2021-08-24

無職から3事業のオーナーに!短期間で複数M&Aに成功できた理由

買い手(個人):吉田さん

<個人の起業を目指したM&A・買収事例>

 

初めてM&Aに臨む際、「うまく交渉できるだろうか?」「これだけの金額を支払って、赤字になってしまったらどうしよう」と不安になり、尻込みしそうになってしまうもの。

そんな中、吉田さん(30代)は前職を退職後に初めてM&Aに挑戦し、短期間で3件のM&Aを成功させました。これまでは普通のサラリーマン。決して、M&Aや経営についての知識や経験が豊富だったわけではありません。

吉田さんが複数のM&Aに成功したのは、次々と案件に応募し、交渉回数を重ねるたびに学びを得ていたから。そして何より、M&Aのプロセス自体を楽しんでいたからです。M&Aの一歩目を踏み出そうとしている方の背中を押す、勇気を貰えるストーリーとは。

【まずは小規模から!コロナ禍の割安案件を、スピード勝負で2件成約】

- まずは、M&Aのきっかけから教えてください。
新卒で物流会社に入社して7~8年勤めた後、体調を崩して退職しました。転職して前職と同じく総務部で株式関連の仕事をしていたんですが、コロナ禍の影響を受けてその企業も退職することに。次は自分で事業を始めてみようと思いました。

サラリーマン思考を脱するために本を読んで勉強する中で、ゼロから事業を立ち上げる以外に事業承継やM&Aという選択肢があることを知って興味を持ったんです。まずは、中小企業や個人の第三者承継(M&A)を支援する、東京都事業承継・引継ぎ支援センターに足を運びました

しかし、私はサラリーマン上がりで事業経験がゼロ、専門知識もありません。センターの方からは「もしご紹介した案件がうまくいかなかった場合、今後いいお話をご紹介できなくなる可能性があります。逆に、小さなことから始めてみてはいかがですか?経験を積んでから、ぜひまたいらしてください」と言われたんです。

それで、まずは自分の手で小さな規模から案件を探してみようと意を決し、TRANBIのようなM&Aのプラットフォームに登録をして案件を探し始めました。当時は、毎日「新しい案件は無いだろうか」と複数のプラットフォームを見に行っていました。

- どのような条件で案件を探していましたか?
50万~100万ほどの金額感の案件を中心に見ていました。生命保険を解約したり、毎月の積立を整理したりして得た自己資金を元手として、1事業ではなく複数事業を運営したいと思っていたため、そのくらいの金額感の案件が妥当だと思ったからです。

他の条件としては、私が事業に付きっきりにならずとも、ある程度自走できるビジネスモデルが確立されていることです。また、あまりに複雑な事業だと管理が大変なので、私自身がその事業の構造やしくみを理解できる身近な内容であることも条件でした。

正直、収支はトントンでもいいと思っていて。というのも、私のM&Aの目的は、儲けることではなく、自分がオーナーになって事業経験を積むことだからです。

案件を探し、複数の買い申し込みを行う中で、神楽坂にあるレンタルスペースや千葉にあるエステサロンのM&Aに成功しました。

- 会社を辞めて、いきなりM&Aに挑戦するハードルは相当高いように感じます。どのようなモチベーションでM&Aに臨まれたのでしょうか?
ハードルというよりも、やり取りに夢中になってしまううちに自然とできていたという(笑)。売り手様とお会いして交渉をしたり、レンタルスペースやエステサロンの内覧をさせていただいたりする過程がとても新鮮で楽しくて。

あとは、交渉を行う中で、興味を持っていた案件が他の方に獲られてしまうこともあったので、「これはスピード勝負だな」と感じたんです。そこから、「いいと思ったら、まず積極的に手を挙げよう。最悪うまくいかなくても、事業譲渡の代金と一部の固定費が出ていくくらいだし、そこまでの痛手はないはずだから」と考えが切り替わりました。

