができますし、製造業の会社がIT企業を買収すれば、DX化を一気に進めることも可能です。
自力で新規エリアを開拓したり、未経験の業界に参入したりするには高い参入障壁や失敗リスクがありますが、すでにその分野で実績のある会社を買うことで、その壁を容易に乗り越えられます。このように事業を多角化することは、一つの事業が不調でも他でカバーできる体制を作ることになり、経営のリスク分散にも大きく寄与します。
会社を買う際のリスクとデメリット
メリットの多いM&Aですが、他人が経営していた会社を引き継ぐことには、特有のリスクやデメリットも潜んでいます。
「こんなはずじゃなかった」と買収後に後悔しないために、事前に把握しておくべき3つの主要なリスクについて詳しく解説します。
デメリット①:簿外債務や隠れたリスクの継承
会社を買う際に最も警戒すべきなのが、決算書(貸借対照表)には載っていない「隠れた負債(簿外債務)」を知らずに引き継いでしまうリスクです。
特に株式譲渡の場合、過去のサービス残業による未払い残業代請求、将来発生しうる訴訟リスク、税務調査での追徴課税リスク、さらには経営者の個人保証など、あらゆる負債を引き継ぐ可能性があります。
これらのリスクが買収後に発覚すると、想定外の多額のキャッシュアウトが発生し、最悪の場合は買収した側の本体企業の経営まで傾いてしまう恐れがあります。
そのため、契約前に専門家を入れて徹底的に調査を行う「デューデリジェンス(買収監査)」が不可欠です。デューデリジェンスとは、買う前にリスクを洗い出す調査であり、財務・税務・法務を中心に確認します。
デメリット②:従業員の離職や組織融合の摩擦
オーナー社長が変わるということは、現場で働く従業員にとっては非常に大きな不安要素であり、これがきっかけで離職の連鎖が起きることがあります。
「新しい社長の方針にはついていけない」「待遇が悪くなるのではないか」といった不安から、事業の鍵を握るキーマンやベテラン社員が辞めてしまうと、買収した企業の価値は大きく損なわれてしまいます。
また、企業文化や風土の違いによる組織統合(PMI:PostMergerIntegration)の難航もよくある失敗要因です。
「自由な社風のIT企業」が「規律を重んじる老舗メーカー」を買収した場合など、文化の衝突が起きやすいため、丁寧な対話と時間をかけた融合プロセスが必要となります。
デメリット③:のれん代(買収プレミアム)による財務負担
会社を買う価格は、単にその会社の持っている資産(純資産額)だけで決まるわけではなく、将来稼ぎ出すであろう収益性を加味した「のれん代(買収プレミアム)」を上乗せして決定されます。この「のれん代」が高額になりすぎると、投資した資金を回収するまでの期間が長期化し、財務的な負担となります。
万が一、買収後に計画通りの利益が出なかった場合、会計上で「減損処理」を迫られ、決算書に巨額の損失を計上しなければならないリスクもあります。
競合他社との競り合いで熱くなりすぎて高値掴みをしないよう、冷静に適正な価格を見極める姿勢が重要です。
【手法別】会社を買うための4つの相談先・探し方
会社を買いたいと思っても、コンビニで商品を選ぶように簡単にはいきませんし、情報は一般公開されていないことがほとんどです。
目的に合った適切なルートで案件を探す必要がありますので、主要な4つの相談先とそれぞれの特徴について解説します。
探し方①:M&A仲介会社・アドバイザリーに相談する
M&A仲介会社は、不動産仲介のように売り手と買い手の間に立ち、マッチングから成約までをトータルでサポートしてくれる専門業者です。専任のコンサルタントが担当につき、希望条件に合った案件の提案や、相手方との条件交渉、面倒なスケジュールの調整などを手厚く行ってくれるのが最大の特徴です。