それに、コロナ禍だからこそ安価な金額で売りに出されている案件も多くあって。確かに今は売上が厳しいかもしれないけれど、長期的に見ると「かなり割安に買えるチャンス」だと捉えました。



(購入されたレンタルスペース事業)

【譲渡希望金額より高値の打診で独占契約を勝ち取る】

- そして今回、3件目のM&Aが成立しました。買収されたのは、コールセンター事業(国内の民泊施設における宿泊者の本人確認を代行する事業)ですね。事業のどんなところに興味を持って買収したのですか?
今回の案件は、コールセンターの拠点がフィリピンのマニラにあり、簡単な日本語を話せるスタッフが本人確認の対応をするというものです。安定した利益を出しており、私が直接手を動かさずともすでにスタッフや取引先を含めて自走している事業でした。

私としては、海外に拠点を構えておくことで、今後何かしら事業の発展性が見込めるのではないかと感じて興味を持ちました。あと何よりも海外拠点とのやりとりや手続きを通じて、学べることが多そうだと好奇心をくすぐられました。例えば、海外に給与を振り込む作業一つを取っても、面白そうだなと。

ただ、唯一のネックは金額で。本案件の譲渡希望金額は350万円。これまでに買収したレンタルスペースとエステサロンはどちらも100万円規模だったので、ハードルが高く感じたのは事実です。

ただ、交渉過程で売り手様にお会いして心が決まりました。というのも、売り手様は他にも幅広く複数の事業を展開されている起業家の方でした。今回コールセンター事業を売却されるのも、「本業をさらに成長させて、上場を目指すために事業整理をしているから」とのことでした。

これまでのサラリーマン生活では出会ったことのないタイプの方で、ビジネスチャンスを見つけるセンス、立ち上げて軌道にのせるまでのスキルに魅力を感じ、この案件をきっかけに彼と今後ビジネスをご一緒できる機会があるかもしれないという期待も持ちながら、交渉を重ねていきました。

- 売り手に選ばれるために、工夫したことはありますか?
売り手様への買い申し込みに対して、個人で申し込んでいる私は、法人の方に比べると信用度がかなり低いのは事実ですし、人脈やビジネススキルも持っていないので、客観的に見て売り手様が私を選ぶメリットはほとんどありません。だからこそやり取りにおけるスピードだけは重視しました。

また、金額は先方の譲渡希望金額より20万円上乗せした370万円を提示させていただきました。このようにしたのは、この案件を検討する少し前のタイミングで、TRANBIの利用料モデルが「譲渡金額に応じた成約手数料モデル」から「月額の固定利用料を支払うモデル」に変わったからです。

以前の利用料モデルであれば、私から先方に譲渡金額350万円、TRANBIに成約手数料を渡すことが必要でした。しかし、その必要が無くなったため、「成約手数料として本来ならTRANBIに渡していた分を、少し上乗せしよう」という考えを持つことができたんです。

即答したことや、金額を上乗せしたことで目立つことができたのか、売り手様から「もし、先に半額を振り込んでいただけるのなら、独占契約にすることが可能です」と打診いただいたので、思い切って買収を決めました。

- 交渉の中で、想定外だったことやトラブルはありませんでしたか?
2021年3月に成約したのですが、契約後に「2021年3月末で契約解除になる顧客が複数いる」ことがわかって。それだけ顧客数が減ると、売上も元々の想定から半減するんです。

交渉のタイミングでわかっていたはずの事実について共有が無かったのは明らかに先方の過失ですし、私も顧客数や売上が大きく減ることがわかっていれば今回の案件をこの金額で買収していませんでした。

契約書にも「契約時に重大な過失があった場合には、協議した上で譲渡金額の変更が可能」という旨の条文が入っていたので、改めて売り手様に対して妥当な譲渡金額を提示した上で返金を求め、「返金に従っていただけない場合は譲渡中止を求める」と伝えたんです。売り手様は故意ではなく事業をコールセンターのメンバーに任せていて売上状況など細かな情報をきちんとキャッチできていなかったことがあったようで、返金に関してはきちんと応じていただきました。