初めてM&Aを行う企業や、ある程度の資金力があり、失敗のリスクを極力減らして確実性を重視したい経営者に向いています。ただし、着手金や中間金、成功報酬が発生する場合があります。金額は仲介会社や取引規模によって大きく異なるため、事前に見積もりで確認しておきましょう。
探し方②:M&Aマッチングサイト(プラットフォーム)を利用する
近年急速に普及しているのが、Web上で売り案件を検索し、売り手と直接メッセージ交換ができる「M&Aマッチングサイト」です。会員登録をすれば、全国の数千件にも及ぶ売り案件を自分のスマホやPCで閲覧でき、仲介会社を利用するよりも圧倒的に低コストかつスピーディーに進められる点が魅力です。
代表的なサービスとしては、国内最大級の案件数を誇る『TRANBI(トランビ)』が挙げられます。TRANBIは個人や中小企業向けの小規模案件も豊富に取り扱っており、買い手は月額プランなどを利用することで、手数料を抑えながら多くの案件にアプローチできるのが特徴です。
予算を抑えたい人や、数百万円程度の小規模案件(スモールM&A)を探している個人、まずはどんな案件があるか見てみたいという中小企業に適しています。
一方で、基本的には相手との交渉や契約手続きを自分主体で進める必要があるため、一定のM&A知識や交渉力が求められる点には注意が必要です。
探し方③:事業承継・引継ぎ支援センター(公的機関)
事業承継・引継ぎ支援センターは、国が設置している公的な相談窓口であり、全国47都道府県に拠点が設けられています。
公的機関であるため、相談料は基本的に無料であり、営利目的ではない中立的な立場からアドバイスをもらえるという信頼性の高さが大きな特徴です。
地域に根ざした事業を探している人や、いきなり民間の業者に相談して営業されるのは怖い、まずは公平な意見を聞きたいという人に向いています。地元の商工会議所や金融機関とも連携しており、ネットには出てこない地域密着型の案件情報が得られる可能性もあります。
探し方④:金融機関(銀行・信金)や税理士からの紹介
普段から付き合いのあるメインバンクの銀行や信用金庫、顧問契約をしている税理士から、売り手企業を紹介してもらう方法もあります。
これらの専門家は、売り手企業の財務状況や経営者の人柄など、内情をよく知っているため、情報の信頼性が非常に高く、素性の知れない相手と交渉するリスクを大幅に減らせます。
地元の優良企業や、一般には公開されていない「水面下」の非公開案件を探している経営者に向いています。
ただし、あくまで「良い縁があれば」というスタンスになるため、紹介される案件数は限られており、他の方法と併用して探すのが一般的です。
会社を買うまでの具体的な流れ(7ステップ)
M&Aは、最初の検討から最終的な決済まで、一般的に数ヶ月から1年程度の期間を要する長いプロジェクトです。
ここでは、会社を買うまでの標準的なプロセスを7つのステップに分けて、各段階でやるべきことを詳しく解説します。
STEP1:戦略策定と条件設定(希望業種・予算・エリア)
このステップはM&A全体の成否を左右する最重要フェーズです。
会社を買う目的や理由を言語化しないまま進めると失敗につながるため、自社の経営戦略と買収目的を明確に結び付けることが求められます。
戦略策定と条件設定において整理すべき項目は以下のとおりです。
- 買収の目的(事業拡大、人材獲得、内製化など)
- 自社の強みと弱みの整理
- 買収後に実現したいシナジー
- 投資可能な予算の上限
- 譲れない条件(業種、エリア、規模など)
この段階で判断軸を固めておくことで後工程が大幅に楽になるため、時間をかけて検討することが長期的な成功につながります。
STEP2:案件探し(ソーシング)とノンネーム情報の確認
次に行うのが条件に合致する案件を探すソーシングの工程です。
この段階では売り手企業が特定されない資料を用いて検討し、最初から一件に絞らず幅広く情報を見る姿勢が重要です。
ノンネームシートで確認すべき内容は以下のとおりです。
- 業種および事業内容
- 売上高や利益の規模感
- 所在地や商圏
- 譲渡理由の背景
- 希望譲渡価格
複数案件を比較することで価格や条件の妥当性が見えてきます。この工程は相場観を養うためにも欠かせません。
STEP3:秘密保持契約(NDA)の締結と詳細情報の開示
ノンネームシートを見て「もっと詳しく知りたい」と思う案件が見つかったら、より具体的な検討に進むために「秘密保持契約(NDA)」を締結します。M&Aの情報は、従業員や取引先に知られると経営危機になりかねない極めて機密性の高い情報であるため、情報の取り扱いには細心の注意が必要です。
秘密保持契約(NDA)の目的と確認項目は以下のとおりです。
- 情報漏洩を防止する義務
- 利用目的を「検討」に限定する条項
- 資料の返却や破棄に関する規定
- 契約期間と責任範囲
NDA締結後、決算書(3期分)や事業内容の詳細、組織図などが記載された資料(IM:インフォメーション・メモランダム)が開示されます。
これらの資料を読み込み、財務状況は健全か、事業に将来性はあるかなど、買収する価値があるかどうかの初期的な判断を行います。
STEP4:トップ面談と意向表明書の提出
書類上の確認が済み、前向きに検討したい場合は、売り手企業の経営者と直接会い、「トップ面談」を行います。ここでは条件交渉をするのではなく、経営理念、売却に至った経緯、経営者の人間性、従業員への想いなどを確認し、お互いの信頼関係を構築することが最大の目的です。
面談を経て買収の意思が固まれば、購入希望価格やその他の条件をまとめた「意向表明書」を提出します。意向表明書は、買収条件の方向性を文書で示すもので、売り手が比較検討するための重要資料になります。
STEP5:基本合意契約の締結
売り手が複数の候補の中からあなたの会社を選び、意向表明書の内容に同意すれば、「基本合意契約」を締結します。ここでは、買収価格の目安、今後のスケジュール、デューデリジェンスへの協力義務、独占交渉権の付与など、大枠の条件について双方が合意したことを書面で確認します。
通常、この段階では買収を義務付けるような強い法的拘束力を持たせないケースが一般的です。一方で、他社との交渉を制限する独占交渉権など、一部の条項には法的拘束力を持たせることがあります。これにより、第三者との競合交渉を避けながら、最終契約に向けた詳細な調査に集中しやすくなります。
STEP6:デューデリジェンス(買収監査)の実施
基本合意後、公認会計士や弁護士などの専門家を依頼し、「デューデリジェンス(DD)」と呼ばれる買収監査を実施します。これは、中古車を買う前の点検や、家を買う前の内覧に例えられます。財務、税務、法務、ビジネス、人事などの観点から、リスクや問題点がないかを確認します。
具体的には、「帳簿と在庫が合っているか」「未払いの残業代はないか」「契約書に不利な条項はないか」といった点を調べ上げます。
この調査で見つかったリスク事項については、買収価格の減額交渉を行ったり、契約条項で後日問題が発覚した場合に売り手が責任を負うことを契約上で定めるなど、リスクを軽減する対応を行います。
STEP7:最終契約の締結とクロージング(決済・引渡し)