私自身も勢いで申し込んだためにエビデンスなどを細かく相手に要求しなかったことが原因で、今回こうしたトラブルが起きたのだと思います。この経験は反省として、今後に生かしたいです。

- M&A成立後、事業にはどのようにかかわっていますか?また、今後の事業展望を教えてください。
コールセンターは自走してくれているので、細かいオペレーションまではこちらで管理していません。ただ、スタッフが対応してくれた本人確認の結果や毎日の稼働件数については、報告を上げてもらっているので確認しています。

今後の課題は、売上を上げるための営業活動です。というのも、今回の事業は売り手様と仲の良かった、民泊のセルフチェックインサービスを提供している別企業の社長様が共同で創業した事業で。

コールセンターの管理は私がおこなっているものの、都内の民泊を主な対象とした顧客開拓や営業活動は、今までもこれからも共同創業をしたパートナー企業が担っているんです。つまり、「売上が上がるかはパートナー企業の営業力次第」とも言える状態で、自分で手を掛けられない分、投資案件のようなもどかしさも感じていて。

コロナ禍によるインバウンド観光客の激減などの影響を受けて、民泊はダメージを受けており現在は売上が減っている状況です。しかし、ある程度時期が落ち着いて、民泊がにぎわい始めたタイミングで営業を掛ければ再度契約をしてくれる民泊のオーナー様もいらっしゃることでしょう。

今後はパートナー企業と連携してそういった営業戦略を立案したり、自分のツテを使って見つけた見込み顧客にも営業を掛けたりと、コントロールできる範囲を増やしながら事業を大きくしていきたいと構想しています。

エステ事業の集客施策を考えることに今はかなり時間を費やしているので、そちらが落ち着いたら本格的にコールセンター事業の展開を考えていきたいですね。



(今回買収された本人確認代行を行うコールセンター事業のビジネスモデル)

【無職を武器に!低姿勢で相手のタイミングを図ることが選ばれるコツ】

- ここからは、計3件のM&Aを振り返ってみての感想を伺えればと思います。回数を重ねて、マインド面で変化したことがあれば教えてください。
初めて買い申し込みをするときは緊張していましたが、今は「もし交渉をする中で想定していたものと違ったら、『ごめんなさい』とお断りして交渉のテーブルから降りることもできる。だから、興味があればとりあえず申し込んでみよう」というマインドに変わりました。

また、当初は売り手様からの返信が遅いとやきもきしていた気がします。ただ、計20件ほど買い申し込みをしていく中で返信率は大体8割くらいでした。売り手有利な市場なので、返信が来ないときもあると割り切って考えることも大事です。

返信が来ない場合、興味がある案件ならば「いかがですか?」ともう一度連絡してみてもいいですし、それほど興味度合いが高くなければ、「返事がいただけないのでお断りします」と伝えて次の案件探しに移ってもいいわけですから。「絶対この案件じゃないといけない」といった執着のような気持ちは無くなりましたね。

- 買い申し込みや交渉をする中で、意識したことはありますか?
売り手様の気持ちを察して、タイミングを計って連絡を取ることです。

実は、エステサロンの案件も最初は返信が無かったんです。けれど、「おそらく、人気案件で買い申し込みが殺到しているものの、売り手様がお忙しくて対応が間に合ってないのだろう」と予想してもう一度だけ連絡してみたら、返信をくださって。トントン拍子で契約に進みました。興味がある案件なら、しつこくならない程度に粘ることも大切ですね。

一方で、中には私に売る気がまったく無くて連絡を返してくれない方や、少し金額面で渋ったときに「この程度の金額なんて、先に振り込んだ者勝ちだよ」という態度で接してこられた売り手様もいました。気持ち良くやり取りが進められない方との交渉はお断りもしていました。