デューデリジェンスの結果を踏まえて最終的な条件交渉を行い、双方が納得すれば「最終契約書(株式譲渡契約書など)」に調印します。これは法的拘束力を持つ正式な契約であり、契約締結をもってM&Aが成立します。
その後、契約内容に基づき、銀行振込などで買収代金の支払い(決済)を行い、同時に株式や会社の実印、通帳などの重要物品の引渡し、役員の変更登記などを行います。これを「クロージング」と呼びます。
クロージングがすべて完了して初めて、名実ともに経営権が正式に買い手へと移転し、新しい体制での経営がスタートします。
会社を買うのにかかる費用・手数料の相場
会社を買う際には、相手企業へ支払う買収代金以外にも、さまざまな手数料や専門家報酬が発生します。
「思ったよりお金がかかって資金が足りない」とならないよう、費用の内訳と相場について解説します。
買収価格(株式価値・事業価値)
会社の価格は、純資産に数年分の営業利益を加える年買法や、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くDCF法などを参考に算出されます。
一般的には、企業の利益水準と保有している資産(不動産や現預金)によって価格は大きく変動します。
数百万円で買える小規模な案件から、数億円、数十億円規模の案件までさまざまです。中小企業の目安として「修正純資産+営業利益の3〜5年分」と言われることもありますが、業種の人気度や成長性によって評価は異なるため、あくまで目安として捉える必要があります。
仲介手数料・FA費用
M&A仲介会社を利用する場合、成約時に成功報酬として手数料が発生します。
一般的には、取引金額に応じて料率が変わる「レーマン方式(取引額の1〜5%)」が採用されていますが、注意すべきは「最低報酬額」の設定です。
多くの大手仲介会社では、最低報酬額が500万円〜2,500万円程度に設定されており、例えば300万円の会社を買うのに手数料が1,000万円かかる、といった買収価格よりも手数料の方が高くなるケースもあります。
一方、マッチングサイトの場合は、成約手数料が買収額の3〜5%程度、あるいは月額数千円の利用料のみという低コストな体系が主流であり、小規模M&Aに適しています。
専門家への報酬(デューデリジェンス費用など)
買収監査(デューデリジェンス)を行う際には、公認会計士や弁護士、税理士などの専門家に支払う報酬が必要です。
調査の範囲や深さ、企業の規模によって金額は異なりますが、数十万円〜数百万円が一般的な相場です。
費用を抑えるために調査を省略したくなるかもしれませんが、後から数千万円の簿外債務が見つかるリスクを考えれば、これは必要な「保険料」と言えます。
小規模M&Aの場合は、調査範囲を財務と法務の重要項目だけに絞ることで、費用を数十万円程度に抑える工夫も可能です。
【業種別】会社を買う相場観とチェックポイント
「会社を買う価格」は一律ではなく、業種によって重視されるポイントや相場観が異なります。
ここでは、M&Aで人気の高い「飲食店」「Web・IT」「建設業」の3つについて、具体的な目安を解説します。
飲食店:立地と内装が命、相場は「利益の3〜5年分」
飲食店の買収価格は、一般的に「時価純資産+営業利益の3〜5年分」が目安と言われています(小規模店では1〜3年分となることも多いです)。最も重要なのは「立地」と「内装・設備の劣化具合」です。良い立地であれば、それだけで「場所代(営業権)」としての価値が付きます。
チェックポイント
- 厨房機器はそのまま使えるか(買い替えが必要なら減額交渉)。
- 店長や料理長などのキーマンは残ってくれるか。
- グルメサイトの評価や口コミは良好か。
Webサイト・IT:利益重視、相場は「月利の18〜24ヶ月分」
Webサイトやアフィリエイトサイトの買収は、他の業種と異なり「月間利益(月利)」を基準に算出されることが一般的で、相場は「直近半年の平均月利×18〜24ヶ月分」が目安です。SaaSなどの自社開発サービスの場合は、「年間売上の2〜5倍」といった高いバリュエーションが付くこともあります。
チェックポイント
- 集客経路は検索エンジン(SEO)頼みか(アルゴリズム変動のリスク)。
- 運営はマニュアル化されており、外注や引き継ぎが容易か。
- 売上の変動幅が大きすぎないか。
建設業:資格と人が資産、相場は「純資産+利益の2〜5年分」
建設業はM&A市場で人気のある業種の一つで、相場は「時価純資産+営業利益の2〜5年分」が一般的です。建設業の価値の源泉は、「建設業許可」や「公共工事の入札参加資格」、そして「施工管理技士などの有資格者」にあります。
チェックポイント
- 必要な許認可が維持されているか。
- 有資格者や熟練職人が、買収後も辞めずに残ってくれるか。
- 社会保険の未加入や、下請法違反などのコンプライアンスリスクはないか。
会社を買う際に失敗しないための注意点・成功のポイント
M&Aは成約して調印式を終えることがゴールではなく、そこから事業を成長させることが本来の目的です。
失敗事例に共通する原因を知り、成功率を高めるための3つの重要なポイントを心に留めておきましょう。
ポイント①:デューデリジェンス(買収監査)を省略しない
「小さい会社だから大丈夫だろう」「売り手の社長が良い人だから嘘をつくはずがない」といった性善説に基づいた思い込みで、デューデリジェンスを省略したり、簡易的に済ませたりすることは非常に大きなリスクを伴います。
買収後に、粉飾決算で実は赤字だった、未払いの給与が大量にあった、契約違反で訴えられそうだった、などの重大な問題が発覚するケースは後を絶ちません。
たとえ小規模な案件であっても、最低限の財務チェック(通帳とお金の動きの確認)と法務チェック(契約書の確認)は必須です。
専門家に依頼する予算がない場合でも、通帳の原本を過去3年分すべて見せてもらうなど、自分でできる調査は徹底して行うべきです。
ポイント②:PMI(買収後の統合作業)の計画を事前に立てる
M&Aの失敗の多くは、買収後の統合プロセス(PMI)の不備に起因します。
「買って終わり」にしてしまい、現場を放置すると、従業員は不安になり、組織はバラバラになってしまいます。その後の人事制度、ITシステム、そして企業風土をどのように融合させていくかを、買収前から計画しておく必要があります。
特に、売り手側の従業員のモチベーション管理は重要なポイントです。早期に一人ひとりと面談を行ってコミュニケーションを図り、彼らの不安を取り除き、「この新しい社長となら一緒にやっていきたい」と思ってもらえるよう、新しいビジョンを共有することが組織崩壊を防ぐ鍵です。
ポイント③:売り手の売却理由(本音)を見極める
売り手が提示する「後継者不在」や「ハッピーリタイア」といった前向きな売却理由は一般的ですが、その裏に言いにくい別の理由が隠されていないかを見極める目が必要です。
「将来的な市場縮小が見えている」「主要取引先から契約を切られそうだ」「設備の老朽化で莫大な更新投資が必要」といったネガティブな理由が隠されていることもあります。
トップ面談での対話やデューデリジェンスを通じて、売却の「本音」を探ることが大切です。話の辻褄が合わなかったり、不自然な点があれば遠慮なく質問し、それでも納得できる回答が得られない場合は、勇気を持って「買わない(撤退する)」という判断を下すことも、経営者としての重要な決断です。
個人やサラリーマンでも会社は買えるのか?