また、無職であることを逆手にとったアピールもしていました。交渉の中で、日程調整の話に移った際に「無職なので、あなたのご都合に合わせることができますし、今日や明日のお打ち合わせも可能です」という提案をして、フットワークの軽さを強みにしましたね。

低姿勢で常にいることは意識していました。交渉の中で「すみません、わからないことが多くて質問ばかりで」と謝っても、むしろ喜んでたくさんのことを教えてくれる方が多く、中には「こういうことを、やってみたらいいですよ」とアドバイスをくださった方もいました。私が何者でもないことで、逆に売り手様も肩肘張らずに交渉に臨めたのかもしれません。

- M&Aの過程で、専門家の方のアドバイスを参考にする機会はありましたか?
元々ツテが特にありませんでしたが、実は東京都事業承継・引継ぎ支援センターに行ったときに、弁護士の先生の無料相談サービスを教えてもらいました。その相談サービスを活用して契約書の内容を確認していただきました。

その中で、「こうした項目は、一般的な契約書に盛り込まれがちだけど、実はどちらの意味にも取れるから記載することにそれほど意味は無いんだよ」といったご指摘もいただいて。もちろん契約書の内容は大事だけれど、それ以上に「交渉相手の方が信頼できる人間であるか」を、やりとりを行う中で見極めていくことが大切だと聞きました。

また、「買い手であるあなたが有利な案件なんだから、臆することなく、もっと強気な内容にした方がいいよ」ともアドバイスいただいて。初めてでわからないことが多いとどうしても弱気になりがちですが、変に遠慮することはしなくていいし、強気で自分の望む条件を提示してみることが大事なんだと気付かされたんです。



(※写真はイメージです)

【成約せずとも交渉した売り手とのネットワークは大きな財産】

- M&Aを経て得たものはありますか?
一番は人との繋がりです。事業経験豊富な今回のコールセンターの売り手様にエステ事業の相談をしたところ、「サポートするので、こういう風にやってみましょう」と提案してくださっていて。「●●の発注先を探していて」と話していたら、「当社と繋がりのある企業だから安価で依頼できますよ」と取引先もご紹介していただきました。

また、成約には至りませんでしたが別のエステサロンにも買い申し込みを入れていた結果、その売り手様とのやり取りがありがたいことに今でも続いていて「うちのノウハウを真似していいよ」と大盤振る舞いで教えてくださっているんです。こういったプラットフォームで、直接売買するだけでなく、人との繋がりができ、ビジネスをサポートしていただける関係値に発展できることはとてもありがたいですね。

- サラリーマン時代と比べてどんなことが変わりましたか?
今日何をやるのか、逆に何をやらないのかを全部自分で決めることができます。また、事業を買うか買わないか、備品を買うか買わないか、スタッフを採用するかしないかを決めるのも自分ですし、その決断の結果も全部自分に返ってくる世界です。

もちろん悩むことや難しいことも多いですが、ワクワクすることや楽しいこともたくさんあって。こうした気持ちをこれまでのキャリアで味わったことが無かったので、とても新鮮です。興味が無いことにはまったく気が向かない反面、やりたいと思ったことへのフットワークが軽い私には面白い世界ですね。

- 最後に、M&Aを検討されている方にアドバイスをいただけますか。
私は、「無理な金額のものには手を出さず、たとえ失敗しても自分でコントロールできる範囲の案件にする」と決めていました。リスクヘッジという意味でも、この心構えは大事にした方がいいかもしれません。

そして、興味を持った案件にはとりあえず申し込むなど、恐れずに回数を重ねて見てください。一歩踏み出す度に新しい学びや出会いが待っていますし、次にチャレンジする際のハードルがどんどん下がっていくと思います。

 
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  • 倉本祐美加
  • ライター紹介倉本祐美加

    関西学院大学卒業後、クラウド製品を扱うIT企業のインサイドセールス職を経て2016年にライターとして独立。企業取材を中心としたインタビュー原稿の制作に従事していますが、エンタメ・スポーツ・文化等幅広く好みます。

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