「会社を買う」のは資金力のある企業だけの特権ではありません。
近年、普通のサラリーマンや個人が、独立や副業のために会社を買うケースが急増しています。
ここでは、個人によるM&Aの実態と、資金調達やおすすめの業種について解説します。
「個人M&A」「スモールM&A」の増加
300万円〜1,000万円程度の予算で、飲食店、エステサロン、Webサイト、学習塾などを購入する「個人M&A(スモールM&A)」が活発化しています。
ゼロから起業するリスクを避け、すでに売上が立っており、給料を払える状態の事業を引き継ぐことで、失敗のリスクを抑えて安定したスタートを切りたいと考える個人が増えているためです。
特に、会社員としての安定収入(信用)を維持したまま、週末や夜間を使って副業として経営に関与したり、退職後のセカンドキャリアとして地域のお店を引き継いだりするケースが目立ちます。マッチングサイトの普及により、個人でも手軽にM&A案件の情報へアクセスできる環境が整ってきています。
個人が会社を買う際の資金調達方法
個人が会社を買う場合、資金のメインは自身のコツコツ貯めた貯金や退職金などの「自己資金」となりますが、全額を自分で用意する必要はありません。実績のない個人でも利用しやすいのが「日本政策金融公庫」の融資制度であり、事業承継や創業支援の枠組みを利用して、買収資金の融資を受けられる場合があります。
また、引き継ぐ事業の資産(在庫や売掛金など)や将来の収益を担保にするアセットファイナンスなどの手法も検討の余地があります。
ただし、個人の信用力には限界があるため、いきなり多額の借金を背負うのではなく、無理のない返済計画を立てることが何より重要です。
個人購入におすすめの業種と注意点
個人が購入する際には、自分が現場につきっきりにならなくても回る仕組みがあるか、あるいは自分の得意スキルが活かせるかが重要です。マニュアルやオペレーションが確立されているフランチャイズ加盟店や、場所や時間を選ばずに管理できるECサイト・アフィリエイトサイトなどは特に人気があります。
ただし、経営経験がない個人がいきなり社長になるのはハードルが高いため、前オーナーから3ヶ月〜半年程度の引き継ぎ期間を設けてもらうことが重要です。最初の数ヶ月間は前オーナーに伴走してもらい、ノウハウや人間関係を完全に吸収してから独り立ちすることで、失敗のリスクを大幅に低減できます。
TRANBIを活用した個人の会社買収の成功事例
実際に会社を買収して成功した事例を知ることは、具体的なイメージを持つ上で役立ちます。
ここでは、TRANBIを活用した個人の成功事例を3つ紹介します。
事例1:無職・未経験からの挑戦。スピードと熱意で3つの事業オーナーへ
体調を崩し前職を退職、コロナ禍で再就職先も去ることになったA氏(30代)。「次は自分で事業を」と考えたものの、事業経験も専門知識もゼロの状態でした。
A氏は「まずは小規模から」と決め、TRANBIで50万〜100万円規模の案件に絞りリサーチを開始。人気案件はスピードが重要だと判断し、興味を持った案件には早い段階で意思表示を行いました。
3件目のコールセンター事業買収では、あえて譲渡希望額より高い金額を提示して独占交渉権を獲得。「無職だからこそ、いつでも貴社の都合に合わせられます」と、自身の状況を逆手に取った低姿勢かつ柔軟な対応で売り手の信頼を勝ち取りました。
その結果、レンタルスペースやエステサロンなど、短期間で合計3件の成約に至りました。「失敗しても影響を抑えられる規模で始める」という考え方と、実践を重視する姿勢が成功の要因でした。
TRANBIなら小規模案件も豊富で、未経験者でも熱意とスピードでチャンスを掴めることを証明した好事例です。まずは小さな一歩を踏み出すことで、景色は大きく変わります。
■成約インタビュー:無職から3事業のオーナーに!短期間で複数M&Aに成功できた理由
事例2:普通のサラリーマンが「得意」を活かして半年でサロンオーナーに
IT企業で働くB氏(30代)は、起業への関心はあったものの、「これだ」という事業が見つからずにいました。ゼロからの起業はリスクが高いと感じていた矢先、M&Aという選択肢に出会います。
「自分のWebマーケティングの知識が活かせる実店舗」に狙いを定め、TRANBIで案件を探索。鎌倉のホワイトニングサロンを見つけ、「Web集客で売上を伸ばせる」と確信し交渉に臨みました。
資金調達では、日本政策金融公庫の担当者に向けて約30ページの資料を作成し、事業計画を丁寧に説明しました。売り手からも「この人なら事業を伸ばしてくれる」と人柄を評価され、副業ながら成約に至りました。
買収後は営業日と席数を見直し、初月から売上が前月比で約2.5倍になりました。「100点を目指さず、まずはやってみる」姿勢が、短期間での成約を実現しました。
自分の本業のスキルと、既存事業のポテンシャルを掛け合わせることで、サラリーマンでもスピーディーに事業拡大が可能であることを教えてくれます。
■成約インタビュー:「予備知識のない普通のサラリーマンでも半年でM&Aはできる!」31歳でホワイトニングサロンのオーナーに就任
事例3:約4,000万円を投資。「自由」を求めた個人投資家の決断
企業コンサルタントとして働くC氏(30代)は、自身の裁量でビジネスを行う「自由」と「責任」を求めていました。株取引で蓄えた資金を元手に、副業としてオーナー業への挑戦を決意します。
「副業として運営可能か」「利益率は十分か」という基準で、TRANBIに掲載されている多数の案件を比較検討しました。多くの案件の中から、リピート率9割・利益率55%という優良なサプリメント通販事業を見つけ出しました。
約4,000万円という、個人にとっては大きな投資でしたが、「勝負を張れるチャンスは多くない」と決断。リスクを冷静に見極めつつ、バッターボックスに立つ勇気が道を切り拓きました。
現在はWebマーケティングの強化や海外展開も視野に入れ、経営者としての手腕を振るっています。「経営には責任もあるが、そこにある自由には夢がある」とC氏は語ります。
TRANBIの豊富な案件数と詳細な検索機能があれば、自分の投資基準に合致した「勝てる案件」に出会える可能性が広がっています。
■成約インタビュー:副業M&Aに約4000万円をかける個人投資家!「勝負を張れるチャンスは多くない」勇気をもって切り拓く
会社を買うことに関するよくある質問
最後に、会社を買う検討をしている方から頻繁に寄せられる質問について、Q&A形式で回答します。疑問点をクリアにして、具体的な検討へと進んでください。
赤字の会社でも買う価値はありますか?
はい、赤字の会社であっても、買う価値は十分にあります。重要なのは「なぜ赤字なのか」という理由です。
もし赤字の原因が明確(例:商品は良いが営業力不足、経費の無駄遣いが多いなど)であり、自社のノウハウやリソースで改善可能であれば、安く買える「お宝案件」になり得ます。
また、繰越欠損金がある場合、将来の黒字と相殺できる可能性があり、結果として法人税負担を抑えられるケースもあります。現在の赤字額だけに囚われず、将来の再生可能性(ポテンシャル)を見極めることが大切です。
借金がある会社を買う場合、借金はどうなりますか?
株式譲渡によって会社を買う場合、会社という法人格をそのまま引き継ぐため、会社が抱えている借金もそのまま引き継ぐことになります。通常は、前オーナーが入っている「経営者保証(連帯保証)」を解除し、新しいオーナー(あなた)が保証人になり直す手続きを金融機関と交渉する必要があります。
もし借金を引き継ぎたくない場合は、「事業譲渡」の手法を選択することで、優良な事業資産だけを買い取り、負債は元の会社に残すことも可能です。ただし、この場合は債権者保護の手続きなどが必要になり、売り手側の同意を得るのも難航するケースがあります。
会社を買うのに資格は必要ですか?
会社を買うこと自体に、特別な資格や免許は一切必要ありません。資金と相手との合意さえあれば、誰でも明日から会社のオーナーになることができます。
ただし、買収する会社の業種によっては、経営するために特定の許認可(建設業許可、宅建業免許、飲食店の営業許可、産業廃棄物収集運搬業許可など)や、特定の資格を持った人の配置が必要になる場合があります。これらの要件を買収後も維持できる体制があるか、事前に確認しておく必要があります。
まとめ
会社を買うことは、決して一部の特権階級だけのものではなく、ゼロからの起業や自力での事業拡大と比較して、時間を短縮し、成功確率を高めるための極めて有効な経営戦略です。M&Aにはリスクもありますが、事前の調査や買収後の統合計画を丁寧に行うことで、リスクを抑えることができます。
まずは、自社やご自身の目的・予算を明確にし、M&A仲介会社やマッチングサイトなど、自分に合った適切な探し方を選ぶことから始めてみてください。専門家の力も借りながら、次なる成長への一歩を積極的に踏み出しましょう。